モシモニア
防災グッズ

車に積んでおく防災グッズの選び方比較|脱出ハンマー・車載電源・防災セット・停止表示器材

ツムギ住まいの防災・ライフライン担当
・ 約32分で読めます
車に積んでおく防災グッズの選び方比較|脱出ハンマー・車載電源・防災セット・停止表示器材

家の防災グッズは少しずつそろえてきたけれど、車の中は「発炎筒と車検証だけ」という方は多いのではないでしょうか。帰省やレジャーの移動中、通勤の途中、台風や大雨で道路が渋滞したとき。車は「移動する部屋」であると同時に、道路上という特殊な場所に置かれた密室でもあります。この記事では、家に置く防災グッズとは別に「車だからこそ積んでおきたいもの」を4タイプに分けて、選ぶときの観点を比較します。特定の型番を断定的に推すものではなく、「どのタイプを、どんな基準で選ぶか」を整理するのが目的です。

ヒント

この記事にはアフィリエイト広告を含みます。紹介する商品は「選び方の目安」を示す代表的なタイプで、特定の型番を断定的に推奨するものではありません。価格・在庫・仕様は変動するため、購入前に各販売サイトの最新情報を必ずご確認ください。

車の備えは「家の備えの縮小版」ではない

非常用持ち出し袋の中身をそのまま小さくして車に積む、という発想になりがちですが、車には家にはない3つの課題があります。

1つめは、閉じ込めからの脱出です。事故や冠水で電気系統が止まると、パワーウインドウが動かず、シートベルトが外しにくくなることがあります。ドアも水圧で開かないことがあります。家の中では起こらない「出られない」という状況が、車では現実に起こり得ます。

2つめは、後続車への合図です。道路上で止まってしまったとき、危険なのは車そのものより「後ろから来る車に気づかれないこと」です。とくに高速道路では、車内や車のそばで待つこと自体が危険とされています。

3つめは、電源の自立です。車のバッテリーが上がるとエンジンがかからず、エアコンもナビも使えません。停電した家なら近所へ歩けますが、走行中の道路上では移動手段そのものを失います。

この3つに、飲料水・食料・トイレといった一般的な備えが加わる、という構造で考えると、何を積むべきかが見えてきます。飲料水や保存食、携帯トイレ、防寒具といった「車に常備したい防災用品」の一覧はJAF(日本自動車連盟)が整理しており、その中身と車中泊避難での注意点は別の記事にまとめています。この記事はそこから一歩進んで、脱出・合図・電源にかかわる装備を「どのタイプから、どんな基準で選ぶか」に絞って比較します。

車内に用意しておきたい防災用品の具体例は、JAF(日本自動車連盟)「車内に用意しておきたい防災用品とは?」にもとづきます。

あわせて読みたい

車中泊避難と車の防災|車に積んでおく備えとエコノミークラス症候群への注意

買う前に確認したい「もう車についているもの」

買い足す前に、いま乗っている車に何が備わっているかを一度確認しておきましょう。無駄な重複を避けられます。

発炎筒(非常信号用具)は装備が義務づけられている

多くの車の助手席足元などに入っている赤い筒が、非常信号用具(発炎筒)です。道路運送車両の保安基準第43条の2では、自動車には非常時に灯光を発して他の交通に警告できる非常信号用具を備えなければならないと定められています(二輪自動車、側車付二輪自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、被けん引自動車を除く)。つまり、これは「買い足すもの」ではなく「すでに積んであるはずのもの」です。

ただし、発炎筒には有効期限があります。JAF(日本自動車連盟)は、発炎筒には有効期限があり、期限を過ぎると炎が小さくなって被視認性が落ちることもあると説明しています。車検のたびに交換されるとは限らないので、置き場所と期限表示を一度確認しておくと安心です。

自動車に非常信号用具を備える義務は、e-Gov法令検索で確認した道路運送車両の保安基準(国土交通省令)第43条の2の条文にもとづきます。発炎筒の有効期限と期限切れによる被視認性の低下は、JAF(日本自動車連盟)「高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?」にもとづきます。個々の車両への適用は、車種や年式によって異なる場合があります。

三角停止板は「標準装備」とは限らない

一方、停止表示器材(いわゆる三角停止板)は、新車に標準で付いてくるとは限りません。JAFも、停止表示器材は車両に備え付けられていない場合があるとして、販売店などで購入して備えるよう案内しています。ダッシュボードの下やラゲッジの工具入れを開けて、実際に入っているかを確かめてください。

