災害でごみ収集が止まったら|在宅避難の「ごみ」の保管・分別・出し方

水・食料・トイレ。在宅避難の備えとして真っ先に思い浮かぶのはこの3つですが、自宅で数日を過ごすと、もうひとつ確実に困るものが出てきます。ごみです。災害が起きると収集車や処理施設も被害を受け、家庭ごみの収集が一時的に停止する場合があります。それでも生ごみは出るし、非常用トイレを使えば汚物も出ます。行き場のないごみが玄関先にたまり、夏場ならにおいと虫に悩まされる——在宅避難でほぼ確実に起きるのに、備えのリストから抜け落ちがちな部分です。この記事では、収集が止まった場合に家庭のごみをどう保管し、どう分け、収集が再開したらどう出すのかを、環境省や自治体の案内をもとに整理します。
災害が起きると、家庭ごみの収集は止まることがある
家庭から出るごみの収集や処理は、市区町村が責任を持つ「一般廃棄物」の仕事です。環境省の手引きでは、災害時に家庭から出る生活ごみやし尿、避難所から出る避難所ごみ、被災した家屋から出る片付けごみなどの災害廃棄物は、いずれも市区町村が処理責任を有する一般廃棄物であり、災害時であっても処理が継続的かつ確実に行われることが、公衆衛生の確保と生活環境の保全の観点から極めて重要だとされています。
とはいえ、収集する側も被災します。道路が通れない、収集車が足りない、清掃工場が止まっている、職員自身も被災している——こうした事情が重なれば、通常どおりの収集はできません。環境省の手引きでは、生活ごみと避難所ごみについて、ライフラインや交通インフラの支障を勘案しても、遅くとも発災後3日以内(夏季は早期の取り組みが必要)に収集運搬・処理を開始することを目標とする、と示されています。裏を返せば、住民の側は「数日はごみを出せない日が続く」と考えて準備しておくのが現実的だということです。
実際、浜松市は「災害時のごみ出し5か条」として、発災直後は収集が停止する場合があること、収集が停止したらごみは自宅で保管することを案内しています。そのうえで、およそ3日後から生ごみやおむつなどの「腐敗性ごみ」の収集を優先して再開し、燃えないごみや資源物は再開まで引き続き自宅で保管するという流れを示しています。
メモ
災害時の一般廃棄物の処理責任と、生活ごみ・避難所ごみの収集開始の目標時期は、環境省 環境再生・資源循環局 災害廃棄物対策室「災害時の一般廃棄物処理に関する初動対応の手引き」に示されています。発災直後の自宅保管と腐敗性ごみの優先収集は浜松市の案内によります。
「生活ごみ」と「片付けごみ」は別もの
災害時のごみでいちばん混乱しやすいのが、この区別です。同じ「ごみ」でも、出し方も出す場所もまったく違います。
| 種類 | 中身の例 | 出し方の考え方 |
|---|---|---|
| 生活ごみ | 生ごみ、紙、衣類、容器包装、びん・かん・ペットボトルなど、普段どおり暮らして出るごみ | 収集が再開したら、いつもの集積所へ、いつもの分別で出す |
| 片付けごみ(災害廃棄物) | 地震や浸水で壊れた家具・家電・食器、畳や布団、がれきなど | 通常の集積所には出さない。自治体が指定する仮置場や地区の集積所へ、指定された区分に分けて出す・持ち込む |
| し尿・使用済み携帯トイレ | 断水や排水管の被害でトイレが使えないときに出る汚物 | 密閉して他のごみと分け、自治体の案内する方法で出す |
| 避難所のごみ | 避難所で発生するごみ | 避難所ごとに定められたルールに従う |
文京区は、災害により生じたごみは生活ごみとして出すことはできないと明記したうえで、片付けごみは近隣の公園や児童遊園など地区の集積所へ、不燃物・可燃物・畳や布団・家電製品・小型家電などに分けて出すこと、生活ごみは収集再開後にいつもの集積所へ出すことを案内しています。浜松市も、片付けごみは集積所や道路に出さず、市が設置する仮置場へ分別して持ち込むよう求めています。
この記事の主役は「生活ごみ」です。片付けごみは自治体が仮置場を開くまで動きようがない一方、生活ごみは収集が止まっている間も毎日出続けます。だからこそ、家の中でどう受け止めるかが問われます。
注意
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家でごみを保管する4つの工夫
