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わが家の耐震性を確かめる|1981年・2000年の基準の違いと、診断・補助制度・費用の目安

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わが家の耐震性を確かめる|1981年・2000年の基準の違いと、診断・補助制度・費用の目安

家具を固定し、水と食料を備え、持ち出し袋も用意した。それでも「そもそもこの家は、大きな揺れに耐えられるのだろうか」という問いだけは、なんとなく先送りにしていないでしょうか。建物そのものの強さは、家庭の防災でいちばん土台に近い部分です。そして、この問いには意外と手がかりがあります。いつ建てられた家なのか。それを調べるところから、わが家の耐震性を確かめる作業は始められます。この記事では、建築年の意味と調べ方、家族でできる簡易チェック、専門家の耐震診断の受け方、自治体の支援制度と費用の目安までを、公的資料で確認できた範囲で順に整理します。

わが家はどのくらい珍しくないのか|耐震化率の現在地

まず全体像です。国土交通省の推計では、住宅の耐震化率は令和5年時点で約90%とされています。裏を返すと、耐震性が不十分と推計される住宅は全国で約570万戸あることになります。内訳を見ると、戸建て住宅の耐震化率は約85%、共同住宅は約96%で、戸建てのほうが遅れている状況です。

住宅の耐震化率(令和5年時点で約90%、耐震性が不十分な住宅は約570万戸、戸建て住宅は約85%・共同住宅は約96%)は、総務省「住宅・土地統計調査」をもとにした国土交通省の推計です。国は令和17年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標に掲げています。

つまり、耐震性に不安のある家は決して例外ではありません。「うちだけ遅れているのでは」と気に病む必要はなく、順番に確かめていけば十分です。まずは建てた年を手がかりにします。

節目は2つ|1981年6月と2000年6月

日本の住宅の耐震性を語るとき、目印になる年月が2つあります。

1つめは1981年(昭和56年)6月です。建築基準法施行令の改正により、いわゆる新耐震基準が適用されるようになりました。この前後で、地震に対する建物の考え方が大きく変わっています。

2つめは2000年(平成12年)6月です。こちらは木造住宅に関わる節目で、柱の上下(柱頭・柱脚)をつなぐ接合金物の仕様が明確化され、壁をバランスよく配置することを確かめる方法(四分割法)などが整理されました。同じ「新耐震基準」の木造住宅でも、2000年5月までに建てられたものと、2000年6月以降のものでは、細部の仕様の考え方が異なります。

建てた時期(木造住宅の目安)位置づけ
1981年5月までいわゆる旧耐震基準。耐震診断が強くすすめられる区分
1981年6月〜2000年5月新耐震基準。ただし接合部の仕様等が明確化される前
2000年6月以降接合部の仕様等が明確化されたあとの木造住宅

この区分に意味があることは、平成28年(2016年)熊本地震の被害分析でも示されています。国土交通省が建築研究所と連携して設置した「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の報告書では、旧耐震基準の木造建築物は新耐震基準導入以降と比べて顕著に高い倒壊率だったこと、また新耐震基準導入以降でも、接合部の仕様等が明確化された2000年以降の倒壊率が低かったことが指摘されています。

熊本地震における建築時期別の被害傾向は、国土交通省が国立研究開発法人建築研究所と連携して設置した「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の報告書(2016年9月)で示され、日本建築防災協会「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法」(平成29年5月)に抜粋が収録されています。

メモ

ここでいう「建てた年」が、どの日付を指すのかは制度によって異なります。後の章で紹介する江東区や岡山市の補助制度は「昭和56年5月31日以前に着工したもの」と工事の着手日を基準にしていますが、東海市の耐震診断は「平成12年5月31日以前に建築した木造住宅」という書き方です。宅地建物取引業法施行規則も「新築の工事に着手したもの」という書き方です。建築確認を受けた日・着工した日・完成した日はそれぞれ別の日付で、竣工・入居の年ともずれます。1981年前後や2000年前後の住まいは、次の章の方法で書類にあたったうえで、申請前に自治体の案内でどの日付が基準かを確認してください。

