持病の薬を災害で切らさない備え|お薬手帳・備蓄日数・災害時の特例をやさしく整理

高血圧や糖尿病、心臓や腎臓の病気、喘息、てんかん、こころの不調など、毎日の薬が欠かせない家族がいると、災害のときにまず心配になるのが「薬を切らさないでいられるか」ではないでしょうか。食料や水と違い、持病の薬は代わりがきかず、決まった量を続けることが体調の土台になります。この記事では、不安をあおるためではなく、今日から少しずつ整えられるように、お薬手帳の役割・手元に備えたい日数の目安・災害時の特例を、公的機関の情報をもとに整理します。
なぜ「薬の備え」が特別に大切なのか
災害が起きると、物流が止まって薬が病院や薬局に届きにくくなったり、通っている医療機関そのものが被災して機能を止めたりすることがあります。停電で電子カルテや薬歴が確認できず、「いつも何の薬を、どれくらい飲んでいるのか」がすぐには分からなくなる場面も想定されます。
食料や水は避難所などで少しずつ配られることがありますが、持病の薬はその人専用のもので、種類や量が合わなければ役に立ちません。だからこそ、薬は「あとで何とかなる」ものではなく、あらかじめ手元に用意し、情報を持ち出せるようにしておくことが大切になります。
こうした不安は、次に紹介するお薬手帳と、数日分の薬を手元に置く習慣で、かなり和らげることができます。
お薬手帳が果たす役割|医療情報を正確に伝える
お薬手帳は、服用中の薬の名前・用法用量、これまでのアレルギーや副作用の記録を、医師や薬剤師に正確に伝えるための冊子です。災害時に電子カルテや薬歴が確認できなくても、お薬手帳があれば処方の内容を引き継ぎやすくなります。かかりつけ以外の医療機関や避難所の救護所でも、初めて診る相手にすばやく状況を伝えられるのが強みです。
お薬手帳は服用中の薬を把握し、災害時にも適切な対応を受ける助けになるとされています。港区(みなと保健所)「災害時のためにお薬を備えましょう」でも、お薬手帳を常に携帯すること、電子版があることが案内されています。
紙のお薬手帳は持ち出せないと意味がないため、控えを分散して持っておくと安心です。スマートフォンのお薬手帳アプリ(電子お薬手帳)や、手帳のページを写真に撮っておく方法も有効とされています。
- 1
原本を1か所に決める
紙のお薬手帳の置き場所を家族で共有します。持ち出し袋か、すぐ手に取れる定位置に。 - 2
写真かコピーで控えを作る
最新のページをスマホで撮影する、またはコピーを取り、財布や別の袋にも入れておきます。 - 3
電子お薬手帳も検討する
アプリに登録しておくと、手帳を持ち出せなかったときの控えになります。ただし停電や通信状況で見られないこともあるため、紙の控えと併用が安心です。
メモ
どれくらい備える?|日数の目安とローリングストック
持病の薬は、最低でも3日分、できれば7日分程度を常に手元に備えておくのが望ましいとされています。大規模災害では、支援物資や薬の供給が整うまでに日数がかかることがあるためです。数字はあくまで目安で、病気の内容や薬の種類によって必要な量は変わります。
持病の薬は3日分(できれば7日分程度)を常に持っておくと安心、という目安は港区(みなと保健所)「災害時のためにお薬を備えましょう」で示されています。実際に必要な量は病状により異なるため、かかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。
「予備を多めにもらうのは難しいのでは」と感じるかもしれません。災害への備えとして少し余裕を持ちたい旨を、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみると、日数の調整について助言を受けられる場合があります。自己判断で量を減らして「節約」しようとするのは、体調を崩す原因になりかねないため避けたい対応です。
備えた薬は、使わないまま置いておくと使用期限が切れてしまいます。ふだんの薬を、先に受け取った古いものから使い、新しく受け取った分を予備として補充していく「ローリングストック」の考え方が役立ちます。