停止表示器材が車両に備え付けられていない場合があることは、JAF(日本自動車連盟)「高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?」にもとづきます。

ドアガラスの種類を確認しておく

脱出用ハンマーを買う前に確認しておきたいのが、自分の車のドアガラスの種類です。国民生活センターは、令和2年(2020年)8月20日に公表した緊急脱出ハンマーのテスト結果で、JISマークの付いた自動車用ガラスではJISマーク付近に表記があるとして、強化ガラスは「T」または「TP」、合わせガラスは「L」または「LP」と案内しています。静粛性向上のためにドアガラスに合わせガラスを採用する車種もあり、その場合は脱出用ハンマーで破砕できません。同センターの調査では、自動車を所有する5,000人のうち、自分の車のドアガラスの種類を知らない人が3,265人(65.3%)にのぼりました。

注意したいのは、「T(強化ガラス)だとわかったから必ず割れる」とは言い切れないことです。同センターの報告書は、緊急脱出ハンマーは強化ガラスを破砕できるものの合わせガラスは破砕できず、強化ガラスでもフィルムを貼った場合には破砕できない可能性がある、としています。断熱や遮光のフィルムを後から貼っている車は珍しくないので、表記の確認とあわせてフィルムの有無も見ておきましょう。また、JISマークの表記が見当たらない場合は、車の取扱説明書を確認するか、ディーラー・販売店(自動車製造事業者)に問い合わせて確かめる方法が案内されています。

注意

ドアガラスが合わせガラスの車種では、脱出用ハンマーで窓を割ることはできません。強化ガラスでも、フィルムを貼っている場合は破砕できない可能性があります。国民生活センターは消費者へのアドバイスとして、自分の車のどの箇所のガラスが破砕できる強化ガラスなのかをあらかじめ確認しておくこと、水没しても落ち着いて「シートベルトを外す」「ドアを開ける」「窓を開ける」ができるかをまず試み、窓を開けたりドアガラスを破砕したりできないときは車内外の水圧差がなくなるまで浸水するのを待ってドアを開けて脱出することを示しています。ハンマーがあれば必ず脱出できるとは考えず、まずは自分の車のガラス表記とフィルムの有無を確認してください。

ガラス種類のJIS表記(JISマーク付近に強化ガラス=T/TP、合わせガラス=L/LP)、ドアガラスの種類を知らない人が65.3%だったこと、合わせガラスは緊急脱出ハンマーで破砕できないこと、強化ガラスでもフィルムを貼った場合には破砕できない可能性があること、取扱説明書や自動車製造事業者への確認、水没時の脱出手順のアドバイスは、国民生活センター「自動車用緊急脱出ハンマーによるガラスの破砕-万が一の水没事故に備えましょう-」(令和2年8月20日公表)にもとづきます。

車内という保管場所の制約を先に押さえる

車載用品を選ぶうえで、家の備えと決定的に違うのが保管環境です。夏の車内は直射日光で高温になります。

NITE(製品評価技術基盤機構)は、令和8年(2026年)7月15日に「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」と題した注意喚起を公表し、2021年から2025年までの5年間にNITEへ通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故が2140件にのぼることを示しています。同注意喚起では、経済産業省や環境省など関係省庁が連携して呼びかけている「3つのC」、すなわち賢く選ぶ(Cool Choice)・丁寧に使う(Careful use)・正しく捨てる、そして資源循環(Correct disposal with better recycling)が紹介されています。このうち「丁寧に使う」では、高温となる場所での使用・保管を避けることが呼びかけられています。またNITEの注意喚起ポスターでは、モバイルバッテリーについて、真夏の車内や直射日光が当たりやすい窓際など高温になりやすい場所に放置しないよう案内されています。

リチウムイオン電池搭載製品の事故件数(2021〜2025年の5年間で2140件)、関係省庁が連携して呼びかけている「3つのC」の紹介、高温となる場所での使用・保管を避ける呼びかけは、NITE(製品評価技術基盤機構)の注意喚起(令和8年7月15日)および同機構の注意喚起ポスターにもとづきます。

注意

ジャンプスターターやポータブル電源、モバイルバッテリーなど、リチウムイオン電池を使う製品を「車に積みっぱなし」にする運用は、メーカーの保管温度の表示を必ず確認してください。夏場は車に置かず、出かけるときだけ積む運用に切り替える判断も現実的です。カセットボンベやスプレー缶も同様に、高温になる車内での保管は避けます。

