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片づける前に写真を撮る|罹災証明書と住家の被害認定のしくみ、被災直後の記録の手順

ツムギ・住まいの防災・ライフライン担当
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片づける前に写真を撮る|罹災証明書と住家の被害認定のしくみ、被災直後の記録の手順

災害で家が傷んだあと、多くの人がまずすることは「片づけ」です。濡れた畳を運び出し、割れたガラスを掃き、泥をかき出す。それは生活を取り戻すために必要な作業ですが、そのひと手間の前に、スマートフォンで数十枚の写真を撮っておくかどうかで、そのあとの手続きのしやすさが変わることがあります。この記事では、罹災証明書と住家の被害認定のしくみを内閣府の資料で確認したうえで、片づける前に家族がやっておく記録の手順を整理します。

本記事の制度の説明は、内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(令和8年6月)、「災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き」(令和7年5月)、「住家の被害認定調査における写真撮影に係る留意事項について」(令和2年7月5日事務連絡)、「罹災証明書の申請書様式の統一化について」(令和6年11月8日)、「令和8年熊本地震に係る罹災証明書の迅速な交付に向けた留意事項等について」(令和8年8月3日事務連絡)にもとづきます。罹災証明書の交付事務は各地方公共団体の自治事務であり、申請先・期限・必要書類・運用は市区町村ごとに異なります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の最新の案内を優先してください。

罹災証明書とは何か|生活再建の入口になる書類

罹災証明書(り災証明書)は、災害による被害の程度を証明する書面です。災害対策基本法第90条の2第1項では、市町村長は、被災者から申請があったときは、遅滞なく、住家の被害その他当該市町村長が定める種類の被害の状況を調査し、罹災証明書を交付しなければならないと定められています。この規定は平成25年の法改正で置かれたもので、それ以前から自治事務として交付されてきた実務を法律上に位置づけたものです。

内閣府の手引きによると、罹災証明書には世帯主、被災住家の所在地、被害の程度などを記載します。法律上、必須の証明事項は住家の被害の程度で、住家以外の不動産や家財などの動産、人的被害については、住民の利便の観点から市町村が任意に証明事項に加えることができるとされています。

何に使えるのか

罹災証明書は、それ自体がお金を支給する書類ではありません。各種の支援を申請するときの、被害の程度を示す基礎資料になります。内閣府の手引きでは、罹災証明書に基づく被災者支援策として次のような区分が示されています。

支援の形例
給付被災者生活再建支援金、義援金など
融資住宅金融支援機構の融資、災害援護資金など
減免・猶予税、社会保険料、公共料金など
現物給付災害救助法に基づく住宅の応急修理、応急仮設住宅など

このほか、勤務先や学校への届出、民間の支援メニューで提示を求められることもあります。ただし、どの制度がどの被害区分から使えるかは制度ごとに異なり、災害ごとの適用状況にも左右されます。金額や要件をこの記事で断定することはできませんので、内閣府「被災者に対する支援制度」のページで公開されているPDF「被災者支援に関する各種制度の概要」と、お住まいの自治体の案内で確認してください。

メモ

損害保険や共済は、保険会社・共済団体が独自に損害査定を行うため、罹災証明書の添付を求めないことが一般的だと内閣府の手引きは説明しています。つまり「保険の請求」と「罹災証明書の申請」は、一般的には別のルートです。ただし同じ手引きは、最近では罹災証明書の添付を前提とした民間金融商品(住宅ローン、保険)も見受けられる、とも付け加えています。仙台市も、保険金等の請求に罹災証明書の提出は原則不要としたうえで、まずは加入している保険会社等に要否を確認するよう案内しています。契約によって扱いが変わり得るということです。なお写真は保険の請求でも罹災証明書の申請でも役に立ちます。撮影は一度で済み、使い道は複数あると考えてください。

家財や車の被害は、原則として住家の被害認定に入らない

見落としやすいのがここです。内閣府の手引きのQ&Aでは、家財道具の被害は住宅の被害認定には反映されないとしたうえで、所得税の軽減等の支援措置を受けられる場合があるので税務署等に相談するよう案内しています。地盤そのものの被害についても同様で、地盤被害の影響による住宅の基礎等の損傷や機能損失は認定に反映されますが、地盤そのものは対象外です。

