モシモニア
住まいの防災

感震ブレーカーと通電火災対策|地震のあとの「電気の火事」を家庭で防ぐ

ツムギ住まいの防災・ライフライン担当
・ 約9分で読めます
感震ブレーカーと通電火災対策|地震のあとの「電気の火事」を家庭で防ぐ

家具の固定や備蓄と比べて、地震のあとの「火事」への備えは見落とされがちです。けれど、大きな地震で怖いのは揺れそのものだけではありません。揺れが収まり、停電した部屋に電気が戻ってきた時、倒れた家電や傷んだ配線から火が出る。これが通電火災です。この記事では、通電火災の仕組みと、家庭でできる最も現実的な対策である感震ブレーカーについて、公的機関の資料をもとに整理します。

通電火災とは|停電が「戻る」時に火が出る

通電火災は、地震で一度停電した後に電気が復旧した際、破損した電気製品や傷んだ配線から発火する火災です。イメージしにくいかもしれませんが、順を追うと危険がはっきりします。

  • 揺れで電気ストーブや観賞魚用ヒーターが倒れ、スイッチが入ったまま可燃物の上に転がる
  • 家電のコードが家具の下敷きになったり、配線が半分切れたまま残る
  • 住人は停電に気づかず、あるいは避難して家を空ける
  • 数時間後、電力が復旧して通電が始まり、倒れた家電や損傷した配線が発熱・発火する

火が出た時、住人はその場にいないことも多く、発見が遅れて延焼につながります。だからこそ「揺れが収まった=もう安心」ではないのです。

内閣府防災情報のページでは「地震による火災の過半数は電気が原因」とし、東日本大震災の本震による火災のうち、原因が特定されたものの過半数が電気関係の出火だったと説明しています。

過去の大きな地震でも、電気を原因とする出火が多く報告されてきました。数値は資料や集計方法によって幅がありますが、「地震火災の対策として電気への備えが欠かせない」という方向性は、公的機関の資料でくり返し示されています。

感震ブレーカーの仕組み|「留守でも自動で止める」

感震ブレーカーは、設定以上の揺れを感知すると電気を自動的に遮断する器具です。最大の利点は、人が操作しなくても働くことです。

避難で家を空けている時、あるいは揺れの直後にブレーカーまで動けない時でも、器具が自動で通電を止めてくれます。特に、木造住宅が密集した市街地では、一軒の通電火災が周囲へ燃え広がりやすいため、地域全体の被害を抑える意味でも設置が呼びかけられています。

メモ

感震ブレーカーは「火事を絶対に起こさない装置」ではありません。あくまで電気に起因する出火の可能性を下げる備えです。次に紹介するほかの対策と組み合わせて考えてください。

感震ブレーカーの4タイプを比較する

感震ブレーカーは大きく4つのタイプに分かれます。価格・工事の要否・遮断範囲がそれぞれ違うので、住まいと予算に合わせて選びます。

タイプ価格の目安電気工事特徴・向いている人
分電盤タイプ(内蔵型)約5〜8万円必要分電盤ごと交換。家全体を確実に遮断。新築・分電盤更新時に
分電盤タイプ(後付型)約2〜4万円必要既存の分電盤に追加。漏電ブレーカーがある住宅向け
コンセントタイプ約5千円〜2万円差込式は不要そのコンセントだけ遮断。電気ストーブ等の危険な器具に的をしぼる
簡易タイプ約3〜4千円不要おもりやバネでブレーカーを落とす。安価で今日から始められる

価格帯や工事の要否は、内閣府「感震ブレーカー等の種類、特徴等について」の資料に示された目安をもとにしています。実際の費用や適合は製品・住宅により異なります。

分電盤タイプは、屋内配線から家電まで家全体をまとめて遮断できるのが強みです。加えて、地震発生後しばらく(内閣府資料では約3分間)は電力を確保する製品があり、その間に避難したり家電の電源を切ったりする余裕が生まれます。一方でコンセントタイプは、そのコンセントに接続した家電だけを止める方式で、避難用の照明や在宅医療機器など、地震時にも電気を残したい機器はそのまま使える利点があります。

簡易タイプは数千円で入手でき、まず一歩を踏み出すのに向きます。ただし遮断性能は設置状態やブレーカーとの相性に左右されるため、確実に作動するかの確認が欠かせません。

設置の考え方|まず「分電盤の場所」を確認する

  1. 1

    分電盤のタイプと位置を確認する

    玄関や洗面所の上などにある分電盤を確認します。漏電ブレーカー付きなら後付型、更新予定があるなら内蔵型が候補です。工事が必要なタイプは電気工事店への相談が前提です。
  2. 2

    出火リスクの高い場所を洗い出す

    電気ストーブ、こたつ、観賞魚用ヒーター、白熱スタンドなど、熱を持つ器具の位置を書き出します。工事なしで始めたい場合は、その近くのコンセントにコンセントタイプを付ける手もあります。
  3. 3

    予算と住まいに合わせて選ぶ

    持ち家で家全体を守るなら分電盤タイプ、賃貸や少額から始めるなら差込式のコンセントタイプや簡易タイプ、と分けて考えると迷いません。
  4. 4

    自治体の補助制度を調べる

    感震ブレーカーの設置費用を補助する自治体があります。「お住まいの市区町村名 感震ブレーカー 補助」で検索し、対象地域・機種・上限額を確認してください。

ヒント

感震ブレーカーは、電気設備の技術基準を補う民間規程である内線規程でも、地震時の出火防止対策として設置が勧められています。特に木造住宅密集地域では優先度が高い備えと位置づけられています。