収集が止まっている間、家庭のごみは自宅の中に置いておくことになります。「置いておく」だけなら簡単ですが、放っておくとにおい・虫・衛生の問題が一気に大きくなります。押さえるべきは次の4点です。
- 1
腐るものと腐らないものを最初から分ける
生ごみ、おむつ、衛生用品、使用済み携帯トイレなどの腐敗性のごみは、紙・衣類・プラスチック・びんかんなどとは別の袋にします。収集が再開したときも、腐敗性のごみから優先して受け入れられることが多いためです。 - 2
腐敗性のごみは水を切って密閉する
水分は臭気と菌の増殖のもとです。生ごみは水切りネットでよく水を切り、新聞紙やキッチンペーパーで包んでから袋に入れます。袋は空気を抜いて口を固く縛り、できれば二重にします。 - 3
ふたのある容器にまとめて、直射日光を避ける
縛った袋は、ふた付きのバケツや衣装ケースなど密閉性のある容器にまとめます。玄関の内側やベランダの日陰など、居室から離れた涼しい場所を「ごみの定位置」にしておくと、生活空間ににおいが回りません。 - 4
そもそも出る量を減らす
皿にラップを敷いて洗い物を減らす、飲み残しを出さない量で開ける、食材を使い切るなど、水とごみの両方を減らす発想に切り替えます。
生ごみ|水を切って、包んで、密閉する
断水中は生ごみを洗い流せません。調理くずや食べ残しは、まず水気を切ることが最優先です。新聞紙は吸水性が高く、包んでから袋に入れるだけで、水分の漏れ出しとにおいの立ちのぼりをかなり抑えられます。袋も、薄手のレジ袋より厚手のポリ袋のほうが破れにくく、においを通しにくくなります。
ただし、ポリ袋を二重にしても臭気を完全に閉じ込められるわけではありません。二重にしたうえでふた付き容器に入れ、涼しい場所に置く、という多段構えにするのが現実的です。
ヒント
汚物・使用済み携帯トイレ|他のごみと必ず分ける
断水や排水管の被害でトイレが流せなくなると、使用済みの携帯トイレが毎日たまります。浜松市は、自宅のトイレが使えない場合に備えて1週間程度の携帯トイレを用意すること、目安として1人1日5回分×1週間=35回分を用意しておくと安心であることを案内しています。4人家族なら140回分。この量が数日で「保管すべきごみ」に変わると考えると、備えの具体像がつかめます。
出し方については、文京区が使用済み携帯トイレの手順を次のように案内しています。
- 使用済みの携帯トイレを入れたビニール袋には、燃えやすくするため新聞紙などの可燃物を入れる
- 袋の空気を抜く
- ビニール袋を二重にして、口をしっかり縛る
- 収集が再開したら、他の可燃ごみとは分けて出す
保管中は、居室から離れた風通しのよい場所に、ふた付き容器でまとめておきます。名古屋市は、し尿をごみ袋で出す場合は簡易パック式トイレを使うこと、難しい場合は新聞紙などでしみ込ませることなど、液体の状態で排出しないよう配慮を求めています。あわせて、生活ごみとは袋を分け、少し離して出すことも呼びかけています。携帯トイレに付属する凝固剤や吸水シートで固めてから袋を閉じておくと、この配慮を満たしやすくなり、収集作業の負担軽減にもつながります。
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においと虫|清潔と「近づけない」で抑える
厚生労働省が東日本大震災の際に避難所生活向けにまとめた「被災地での健康を守るために」(平成23年7月25日版)では、気温の上昇にともなって避難所のごみ集積場や水たまりのまわりで蚊やハエが発生しやすくなること、定期的に清掃し、ごみは定期的に収集して閉鎖された場所で管理することが呼びかけられています。避難所を前提にした案内ですが、在宅避難の家庭でも考え方は同じで、「密閉する」「離す」「たまり水をつくらない」の3つが基本になります。
においと虫を抑えるためにできること
- 生ごみは水を切り、新聞紙で包んでから袋に入れて口を固く縛る
- 袋はふた付きのバケツや密閉容器にまとめ、居室から離れた場所に置く
- 直射日光の当たる場所は避け、できるだけ涼しい日陰に置く
- バケツや洗面器のたまり水を放置しない(蚊の発生源になります)
- ごみを扱ったあとは手を洗う。水が乏しいときはウェットティッシュやアルコールで代用
- 生ごみを扱うときは使い捨て手袋を使い、素手で触らない
注意
