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メガネ・コンタクト・補聴器・入れ歯の備え|「見えない・聞こえない・噛めない」を避難生活で起こさない家庭の準備

シュン・家族・ペット防災担当
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メガネ・コンタクト・補聴器・入れ歯の備え|「見えない・聞こえない・噛めない」を避難生活で起こさない家庭の準備

メガネ、コンタクトレンズ、補聴器、入れ歯。毎日使っている人にとっては「道具」というより「体の一部」に近いものです。ところが避難の場面では、寝ている間に外していた、割れた、電池が切れた、流されたといった理由で、ある日突然「見えない・聞こえない・噛めない」が起こります。食料や水と違って避難所で配られる可能性は低く、その人に合ったものでなければ役に立ちません。この記事では、薬の備えとは別に、こうした「補助具」の備えを家庭でどう整えるかを、公的機関と業界団体の資料をもとに整理します。

なぜ「補助具」を薬と同じ列に置くのか

災害への備えというと水や食料、ライトが先に浮かびますが、視力や聴力、噛む力を道具で補っている人にとっては、その道具がないことが暮らしの土台を崩します。見えなければ避難所の掲示や配給の案内が読めず、足元の段差にも気づきにくくなります。聞こえなければ放送や呼びかけを聞き逃します。噛めなければ配られた食事を食べきれず、体力が落ちます。

しかも補助具は、薬と同じように「その人専用」です。度数、耳の形や聞こえ方、あごの形に合わせて作られているため、避難所に汎用品が届いたとしても、そのまま使えるとは限りません。だからこそ、平時に本人の手元で予備と消耗品をそろえておく必要があります。

薬とお薬手帳の備えは別の記事で詳しくまとめています。本記事では補助具に絞って進めます。

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予備メガネ|古い度数でも「見える」を確保する

メガネを使う人にとって、いちばん現実的で効果の大きい備えが「予備のメガネを用意し、置き場所を決めておく」ことです。最新の度数でなくても構いません。作り替える前の古いメガネは、避難所で掲示を読む、足元を確認する、家族の顔を見分けるといった場面では十分に役立ちます。新しく買うより先に、引き出しに眠っている古いメガネを予備に回すところから始めましょう。

置き場所は2か所を意識すると安心です。

  • 枕元: 寝ている間に地震が起きると、ふだん使っているメガネが飛ばされたり割れたりすることがあります。ケースに入れて手の届く定位置に置き、暗くても手探りで取れるようにしておきます
  • 非常用持ち出し袋: 古いメガネをケースに入れて袋に固定します。子どもがいる家庭では、子どものメガネも同じように用意します

ヒント

子どもは度数が変わりやすく、作り替えのたびに古いメガネが残ります。捨てずに「防災用」とラベルを貼って持ち出し袋へ。度数が少し合わなくても、避難先で「まったく見えない」を避けられます。作り替えのタイミングで入れ替えれば、点検の習慣にもなります。

災害のあとには、眼鏡店チェーンが無料の調整や修理、既製の老眼鏡の無償提供を行った例があります(令和6年能登半島地震では、石川・富山・新潟・福井の4県の店舗での無料調整・修理や既製老眼鏡の無償提供、補聴器用空気電池の無料配布、被災地域での移動販売車による支援活動が告知されました)。ありがたい支援ですが、いつ・どこで受けられるかは災害ごとに異なります。「支援があるから備えなくてよい」ではなく、まず家庭の予備を基本に考えておきましょう。

避難所生活ではコンタクトレンズの装用を控え、できるかぎりメガネを使うこと、復興支援作業でもコンタクトレンズを避けて保護眼鏡やゴーグルで目を守ることは、日本眼科医会「被災地での目の健康管理について」(令和元年10月18日)で案内されています。眼鏡店の支援活動の例はメガネスーパー(ビジョナリーホールディングス)の告知(2024年1月)によるもので、実施の有無や内容は災害ごと・各社ごとに異なります。

