モシモニア
災害別の対策

令和8年版防災白書「国難級の地震・津波」を家庭目線で読み解く

カエデ避難計画・防災情報担当
・ 約10分で読めます
令和8年版防災白書「国難級の地震・津波」を家庭目線で読み解く

内閣府は毎年、国の防災の取り組みをまとめた「防災白書」を公表しています。令和8年版では「国難級の地震・津波」を特集テーマに掲げ、千島海溝・日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震という3つの大規模地震を取り上げました。2026年は東日本大震災から15年、熊本地震から10年という節目の年でもあります。白書は行政や企業に向けた記述が中心の硬い資料ですが、実は「家庭に何をしてほしいか」もはっきりと書かれています。この記事では、その部分を中心に、わが家の備えを見直すヒントとして読み解きます。

令和8年版防災白書とは

防災白書は、内閣府が災害対策基本法にもとづき毎年国会に提出している年次報告書です。その年の災害対応や、国・地方公共団体の取り組み状況をまとめています。令和8年版は、特集の冒頭で次のように述べています。

メモ

「東日本大震災から15年、熊本地震から10年の節目となる本年、我が国は、地震・津波と向き合い続けてきた歩みと教訓を改めて確認し、次の災害への備えを一層確かなものにしていく必要がある。」

そのうえで、将来発生し得る大規模災害として、千島海溝・日本海溝で想定される巨大地震、甚大な被害が予測される首都直下地震、広範囲に影響が及ぶ南海トラフ地震の3つを挙げ、これらへの備えが「依然として喫緊の課題」だとしています。

特集テーマ・節目への言及・3つの地震への言及は、内閣府「令和8年版防災白書」特集の導入部分にもとづきます。

白書が家庭に期待する4つの備え

白書のなかで、家庭にとって最も具体的なのが次の一文です。

ヒント

「国民一人一人には住宅の耐震化や家具の固定、家庭備蓄、避難行動の確認など、日常に根差した具体的な備えの実践を期待したい。」

つまり白書が家庭に求めているのは、特別な準備ではなく、次の4つに整理できます。

  • 住宅の耐震化
  • 家具の固定
  • 家庭備蓄
  • 避難行動の確認

このうち耐震化について白書は、昭和56年(1981年)以前に建てられた住宅は耐震診断を受けるべきだとし、耐震改修の費用負担が大きい場合は、家全体ではなく寝室やリビングなど一部だけでも実施することを提案しています。家具の固定については「大地震では、家具は必ず倒れるものと考えて」日頃から固定や配置の見直しをするよう呼びかけています。

耐震化・家具固定の手順はこちら

家具の固定と寝室の安全対策|地震のけがを減らす週末1回の作業手順

家庭備蓄については、食料や飲料水を最低3日分、できれば1週間分、日常的に更新されるかたちで備えることが望ましいとしています。

家庭の備蓄品リストはこちら

家庭の備蓄品リスト|水・食料は3日分から1週間分を目安に無理なくそろえる

耐震化・家具固定・家庭備蓄の目安は、内閣府「令和8年版防災白書」特集第3章第4節にもとづきます。実際の耐震診断・耐震改修は、自治体の窓口や専門業者に相談してください。

なぜ「意識」より「行動」が重視されるのか

白書がとくに強調しているのが、南海トラフ地震における津波対策です。白書は「死者の約7割は津波による被害と推計されており」、避難タワーや防潮堤といった行政の対策とあわせて、「速やかに避難する意識の向上など、個人が主体的に取り組む対策を進めることにより、被害を大幅に軽減できることが見込まれている」と述べています。行政のハード整備だけでなく、一人一人が早く逃げるという行動が被害軽減に直結すると位置づけているわけです。

その背景として白書が挙げているのが「正常性バイアス」です。異常事態が起きているのに「自分は大丈夫」と無意識に過小評価してしまう心理傾向を指します。これに対して白書は、「自らの命は自らで守る」という原則に加え、「大切な人の命を守る」という意識を持ち、家族と一緒に耐震化や家具の固定に取り組むことを勧めています。

また白書は、防災を「特別な準備」から「日常に溶け込むもの」に変えていく考え方として、日常時と非常時を区別しない「フェーズフリー」を紹介しています。キャンプ道具や電気自動車の災害時活用、食品のローリングストックなどを例に挙げ、「防災意識」を意識しなくても自然と備えが実践される社会を目指すとしています。

ローリングストックの始め方はこちら

ローリングストックの始め方|「食べながら備える」を今日から回す3ステップ

正常性バイアス・フェーズフリーの考え方は、内閣府「令和8年版防災白書」特集第3章第4節にもとづきます。

この30年で家庭の備えはどう変わったか

白書は、内閣府が実施している「防災に関する世論調査」の推移も紹介しています。同種の調査は昭和57年から続けられており、令和7年調査までの間に、家庭の防災意識には次のような変化が見られるとしています。

調査項目この30年間の傾向(白書の記述にもとづく目安)
食料・飲料水等の準備をしている平成7年からの30年間で回答割合が20%以上増加
家具・家電の固定をしている平成7年からの30年間で回答割合が20%以上増加
避難場所・避難経路を決めている平成7年からの30年間で回答割合が15%程度増加
対策を行っていない平成7年からの30年間で回答割合が13%程度減少