では家財や自動車の被害はどう扱われるかというと、市町村が独自に「被災証明書」「被災届出証明書」といった名称の書面を交付する例があります。たとえば仙台市は、建物の被害程度を証明する「罹災証明書」と、建物以外の不動産または動産(家財道具など)の被害の届出があったことを証明する「罹災届出証明書」を分けて案内しており、後者では被害の程度の調査は行わないとしています。名称も運用も自治体ごとに違うため、家財や車の被害があるときは、住家の申請とあわせて窓口で確認するのが確実です。

被害の程度は6区分|内閣府の運用指針にもとづいて判定される

被害の程度は、市町村の担当者が感覚で決めるものではありません。内閣府(防災担当)の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」に沿って、住家の損害割合を計算して判定します。本記事の執筆時点(2026年9月)で内閣府が公表している最新版は令和8年6月版です。

同指針では、住家の被害の程度を次の6区分としています。

被害の程度損壊部分の床面積の割合住家全体に占める損害割合
全壊(全焼・全流失)延床面積の70%以上50%以上
大規模半壊延床面積の50%以上70%未満40%以上50%未満
中規模半壊延床面積の30%以上50%未満30%以上40%未満
半壊延床面積の20%以上30%未満20%以上30%未満
準半壊延床面積の10%以上20%未満10%以上20%未満
準半壊に至らない(一部損壊)上記に至らないもの10%未満

いずれかの基準に達していれば、その区分と判定されます。損害割合は、屋根・柱・床・外壁・内壁・天井・建具・基礎・設備といった部位ごとに、あらかじめ定められた構成比に損傷率を掛けて足し上げる方法で算出します(この9区分は木造・プレハブの場合のもので、部位の区分は住家の構造によって異なります。非木造では「柱(又は耐力壁)」「床・梁」「外部仕上・雑壁・屋根」「内部仕上・天井」「建具」「設備等(外部階段を含む。)」の6区分が使われます)。「補修費がとても高額だから全壊」とはならず、住家全体に占める経済的被害の割合で判断される点が、直感とずれやすいところです。

6区分と損害割合の数値は、内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(令和8年6月)総則の「住家の被害の程度と住家の被害認定基準等」によります。同指針は、平成13年の認定基準策定以降、令和2年3月の「準半壊」追加、令和3年3月の「中規模半壊」追加、令和6年5月の浸水深による判定基準の策定、令和7年7月の地震に係る調査フローの見直しなど、数次にわたり改定されてきました。

調査は2段階|第1次調査と第2次調査

地震による被害の調査は、第1次調査と第2次調査の2段階で行われます。第1次調査は外観目視調査で、外観の損傷状況、住家の傾斜の計測、外から確認できる部位の損傷程度を見ます。第2次調査は、第1次調査を受けた被災者から申請があった場合に実施され、原則として申請者の立会いのもとで内部にも立ち入り、内壁・天井・床・柱・建具・設備などを確認します。

水害の場合は、木造・プレハブの戸建て1〜2階建てなら第1次調査と第2次調査の2段階、それ以外は第2次調査の1段階のみで実施されます。ただし運用指針は、外観の損傷状況および浸水深の確認が困難な住家については、第1次調査を実施せず第2次調査から実施することも考えられる、としています。風害の場合は段階を分けず、外観から一見して「全壊」と判定できる場合、および明らかに「準半壊に至らない(一部損壊)」と判断できる場合を除き、原則として被災者の立会いのもとで内部立入調査を行うこととされています。

判定結果に納得できないときの進め方には、順序があります。地震や水害で第1次調査の結果を受け取った段階なら、まず第2次調査を申請します。第2次調査は、第1次調査を実施した住家の被災者から申請があった場合に実施されるもので、内部に立ち入って部位ごとの損傷を確認するため、第1次調査とは結果が変わることがあります。そのうえで、第2次調査の結果にも納得できない点があるときに、再調査を依頼します。運用指針では、調査(地震・水害による被害の場合は第2次調査)の実施後に被災者から判定結果に関する再調査の依頼があった場合、依頼の内容を精査し、再調査が必要と考えられる点があればその点について再調査を行い、結果は理由とともに被災者に示すこととされています。

注意

応急危険度判定のステッカー(危険・要注意・調査済)は、余震などによる二次災害を防ぐために当面の使用の可否を判断するもので、被害認定調査とは目的も基準も別です。内閣府の手引きも、応急危険度判定で「危険」と判断されても被害認定で必ず「全壊」になるわけではないと説明しています。地震保険の損害調査ともまた別の調査です。3つを混同しないようにしてください。

