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地震でエレベーターに閉じ込められたら|「待つ」を安全にするための行動と、乗る前の備え

カエデ・避難計画・防災情報担当
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地震でエレベーターに閉じ込められたら|「待つ」を安全にするための行動と、乗る前の備え

エレベーターに乗っている数十秒のあいだに地震が起きる。確率としては高くないように思えますが、通勤や買い物、マンションの出入りを合わせれば、私たちは毎日のようにエレベーターに乗っています。そして地震が起きたとき、エレベーターは「安全のために止まる」設計になっています。止まり方によっては、そのまま中に取り残されます。この記事では、公的機関の資料をもとに、閉じ込めがどれくらい起こりうるのか、閉じ込められたら何をすればよいのか、そして待つ時間を少しでも楽にするために事前にできることを整理します。

どれくらい起こりうることなのか

内閣府の中央防災会議・首都直下地震対策検討ワーキンググループが令和7年12月19日に公表した都心南部直下地震の被害想定では、住宅やオフィスの被災および停電により、エレベーター内の閉じ込め事故が多数発生し、最大で約1.6万人が閉じ込められると想定されています。

閉じ込め者数は、地震が起きる時間帯によって大きく変わります。

発生時刻事務所住宅合計
8時約5,400人約3,300人約8,600人
12時約15,700人約100人約15,800人
18時約8,200人約1,200人約9,400人

昼の12時が突出しているのは、オフィスビルでの移動が多い時間帯だからです。一方、朝8時は住宅での閉じ込めが約3,300人と最も多くなります。出勤前にマンションのエレベーターで下りる時間帯、と考えると想像しやすいかもしれません。

閉じ込めにつながり得るエレベーターの停止台数は、事務所約18,500台・住宅約17,200台の合計約35,800台と想定されています。

閉じ込め者数(最大約1.6万人)、時間帯別の内訳、閉じ込めにつながり得る停止台数は、中央防災会議 防災対策実行会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループ「都心南部直下地震の被害想定【定量的な被害量】」(令和7年12月19日)にもとづきます。同資料は、数値はある程度幅をもって見る必要があると注記しています。

この想定は首都直下地震という特定の想定にもとづくものですが、エレベーターのある建物は全国にあります。実際、2026年8月23日未明に関東で最大震度5弱を観測した地震でも、東京消防庁の管内でエレベーターの閉じ込めが複数件発生したと報じられています。震度5弱でも起こりうる、身近な出来事だということです。

地震のとき、エレベーターはどう動くのか

多くのエレベーターには「地震時管制運転装置」が付いています。地震の加速度を感知すると、自動的に最寄りの階でかごを止め、戸を開く装置です。地震の初期微動(P波)を感知した時点で動きはじめる仕組みのものもあり、大きな揺れが来る前に扉が開けば、乗っている人はそのまま外へ出られます。

この装置は、戸開走行保護装置とともに、平成20年政令第290号による建築基準法施行令の改正で設置が義務付けられ、平成21年(2009年)9月28日に施行されました。つまり、それ以降に設置されたエレベーターには標準で備わっています。

一方で、この義務付けは新たに設置するエレベーターが対象です。それ以前からある既設のエレベーターすべてに、さかのぼって設置が求められているわけではありません。内閣府の被害想定資料によれば、地震時管制運転装置の設置率は直近10年間で63.8パーセントから67.3パーセントに向上したとされています。改善は進んでいますが、裏を返せば、およそ3台に1台には付いていないという状況でもあります。

戸開走行保護装置および地震時管制運転装置の設置義務付けと施行日(平成21年9月28日)は国土交通省「エレベーターの安全に係る技術基準の見直しについて」に、地震時管制運転装置の設置率(直近10年間で63.8%から67.3%へ向上)は前掲の内閣府被害想定資料にもとづきます。

メモ

装置が付いていても、閉じ込めがゼロになるわけではありません。停電で電源が失われる、建物やレールが変形する、地震のあとの余震で再び停止するなど、最寄り階まで到達できない状況は起こりえます。内閣府の想定でも、設置率の向上によって閉じ込め者数は約1,600人(約9パーセント)減少したとされる一方、なお最大約1.6万人という規模が見込まれています。
震度5弱の地震のとき、乗っていたエレベーターがガタンと止まって扉が開きました。管制運転というものがあると後から知りましたが、そのときは何が起きたのか分からず、しばらく動けませんでした。
都内のオフィスに勤める読者