コンタクトレンズ|避難生活はメガネが基本、使い捨てを予備に

ふだんコンタクトレンズを使っている人こそ、予備メガネの備えが欠かせません。日本眼科医会は、避難所生活ではコンタクトレンズの装用を控え、できるかぎりメガネを使うよう呼びかけ、どうしても使う場合は脱着時の手指の衛生に十分配慮するよう求めています。同会の文書に理由の記載はありませんが、断水で手が洗えない、粉じんが舞う、保存液やケースの清潔を保ちにくいといった避難所の環境では、レンズの着け外しそのものが目の感染症の入り口になりやすいと考えられます。

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    メガネを「主」、コンタクトを「従」にする

    避難生活の視力はメガネで確保し、コンタクトレンズはどうしても必要なときだけ使う位置づけにします。使う場合は着け外しの前の手指の衛生に十分気を配ります。
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    予備は1日使い捨てタイプを少量

    ケア用品が要らず、洗浄液やケースの衛生を気にせずに済む1日使い捨てタイプは、避難生活との相性がよい選択です。ふだん2週間タイプなどを使っている人も、眼科で相談のうえ、予備として数日分を用意しておくと安心です。
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    ケア用品を使うなら、ふだんの正しい方法をそのまま

    2週間タイプなどを使う場合は、毎回新しい消毒液を使い、ケースは洗って乾かします。断水中に「少しの水で代用」は避けます。
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    異常を感じたらすぐ外して眼科へ

    充血、ゴロゴロした異物感、痛み、目やになどの症状が出たらレンズを外します。日本眼科医会は、症状が一晩経っても治らない場合は眼科を受診するよう案内しています。

注意

コンタクトレンズを水道水や飲料水で洗ったり保存したりしないでください。日本コンタクトレンズ協会は、水で保存するとアカントアメーバなどの微生物が付着し、目の感染症のリスクが高まると注意しています。日本眼科医会も、アカントアメーバは水道水などを介して侵入し、ケース内で増殖してレンズを介して角膜に感染すると説明しています。断水中は「コンタクトを使わず、メガネで過ごす」ことを基本にしてください。

コンタクトレンズは高度管理医療機器です。使用期間を超えて使う、寝るときに外さないといった使い方は、平時でも眼障害の原因になるとされています。避難生活で慌てて使い方を崩さないためにも、「災害のときはメガネ」と家族で決めておきましょう。

水で保存する危険、決められた期間を超えて使用した人に眼障害が多かったこと、ケースの洗浄と乾燥、消毒液を毎回交換することは、日本コンタクトレンズ協会「こんな使い方をしたらダメ」で案内されています。1日使い捨てレンズが感染を防ぐうえで有利なことは日本眼科医会「コンタクトレンズと感染症」に、目の異常を感じたらすぐ外して眼科に相談することは消費者庁の注意喚起(令和3年9月10日)に示されています。装用の可否や種類の変更は、必ず眼科医にご相談ください。

補聴器|電池・湿気・電源、そして「聞こえにくい」を伝える道具

補聴器は、本体が無事でも電池が切れれば音が止まります。備えの中心は「電源」と「湿気対策」、そして避難所で「聞こえにくいこと」を周囲に伝える道具です。

空気電池を使う補聴器の場合

補聴器の多くは、空気中の酸素を使って発電する「空気電池」(ボタン型)で動いています。この電池には扱いの癖があり、知らないと避難先で困ることがあります。

  • 予備を持ち出し袋と枕元の両方に入れる。自分の補聴器の電池の型番を、家族も分かるようにメモしておく
  • シールをはがしてから約30秒から1分待って使う。はがした直後は正常に動作しないことがある
  • シールをはがしたまま保管しない。はがした時点で消耗が始まり、性能が落ちていく
  • 冬の避難所で暖房を使う場所では、二酸化炭素の影響で電池の寿命が短くなることがある。定期的な換気が勧められている
  • 低温では電圧が下がり動作時間が短くなる。冷え込む場所では体温などで温めてから使う