なぜ「片づける前」なのか

内閣府は令和2年7月5日、各都道府県の担当部局長あてに「住家の被害認定調査における写真撮影に係る留意事項について」という事務連絡を出しています。そこには、市町村職員が被害認定調査を行う前に、建物の除去や被害箇所がわからないような修理、片づけをしてしまうと調査が困難になるため、あらかじめ可能な限り被災者が被害状況を写真撮影し保存しておくよう、広報を徹底してほしいと書かれています。

運用指針にも同じ趣旨の記述があります。片づけ、修理、解体、積雪などにより十分に確認できない場合は、被災者から提供を受けた写真や被災者への聞き取り結果によって損傷状況を把握することも考えられる、というものです。裏を返せば、写真がなければ「そこにあった被害」を示す手立てが減ってしまう、ということでもあります。

床上まで水が来たとき、とにかく水を出して乾かさないと家がだめになると思って、その日のうちに畳と家具を運び出してしまいました。あとから写真が要ると聞いて、慌てて撮ったのは片づいたあとの部屋の写真だけ。壁の浸水の跡は残っていたので助かりましたが、どこまで水が来たかを説明するのに苦労しました。
戸建てで暮らす読者

もっとも、被災直後に完璧な記録を残すのは難しいことです。片づけを先にしてしまったからといって、直ちに手続きができなくなるわけではありません。壁に残る浸水痕、撤去した家財、片づけの経緯のメモなど、今からでも残せるものはあります。

ただし、内閣府の手引きのQ&Aは、被害認定調査の前に取り壊しや補修を済ませてしまった場合について「住宅の損傷等を確認できなければ、被害を認定できません」と明記し、取り壊しや補修の前に市町村へ連絡するよう案内しています。どうしても調査の前に行う必要があるときは、損傷状況のわかる写真等の客観的な証拠を残しておくようにも書かれています。日々の片づけと、解体や本格的な補修とは分けて考え、後者に着手する前に必ず自治体の窓口へ相談してください。

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写真の撮り方|内閣府の留意事項に沿って

前述の事務連絡には、調査員向けの撮影上の留意点と、被災者向けの広報用チラシが添えられています。家庭で撮るときも、この考え方をそのまま使えます。ポイントは「家の外」と「家の中」の両方を撮ること、そして被害が客観的にわかるように撮ることです。

  1. 1

    安全を確保してから撮り始める

    通電火災や感電を防ぐためブレーカーを落とす、割れたガラスや落下物に注意する、ヘルメット・手袋・厚底の靴を身につける。倒壊のおそれがある建物には入らない。撮影は安全が確認できてからです。
  2. 2

    建物の外観を、可能な限り4方向から撮る

    事務連絡は「建物の全景写真は可能な限り周囲4面を撮影(4枚)」としています。敷地の都合で回れない面があっても、撮れる範囲で構いません。1枚に建物全体が入るよう、少し離れて撮ります。
  3. 3

    表札や住所がわかる写真を1枚入れる

    内閣府の令和8年8月3日の事務連絡は、写真に示された住家が申請者の居住家屋であることがわかるよう、表札を含む住家の写真の添付を求める案内文例を示しています。集合住宅なら部屋番号のわかるものを撮っておきます。
  4. 4

    浸水した場合は、深さがわかるように撮る

    令和2年7月5日の事務連絡は「メジャー等をあてて全体を写した遠景と、目盛りが読み取れる近景を撮影(2枚)」としています。どこで測るかについては別の資料になりますが、運用指針が浸水深について「玄関内、掃き出し窓等の浸水痕により測定することが考えられる」と記しているので、その場所を狙うと撮りやすくなります。メジャーがなければ、身近な物差しや、身長のわかる家族に立ってもらう方法もあります。
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    部屋ごとの全景を撮る

    被災した部屋ごとに全景を1枚ずつ。内閣府のチラシでは、玄関・リビング・和室・台所・押入といった単位で、部屋の全体がわかるように撮ることが示されています。
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    被害箇所は「引き」と「寄り」の2段構え