また「自助・共助・公助のうち何に重点をおくべきか」という質問では、「自助」の回答割合は平成28年の熊本地震直後の調査で大きく増加し、その後は落ち着いたものの、現在も約3割を占めているとのことです。数字だけを見れば、多くの家庭が少しずつ備えを進めてきたことがわかります。一方で裏を返せば、対策を行っていない家庭も一定数残っているということでもあります。

世論調査の推移は、内閣府「令和8年版防災白書」特集第3章第4節2(1)にもとづきます。調査方法や設問には年による変更があり、単純比較はできない点に白書自身が言及しています。

白書の視点で、わが家を点検する

白書に書かれている項目を、家庭で点検できる形に整理しました。

令和8年版防災白書にもとづく、わが家の点検リスト

  • 自宅が昭和56年(1981年)以前の建物なら、耐震診断の相談先を確認した
  • 背の高い家具・倒れると危険な家具の固定状況を確認した
  • 食料・飲料水が最低3日分、できれば1週間分そろっているか確認した
  • 感震ブレーカー等、通電火災を防ぐ備えの有無を確認した
  • 自宅から避難する経路と、家族の集合場所を確認した
  • 地震が起きた瞬間にとる行動(低く・頭を守る・動かない)を家族で確認した

このうち感震ブレーカーについて、白書は「地震による火災の過半数は電気が原因とされている」としたうえで、内閣府が令和6年に東京圏で実施した調査では、設置している世帯は約2割にとどまると紹介しています。

避難計画の立て方はこちら

ハザードマップの見方と家族の避難計画|「いつ・どこへ・どうやって」を決める

避難のタイミングや、地震が起きた瞬間の身の守り方については、こちらで具体的に整理しています。

地震が起きた瞬間の身の守り方はこちら

地震が起きた瞬間の身の守り方|「まず低く・頭を守り・動かない」と場所別の初動

3つの巨大地震と、節目の年に

白書が扱う3つの地震のうち、千島海溝地震・日本海溝地震はいずれもマグニチュード9クラスの巨大地震として想定されています。過去6,000年間の津波堆積物からは、北海道から岩手県の太平洋沿岸で約300年から400年の間隔で巨大津波が発生してきた可能性が指摘されており、最後の発生が17世紀であることから、巨大地震・津波の発生が切迫している状況にあると推測されています。首都直下地震については、マグニチュード7クラスの地震は「いつ発生してもおかしくなく、地震の発生が切迫していると考えて防災対策を行う必要がある」とされています。南海トラフ地震は、前回の昭和東南海地震・昭和南海地震から約80年が経過しています。

いずれの地震も、発生する日時を正確に予測することはできません。だからこそ白書は、特定の地域や災害を心配するより、日頃からの備えを重ねることを繰り返し呼びかけています。2026年に熊本地方で発生した地震も、この視点を裏づけるものでした。

2026年熊本地方の地震を受けた備え点検はこちら

熊本地方の地震(2026年7月28日)を受けて|今日からできるわが家の備え点検

南海トラフ地震に関連する情報が発表されたときの対応は、こちらにまとめています。

南海トラフ地震臨時情報が出たときの対応はこちら

「南海トラフ地震臨時情報」が出たら家庭は何をする?注意・警戒でやること

千島海溝地震・日本海溝地震・首都直下地震・南海トラフ地震の想定は、内閣府「令和8年版防災白書」特集第2章の各節にもとづきます。

よくある質問

防災白書は誰が読むべきものですか。家庭には関係ないのでは
防災白書はもともと国・地方公共団体・企業向けの記述が中心ですが、令和8年版は特集のなかで国民一人一人に向けて、住宅の耐震化や家具の固定、家庭備蓄、避難行動の確認を明確に呼びかけています。行政の取り組みを知る資料であると同時に、家庭の備えの優先順位を確認する材料としても役立ちます。
令和8年版防災白書はいつ公表されたのですか
内閣府が令和8年版防災白書を公表したことは同府のウェブサイトで確認できますが、この記事の執筆時点で閣議決定日・公表日を内閣府の一次情報から確認できていません。正確な日付は内閣府「防災情報のページ」の告知でご確認ください。
『国難級』とはどのくらいの被害を意味しますか
白書の特集タイトルにある『国難級』は、千島海溝・日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震のように、国全体に甚大な影響を及ぼしうる規模の災害を指す表現として使われています。この記事の執筆時点で確認できた白書本文には、具体的な死者数などの被害想定の数値は明記されていません。被害想定の詳細な数値を知りたい場合は、内閣府防災担当が公表する各地震の被害想定報告書を確認することをおすすめします。
感震ブレーカーは必ず設置すべきですか
白書は、地震による火災の過半数は電気が原因とされていることから、感震ブレーカー等の設置を『望まれる』としています。ただし住宅の配線状況や機器の種類によって適した製品が異なるため、設置を検討する際は製品の説明書や販売店、電気工事の専門業者に確認することをおすすめします。

まとめ

令和8年版防災白書は、千島海溝・日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震という3つの巨大地震を軸に、国難級の地震・津波への備えを特集しています。そのなかで家庭に向けて示されているのは、住宅の耐震化、家具の固定、家庭備蓄、避難行動の確認という、これまでモシモニアでも繰り返し取り上げてきた基本の備えでした。目新しい特別な対策ではなく、当たり前の備えを当たり前に続けることこそが、白書が一人一人に期待していることだといえます。東日本大震災から15年、熊本地震から10年という節目の年に、まずはチェックリストの1項目からで構いません。わが家の備えを見直すきっかけにしてみてください。

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事