わが家の建築年を調べる4つの方法

「たぶん昭和50年代」では判断できません。書類で確かめます。次のうち、手をつけやすいものから試してください。

  1. 1

    手元の書類を探す

    まずは自宅に保管されている建築確認済証・検査済証、設計図書一式、購入時の契約書類を探します。確認済証には確認を受けた年月日が記載されており、いちばん直接的な手がかりになります。
  2. 2

    登記事項証明書(登記簿)を取る

    法務局で建物の登記事項証明書を取得すると、表題部に新築の年月が記録されています。ただしこれは完成した時期であって、着工の時期とは一致しません。境目の年に完成した住まいでは、これだけで判断せず、確認済証や台帳記載事項証明書で着工の時期まで確かめてください。
  3. 3

    自治体の建築計画概要書・台帳記載事項証明書を確認する

    建築確認の書類が手元になくても、自治体の建築指導を担当する部署で「建築計画概要書」の閲覧・写しの交付や、「台帳記載事項証明書」の交付を受けられる場合があります。大阪市の説明では、建築計画概要書には建築主・建築場所・用途・構造・高さ・階数・各面積などの概要と完了検査等の履歴が記載され、台帳記載事項証明書は建築確認台帳等に記録された確認済証番号や検査の履歴などを証明するものとされています。ただし保存されている年次には限りがあり、たとえば大阪市では昭和48年4月1日以降の申請分を保存しているとされています。なお、この証明書の呼び方は自治体により「建築確認台帳記載事項証明書」などと異なるため、窓口では「建築確認の台帳に関する証明書」といった趣旨で尋ねると確実です。
  4. 4

    固定資産税の書類・売買時の書類を見る

    固定資産税の納税通知書に同封される課税明細書に、家屋の建築年が記載されている場合があります(様式は自治体により異なります)。中古で購入した住まいなら、契約時の重要事項説明書も確認してみてください。

なお、宅地建物取引業法施行規則では、昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除き、建物が指定確認検査機関や建築士などによる耐震診断を受けたものであるときは、その内容を重要事項として説明することとされています。売買でも賃貸でも対象になる項目なので、購入時や入居時の書類が残っていれば読み返す価値があります。

重要事項説明における耐震診断の内容の説明は、宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)に定めがあります。対象は昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く建物で、耐震診断を受けている場合にその内容が説明される、という位置づけです。

家族でできる簡易チェック|「誰でもできるわが家の耐震診断」

建築年がわかったら、次は住まいの様子を自分の目で見てみます。国土交通省住宅局が監修し、日本建築防災協会が編集している「誰でもできるわが家の耐震診断」は、専門家が扱う診断法とは別に、住んでいる人が自分で扱えるようにつくられた簡易な診断です。ウェブ上で問診に答えていく形で公開されています。

対象は1〜2階建ての一戸建て木造住宅(在来軸組構法、枠組壁工法など。店舗・事務所等を併用する住宅を含む)とされています。問診で聞かれるのは、おおむね次のような項目です。

簡易診断で問われる観点(10項目)

  • 建てたのはいつ頃か(1981年6月が目安の境目)
  • 浸水・火災・地震など大きな災害に見舞われたことがあるか
  • 増築をしているか、その際に適切な手続きを経ているか
  • 傷み具合はどうか、補修・改修をしているか
  • 建物の平面はどのような形か(整形か、複雑か)
  • 大きな吹き抜けがあるか
  • 1階と2階の壁面が一致しているか
  • 壁の配置はバランスがとれているか
  • 屋根葺材の重さと壁の多さの関係はどうか
  • どのような基礎か(鉄筋コンクリートの布基礎かなど)

「誰でもできるわが家の耐震診断」は、国土交通省住宅局の監修、一般財団法人日本建築防災協会の編集による診断です。同協会は、この診断の目的を「ご自宅の耐震性能の理解や耐震知識の習得を進めていただき、耐震性の向上を図るための耐震改修に向けて、より専門的な診断を行う際の参考にしていただくこと」と説明しています。

大切なのは、この結果が専門家の耐震診断の代わりにはならないという点です。あくまで、わが家の弱そうなところに見当をつけ、次の一歩を決めるためのきっかけです。結果がよかった場合でも「安全が証明された」ということにはなりません。