    被害箇所の面積割合がわかるよう、被害箇所を含む見切り範囲(壁一面など、区切りのわかる範囲)を撮り、続いて被害の程度がわかるクローズアップを撮ります。想定される撮影箇所として、内壁、床、窓、出入口、サッシ、襖、障子、システムキッチン、洗面台、便器、ユニットバスなどが挙げられています。
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    指さし確認を入れる

    どこを撮ったのか後から自分でもわからなくなるのを防ぐため、被害箇所を指さした状態で撮るのが有効だとされています。付箋にメモを書いて写し込む方法も同じ効果があります。
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    日時の設定を正しくして、順番を決めて撮る

    端末の日時設定を正確にしておくと、撮影日時が記録として残ります。最初に撮る場所と順序をあらかじめ決めておくと、あとの整理が格段に楽になります。

撮影の技術的な注意も事務連絡に挙げられています。屋外では逆光による白飛びや、明るさ不足で暗く潰れることに注意する。屋内では明るさと手ぶれに注意し、フラッシュを使うときは光の反射に注意する。枚数は「最低限の数」であり、これ以上撮っても構わないとも明記されています。迷ったら多めに撮っておくのが安全です。

片づける前に撮る写真チェック

  • 建物の外観を、可能な限り4方向から(4枚以上)
  • 表札や住所、部屋番号がわかる写真を1枚
  • 浸水があれば、メジャー等を当てて『引き』と『寄り』の2枚
  • 被災した部屋ごとの全景写真
  • 被害箇所を含む見切り範囲(壁一面など)の写真
  • 被害箇所のクローズアップ
  • 撤去する予定の家財・家電も、置かれている状態で撮っておく
  • 端末の日時設定が正しいことを確認した
  • 撮った写真をクラウドや家族のスマホにも複製した

ヒント

撮った写真は、その日のうちにクラウドや家族の端末へ複製しておくと安心です。スマートフォンが水没したり、避難中に紛失したりすると、記録ごと失われてしまいます。共有アルバムを1つ作り、家族全員が同じ場所へ入れる形にしておくと、あとで探す手間も減ります。

浸水深がなぜ大切なのか|水害の第1次調査は深さで判定する

水害の第1次調査(木造・プレハブの戸建て1〜2階建て)は、運用指針 第2編の被害認定フローによると、まず外観による判定から始まります。一見して住家全部が倒壊している、一部の階が全部倒壊している、住家全部が流失している、基礎のいずれかの辺が全部破壊し基礎直下の地盤が流出・陥没している。このいずれかに当てはまる場合は、その時点で「全壊」と判定され、浸水深を見るまでもなく調査が終わります。いずれにも当てはまらない場合に、外観の損傷状況とあわせて浸水深を把握し、深さに応じて被害の程度を判定します。これが、浸水深の写真を強くすすめられる理由です。運用指針の令和8年6月版では、水流やがれきの衝突などによる外力で外壁と建具が壊れていない場合、次のように整理されています。

浸水の深さ損害割合被害の程度
床上1.8m以上40%以上大規模半壊
床上1m以上1.8m未満30%以上中規模半壊
床上0.1m以上1m未満20%以上半壊
床上0.1m未満10%以上準半壊
床下浸水10%未満準半壊に至らない(一部損壊)

一方、津波や河川の氾濫に伴う水流やがれきの衝突などで外壁と建具が一定以上壊れている場合は別の表が使われ、床上1.8m以上で全壊、床上1m以上1.8m未満で大規模半壊、床上0.5m以上1m未満で中規模半壊、床上0.5m未満で半壊、床下浸水で準半壊に至らない(一部損壊)と判定されます。同じ深さでも区分が変わるため、外壁やサッシ、ドアが壊れている場合はその状況もあわせて撮っておくことが大切です。

なお運用指針は、浸水深は玄関内や掃き出し窓などの浸水痕により測定することが考えられるとしたうえで、スマートフォン等の撮影画像から算出した浸水深を用いることも可能と明記しています。手元の1枚が、そのまま判定の材料になり得るということです。また「床上0.1m」は巾木(はばき)の高さを目安に設定された基準で、外部から見える範囲での内部の浸水状況などから、内壁に巾木の汚損以外の損傷が生じていると判断できる場合には、床上浸水であれば半壊と判定して差し支えないとも書かれています。