気温上昇にともなう蚊・ハエの発生と、ごみの管理・定期的な清掃の呼びかけは、厚生労働省「被災地での健康を守るために」(平成23年7月25日版・東日本大震災時に避難所生活向けにまとめられた資料)によります。使用済み携帯トイレの出し方の手順は文京区、し尿を液体のまま出さない配慮は名古屋市の案内によります。野外焼却の禁止と根拠条文(廃棄物処理法第16条の2)は広島市の案内によります。
量を減らす|「急いで捨てないもの」を見極める
浜松市の5か条には「不要不急のごみ出しは控えましょう」という項目があります。早く捨ててしまいたい気持ちは自然ですが、腐らないものなど急いで捨てる必要のないごみは自宅で保管してほしい、という趣旨です。限られた収集能力を、衛生上いちばん急ぐ腐敗性のごみに振り向けるためです。
家庭の側でできるのは、「今すぐ出さなくていいもの」を分けて置いておくこと。空のペットボトルや食品トレー、缶やびん、段ボールはにおいも出ませんし、つぶす・重ねる・乾かしてまとめる工夫で場所を取らずに保管できます。断水中は無理に洗わず、中身を出し切って乾かしてから保管しておく方法もあります。ただし洗浄の要否は自治体の分別ルールによるため、収集が再開したら案内を確認してください。段ボールは床の断熱や簡易の仕切りにも使えるので、たたんで置いておくと重宝します。
備えておく道具|特別なものはいらない
ごみの備えに高価な専用品は必要ありません。普段の暮らしで使っているものを、少し多めに持っておくだけで足ります。
| 道具 | 目安 | 役割 |
|---|---|---|
| 厚手のポリ袋(45L・20L) | 各30〜50枚 | 生活ごみの保管。薄手より破れにくく液漏れしにくい |
| 防臭袋(おむつ用・ペット用など) | 100枚前後 | 生ごみや使用済み携帯トイレの臭気を抑える |
| ふた付きバケツ・密閉容器 | 1〜2個 | 縛った袋をまとめる二次容器。虫の侵入も防ぐ |
| 新聞紙 | 数日分 | 生ごみの水切り、包み材、汚れ拭き、保温にも使える |
| 水切りネット・キッチンペーパー | 1〜2袋 | 生ごみの水分を減らす |
| 使い捨て手袋 | 1箱 | ごみを扱うときの手指の衛生を保つ |
| ウェットティッシュ・アルコール消毒液 | 各1〜2本 | 断水中の手洗いの代わり |
| 台所用の食品ラップ | 2〜3本 | 皿に敷いて洗い物と水の使用を減らす |
| 油性ペン・養生テープ | 各1 | 袋に中身を書く、口を留める、分別を示す |
表の数量は公的機関が示した目安ではなく、4人程度の家族が1週間の在宅避難をする場面を想定した編集部の目安です。家族構成や住まい、ふだん出るごみの量によって変わりますので、まずは「今ある枚数を数えてみる」ところから始めるのがおすすめです。45Lの厚手ポリ袋が家に5枚しかなければ、それが在宅避難でのごみの保管力の上限になります。
メモ
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収集が再開したら|分別と「便乗ごみ」に注意
収集が再開したという情報が出たら、まず確認したいのが「どの区分が、いつ、どこで収集されるか」です。災害時は通常と分別のしかたが変わることがあります。浜松市は、燃えるごみを「腐敗性ごみ」と「その他の燃えるごみ(衣類・紙類など)」に分けておくよう求めたうえで、腐敗性ごみは他のごみと混ざると回収できないと案内しています。
家で分けて保管しておけば、この切り替えにそのまま対応できます。逆に、すべてを一つの袋にまとめてしまうと、収集の対象外になって出し直しになりかねません。
- 1
自治体の情報を確認する
防災行政無線、自治体の公式サイト・SNS・防災アプリ、広報車、避難所や集積所の掲示などで、収集日・場所・分別区分を確認します。 - 2
腐敗性のごみから出す
生ごみ、おむつ、衛生用品、使用済み携帯トイレなど、においや衛生の問題が大きいものから優先して出します。 - 3
急がないものは待つ
資源物や燃えないごみは、その区分の収集が再開するまで自宅で保管します。集積所にあふれたごみは、次の収集をさらに遅らせます。 - 4
片付けごみは仮置場へ
壊れた家具や家電などは、自治体が仮置場を開設し、場所・受入時間・受入品目を案内してから持ち込みます。
仮置場に持ち込むときの3つの約束