ヒント
災害時の特例|処方箋がなくても薬を受け取れた例
過去の大規模災害では、被災して医師の診察を受けにくい状況でも、お薬手帳や薬の包装などで服用中の薬(安定した慢性疾患の薬など)が確認できれば、処方箋がなくても薬を受け取れるよう、国から特例的な取り扱いが示された例があります。2011年の東日本大震災や、2024年の能登半島地震のときにも、こうした対応が案内されました。
能登半島地震では、厚生労働省医薬局の事務連絡(令和6年1月2日)で、被災地の患者が受診や処方箋の交付が困難な場合に、薬剤服用歴・お薬手帳・マイナンバーカード等を活用して必要な処方箋医薬品を販売・授与できる旨が示されました。東日本大震災でも同様の取り扱いが周知されています(いずれも一時的な措置)。
大切なのは、これらはあくまで被災地での一時的な措置であり、「特例があるから備えなくてよい」わけではないということです。手帳や薬の控えが手元にあってはじめて成り立つ仕組みですし、混乱の中ですぐに受け取れるとは限りません。平時から数日分を手元に備えておくことを基本と考え、特例は「万一のときの支え」と位置づけておくと安心です。
停電に注意したい薬・医療機器
薬や医療機器の中には、停電や断水の影響を受けやすいものがあります。取り扱いを誤ると健康に関わるため、自己判断ではなく、かかりつけの医療機関や薬剤師の指示に従うことが基本です。
注意
停電への備えとしては、医療機器がどれくらいの停電に耐えられるか、非常用電源が必要か、災害時にどこへ連絡すればよいかを、あらかじめ聞いてメモにしておくと落ち着いて動けます。
家庭でそろえたい常備薬と、実践のまとめ
持病の薬に加えて、家庭には日常のトラブルに備える常備薬もあると安心です。人によって必要なものは異なりますが、次のようなものが挙げられます。
- 解熱鎮痛薬、胃腸薬、整腸薬、下痢止めなどの一般的な市販薬
- 絆創膏、消毒液、ガーゼ、包帯などの救急用品
- 小さな子どものアレルギーの薬や、ふだん使う塗り薬
- 常用しているサプリメントや、目薬・アレルギーの内服薬など
常備薬や救急用品は、家庭での備えとして一般的に挙げられる品目です。市販薬にも使用期限があるため、持病の薬とあわせて定期的に点検しましょう。使い方や飲み合わせに迷うときは薬剤師にご相談ください。
最後に、薬まわりの備えを実践に落とすと、次の流れになります。かかりつけの薬局・病院の名前と連絡先、処方内容の控えをメモにして、お薬手帳と数日分の薬とあわせて持ち出し袋に入れておく。これだけで、いざというときの安心感が大きく変わります。
よくある質問
薬は何日分くらい備えておけばよいですか
お薬手帳を持ち出せなかったら薬はもらえませんか
災害時は処方箋がなくても薬をもらえると聞きましたが本当ですか
インスリンなど冷蔵が必要な薬はどう備えますか
備えた薬が期限切れにならないようにするには
まとめ|「手帳・数日分・連絡先」を家族の合言葉に
持病の薬の備えは、特別な道具をそろえる話ではなく、ふだんの受診と暮らしの延長でできることがほとんどです。お薬手帳の控えを分散し、数日分の薬を手元に置き、かかりつけの連絡先をメモしておく。この3つを家族で共有しておけば、いざというときの動きがぐっと落ち着きます。
今日からの一歩
- お薬手帳の最新ページを写真に撮る、または電子お薬手帳に登録する
- 持病の薬を最低3日分、できれば7日分程度、手元にあるか確認する
- 予備に余裕を持ちたい旨を、次の受診でかかりつけの医師・薬剤師に相談してみる
- 冷所保存の薬や医療機器の停電時の対応を、かかりつけに確認しておく
- かかりつけの薬局・病院の連絡先と処方内容の控えを、お薬手帳と一緒に持ち出し袋へ
薬の備えは、高齢の家族の暮らし全体の備えとあわせて考えると整理しやすくなります。シニアの防災の全体像は、こちらの記事でまとめています。
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