メモ

この表は第1次調査の目安です。第2次調査では部位ごとの損傷を確認して判定するため、結果が変わることがあります。浸水深だけで最終的な区分が決まると考えず、内部の被害もあわせて記録しておいてください。

写真だけで判定できる場合|自己判定方式という選択肢

被害が比較的軽い場合、現地調査を待たずに手続きを進められる方法があります。内閣府が「自己判定方式」と呼ぶものです。

内閣府の令和8年8月3日付け事務連絡は、自己判定方式を「『準半壊に至らない(一部損壊)』の被害であることについて被災者が合意する場合に、被災者が撮影した写真に基づき被害区分を判定する方式(現地での被害認定調査は省略)」と定義しています。同じ定義は、令和6年11月8日の「罹災証明書の申請書様式の統一化について」にも記されています。

同事務連絡の別紙(被災者への案内文例)では、自己判定方式による判定を希望する場合に添付する写真として、次のすべてが挙げられています。

  • 住家全体の写真(可能な限り4方向すべて)
  • 損傷を受けた部位の写真

また、統一様式の通知では、写真を確認することで現地調査を経ずに被害区分を判定できる場合として、次の3つが示されています。

  • 地震の被害を受けた住家の写真から「全壊」と判定できる場合。一見して住家全部が倒壊しているような、外観から明らかなケースです
  • 水害の被害を受けた住家の写真から浸水深が確認できる場合。前章の判定表を、写真から読み取った浸水深に当てはめます
  • 申請者の合意に基づく自己判定方式による一部損壊の判定を行う場合。被害が軽微で、「準半壊に至らない(一部損壊)」であることに本人が合意できる場合です

これらは手順ではなく、それぞれ独立した3つの場合です。どれかに当てはまれば、現地調査を経ずに判定できる可能性があります。

内閣府の手引きは、自己判定方式によって調査件数を大きく減らせた例として、千葉県香取市で罹災証明書を交付した件数のうち約9割を自己判定方式で対応できたケースを紹介しています。窓口の混雑を避け、早く証明書を受け取りたい人にとって、現実的な選択肢になっているということです。

注意

自己判定方式は「準半壊に至らない(一部損壊)」で確定することへの合意が前提です。内閣府の手引きも、合意が得られない場合や、写真だけでは明らかに一部損壊と判断できない場合は、通常の現地調査を実施して判定することとしています。壁の中や床下など、外から見えない被害が気になるときは、急いで合意せず、現地調査を受ける選択も検討してください。

ヒント

自己判定方式を希望しない場合、写真の添付は必須ではありません。内閣府は全都道府県知事あての令和6年11月8日の通知(府政防第1481号)で、被災者に過度な負担とならないよう、申請時の写真や図面などの添付・提示を必須としないよう留意することを求めています。この考え方は、令和8年熊本地震に係る令和8年8月3日の事務連絡でも、自己判定方式による場合以外は写真等の添付・提示がなくとも申請可能とするよう、重ねて示されました。「写真がないから申請できない」と諦める必要はありません。ただし写真があれば、現地調査を経ずに被害区分を判定できる場合があるとも案内されています。

申請の流れと、つまずきやすいところ

  1. 1

    お住まいの市区町村の案内を確認する

    受付窓口、申請期間、必要書類、自己判定方式の可否は自治体ごとに異なります。災害後は特設ページが立つことが多いので、まず自治体の公式サイトを見ます。
  2. 2

    申請書を用意する

    内閣府は令和6年11月に罹災証明申請書の統一様式を提示しました。申請者(世帯主)の住所・氏名、罹災原因、被災住家の所在地が証明事項として必須の項目です。統一様式の記載例には「写真による被害区分の判定を希望する・希望しない」のチェック欄も示されています。
  3. 3

    本人確認書類を持っていく(なくても相談する)

    身分証明書を紛失した場合について、内閣府は本人しか知り得ない事実を口頭で確認するなど柔軟に対応するよう自治体へ求めています。手元にないときは窓口で相談してください。
  4. 4

    調査を受ける、または写真で判定してもらう

    現地調査になる場合、第2次調査や風害の調査では原則として立会いが必要です。日程調整の連絡を受けられるよう、避難先の連絡先も伝えておきます。
  5. 5

    交付された内容を確認し、必要なら第2次調査や再調査を申し出る

    地震や水害で第1次調査の結果を受け取った段階なら、まず第2次調査を申請します。内部に立ち入って部位ごとに確認するため、結果が変わることがあります。第2次調査の結果にも納得できない点があれば、その点を具体的に伝えて再調査を依頼します。いずれの場合も、感情ではなく写真と場所を示して説明すると話が早く進みます。
  6. 6