注意

簡易チェックの結果だけで、耐震改修が必要・不要と決めないでください。建物の耐震性の判定は、建築士や自治体が実施する耐震診断に委ねるべき領域です。この記事のチェックは、専門家に相談するかどうかを考えるための材料として使ってください。

1981年6月〜2000年5月の木造住宅(在来軸組構法)には、専用の検証法がある

「新耐震だから大丈夫」と言われてきたけれど、2000年より前の木造住宅である。この層のために、日本建築防災協会が「新耐震木造住宅検証法」という手順をまとめています。対象は、昭和56年6月以降・平成12年5月までに建築された木造住宅で、在来軸組構法(基礎はコンクリート造)の平屋建てまたは2階建てです。

裏を返すと、この検証法の対象から外れる住まいもあります。同協会の資料は、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)や木質系工業化住宅については1981年以降に特段の基準強化や明確化が行われていないこと、3階建て以上の木造住宅については構造計算が義務づけられていることから対象外とした、と理由まで示しています。対象外にあたる住まいで耐震性が気になる場合は、この検証法を探すのではなく、自治体の窓口や建築士に直接相談するのが近道です。

手順は2段階になっています。ステップ1は所有者自身による検証で、(1)平面および立面の形状、(2)柱頭・柱脚の接合部金物の仕様、(3)壁の配置バランス、(4)劣化状況の4点を、簡易な計算やチェックリストで確認します。ここで問題がなければ一定の目安が得られ、専門家による検証が必要と判定された場合は、ステップ2として専門家による検証に進みます。

新耐震木造住宅検証法の対象範囲と手順は、一般財団法人日本建築防災協会「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法」(平成29年5月)で示されています。同資料は、ステップ2で用いる「一般診断法に準じた方法」は専門家による現地調査を省略できる方法であるため、指針第1に定める建築物の耐震診断の指針と同等以上の効力を有する耐震診断の方法としては位置づけられていない、とも明記しています。

天井裏や床下の写真、建築時の図面が残っていると検証が進めやすくなります。押し入れの上の点検口から天井裏をのぞいてみる、床下収納を外して基礎まわりを見てみる。そうした「家を見に行く」時間をとることが、実は最初の一歩になります。

専門家による耐震診断を受ける|流れと結果の読み方

本格的に確かめるなら、建築士などの専門家による耐震診断です。日本建築防災協会がまとめている流れは、次の5段階です。

  1. 1

    耐震診断を行う

    専門家が設計図書や増改築の有無などの情報を集め、現地で建物の現況を調査したうえで耐震性能を評価します。診断結果は、住宅の劣化状況や問題点まで具体的に説明してもらいましょう。
  2. 2

    耐震改修計画を立てる

    診断結果にもとづいて、目的に応じた改修を検討します。予算・工期・改修後に求める耐震性能のレベルなど、要望をしっかり伝えて疑問を残さないようにします。
  3. 3

    耐震改修の設計を行う

    計画にもとづいて設計します。補強位置を示した平面図や写真を使った具体的な説明を受けると、納得して進められます。
  4. 4

    見積りを確認する

    工事にかかる費用を算出してもらいます。工事の内容を理解し、見積りを確認したうえで契約します。
  5. 5

    耐震改修工事を行う

    工事中の写真をしっかり残してもらうよう依頼しておくと、あとの確認や補助金の手続きで役立ちます。

診断結果は、木造住宅では「評点」という数値で示されます。目安は次のとおりです。

評点(木造の場合)評価
1.5以上倒壊しない
1.0以上1.5未満倒壊する可能性が低い
0.7以上1.0未満倒壊する可能性がある
0.7未満倒壊する可能性が高い

木造以外(鉄筋コンクリート造、鉄骨造など)では「Is値」が用いられ、0.6以上で危険性が低い、0.6未満で危険性がある、とされています。改修の目標としては、木造は評点1.0、木造以外はIs値0.6が一つの目安になります。