食品や飲料水も同じです。車載を前提とした防災セットには、比較的広い温度帯に対応するとうたう保存食を組み合わせた製品もあります。買うときはパッケージの保存温度の記載を確認し、季節の変わり目に中身を点検する前提で選びましょう。

高温の影響を受けるのは電池と食品だけではありません。国民生活センターの緊急脱出ハンマーのテストでは、JIS D 5716:2016に準拠した耐熱性試験(90℃±2℃で96時間保持)を行った12銘柄のうち、4銘柄で柄の部分に変形が見られました(バッテリー内蔵の2銘柄は熱負荷による破裂の危険があるため試験対象から除かれ、乾電池式の1銘柄は乾電池を入れない状態で試験されています)。同センターは、ハンマーは手の届くところに固定して常備しつつ、変形や破損、劣化が早く進む可能性があるため直射日光が当たったり熱くなったりする場所には設置しないよう案内しています。電池が要らないから何もしなくてよい、ではなく、夏を越したら変形やひび割れがないかを見る前提で置き場所を決めましょう。

緊急脱出ハンマーの耐熱性試験(JIS D 5716:2016に準拠、90℃±2℃で96時間保持、12銘柄中4銘柄で柄に変形)と、直射日光が当たる場所・熱くなる場所には設置しないという案内は、国民生活センター「自動車用緊急脱出ハンマーによるガラスの破砕-万が一の水没事故に備えましょう-」(令和2年8月20日公表)にもとづきます。

タイプ別に比較|車に積む4タイプ

ここまでの前提をふまえ、車に積む防災グッズを4つのタイプに整理します。

タイプ主に解決する課題サイズ・重量の目安車内保管への向き不向き価格帯の目安
緊急脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)閉じ込めからの脱出手のひら〜20cm程度・100〜300g電池不要のタイプは常時積みっぱなしにしやすいが、高温で柄が変形する例もあり夏越しの点検が必要500〜3,000円前後
ジャンプスターター機能付き車載電源バッテリー上がり・電源の自立弁当箱大〜A4サイズ・0.5〜5kg多くはリチウムイオン電池搭載。夏場の積みっぱなしは避けたい6,000〜20,000円前後(ポータブル電源兼用は40,000円前後まで)
車載用の防災ポーチ・防災セット立ち往生・車中での待機A4ボックス〜小型リュック・2〜5kg中身の保存温度と点検頻度を要確認5,000〜10,000円前後
停止表示器材(三角停止板)ほか路肩まわりの装備後続車への合図・自力脱出折りたたみで20〜40cm程度温度の影響を受けにくく積みっぱなし向き1,000〜4,000円前後

価格帯はいずれも記事作成時点の一般的な流通価格からの目安で、仕様や販売店により変動します。

1. 緊急脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)

最優先で検討したいのがこれです。JAFのユーザーテスト「水没時、何を使えば窓が割れるのか」(2014年6月3日実施)では、ヘッドレスト、小銭を入れたビニール袋、スマートフォン、ビニール傘、車のキーでは窓を割ることができず、割ることができたのは脱出用ハンマー(ポンチタイプ・金槌タイプ・小型ポンチタイプの3種)だけでした。同テストでは、フロントガラスは合わせガラスのため脱出用ハンマーでも割れないこと、一部車種のドアガラスも合わせガラスを採用しているため割れない場合があることも示されています。

身近な物では窓を割ることができず、脱出用ハンマーでのみ割ることができたこと、フロントガラスや一部車種のドアガラスは合わせガラスのため割れない場合があることは、JAF(日本自動車連盟)のユーザーテスト「水没時、何を使えば窓が割れるのか」にもとづきます。

選ぶときの観点は次の4つです。

  1. 1

    シートベルトカッターが付いているか

    水圧がかかった状態や事故の衝撃でバックルが外れないことがあります。ベルトを切る刃が一体になっているタイプを選びます。
  2. 2

    座ったまま片手で取れる位置に置けるか

    運転席から手を伸ばして届く位置に固定できるか。ホルダーやマグネットで運転席まわりに付けられるタイプが扱いやすくなります。グローブボックスやトランクの奥では、いざというとき間に合いません。
  3. 3