    コピーを取り、原本は保管する

    提出先が複数になることがあります。原本を渡す前にコピーやスキャンを取り、申請書の控えとあわせて保管しておきます。

申請期限については注意が必要です。内閣府の手引きは、罹災証明書の交付申請について法律上の目安の期間等はないとしたうえで、その災害と被害との関係が立証できるものか、支援措置の申請期間内か(例として被災者生活再建支援金は13か月)といった状況を踏まえて判断するよう自治体に示しています。実務上は自治体が受付期間を定めており、たとえば横浜市は原則として被災した日から6か月以内、仙台市は原則として災害発生から2か月以内と案内しています(いずれも大きな災害では延長されることがあると付記されています)。期限は自治体によって違うと考え、被災したらできるだけ早く確認してください。

調査から交付までにかかる時間も、あらかじめ知っておくと気持ちが楽になります。内閣府の手引きによると、災害発生から1週間を目安に調査方針の決定と体制構築、調査員の研修を行い、その後順次調査を開始します。1班2〜3人で1日あたり第1次調査10〜15棟程度、第2次調査3〜5棟程度が目安とされ、過去の災害対応では、発生から1か月を目安に調査を行って初回の罹災証明書を交付する事例が多いとされています。すぐに出ないのは自治体の怠慢ではなく、こうした手順を踏んでいるためです。

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平時にやっておく3つのこと

ここまでは被災後の話でしたが、実は平時にできる備えのほうが効きます。どれも週末の30分程度で終わります。

1. 家の「平常時」の写真を撮ってクラウドに置く

被害の写真は「被災後の状態」を示しますが、それが災害によるものだと説明するには「被災前の状態」がわかると心強くなります。外観を4方向から、部屋ごとの全景を1枚ずつ、そして家電や家具など高額な家財を撮っておきます。撮影の練習にもなり、いざというときに同じ構図で撮り直せば比較もしやすくなります。年に1回、防災用品の点検と同じタイミングで撮り直すと習慣になります。

平時に撮っておく写真

  • 建物の外観を4方向から(集合住宅なら玄関・ベランダ側・共用部)
  • 部屋ごとの全景(玄関・居間・寝室・台所・水回り)
  • 家電・家具など主な家財(型番のシールが写るとなお良い)
  • 屋根・外壁・基礎など、ふだん見ない場所も可能な範囲で
  • 撮影日がわかる形でクラウドの共有アルバムに保存した

2. 書類の控えとお金の備えを整える

罹災証明書の申請では本人確認書類が必要になります。保険の請求には証券番号が要ります。原本を持ち出せなかったときのために、コピーの分散保管と、スマートフォンでの撮影・クラウド保存を組み合わせておくと安心です。手続きの初動は、この「控え」があるかどうかで大きく変わります。

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3. 保険の内容を確認しておく

前述のとおり、損害保険や共済は独自に損害査定を行うため、罹災証明書とは別のルートで進むのが一般的です。水災が補償の対象か、家財も対象に入っているか、免責金額はいくらか。契約内容を知らないまま被災すると、写真を撮る優先順位も判断できません。年に1回、証券を開いて確認しておきましょう。