評点・Is値の目安と耐震診断から改修工事までの流れは、国土交通大臣指定耐震改修支援センターである一般財団法人日本建築防災協会のパンフレット「耐震改修工事費の目安」(2026年3月版)に示されています。

自治体の補助制度の探し方|多くの市区町村に用意されている

耐震診断や耐震改修には、国の支援制度を活用した自治体の補助制度があります。国土交通省が集計している「国の支援制度を活用した補助制度の整備状況」では、令和7年4月1日現在、全国1,741市区町村のうち、耐震診断の補助が受けられるのは1,495市区町村(85.9%)、戸建住宅の耐震診断に限ると1,469市区町村(84.4%)です。耐震改修では1,469市区町村(84.4%)、戸建住宅では1,445市区町村(83.0%)となっています。これは国の支援制度を使った制度に限った数字で、このほかに市区町村が独自に用意している制度もあります。

補助制度の整備状況(令和7年4月1日現在)は、国土交通省「地方公共団体における耐震改修等に対する補助制度の整備状況」によります。同資料は、地方公共団体により補助を受けられる住宅・建築物の条件が異なること、国の支援制度によらず市区町村が独自に補助制度を整備している場合があることも注記しています。

つまり、多くの地域では何らかの制度が用意されている、というのが現状です。探し方は次の3つが確実です。

  1. お住まいの市区町村のウェブサイトで「耐震診断 補助」「木造住宅 耐震」などと検索する
  2. 日本建築防災協会が公開している都道府県別の相談窓口一覧から問い合わせる
  3. 国土交通省の「住まいの耐震化」特設サイトで、診断・改修の流れと支援制度の考え方を確認する

内容は自治体で大きく違います。参考として、公表されている3つの例を並べてみます。

自治体対象と診断改修工事の補助(例)
東京都江東区昭和56年5月31日以前に着工/昭和56年6月1日〜平成12年5月31日に着工(後者は在来軸組構法に限る)の2階建て以下の木造。区に登録された診断士を無料派遣一般世帯は1/2・上限150万円、高齢者世帯は2/3・上限200万円、障害者等世帯は10/10・上限300万円
岡山市昭和56年5月31日以前に着工した木造。延べ床面積200平方メートル以下なら診断経費9万円のうち8万円を補助(自己負担1万円)全体改修は4/5・上限115万円。部分改修や耐震シェルター・防災ベッドは一般世帯1/2・高齢者等世帯4/5(いずれも上限80万円)
愛知県東海市平成12年5月31日以前に建築した木造。無料で耐震診断(昭和56年6月1日以降のものは所有者の耐震性能チェックの結果による)平成12年5月31日以前に着工した木造で、補強工事費は18/25・上限103万5千円。改修設計費の補助と合わせて最大115万円

表の内容は、東京都江東区・岡山市・愛知県東海市がそれぞれ公表している制度の説明にもとづきます。岡山市の「高齢者等世帯」は、65歳以上の方や障がい者の方が居住している世帯および収入分位25%以下の世帯とされています。東海市の改修補助は、市の無料耐震診断で判定値1.0未満と診断された住宅を、判定値1.0以上かつ0.3を加算した数値以上にする補強工事が対象です。年度や予算により内容・受付期間・申請の締切が変わるため、実際の適用可否と金額は各自治体の最新の案内で必ず確認してください。

注目したいのは東海市の例です。旧耐震だけでなく、2000年5月までに建てられた木造住宅まで、無料診断と改修工事の補助の両方の対象を広げている自治体があります。「新耐震だから制度の対象外だろう」と決めつけず、まずは自分の自治体の条件を読んでみてください。また、診断の補助と改修の補助は別のページで案内されていることが多く、診断のページだけを見て「改修の補助はない」と早合点しないことも大切です。

このほか、国の資料では、耐震改修促進税制として所得税の控除(工事に係る標準的な工事費用相当額の10%等を所得税から控除)や固定資産税の減額(120平方メートル相当部分までの税額を1年間2分の1に減額)、住宅金融支援機構によるリフォーム融資(個人向けの融資限度額1,500万円)などが整理されています。