    片手で確実に力をかけられるか

    国民生活センターは緊急脱出ハンマーを、本体のグリップ部を金槌のように握って使う「金槌タイプ」、グリップ部をピックのように握って使う「ピックタイプ」、先端をドアガラス等に押し当てて使う「ポンチタイプ」に分類しています。腕を大きく振れない狭い車内で、片手で使える形かを見ます。
  4. 4

    家族の人数と座席数に対して足りているか

    後席の家族が自力で脱出できるよう、前後で2本備える考え方もあります。

緊急脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)

広告
緊急脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)

価格の目安: 500〜3,000円前後(製品により変動)

電源が不要で軽く、車に積みっぱなしにしやすいのが利点です。国民生活センターは、JIS規格等のマークが付いた信頼できる商品を選ぶこと、シートベルトカッターが付いたものを選ぶか別途用意することをアドバイスしています。購入前に自分の車のドアガラスがT(強化ガラス)かL(合わせガラス)かとフィルムの有無を確かめておくと、過信を避けられます。積んだあとも、夏を越したら柄の変形やひび割れがないかを点検してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

2. ジャンプスターター機能付きの車載電源

バッテリー上がりでエンジンがかからない場面と、停電時にスマートフォンなどを充電したい場面の両方をカバーできるタイプです。大きく分けて、手のひらサイズでエンジン始動を主目的にした小型ジャンプスターターと、家電も動かせる容量を持ちジャンプスターター機能を兼ねるポータブル電源があります。

  1. 1

    自分の車の排気量・エンジン形式に対応しているか

    ガソリン車とディーゼル車で必要な始動電流が異なります。対応排気量の表示を必ず確認します。
  2. 2

    ピーク電流と保護機能の表示があるか

    逆接続防止や過電流保護といった安全機能の記載があるかを見ます。取扱説明書の手順どおりに接続することが前提です。
  3. 3

    容量と出力ポートが用途に合っているか

    スマートフォンの充電だけでよいのか、扇風機や電気毛布まで動かしたいのかで必要な容量が変わります。
  4. 4

    搭載電池の種類と保管温度の表示を見る

    多くはリチウムイオン電池を使いますが、近年はナトリウムイオン電池を採用した車載向けの製品も流通しています。電池の種類によって高温・低温への強さやメーカーの案内が変わるため、搭載電池の種類と、表示されている使用・保管温度の範囲を確認します。
  5. 5

    置き場所の運用を決める

    リチウムイオン電池搭載品は高温に弱いため、夏場の車内放置を避けられる運用にできるかを考えます。

メモ

ポータブル電源そのものの容量の考え方や、モバイルバッテリーとの使い分けは別の記事で詳しく整理しています。車載を前提にする場合は、それに加えて「保管温度」と「重さ(片手で持てるか)」が判断軸に加わります。

あわせて読みたい

防災用ポータブル電源・モバイルバッテリーの選び方|容量と出力の目安、後悔しない選び方

ジャンプスターター機能付き車載電源(モバイルバッテリー兼用タイプ)

広告
ジャンプスターター機能付き車載電源(モバイルバッテリー兼用タイプ)

価格の目安: 6,000〜20,000円前後(容量・対応排気量により変動)

エンジン始動とスマートフォン充電を1台でまかなえるタイプです。対応排気量の表示が自分の車に合っているか、逆接続防止などの保護機能があるかを確認しましょう。多くはリチウムイオン電池を使うため、夏場は車内に置きっぱなしにせず、出発時に積む運用が安心です。搭載電池の種類と、メーカーが示す使用・保管温度の範囲もあわせて確認してください。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

3. 車載用の防災ポーチ・防災セット

渋滞や通行止めで数時間から一晩、車内で待つことになった場合に備えるタイプです。飲料水、保存食、携帯トイレ、アルミブランケット、ライト、軍手などがコンパクトな箱やバッグにまとまっており、A4サイズのボックス型ならシート下やラゲッジのすき間に収まります。

自分で組む場合は、家の持ち出し袋の中身をそのまま移すのではなく、「車を降りて歩く可能性」を前提に選ぶのがポイントです。JAFは、車を離れて徒歩で避難する場合の携行品として、ポケットサイズのラジオ、懐中電灯、飲料500ml、軍手を基本に挙げています。