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よくある質問

片づけを先にしてしまいました。もう罹災証明書は取れませんか
直ちに取れなくなるわけではありません。内閣府の運用指針も、片づけや修理などで十分に確認できない場合は、被災者から提供を受けた写真や聞き取りの結果で損傷状況を把握することも考えられるとしています。壁に残った浸水痕、撤去した家財、片づけの経緯のメモなど、いま残せる記録を集めたうえで、市区町村の窓口に相談してください。ただし内閣府の手引きは、調査の前に取り壊しや補修を済ませてしまった場合について『住宅の損傷等を確認できなければ、被害を認定できません』とし、取り壊しや補修の前に市町村へ連絡するよう案内しています。解体や本格的な補修を考えているときは、着手する前に必ず窓口へ相談してください。
申請のときに写真は必ず必要ですか
自己判定方式による場合を除き、必須ではありません。内閣府は令和6年11月8日の通知(府政防第1481号)と、令和8年熊本地震に係る令和8年8月3日の事務連絡で、被災者に過度な負担をかけない観点から、申請時の写真等の添付・提示を必須としないよう自治体へ求めています。ただし写真があると、現地調査を経ずに被害区分を判定できる場合があるとも案内されています。運用は自治体で異なるため、窓口の案内をご確認ください。
自己判定方式を選ぶと、あとから区分を変えられませんか
自己判定方式は『準半壊に至らない(一部損壊)』であることに合意することが前提の方式です。合意できない場合や、写真だけでは明らかに一部損壊と判断できない場合は通常の現地調査になります。判定結果に納得できない点があるときは、地震や水害であればまず第2次調査を申請し、その結果にも納得できなければ再調査を依頼する道もありますので、迷ったら合意する前に窓口へ相談してください。取り扱いは自治体によって異なります。
家財や自動車の被害は罹災証明書に載りますか
法律上、必須の証明事項は住家の被害の程度です。家財などの動産の被害は住家の被害認定には反映されませんが、市町村が任意に証明事項に加えている場合や、『被災証明書』『被災届出証明書』など別の書面で被害の届出を証明している場合があります。名称も運用も自治体ごとに異なるため、窓口で確認してください。なお家財の損害については、所得税の軽減等の支援措置を受けられる場合があるとして、内閣府の手引きは税務署等への相談を案内しています。
応急危険度判定で『危険』の赤い紙が貼られました。全壊になりますか
必ずしもそうはなりません。応急危険度判定は、余震などによる二次災害を防ぐために当面の使用の可否を判断するもので、被害認定調査とは目的も基準も異なります。内閣府の手引きも、隣家や擁壁が倒れてきそうで危険な場合など、住家自体の被害が小さくても『危険』と判断されることがあると説明しています。
申請の期限はいつまでですか
法律上の一律の期限は定められておらず、市区町村が受付期間を定めています。たとえば横浜市は原則として被災した日から6か月以内、仙台市は原則として災害発生から2か月以内と案内しています(いずれも大規模な災害では延長されることがあります)。お住まいの自治体の案内で必ず確認し、早めに申請してください。
賃貸住宅に住んでいます。罹災証明書は誰が申請しますか
住家の被害の程度を証明する書類であるため、居住している世帯として申請するのが一般的ですが、建物の所有者と居住者のどちらがどの書類を申請するかは自治体の運用によって異なります。管理会社や大家さんへの連絡とあわせて、市区町村の窓口に確認してください。写真については、借りている側でも室内と外観を撮っておくと状況説明に役立ちます。

おわりに|30分の記録が、そのあとの数か月を支える

罹災証明書は、支援を受けるための「入口」です。そして、その入口を通りやすくするのが、片づける前に撮った数十枚の写真です。外観を4方向、表札を1枚、浸水があればメジャーを当てて2枚、部屋ごとの全景と被害箇所の引きと寄り。手順にすれば、30分ほどで撮り終わる作業です。

そして、その30分を落ち着いてこなすために効くのが、平時の準備です。家の平常時の写真をクラウドに置いておく。書類の控えを分散させておく。保険の内容を確認しておく。どれも今日の夜に始められます。「もしも」の日に何を撮ればいいかを一度知っておけば、そのときの自分は少しだけ楽になります。

制度の細部、とりわけ申請先・期限・必要書類・自己判定方式の可否は市区町村によって異なります。この記事は内閣府の資料をもとにした全体像の整理であり、最終的な手続きは、お住まいの市区町村が発表する最新の案内を優先してください。

浸水深による判定基準、6区分の損害割合、調査の段階と再調査の取り扱いは内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(令和8年6月)、写真撮影の留意事項は同「住家の被害認定調査における写真撮影に係る留意事項について」(令和2年7月5日事務連絡)、自己判定方式の定義と添付写真は同「令和8年熊本地震に係る罹災証明書の迅速な交付に向けた留意事項等について」(令和8年8月3日事務連絡)および「罹災証明書の申請書様式の統一化について」(令和6年11月8日 府政防第1481号)、制度の位置づけ・支援策の区分・調査体制の目安は同「災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き」(令和7年5月)によります。自治体の受付期間の例は横浜市および仙台市の公式ページ(2026年9月4日閲覧)によります。制度・運用は改定されることがあります。

出典・参考

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