注意

税制の適用期限や融資の金利・条件は改正・変更されます。国土交通省の資料(令和8年度)では所得税の控除は令和10年12月まで、固定資産税の減額は令和13年3月までと示されていますが、実際に使えるかどうかは、税務署・自治体・住宅金融支援機構など、それぞれの窓口の最新情報で確認してください。

費用の目安|公的な集計からわかること

いちばん気になるのが費用でしょう。日本建築防災協会のパンフレット「耐震改修工事費の目安」(2026年3月版)は、自治体の補助制度を利用した過去の事例をもとに、工事費の傾向を示しています。

木造住宅(2階建て)の耐震改修工事は、100万円以上150万円未満で行われることが最も多く、中央値は186万円、半数以上の工事が約190万円以下で行われているとされています。木造住宅(平屋建て)では、同じく100万円以上150万円未満が最も多く、中央値は140万円、半数以上の工事が約140万円以下です。ただしこの分布は、同パンフレットが「2019年度に実施した調査結果です」と明記している過去の実績で、その後の物価上昇の補正はかかっていません。

そこで同パンフレットには、耐震診断をまだ行っていない段階で延べ面積からおおよその目安を出す算定式も掲載されています。こちらは物価高騰を考慮する補正係数αを含んでおり、国土交通省の「建設工事費デフレーター」(建築補修)の2024年(暫定)の値129.4からα=1.294として計算されています。つまり、上の分布より新しい価格水準を反映した数字です。

延べ面積木造2階建ての目安(2024年の水準で補正)木造平屋建ての目安(2024年の水準で補正)
75平方メートル190万円180万円
100平方メートル230万円200万円
150平方メートル290万円250万円
200平方メートル340万円310万円

工事費の分布・中央値・延べ面積別の目安は、一般財団法人日本建築防災協会「耐震改修工事費の目安」(2026年3月版)によります。分布と中央値は同パンフレットが2019年度に実施した調査の結果(物価補正なし)、延べ面積別の目安は補正係数α=1.294(建設工事費デフレーター「建築補修」2024年暫定値)を用いた算定式による値で、基準となる年次が異なります。同パンフレットは、耐震改修工事にかかる費用は実際に耐震診断を受けて改修計画を立てないと算出できないこと、建物の状況により工事費にかなりのバラツキがあることに留意が必要であることも明記しています。

ここに自治体の補助が乗ると、実際の自己負担はさらに下がります。たとえば岡山市の全体改修(4/5・上限115万円)を当てはめれば、負担感はかなり変わってきます。数字だけを見て「うちには無理」と諦める前に、診断と補助の確認まで進める価値はあります。

「耐震改修は数百万円かかるもの」という印象が先に立って、調べる前に諦めてしまうという声はよく聞きます。実際には、全体を補強するのではなく、寝室など一部屋だけを守る部分改修や耐震シェルター、防災ベッドに補助を出している自治体もあります。予算に合わせた選択肢があることを知っておくだけでも、相談の入口はぐっと広がります。
編集部

賃貸・分譲マンションの場合の考え方

わが家が持ち家の戸建てでない場合は、話の進め方が変わります。

賃貸住宅の場合

建物の耐震改修を判断するのは所有者(貸主)です。借りて住んでいる立場でできるのは、まず建築年を知ることです。入居時の重要事項説明書を読み返す、管理会社に建物の建築年を尋ねる、といったところから始められます。そのうえで、室内の被害を減らす対策に力を注ぐのが現実的です。家具の固定、寝室の家具配置の見直し、窓ガラスの飛散防止、就寝時の足元に靴やライトを置くこと。建物そのものに手を入れられなくても、けがを減らす余地は室内に残されています。住み替えや更新のタイミングが来たら、建築年を選択の材料の一つに加えてみてください。

賃貸でもできる室内の安全対策

窓ガラス・食器棚の飛散防止|賃貸でもできる割れたガラスのけが対策

分譲マンションの場合

構造躯体は共用部分にあたるため、耐震診断や耐震改修は管理組合の議題になります。個人で進めることはできません。まずは管理組合や管理会社に、耐震診断を実施したことがあるか、その結果はどうだったかを尋ねてみるのが出発点です。国土交通省は「マンション耐震化マニュアル」を公表しており、管理組合が検討を進める際の手引きになります。