  1. 1

    中身の保存温度と使用期限を確認する

    車内は高温になるため、保存食・飲料の温度条件の記載を確認します。期限が近いものから入れ替えるローリングストックの発想で回します。
  2. 2

    携帯トイレの数を人数分そろえる

    渋滞で長時間動けない状況では、トイレが最も切実になります。目隠しのポンチョやレジャーシートも一緒に入れておくと安心です。
  3. 3

    車を降りて歩く前提の物を入れる

    歩きやすい靴、軍手、ライト、ラジオ、レインウェアを加えておきます。
  4. 4

    置き場所を家族全員が知っているか

    運転者以外も取り出せる場所に置き、シート下に固定して急ブレーキで飛び出さないようにします。

注意

車内に置いた物は、急ブレーキや衝突時に飛んでくる危険があります。硬い物・重い物はラゲッジやシート下に固定し、リアシェルフや後席の足元に無造作に置かないようにしましょう。

車載用の防災セット(コンパクトボックス型)

広告
車載用の防災セット(コンパクトボックス型)

価格の目安: 5,000〜10,000円前後(点数・人数により変動)

水・保存食・携帯トイレ・ブランケットなどが車載サイズにまとまったタイプです。ゼロから組む手間が省ける一方、中身は製品差が大きいので、携帯トイレの個数と保存食の温度条件は購入前に確認を。家族の人数に合わせて足りない分を買い足す前提で選ぶと失敗しにくくなります。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

4. 停止表示器材(三角停止板)と路肩まわりの装備

見落とされがちですが、法令が関わるのがこのタイプです。道路交通法第75条の11第1項は、故障などの理由で高速自動車国道等の本線車道や、これに接する加速車線・減速車線・登坂車線、路肩・路側帯で自動車を運転することができなくなったときは、政令で定めるところにより停止していることを表示しなければならないと定めています。表示の方法は道路交通法施行令第27条の6が定めており、夜間は夜間用停止表示器材、夜間以外は昼間用停止表示器材(トンネルの中など視界が200メートル以下の場所では夜間用)を、後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置に置くこととされています。

器材そのものの基準は道路交通法施行規則が定めています。夜間用停止表示器材(第9条の17)は、板状のものなら中空の正立正三角形の反射部または蛍光反射部を持ち、夜間に200メートルの距離から前照灯で照らしたときに赤い反射光を確認できること、路面上に垂直に設置できることなどが要件です。昼間用停止表示器材(第9条の18)は、蛍光反射部などを持ち、昼間に200メートルの距離から蛍光を確認できることが求められます。

条文が義務づけているのは「表示すること」で、常時の携行そのものを直接定める規定は置かれていません。それでも、積んでいなければ表示はできません。高速道路をたまにしか使わない家庭でも、1つ積んでおく価値があります。

停止表示器材の表示義務は道路交通法(第75条の11第1項)、表示の方法(夜間用・昼間用の区分、視界200メートル以下の場所の扱い)は道路交通法施行令(第27条の6)、器材の基準は道路交通法施行規則(内閣府令・第9条の17・第9条の18)の条文で、いずれもe-Gov法令検索で確認したものにもとづきます。具体的な適用や違反の判断は、警察など所管機関の解釈が優先されます。

そして、器材以上に大切なのが使い方です。NEXCO西日本は、高速道路で事故や故障が起きたときの対応として、ハザードランプ・発炎筒・停止表示器材で後続車への安全措置をとること、運転者と同乗者全員がガードレールの外など安全な場所へすみやかに避難すること、通報は110番・非常電話・道路緊急ダイヤル(#9910)のいずれかで行うことを案内しています。三角表示板や発炎筒は「車の後方に、無理のない範囲で設置」するもので、設置に向かうときはガードレールの外側や中央分離帯に沿って後方へ移動するよう示されています。

注意

高速道路では、車内や車のそばで待つこと自体が危険です。NEXCO西日本の案内でも、車内は安全な場所ではないとして、ガードレールの外など安全な場所への避難が求められています。表示器材の設置よりも、まず全員が安全な場所へ移ることを優先してください。

高速道路で事故・故障が起きたときの手順(ハザードランプ・発炎筒・停止表示器材による安全措置、ガードレールの外など安全な場所への避難、110番・非常電話・#9910での通報)は、NEXCO西日本「もしもの時は?緊急時の対処法」およびJAF(日本自動車連盟)の解説にもとづきます。