仮置場は、災害廃棄物を分別・保管・処理するために自治体が設置・管理する場所で、住民が近所に勝手につくる集積場所や普段のごみ集積所とは別のものです。名古屋市は、混合状態となった片付けごみが生活ごみと混ざることで悪臭や害虫が発生するなど多くの問題が生じること、一度混ざったごみを分別・運搬・処理するには時間を要し早期復興の妨げとなることを説明しています。
- 開設が案内されてから、案内された場所へ持ち込む。開設前に道路や公園へ出さない
- 指定された区分に分けてから運ぶ。名古屋市は片付けごみを14品目に分けて搬入するよう求めており、複数品目を積んだ車両は荷下ろしに時間がかかるため、一つの品目のみを積んだ車両を優先的に案内する場合があるとしています
- 災害で発生したごみ以外は持ち込まない。もともと不要だったものを混ぜない
3つめが、いわゆる「便乗ごみ」の問題です。千葉市は、もともと壊れるなどして捨てようと思っていたものは災害ごみとして扱わず、排出者責任により使用していた方に費用を負担して処分してもらう必要があると案内しています。便乗ごみが増えると仮置場がすぐ埋まり、本当に困っている人の片付けが進まなくなります。
注意
混合ごみによる悪臭・害虫の発生と、分別・運搬・処理に時間を要して復興の妨げになること、片付けごみの14品目分別と搬入時の車両の運用は、名古屋市の案内によります。便乗ごみの扱いは千葉市・文京区の案内によります。仮置場を含む災害廃棄物処理の全体像は、環境省 災害廃棄物対策情報サイトの災害廃棄物対策指針や関連の手引きで公表されています。
平時にできる「ごみを減らす備え」
災害時のごみを減らすいちばん確実な方法は、災害が起きる前に家の中のものを減らし、壊れにくくしておくことです。千葉市は、使わなくなった家電など不要なものをリユースやリサイクルを意識して処分しておくこと、テレビやタンスなどをL型金具やベルト式器具で柱等にしっかり固定することを呼びかけています。文京区も、日頃から不要なものを処分し、家具をしっかり固定しておくことが災害ごみの削減につながると案内しています。
家具の固定は身の安全のための対策として知られていますが、同時に「家財が壊れて片付けごみになる量」を減らす対策でもあります。倒れなければ壊れず、壊れなければごみになりません。
今日からできる、ごみの備えの点検
- 厚手のポリ袋(45L・20L)が家に何枚あるか数える
- 防臭袋、または代用できるおむつ用・ペット用の袋があるか確認する
- ふた付きのバケツや密閉容器を、ごみ保管用に1つ確保する
- 新聞紙や水切りネットを少し多めにストックする
- 使い捨て手袋・ウェットティッシュ・アルコール消毒液を補充する
- ごみを一時的に置く場所(玄関内側・ベランダの日陰など)を家族で決めておく
- 自治体の「災害時のごみの出し方」のページを見て、区分と情報の入手先を確認する
- 背の高い家具を固定し、使わないものを処分して家財を減らしておく
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災害後、ごみはいつから出せるようになりますか
収集が止まっている間、ごみは集積所に置いてもいいですか
生ごみのにおいを抑えるには何がいちばん効きますか
使用済みの携帯トイレはどう保管して、どう出せばよいですか
壊れた家具や家電は、いつもの集積所に出してもいいですか
もともと壊れていたものを、この機会に一緒に出してもいいですか
まとめ|ごみの備えは、在宅避難の暮らしを守る備え
ごみは、備蓄のように「用意して安心」というものではなく、災害が起きたあとに毎日生まれ続けるものです。だからこそ、収集が止まることもあると考えて、受け止め方を決めておくことに意味があります。腐るものと腐らないものを分ける、水を切って密閉する、居室から離れた涼しい場所を定位置にする。この3つを知っているだけで、在宅避難の暮らしはずいぶん楽になります。
必要な道具も、厚手のポリ袋、防臭袋、新聞紙、ふた付き容器、手袋、消毒用品と、どれも普段の暮らしの延長にあるものばかりです。まずは今日、家にある45Lのポリ袋の枚数を数えて、ごみを置く場所を家族で決めてみてください。あわせて、お住まいの自治体の「災害時のごみの出し方」のページに一度目を通しておくこと。この2つが、もしもの日のにおいと不安を小さくしてくれます。
出典・参考
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