決議のルールも変わりました。令和7年に成立・公布された改正区分所有法(令和8年4月1日施行)では、共用部分の変更決議の多数決要件は原則4分の3を維持しつつ、共用部分の設置・保存の瑕疵により他人の権利などが侵害されるおそれがある場合(耐震性の不足や火災に対する安全性の不足、外壁等の剝落などが例に挙げられています)や、バリアフリー化のために必要な場合には、3分の2に引き下げられました。建替え決議は別のルールで、原則5分の4を維持しつつ、耐震性の不足・火災に対する安全性の不足・外壁等の剝落・給排水管等の腐食・バリアフリー基準への不適合という5つの客観的事由のいずれかにあたる場合に4分の3へ引き下げられています。要件の書き方が2つの制度で異なるため、「耐震性が不足していれば共用部分の変更も自動的に3分の2」と読み替えないようにしてください。

改正区分所有法(令和7年法律第47号、令和7年5月30日公布・令和8年4月1日施行)による決議要件の見直しは、国土交通省の資料「令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理」(令和7年10月26日のシンポジウム資料)で示されています。共用部分の変更が3分の2になる「一定の事由」は、共用部分の設置または保存に瑕疵があることによって他人の権利または法律上保護される利益が侵害され、もしくは侵害されるおそれがある場合とされ、建替え決議が4分の3になる「一定の客観的事由」は上記の5類型と説明されています。建替え決議の客観的事由の詳細な基準は、令和8年3月25日の法務省告示第21号(法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」に掲載)で定められています。個別の適用は管理組合として専門家に相談のうえ確認してください。

なお、共同住宅の耐震化率は令和5年時点で約96%と推計されており、戸建て住宅(約85%)より高い水準です。とはいえ個別の建物の状況は建築年や構造で異なるため、自分のマンションのことは管理組合で確かめるのが確実です。

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診断の結果を待たずに、今日からできること

耐震診断も改修も、申し込みから完了までには時間がかかります。その間も暮らしは続きます。並行して進めておきたいのが、室内の安全対策です。

寝室の背の高い家具を固定する。ベッドの頭側に倒れてくるものを置かない。窓ガラスに飛散防止フィルムを貼る。玄関までの動線に倒れやすいものを置かない。どれも、建物の強さとは別に、けがを減らす効果が期待できる対策です。建物の耐震性を確かめる作業と、室内の安全対策は、どちらかを選ぶものではなく、両方を進めるものだと考えてください。

週末にできる室内の安全対策

家具の固定と寝室の安全対策|地震のけがを減らす週末1回の作業手順

被災後の生活再建という視点では、火災保険・地震保険の内容を確認しておくことも「わが家の耐震性を確かめる」作業と地続きです。地震保険には建物の耐震性能などに応じた割引が設けられており、耐震診断の結果が役立つ場合もあります。証券を開くついでに、建築年の記載がないかも見てみてください。

財務省「地震保険制度の概要」では、地震保険の保険料の割引として、免震建築物割引(50%)、耐震等級割引(耐震等級3で50%、等級2で30%、等級1で10%)、耐震診断割引(地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法における耐震基準を満たす場合に10%)、建築年割引(昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合に10%)が示されています。割引の適用条件や必要書類は保険会社の取り扱いによるため、契約先で確認してください。

