火災保険・地震保険と水災補償を見直す|台風シーズン前に、生活再建の備えを点検する

台風や豪雨のシーズンを前に、非常食や持ち出し袋を点検する方は多いと思います。あわせて見直しておきたいのが、わが家の火災保険と地震保険です。保険は被災した直後よりも、そのあとの暮らしを立て直す段になって効いてくる備えです。ところが「火災保険に入っているから大丈夫」と思っていても、地震の被害は対象外だったり、水災の補償が外れていたりすることがあります。この記事では、証券を手元に置いて確認したい点を、財務省や日本損害保険協会、内閣府の目安に沿って整理します。個別の商品や金額は各社・約款で異なるため、最終的な内容は必ず契約先で確かめてください。
まず全体像|火災保険と地震保険は「別のもの」
住まいの保険は、大きく火災保険と地震保険の2つに分けて考えると整理しやすくなります。火災保険は、火災に加えて、風災・水災・落雷など幅広い災害による建物や家財の損害を対象にします。ただし、地震を原因とする損害は火災保険の対象外で、これに備えるのが地震保険です。
見直しの出発点は、契約している火災保険の証券(保険証券や契約内容のお知らせ)を用意することです。そこには、対象が建物か家財か、どんな災害が補償の範囲に入っているか、地震保険が付いているか、といった要点が書かれています。まずは次の3点を順に確認していきましょう。
| 確認する点 | 何を見るか |
|---|---|
| 地震の備え | 地震保険がセットされているか |
| 水の備え | 水災補償が付いているか・外していないか |
| 対象と金額 | 建物・家財それぞれの保険金額と補償の範囲 |
地震・噴火・津波の被害は火災保険では補償されない
意外と知られていないのが、地震で起きた火災は火災保険では補償されない、という点です。財務省の説明でも、火災保険では地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は補償されないとされています。地震・噴火や、これらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失に備えるには、地震保険が必要です。
「火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は補償されません」という点は、財務省「地震保険制度の概要」で示されています。地震・噴火・津波による損害への備えとして地震保険が位置づけられています。
地震保険は、地震などによる被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間の保険会社が負う責任のうち巨額の損害を政府が再保険することで成り立つ、公共性の高い制度とされています。そのため、補償の基本的なしくみはどの保険会社で契約しても共通です。
地震保険は火災保険にセットで契約する(単独では入れない)
地震保険は、それだけを単独で契約することはできません。火災保険にセットして契約するのが基本です。日本損害保険協会も、地震保険は単独では契約できず火災保険にセットして契約する必要があること、火災保険の契約期間の途中でも地震保険を付帯できることを示しています。つまり、いま火災保険だけに入っている方も、契約の途中から地震保険を足せる可能性があります。
「地震保険は単独では契約できません。火災保険にセットして契約する必要があります。なお、火災保険の契約期間の中途でも地震保険の契約ができます」という点は、日本損害保険協会「地震保険」で示されています。
新しく火災保険を契約するときは、地震保険は原則として自動的に付帯される「原則自動付帯」というしくみになっています。これは、契約者の意思を尊重しつつ地震保険の普及を図るための方式で、付けない意思表示をした場合には外すこともできる、とされています。裏を返すと、過去に「今回は付けない」と選んで契約していると、地震保険が付いていないことがあります。証券で有無を確認しておきましょう。
地震保険が「原則自動付帯」となっている考え方は、財務省のFAQ「地震保険は、火災保険に原則自動付帯となっているのはなぜですか」で示されています。特別の事情により付帯しない意思表示をした場合は付帯しないことができる方式とされています。
地震保険の保険金額・保険料・割引の基本
地震保険の保険金額は、セットになっている火災保険の保険金額の30%から50%の範囲で設定します。ただし上限があり、建物は5,000万円、家財は1,000万円までとされています。火災保険と同額にはできない点に注意してください。
「火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内で地震保険の保険金額を決めることが可能です。ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度です」という点は、財務省「地震保険制度の概要」で示されています。50%までに制限される理由は、財務省のFAQでも説明されています。
保険料は、保険の対象となる建物の構造と、その所在地(都道府県)によって決まるとされています。地震のリスクや建物の壊れにくさに応じて料率が変わるためです。あわせて、建物の耐震性能などに応じた各種の割引が用意されています。目安として、次のような割引があります。
| 割引の種類 | 割引率の目安 |
|---|---|
| 免震建築物割引 | 50% |
| 耐震等級割引(耐震等級3) | 50% |
| 耐震等級割引(耐震等級2) | 30% |
| 耐震等級割引(耐震等級1) | 10% |