閉じ込められたら|やること・やってはいけないこと

新宿区は、エレベーターが止まって閉じ込められたときの対処法として、次の手順を案内しています。

  1. 1

    行き先階のボタンをすべて押す

    かごが動く状態であれば、どれかの階で止まって戸が開く可能性があります。まずこれを試します。
  2. 2

    非常ボタンを押し続ける、または外部と連絡をとる

    かご内の非常電話のボタンを押し続けます。つながらない場合は、スマートフォンなどで管理会社や119番へ連絡します。
  3. 3

    むやみに動かず、救助を待つ

    地震感知装置が付いていれば最寄り階で自動停止するため、無理に動かず待ちます。
  4. 4

    戸が開いたら、すみやかに降りて階段で避難する

    開いたらすぐに降ります。その後の移動にエレベーターは使いません。

注意

自力で戸をこじ開けたり、天井の点検口から外へ出ようとしたりしないでください。かごの外は昇降路(シャフト)で、足場はありません。かごの床と階の床に段差があることも多く、転落や、突然かごが動いたときの挟まれといった重大な事故につながります。救助を待つことが、結果としていちばん安全な選択です。

閉じ込め時の対処手順(行き先階のボタンをすべて押す、非常電話のボタンを押し続ける、むやみに行動せず救助を待つ、戸が開いたらすみやかに降りて非常階段等で避難する)は新宿区「もしもエレベーターが止まったら」にもとづきます。同区は、発災時にエレベーターが動いていても余震で停止する可能性があるため、避難の際は非常階段等を利用するよう案内しています。

救助はすぐには来ないかもしれない

平常時のトラブルであれば、保守会社が比較的短時間で到着します。しかし大きな地震では事情が変わります。同時に多数のエレベーターが停止し、道路も混乱するため、順番待ちが発生します。消防も、救助・救急・火災の対応が同時多発する状況です。

こうした事態に備えて、消防庁と業界団体のあいだでは、大規模災害時のエレベーター閉じ込めからの救出活動に協力するための覚書が平成20年12月に取り交わされ、消防職員への教育訓練や解錠キーの提供などが定められています。体制は整えられていますが、それでも「すぐに来る」とは限らないことを前提に考えておくのが現実的です。

「大規模災害発生時等におけるエレベーター閉じ込めからの救出活動に係る協力についての覚書」(消防庁と社団法人日本エレベータ協会、平成20年12月18日)の存在および教育訓練・解錠キーの提供等の内容は、総務省の公表資料にもとづきます。

待つ時間を楽にする備え

「待つのが正解」だとしても、暗く狭い空間で何時間も過ごすのはつらいものです。備えの目的は、その時間を少しでも耐えやすくすることにあります。

エレベーター内の防災キャビネット

かごの内側に設置する、いす型やボックス型の備蓄庫です。簡易トイレや飲料水などが収められています。新宿区は中高層マンションを対象にエレベーター用防災キャビネットの現物支給事業を実施しており、港区もエレベーター用防災チェアの配付を行っています。このように、複数の自治体が導入を後押ししています。

エレベーター内に簡易トイレや飲料水等を備蓄した防災キャビネットの取り組みは新宿区「もしもエレベーターが止まったら」および同区の現物支給事業のページ、港区「エレベーター用防災チェアを配付します」にもとづきます。対象や配付条件は自治体ごとに異なります。

マンションであれば管理組合、オフィスであればビルの管理者が設置を判断するものなので、個人で買うものではありません。ただ、「うちのエレベーターには付いているだろうか」を確認し、なければ総会の議題として提案する、という動き方はできます。お住まいの自治体に支援制度があるかどうかも、あわせて調べてみてください。

自分で持ち歩けるもの

キャビネットがない建物でも、自分のかばんの中身は自分で決められます。閉じ込め時に効くのは、次のようなものです。

  • 小さなライト(スマートフォンのバッテリーを温存できます)
  • モバイルバッテリー
  • 常備薬、あめや小さな菓子
  • ハンカチ、ウェットティッシュ、ポリ袋
  • 笛(ホイッスル)

いずれも、いわゆる「0次の備え」として毎日持ち歩けるものです。閉じ込めに限らず、外出先で被災したときに広く役立ちます。

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ヒント

トイレの不安は、閉じ込めのストレスのなかでも大きなものです。防災ポーチに携帯トイレを1回分だけでも入れておくと、かなり気持ちが違います。かさばるのが気になる場合は、凝固剤と防臭袋のセットになった薄型のものを選ぶと持ち歩きやすくなります。

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乗るときの小さな習慣

閉じ込めそのものを完全に避けることはできませんが、リスクを下げる習慣はあります。

  • 揺れを感じたら、乗っている場合はすべての階のボタンを押し、最初に止まった階で降りる
  • 地震のあとや余震が続いているあいだは、エレベーターを使わず階段を使う
  • 避難のときはエレベーターを使わない(途中で停止するおそれがあります)
  • 建物に入ったら、非常階段の位置を一度は目で確認しておく
  • 小さな子どもだけでエレベーターに乗せない、または乗る前に「止まったら押しボタンで話す」と伝えておく

高層階に住んでいる方、勤めている方ほど、「エレベーターが使えない日」の影響は大きくなります。階段での上り下りを前提にした備蓄の考え方は、集合住宅の記事にまとめています。