このタイプにあわせて検討したいのが、夜間や雨天で自分の存在を示す高視認性の反射ベスト、雪や砂利にはまったときの折りたたみスコップ、ぬかるみからの脱出に使うけん引ロープです。いずれも温度の影響を受けにくく、車に積みっぱなしにしやすい装備です。

ただし、けん引ロープは一般道でぬかるみや雪にはまったときを想定した装備です。高速道路上での自力けん引は考えず、ロードサービスに任せてください。高速自動車国道の本線車道等では最低速度が時速50キロと定められている一方(道路交通法第75条の4、同施行令第27条の3)、他の車両をけん引して通行するときの最高速度は時速30キロ(車両総重量2,000キログラム以下の車両を、その3倍以上の車両総重量の自動車でけん引する場合は時速40キロ)とされています(同施行令第12条第1項)。NEXCO西日本やJAFも、高速道路で故障したときは安全な場所へ避難したうえで、非常電話や携帯電話から救援を依頼するよう案内しています。

免許についても整理しておきます。けん引免許が必要になるのは、けん引自動車で重被けん引車(けん引されるための構造・装置を持ち、車両総重量750キログラムを超える車両)をけん引する場合です。JAFは、総重量750キログラム以下の車をけん引するときや、故障車をロープ等でけん引する場合にけん引免許は必要ないと説明しています。とはいえ免許の有無にかかわらず速度や方法の制約はあり、無理な自力けん引はかえって危険です。JAFなどのロードサービスや保険付帯のサービスを呼ぶ選択肢も、あらかじめ連絡先を控えておきましょう。

高速自動車国道等の最低速度(時速50キロ)は道路交通法第75条の4および同施行令第27条の3、けん引して通行する場合の最高速度(時速30キロ・40キロ)は同施行令第12条第1項、けん引免許を要する場合は道路交通法第85条第3項、重被けん引車の定義(車両総重量750キログラム超)は同法第51条の4第1項の条文(いずれもe-Gov法令検索で確認)にもとづきます。故障車のロープけん引にけん引免許が不要であること、および高速道路で故障したときの救援依頼は、JAF(日本自動車連盟)「運転免許にはどんな区分と種類があるのですか?」「高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?」およびNEXCO西日本の案内にもとづきます。具体的な適用や違反の判断は、警察・道路管理者など所管機関の解釈が優先されます。

三角停止板(停止表示器材・折りたたみ式)

広告
三角停止板(停止表示器材・折りたたみ式)

価格の目安: 1,000〜4,000円前後(規格・形状により変動)

高速道路等で停止したときに表示が義務づけられている器材です。折りたたみ式でラゲッジのすき間に収まり、電池も温度管理も不要なので積みっぱなしに向きます。購入時は、道路交通法施行規則が定める停止表示器材の基準(夜間用・昼間用)に適合するとの記載があるか、風で倒れにくい構造かを確認してください。設置に向かうときは後続車に十分注意します。

※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

冠水した道路には入らない、が大前提

グッズをそろえる以上に効果が大きいのは、「そもそも危険な道に入らない」という判断です。

JAFの冠水路走行テスト(2024年10月実施)では、水深30センチの区間を時速10キロで走った場合はEV・HV・ガソリン車のいずれも走り切れました。しかし時速30キロでは、3車種とも走り切れたものの、アンダーカバーやホイールカバー、牽引フックが外れたり、ボンネット内部や車内に水が浸入したりしています。水深60センチでは、時速10キロなら3車種とも走り切れた一方(ガソリン車はエアクリーナーの一部が濡れました)、時速30キロではEVで複数の警告灯が点灯し、HVとガソリン車はエアクリーナーが完全に濡れ、ガソリン車はさらに車内へ大量の水が浸入しました。時速40キロになると、HVは走行後にエンジンが停止して複数の警告灯が点灯し、ガソリン車は走り切れずに28.5メートル地点で停止しています。同テストは、走り切れたケースでもボンネット内部や車内に水が浸入した例が多かったこと、実際の冠水路は濁っていて見た目では水深を判断しにくく、マンホールが開いていたり見えない側溝があったりするため、浅く見えても進入するのは大変危険であることを指摘しています。EVについても、モーターは止まらなかったものの複数のシステム故障の警告が表示されており、「エンジンがないから大丈夫」と安易に冠水路へ進入するのは危険だとまとめられています。

冠水路走行テストの結果(水深・速度別の走行可否、車種ごとの損傷や浸水、警告灯の点灯、濁りで水深を判断しにくいこと)は、JAF(日本自動車連盟)のユーザーテスト「冠水路走行テスト」(2024年10月実施)にもとづきます。