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よくある質問

1981年6月以降に建てられた家なら、耐震診断は不要ですか
不要とは言えません。熊本地震の被害分析では、必要壁量が強化された新耐震基準は旧耐震基準と比べて倒壊・崩壊の防止に有効であったと認められていますが、木造住宅では2000年6月に接合部の仕様等が明確化される前のものもあります。日本建築防災協会は、昭和56年6月から平成12年5月までに建てられた木造住宅を対象とした「新耐震木造住宅検証法」を公表しています。実際の判定は建築士や自治体の耐震診断で確認してください。
建てた年がわからないときはどう調べればよいですか
手元の建築確認済証・検査済証を探すのが最も直接的です。見つからない場合は、法務局で建物の登記事項証明書を取得して新築の年月を確認する、自治体の建築指導担当部署で建築計画概要書の閲覧・写しの交付や台帳記載事項証明書(呼び方は自治体で異なります)の交付を受ける、といった方法があります。ただし自治体が保存している年次には限りがあるため、事前に窓口へ確認してください。
家庭でできる簡易チェックの結果が悪かったら、すぐ工事が必要ですか
簡易チェックの結果だけで工事の要否は判断できません。「誰でもできるわが家の耐震診断」は、住まいの耐震性能への理解を深め、より専門的な診断を行う際の参考にすることを目的とした簡易な診断です。結果が気になった場合は、自治体の窓口や建築士に相談し、耐震診断を受けることを検討してください。
耐震改修にはどのくらいの費用がかかりますか
日本建築防災協会のパンフレット「耐震改修工事費の目安」(2026年3月版)では、木造住宅(2階建て)の耐震改修工事は100万円以上150万円未満が最も多く、中央値は186万円、半数以上が約190万円以下で行われているとされています。ただしこの分布は2019年度に実施した調査の結果で、物価上昇の補正はかかっていません。同パンフレットが物価高騰の補正係数(建設工事費デフレーターの2024年暫定値によるα=1.294)を使って示している延べ面積別の目安では、木造2階建て100平方メートルで230万円程度です。いずれにしても、実際の費用は耐震診断を受けて改修計画を立てないと算出できず、建物の状況によりかなりのバラツキがあるとされています。あくまで目安として捉えてください。
自治体の補助制度はどこで確認できますか
お住まいの市区町村のウェブサイトで「耐震診断 補助」などと検索するのが早道です。あわせて、日本建築防災協会が公開している都道府県別の相談窓口一覧や、国土交通省の「住まいの耐震化」特設サイトも参考になります。国土交通省が集計している「国の支援制度を活用した補助制度の整備状況」では、令和7年4月1日現在、全国1,741市区町村のうち1,495市区町村(85.9%)で耐震診断の補助制度が整備されています。これに含まれない市区町村独自の制度もあるため、数字にかかわらずお住まいの自治体に確認してください。対象の建築年や補助額は自治体で大きく異なります。
賃貸に住んでいます。できることはありますか
建物の耐震改修は所有者の判断になりますが、建築年を管理会社に尋ねたり、入居時の重要事項説明書を確認したりすることはできます。そのうえで、家具の固定や寝室の配置の見直し、窓ガラスの飛散防止など、室内でけがを減らす対策に力を入れるのが現実的です。住み替えのときには、建築年を選択の材料の一つに加えてみてください。

まとめ|「建てた年を調べる」から始める

わが家の耐震性を確かめる作業は、大がかりな決断から始まるわけではありません。建てた年を書類で確かめる。1981年6月・2000年6月という2つの節目と照らしてみる。簡易チェックで家の様子を見てみる。自治体のサイトで補助制度を調べてみる。ここまではすべて、費用をかけずに今週末にでもできることです。

そのうえで、耐震性の判定そのものは専門家に委ねてください。評点やIs値は、建築士による診断を経てはじめて出てくる数値です。費用の相場も、実際に診断を受けて改修計画を立てなければ確定しません。この記事の数値はすべて、公的機関や国土交通大臣指定耐震改修支援センターが公表している目安であり、わが家に当てはまる金額ではありません。

家は簡単には建て替えられません。だからこそ、いま住んでいる家のことを知っておく価値があります。備蓄も持ち出し袋も、家が無事であってはじめて使えます。建築年を調べるところから、始めてみてください。

今日からの一歩

  • 建築確認済証・検査済証・設計図書が家にないか探した
  • 登記事項証明書または課税明細書で建築年を確認した
  • 1981年6月・2000年6月の節目とわが家の建築年を照らし合わせた
  • 「誰でもできるわが家の耐震診断」で簡易チェックをしてみた
  • 市区町村のサイトで耐震診断・耐震改修の補助制度を調べた
  • 賃貸なら管理会社に、分譲マンションなら管理組合に建物の状況を尋ねた
  • 診断の結果を待つ間も、寝室の家具固定など室内の安全対策を進めた

出典・参考

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