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管理組合・ビル管理者で検討できること

建物側の対策は個人ではできませんが、知っておくと提案の材料になります。東京都は「東京とどまるマンション」に登録した既存マンションを対象に、エレベーターの閉じ込め防止対策等への補助を行っています。補助対象として案内されているのは次の機能です。

機能内容
リスタート運転機能安全装置が作動して停止したあと、安全装置が正規の状態に復帰したことを確認できた場合に、かごを最寄り階に着床させて戸を開く
自動診断・仮復旧運転機能エレベーター機器の破損等の危険性を機械的に診断し、仮復旧させる

補助率は2分の1、上限は200万円と案内されています(令和7年5月30日の報道発表時点)。あわせて、簡易トイレやエレベーター内の防災キャビネットなど防災備蓄資器材の購入費も補助の対象とされています。

リスタート運転機能・自動診断/仮復旧運転機能の内容、補助率2分の1・上限200万円、対象が「東京とどまるマンション」登録の既存マンションであることは、東京都の報道発表「エレベーター閉じ込め防止対策等への補助」にもとづきます。制度の内容・受付状況は年度によって変わるため、実際の利用にあたっては都および各自治体の最新情報をご確認ください。

こうした制度は自治体ごとに異なります。お住まいの市区町村の防災担当課や住宅担当課に「エレベーターの閉じ込め対策の助成はありますか」と尋ねてみるのが、いちばん早い確認方法です。

よくある質問

閉じ込められました。どのくらい待つ覚悟が必要ですか
一概には言えません。平常時の故障であれば保守会社が比較的短時間で到着しますが、大きな地震では同時に多数のエレベーターが停止し、道路の混乱も重なるため、順番待ちで時間がかかることがあります。消防庁と業界団体のあいだで救出活動の協力に関する覚書が結ばれていますが、それでも『すぐに来る』とは限りません。長引く前提で、水分やトイレの備えを持ち歩いておくと安心です。
非常ボタンを押しても応答がありません。どうすればよいですか
押し続けたうえで、スマートフォンで管理会社や119番に連絡します。電波が届かないこともあるため、その場合はドアを手のひらや靴で継続的に叩く、笛を吹くなど、音で存在を知らせる方法が有効です。体力を消耗しないよう、大声を出し続けるより笛や打音のほうが向きます。天井や戸から出ようとするのは避けてください。
かごの中が真っ暗になりますか
多くのエレベーターには非常灯があり、停電しても一定時間は点灯します。ただし時間には限りがあるため、小さなライトを持ち歩いていると心強くなります。スマートフォンのライトは便利ですが、連絡手段でもあるためバッテリーを消耗させすぎない配慮も必要です。
うちのマンションのエレベーターに地震時管制運転装置が付いているか、どう調べればよいですか
管理会社または管理組合に確認するのが確実です。かご内に地震時管制運転に関する表示や、地震時の運転についての掲示がある場合もあります。2009年9月28日の政令施行後に設置されたエレベーターには義務付けにより備わっていますが、それ以前の既設エレベーターは建物ごとに状況が異なります。
地震のあと、エレベーターが動いていれば使ってよいですか
できるだけ階段を使うことをおすすめします。新宿区は、発災時にエレベーターが動いていたとしても余震により停止する可能性があるため、避難の際は非常階段等の利用を推奨しています。特に避難や、余震が続いているあいだの移動では、階段を選ぶほうが安全です。
エレベーターの防災キャビネットは個人で買えますか
かご内への設置は建物の所有者や管理組合が判断するものなので、個人で購入して勝手に置くことはできません。管理組合の総会や理事会で提案する形になります。自治体によっては現物支給や補助の制度があるため、提案の際にはお住まいの市区町村の制度もあわせて調べておくと話が進みやすくなります。

今日からの一歩

エレベーターの閉じ込めに備えるチェックリスト

  • よく使う建物の非常階段の位置を確認した
  • 閉じ込め時の手順(全階ボタン・非常ボタン・待つ)を家族で共有した
  • 自力で戸をこじ開けない、天井から出ないことを家族で確認した
  • 防災ポーチにライト・モバイルバッテリー・携帯トイレを入れた
  • 自宅マンションのエレベーターに防災キャビネットがあるか確認した
  • 管理組合や管理会社に、地震時管制運転装置の有無を確認した
  • 自治体にエレベーターの閉じ込め対策の助成制度があるか調べた
  • 地震のあとは階段を使うことを家族のルールにした

エレベーターの閉じ込めは、備えれば防げるものではありません。だからこそ、備える対象は「閉じ込められないこと」ではなく「閉じ込められても大丈夫でいられること」になります。非常階段の位置を覚える、ポーチにライトを1本入れる。今日できるのはそのくらいの小さなことですが、暗いかごの中で救助を待つ時間は、その小さな備えがあるかどうかでずいぶん変わります。「もしも」を「いつも」に近づけておきましょう。

出典・参考

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