空気電池のシールをはがしてから約30秒から1分後に使うこと、はがしたまま保管すると性能が劣化すること、暖房による二酸化炭素や低温の影響は、電池工業会「補聴器用空気電池の安全な使い方」によります。シールを一度はがすと使わなくても消耗することは、日本補聴器工業会「電池のこと、充電のこと」に示されています。電池のパッケージなどに表示されている使用推奨期限も、点検のときに確認しましょう。

充電式の補聴器の場合

近年増えている充電式の補聴器は、電池交換の手間がない一方で、停電すると充電できません。日本補聴器工業会は、メーカーが定めた充電器と純正のコードや電源アダプターを使うよう案内しています。持ち出し袋には専用の充電器とケーブルを入れ、モバイルバッテリーで充電できる機種かどうかを、購入した販売店に確認しておきましょう。停電が長引く可能性を考えると、モバイルバッテリー自体も家族全体の備えとして用意しておきたいところです。

湿気と乾燥ケース

補聴器の故障の原因は、汗・湿気・ホコリが代表的です。とくに耳かけ型は汗や湿気で内部が腐食しやすいとされています。大勢が過ごす避難所では汗や湿気がこもりやすく、雨の中の避難で濡れることもあります。ふだん使っている乾燥ケース(乾燥剤)を持ち出し袋に入れる、濡れたら乾いた布で拭いて乾燥ケースに入れる、という手順を家族で共有しておくと安心です。

汗・湿気・ホコリが故障の原因になること、耳かけ型は内部が腐食しやすく定期点検が勧められることは、日本補聴器工業会「補聴器お役立ちブック」に示されています。補聴器の点検や調整は、購入した販売店にご相談ください。

「聞こえにくい」を伝える道具を一緒に

補聴器があっても、避難所の放送や配給の呼びかけは聞き取りにくいことがあります。全日本難聴者・中途失聴者団体連合会は、避難所では施設管理者に聞こえにくいことを必ず伝えること、災害時・避難時用品に補聴器や人工内耳の電池、筆記用具、ホワイトボードセット、耳マークグッズなどを含めることを勧めています。東京都心身障害者福祉センターの防災マニュアルでも、補聴器や携帯電話を寝る前に枕元に置くこと、補聴器用電池の予備を準備すること、「お助けカード」などで自分から聞こえないことや知らせてほしい方法を伝えることが案内されています。

母は補聴器をしていても、後ろから呼ばれると気づきません。避難所で名前を呼ばれても分からないのではと心配で、「耳が聞こえにくいので、肩をたたいて筆談でお願いします」と書いたカードを、補聴器ケースと一緒に持ち出し袋に入れました。
離れて暮らす母と同居を始めた読者

メモ

全日本ろうあ連盟は、停電の暗闇では手話も筆談もできなくなるため、手の届くところに懐中電灯などのライトを確保するよう呼びかけています。補聴器を使う人の枕元には、電池の予備とあわせて小さなライトを置いておくと、夜間の地震でも意思疎通の手段を失いにくくなります。

避難所では聞こえにくいことを施設管理者に伝えること、災害時・避難時用品に補聴器・人工内耳の電池や筆記用具、耳マークグッズを含めることは、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会「難聴者・中途失聴者のための災害時・緊急時対応マニュアル」(2017年)に示されています。補聴器や携帯電話を枕元に置くこと、お助けカードの活用は東京都心身障害者福祉センター「耳の不自由な方のための防災マニュアル」、筆談や携帯電話の画面での意思疎通、暗闇でのライトの確保は全日本ろうあ連盟「避難所等での聴覚障害者に対する支援のお願い」によります。

入れ歯|「噛める」を守ることは肺炎を防ぐこと

入れ歯(義歯)の備えで見落とされやすいのは、「食べられない」だけでなく「口の中を清潔に保てない」ことが、体調に直結する点です。避難生活で口の中の細菌が増えると、とくに高齢者では、細菌を含んだ唾液や食べ物が誤って気管に入って起こる誤嚥性肺炎につながるとされています。