もし水に浸かって動けなくなったら、車内にとどまらず早めに脱出することが基本です。JAFの「水深何cmまでドアは開くのか」のテストでは、後輪が浮いている状態では車外の水位が高いためドアに外から強い水圧がかかり開けられなかった一方、完全に水没して車内外の水位差が小さくなった状態では、水の抵抗で重いものの、セダンの運転席ドアもミニバンの後席スライドドアも開けることができたと報告されています。同テストは、万が一に備えて脱出用ハンマーを車内の手に届くところに常備しておくことが大切だとしています。

水没時のドア開閉テストの結果と、脱出用ハンマーを手の届く場所に常備することの重要性は、JAF(日本自動車連盟)のユーザーテスト「水深何cmまでドアは開くのか」にもとづきます。実際の状況では水位や車種、電装系の状態により結果が異なります。安全確保の判断は現場の状況と公的機関の最新情報を優先してください。

アンダーパスや立体交差の下は、周囲より低いため大雨時に水がたまりやすい場所です。国土交通省の地方整備局は道路冠水注意箇所マップを公開しており、通勤路や帰省ルートにこうした箇所がないかを事前に見ておくと、雨の日の迂回判断がしやすくなります。

あわせて読みたい

お盆の帰省・旅行先で被災したら|慣れない土地で身を守る備えと家族の安否確認

そろえる順番と置き場所の目安

一度に全部そろえる必要はありません。優先順位をつけて、季節ごとに足していくのが現実的です。

  1. 1

    1週目|いま積んである物を確認する

    発炎筒の有効期限、三角停止板の有無、ドアガラスのJIS表記(T/L)とフィルムの有無を確認します。JISマークの表記が見当たらない場合は、車の取扱説明書を確認するか、ディーラー・販売店に問い合わせます。ここまでは0円でできます。
  2. 2

    2週目|脱出用ハンマーを運転席まわりに固定する

    最も安価で、最も置き場所が重要な装備です。座ったまま片手で届く位置に付けます。
  3. 3

    3週目|停止表示器材と反射ベストを積む

    高速道路を使う機会があるなら優先度が上がります。ラゲッジの定位置を決めます。
  4. 4

    4週目|水・携帯トイレ・ブランケットを箱にまとめる

    立ち往生の待機に必要な物をひとまとめにし、シート下やラゲッジに固定します。
  5. 5

    季節の変わり目|電源系と食品を点検する

    ジャンプスターターの残量、保存食の期限、夏場の保管場所の運用を見直します。

車の防災グッズ点検リスト

  • 発炎筒(非常信号用具)の置き場所と有効期限を確認した
  • 停止表示器材(三角停止板)が車に積んであることを確認した
  • 自分の車のドアガラスの表記(T=強化/L=合わせ)とフィルムの有無を確認した
  • 緊急脱出用ハンマーを運転席から片手で届く位置に固定し、夏を越したら変形がないか点検することにした
  • 携帯トイレを家族の人数分そろえた
  • 飲料水と保存食の期限を確認し、車内の保管温度の記載を見た
  • ジャンプスターター・モバイルバッテリーの夏場の置き場所を決めた
  • 通勤路・帰省ルートのアンダーパスなど冠水注意箇所を地図で確認した
  • ロードサービスの連絡先をスマートフォンと車内メモの両方に控えた