感震ブレーカー任せにしない|合わせて整える3つ

感震ブレーカーは有効な備えですが、それだけで電気火災がゼロになるわけではありません。次の3つをセットにすると、備えの厚みが変わります。

1. 避難で家を空ける時はブレーカーを手動でオフ

感震ブレーカーがない家でも、避難の際にブレーカーを落として出るだけで通電火災のリスクは下げられます。玄関を出る前の動作として「ブレーカーを落とす」を家族の避難手順に入れておきましょう。復旧後にすぐ戻す時も、家電や配線の異常がないかを確かめてから通電するのが基本です。

2. 家具固定と可燃物の整理で「発火の種」を減らす

そもそも家電が倒れなければ、通電時に発火する可能性は下がります。背の高い家具や重い家電を固定し、ストーブやコンロの周りに燃えやすい物を置かないだけでも効果があります。家具固定の具体的な手順は、寝室の安全対策とあわせて別記事で解説しています。

3. 住宅用火災警報器を点検する

万一出火しても、早く気づければ被害を小さくできます。住宅用火災警報器は電池切れや本体寿命(おおむね10年が交換の目安とされます)があるため、ボタンを押して作動を確かめ、古いものは交換しておきましょう。

注意

感震ブレーカーが作動すると、揺れの直後に照明も一斉に消えます。特に簡易タイプは揺れと同時に電気を落とすため、避難や身の安全確保のための明かりは別に用意しておく必要があります。枕元や廊下に電池式の足元灯や懐中電灯を置いておきましょう。

復電の時こそ落ち着いて|安全確認の手順

停電から電気が戻る「復電」は、通電火災が起きやすい瞬間です。自分でブレーカーを戻す時は、次を確認してからにしてください。

復電前の安全チェック

  • ガス臭・焦げ臭さがないか確認した
  • 電気ストーブ・アイロンなど熱を持つ家電の電源を抜いた
  • 水にぬれた家電や、コードが傷んだ家電を通電しないよう外した
  • 倒れた家電を起こし、可燃物が上に乗っていないか確かめた
  • 在宅の家族に「今からブレーカーを入れる」と声をかけた

内閣府の資料でも、安全を確保するにはユーザー自身による復電前の点検が確実に行われることが必要だと指摘されています。感震ブレーカーがあっても、戻す時のひと手間は省かないでください。

よくある質問

通電火災は停電しなければ起きないのですか
通電火災は主に停電からの復旧時に問題になりますが、揺れで倒れた家電や損傷した配線は停電の有無にかかわらず出火の原因になり得ます。地震のあとは、家電やコードに異常がないかを確認することが大切です。
賃貸でも感震ブレーカーは付けられますか
分電盤の工事を伴うタイプは管理会社や大家さんの許可が必要ですが、コンセントに差し込むだけのタイプや、ブレーカーに取り付ける簡易タイプなら工事なしで設置できます。まずは電気ストーブなど危険な器具の近くから始めるのが現実的です。
簡易タイプでも効果はありますか
数千円で通電を遮断できる有効な備えです。ただし作動の確実性は設置状態やブレーカーとの相性に左右されるため、取扱説明どおりに設置し、正しく作動するかを確認してください。揺れと同時に照明も消えるので、足元の明かりを別に用意しましょう。
感震ブレーカーがあれば避難時にブレーカーを落とさなくてよいですか
自動で遮断されるため落とし忘れの心配は減りますが、確実性を高めるため、避難で家を空ける時は手動でも落としておくと安心です。復旧時は家電や配線を確認してから通電してください。

まとめ|「電気の火事」への備えは今日から一歩

通電火災は、揺れが収まった後にやってくる見えにくいリスクです。けれど対策ははっきりしています。感震ブレーカーで自動的に電気を止める仕組みを用意し、避難時のブレーカーオフ・家具固定・火災警報器の点検を合わせる。工事が必要なタイプが難しくても、数千円の簡易タイプや差込式のコンセントタイプから始められます。

まずは自宅の分電盤の場所と、熱を持つ家電の位置を確認するところから。地震そのものと、そのあとの停電への備えもあわせて見直しておくと安心です。

あわせて読みたい

家具の固定と寝室の安全対策|地震のけがを減らす週末1回の作業手順

あわせて読みたい

停電への備えと停電時の過ごし方|明かり・電源・冷蔵庫の現実的な対策

あわせて読みたい

「南海トラフ地震臨時情報」が出たら家庭は何をする?注意・警戒でやること

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事

災害別の対策

「南海トラフ地震臨時情報」が出たら家庭は何をする?注意・警戒でやること

南海トラフ地震臨時情報の3つのキーワード(調査中・巨大地震注意・巨大地震警戒)の意味と、それぞれで家庭が再確認・準備することを、気象庁と内閣府の目安に沿って整理しました。すぐ逃げられる態勢、非常持出品、家具固定、避難場所と経路の確認、1週間の警戒期間の考え方まで、脅さずに実行手順にまとめます。