阪神・淡路大震災では、兵庫県の調査で死者6,402人のうち919人(14.35%)が震災関連死と認定されました。山形県口腔保健支援センターの資料では、関連死の死因で最も多かったのは肺炎(肺炎を含む呼吸器や消化器の関連死で24.2%)だったと紹介されています。日本歯科大学生命歯学部は、阪神・淡路大震災で高齢者や体の弱った人に起きた肺炎の多くが誤嚥性肺炎と言われている、と説明しています。

阪神・淡路大震災の死者6,402人、関連死919人(14.35%)は兵庫県「阪神・淡路大震災の死者にかかる調査について」(平成17年12月22日)によります。関連死の死因で肺炎が最も多く、肺炎を含む呼吸器や消化器の関連死が24.2%だったことは、山形県口腔保健支援センター「災害時の口腔ケア」が厚生労働科学研究の報告などを出典として紹介している数値で、本記事はその資料からの引用です。阪神・淡路大震災で起きた肺炎の多くが誤嚥性肺炎と言われていることは日本歯科大学生命歯学部「被災地での口腔ケアについて」によります。個々の健康状態については、かかりつけの歯科医師にご相談ください。

持ち出し袋に入れるもの

日本歯科医師会のWebマガジンでは、災害時に備えておきたいオーラルケア用品として、歯ブラシ、歯間ブラシやデンタルフロス、デンタルリンス(液体ハミガキ)、マウスウォッシュ、口腔用ウェットティッシュやガーゼ、入れ歯洗浄剤・ケース、紙コップなどを挙げています。歯磨き粉はすすぎに多くの水を要するため、断水時には不向きとされています。

  • 入れ歯ケース: 避難所で入れ歯を外して置く場所を確保するため。乾燥を防ぐ意味でも必要
  • 入れ歯洗浄剤: 使うには水とケースが必要。日本歯科医師会のWebマガジンは断水時は使用できないとしているため、水が確保できるときに使い、断水中は口腔用ウェットティッシュやガーゼで汚れを拭き取る方法に切り替える
  • 義歯安定剤: ふだん使っている人は、いつもの製品を少量
  • 口腔用ウェットティッシュ、液体ハミガキ、歯ブラシ、紙コップ
  • 予備の入れ歯: 作り替えた古い入れ歯が手元にあれば、使えるかどうかを歯科医師に相談したうえで予備に回す

注意

山形県の資料は、入れ歯を外して寝ている間に災害が起きて避難する場合、入れ歯を忘れずに持ち出すよう呼びかけています。入れ歯がないと食べることも話すことも難しくなります。寝る前に外した入れ歯は、ケースごと枕元の決まった場所に置き、避難のときに持ち出す習慣にしましょう。ティッシュにくるんで置くと、避難所でゴミと間違えて捨てられるおそれがあるとも案内されています。

水が少ないときの口腔ケア

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    約30mLの水で歯をみがく

    コップに約30mL(大さじ2杯程度。日本歯科医師会の資料ではペットボトルのキャップ2杯程度と案内)の水を用意し、歯ブラシを濡らしてみがきます。歯ブラシが汚れたら、そのつどティッシュなどで拭き取ってからみがき続けます。最後に残りの水を2〜3回に分けてすすぎます。
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    液体ハミガキなら、すすぎの水を減らせる

    約10mLを口に含んで20秒ほどすすいで吐き出し、そのあと歯ブラシでみがきます。水ですすぐ必要はないとされています。
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    入れ歯は食後に外して汚れを落とす

    歯磨き粉をつけず、水で濡らした歯ブラシでみがきます。水がなければ、濡らしたガーゼやティッシュで拭き取ります。夜はできれば外して、あごの粘膜を休ませます。
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    外した入れ歯は乾かさない

    入れ歯は乾燥すると劣化するため、水が確保できれば水を入れたコップやケースに、難しければ少し湿らせたハンカチなどにくるんで保管します。
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    唾液を出す工夫も