あわせて読みたい

外出先・通勤中に大地震が起きたら|帰宅困難者の備えと「むやみに移動しない」の理由

よくある質問

三角停止板は車に積んでおく義務がありますか。
道路交通法第75条の11第1項が定めているのは、故障などで高速自動車国道等の本線車道や路肩などで運転できなくなったときに、停止していることを表示する義務です。条文上、常時の携行そのものを直接義務づける規定は置かれていません。ただし積んでいなければ表示はできないため、実質的には備えておく必要があります。具体的な適用や違反の判断は所管機関の解釈が優先されます。
脱出用ハンマーはどこに置けばよいですか。
座ったまま片手で届く位置が基本です。国民生活センターは、運転者がシートベルトに拘束されて身動きが取れなくなっても手の届くところに、安全に固定して常備するようアドバイスしています。同センターの調査では、脱出ハンマーを積載している876人のうち、運転姿勢のままで手が届くところに設置していた人は287人(32.8%)にとどまり、トランクに積んでいる人も48人(5.5%)いました。グローブボックスの奥やトランクでは、いざというときに間に合いません。後席の家族が自力で脱出できるよう、前後で2本備える考え方もあります。
ドアガラスが合わせガラスだと脱出できないのですか。
合わせガラスは脱出用ハンマーで破砕できないため、窓を割る以外の手段を考えておく必要があります。国民生活センターは、水没しても落ち着いて「シートベルトを外す」「ドアを開ける」「窓を開ける」ができるかをまず試み、窓を開けたりドアガラスを破砕したりできないときは車内外の水圧差がなくなるまで浸水するのを待ってドアを開けて脱出するようアドバイスしています。電源が生きているうちに窓やドアを開ける行動が先になります。まずは自分の車のどの箇所が強化ガラスかを、ガラスのJIS表記で確認してください。表記が見当たらないときは取扱説明書やディーラーに確認します。なお、強化ガラスでもフィルムを貼っている場合は破砕できない可能性があると同センターは指摘しており、ハンマーがあれば必ず割れるとは考えないでください。
ジャンプスターターは車に積みっぱなしにしてよいですか。
リチウムイオン電池を使う製品は高温に弱く、NITE(製品評価技術基盤機構)も高温となる場所での使用・保管を避けるよう呼びかけています。同機構の注意喚起ポスターでは、モバイルバッテリーを真夏の車内などに放置しないよう案内されています。製品の保管温度の表示を確認し、夏場は積みっぱなしにしない運用も検討してください。
高速道路で故障したら、まず何をすればよいですか。
NEXCO西日本は、ハザードランプ・発炎筒・停止表示器材で後続車への安全措置をとったうえで、運転者と同乗者全員がガードレールの外など安全な場所へすみやかに避難し、110番・非常電話・道路緊急ダイヤル(#9910)のいずれかで通報するよう案内しています。車内は安全な場所ではないとされています。表示器材の設置より、まず全員が安全な場所へ移ることを優先してください。
冠水した道路は、どのくらいの深さまでなら通れますか。
深さで線を引いて安全とみなす考え方は避けてください。JAFの冠水路走行テストでは、走り切れたケースでもボンネット内部や車内への浸水が多く見られました。実際の冠水路は濁っていて水深を判断しにくく、マンホールが開いていたり側溝が見えなかったりするため、浅く見えても進入は大変危険だと指摘されています。迂回するのが基本です。

まとめ|車の備えは「脱出・合図・電源」から

車の防災グッズは、点数を増やすことより順番が大切です。まずは今日、車に乗ったときに発炎筒の期限と三角停止板の有無、そしてドアガラスのJIS表記(見当たらなければ取扱説明書やディーラーで確認)とフィルムの有無を見てみてください。ここまでは費用ゼロでできます。そのうえで、運転席から片手で届く位置に緊急脱出用ハンマーを固定する。次に停止表示器材と反射ベスト、そして水・携帯トイレ・ブランケットの箱。電源系は保管温度と相談しながら加えていく。この順番なら、無理なく積み上げられます。

そして最後に、いちばん効くのは道具ではなく判断です。冠水した道には入らない、高速道路で止まったら車を離れて安全な場所へ移る。この2つを家族で共有しておくことが、どんなグッズよりも確実な備えになります。実際の行動は、そのときの状況と、警察・道路管理者・自治体など公的機関の最新の案内を優先してください。「もしも」の車内を、「いつも」の安心に変えていきましょう。

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事

避難・防災行動

外出先・通勤中に大地震が起きたら|帰宅困難者の備えと「むやみに移動しない」の理由

通勤中や外出先で大地震にあったら、まず何をすればいいのか。内閣府や東京都が呼びかける「むやみに移動を開始しない」という基本原則の理由と、職場・携帯品に用意しておきたい0次の備え、家族との安否確認ルールを、今日から準備できる手順に整理しました。

防災グッズ

防災用ポータブル電源・モバイルバッテリーの選び方|容量と出力の目安、後悔しない選び方

停電に備える電源は、モバイルバッテリーとポータブル電源のどちらを、どのくらいの容量で選べばよいのか迷いがちです。容量(Wh)と出力(W)の考え方、スマホ何回分の目安、世帯人数別の容量の目安を整理し、用途別に選び方をまとめました。あわせて備えたい周辺グッズも紹介します。