| 耐震診断割引 | 10% |
| 建築年割引 | 10% |
割引の種類と割引率の目安は、財務省「地震保険制度の概要」で示されているものです。これらの割引は原則として重複して受けられず、いずれか一つが適用されるとされています。適用には確認資料が必要です。
注意
なお、地震保険で支払われる保険金は、損害の程度に応じて全損・大半損・小半損・一部損といった区分で決まるしくみになっています。区分ごとの支払いの割合や認定の基準は約款で定められているため、詳細は保険会社の資料で確かめておくと安心です。
水災補償は火災保険の一部|「付いているか」を証券で確認
台風・豪雨シーズンにとくに見直したいのが、水災補償です。水災補償は火災保険の補償の一つで、台風や豪雨による洪水、雨水があふれる内水氾濫、土砂崩れ、高潮などで、建物や家財が受けた損害に備えるものです。ここで大切なのは、水災補償は火災保険に入っていれば必ず付いているわけではない、という点です。契約時に選ばなかったり、保険料を抑えるために外していたりすると、補償の対象外になっていることがあります。
台風・豪雨のシーズンを前に、保険・共済への加入という事前の備えが大切であることは、内閣府「いざというときに備えて保険・共済に加入しよう」で示されています。同ページでは、持家世帯で水災補償の加入割合が火災補償より低い傾向にあることも紹介されています。
あわせて読みたい
台風が近づく前に家でやっておく備え|接近48〜24時間前の「家まわり」直前チェック
水災補償を付けるかどうかは、住まいのある場所の水のリスクから考えると判断しやすくなります。手がかりになるのが、自治体が公開しているハザードマップです。自宅周辺の想定される浸水の深さや、土砂災害の危険度を確かめ、リスクがある地域なら水災補償の必要性は高いといえます。反対に、高台などで浸水のおそれが小さい場合は、補償の要否を含めて検討する材料になります。
メモ
保険は「生活再建の一助」|自助の備えとして点検する
保険は万能ではありませんが、被災後の暮らしを立て直すうえで大きな支えになります。住宅や生活の再建には大きな費用がかかり、公的な支援だけでは十分といえない場面もあると言われます。内閣府も、保険・共済への加入という「自助」の備えの大切さを呼びかけています。今日からできるのは、まず証券を開いて、地震保険と水災補償の有無を確かめることです。
見直しで内容を確認したら、保険証券は被災後の請求で使う大切な書類です。コピーを分散して保管し、証券番号や保険会社の連絡先を控えておくと、いざというときに手続きがスムーズになります。書類とお金の備え方は、次の記事で詳しくまとめています。
あわせて読みたい
災害への「お金」と「重要書類」の備え|罹災証明・保険・現金を分散して守る
そして万一被災したときは、片づけを始める前に、被害の状況をスマートフォンなどで写真に記録しておくことが、罹災証明や保険の請求で役立ちます。浸水後の片づけと復旧の手順は、あわせて確認しておくと落ち着いて動けます。
あわせて読みたい
浸水したあとの家の片付けと復旧|床上・床下浸水の「安全・記録・消毒」の順番
よくある質問
火災保険に入っていれば地震の被害も補償されますか
地震保険だけに入ることはできますか
地震保険の保険金額は火災保険と同じにできますか
水災補償はどう判断すればよいですか
保険料や割引の金額はここに書かれたとおりですか
まとめ|証券を開いて、地震と水の備えを点検する
台風・豪雨シーズンや保険の更新は、わが家の保険を見直すよい機会です。ポイントは3つです。火災保険では地震・噴火・津波の被害は補償されないので地震保険を確認すること。地震保険は火災保険にセットで、途中からでも付帯できること。そして水災補償が証券に付いているかを、ハザードマップと照らして確かめること。どれも証券を開けば今日から確認できます。保険は生活再建の一助であり、自助の備えの一つです。金額や補償内容は改定・契約差があるため、最終的な判断は保険会社・代理店や公的機関の最新情報にしたがって進めてください。
今日からの一歩
- 保険証券(契約内容のお知らせ)を手元に用意した
- 地震保険がセットされているかを確認した
- 水災補償が付いているか・外していないかを証券で確認した
- 自宅周辺のハザードマップで浸水・土砂災害のリスクを確かめた
- 建物・家財それぞれの保険金額と補償範囲をメモした
- 証券のコピーを分散保管し、証券番号と連絡先を控えた
- 不明点を保険会社・代理店に相談する予定を決めた
出典・参考
関連する記事
災害への「お金」と「重要書類」の備え|罹災証明・保険・現金を分散して守る
被災後の生活再建でものを言うのは、事前に整えた「紙」と「お金」です。本人確認書類や保険証券のコピーを分散して保管し、当座の現金を小銭ごと用意し、罹災証明書と被災者生活再建支援制度のしくみを知っておく。今日からできる、暮らしを立て直すための備えをまとめました。
浸水したあとの家の片付けと復旧|床上・床下浸水の「安全・記録・消毒」の順番
台風や大雨で床上・床下浸水したあとの家の片付けと復旧を、片付け前の安全確認、被害状況の写真記録、泥出し・乾燥、乾いてからの消毒、体を守る服装まで、環境省や内閣府・電気事業連合会などの目安に沿って順番に整理しました。
台風が近づく前に家でやっておく備え|接近48〜24時間前の「家まわり」直前チェック
台風が近づく前の48〜24時間でやっておきたい「家まわりの物理的な備え」に絞って整理。窓・雨戸の飛散対策、ベランダや庭の片づけ、排水口の掃除、停電・断水の直前準備までを、気象庁や首相官邸の目安に沿って手順にしました。