    よく噛んで食べる、耳の下やあごの下をさするマッサージ、口や舌を動かす体操は、口の中を清潔に保つ唾液の分泌を促すとされています。

約30mLの水での歯みがきと液体ハミガキの使い方は日本歯科医師会のWebマガジン「知っておこう!災害時のセルフケア」、備えておきたい用品のリスト、歯磨き粉が断水時に不向きなこと、入れ歯洗浄剤が断水時には使用できないことは同「備えておこう!災害時に役立つオーラルケア用品」(監修は危機管理教育研究所代表ほか)によります。約30mLが大さじ約2杯にあたることは山形県口腔保健支援センターの資料の表記です。入れ歯を歯磨き粉なしで洗う方法、水がないときはガーゼで拭く方法、夜間に外すことは日本歯科大学生命歯学部の資料、入れ歯の乾燥を防ぐ保管方法と持ち出しの注意は山形県口腔保健支援センターの資料、食後の入れ歯の手入れと入れ歯ケース・洗浄剤の備えは新潟県「災害時の口腔ケアについて」によります。入れ歯の調整や不具合は自己判断で削ったりせず、歯科医師にご相談ください。

能登半島地震の支援にあたった石川県歯科医師会の会長は、日本歯科医師会のWebマガジンで、多くの被災者が「水が使えないから歯をみがけない」と考えていたこと、プライバシーが確保されない避難所では入れ歯を外すことに抵抗を感じて管理が不適切になる例が多く見られたこと、入れ歯洗浄剤が使えない状況でも義歯の汚れを拭き取るなどのケアが大切であることを話しています。持ち出し袋にケースと拭き取り用のウェットティッシュやガーゼ、水が使えるときのための洗浄剤があるだけで、「外して手入れする」を続けやすくなります。

口腔ケアの道具そのものの比較は、衛生グッズの記事で扱っています。

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災害時の衛生・清潔グッズの選び方比較|断水でも体・口・手を清潔に保つ道具

避難所で伝える・支援を受ける

補助具を使う人が避難所に着いたら、受付で「配慮してほしいこと」を早めに伝えることが大切です。見えにくい、聞こえにくい、入れ歯を外して洗う場所がほしい、といった要望は、外見からは分かりません。伝えなければ、放送や掲示が届かないまま過ごすことになります。

内閣府の取組指針は、市町村に対し、要配慮者が必要とする育児・介護・医療用品などの備蓄または調達体制の構築を検討しておくよう求めています。また避難所運営のガイドラインでは、避難所の健康管理の対策項目として、正しい口腔ケアの周知・指導を実施することが挙げられています。つまり、避難所側にも要配慮者を支える枠組みはあります。ただし、その人専用の補助具までは用意されていない前提で、家庭の備えを基本にしておくのが現実的です。

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    受付で伝える

    世帯の人数とあわせて、視力・聴力・入れ歯などで配慮してほしいことを伝えます。あらかじめカードに書いておくと、混雑した受付でもスムーズです。
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    周囲の人にも一言お願いする

    放送があったら教えてほしい、配給のときに声をかけてほしい、といった具体的なお願いをしておきます。本人の同意のうえで、隣のスペースの人にも伝えておくと安心です。聴覚障害者災害救援中央本部のリーフレットも、支援する側に対して、放送された内容を紙に書いて掲示するなど文字や絵などの視覚的な情報で伝えるよう求めています。運営側にこのリーフレットの存在を伝えるのも一つの方法です。
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    支援の情報を集める

    眼科医会や歯科医師会、聴覚障害者の団体は、災害時に避難所を巡回して診療や物資の支援を行うことがあります。自治体の案内や避難所の掲示に注意し、必要なものは遠慮せず相談します。

要配慮者が必要とする育児・介護・医療用品の備蓄または調達体制の検討は内閣府「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定)、正しい口腔ケアの周知・指導は内閣府「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン」(令和6年12月改定)の対策項目によります。避難所で自分から「聞こえない」ことや伝えてほしい方法を伝えることは、東京都心身障害者福祉センターや全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の資料で勧められています。放送内容を紙に書いて掲示するなど視覚的な情報で伝えることは、聴覚障害者災害救援中央本部(全日本ろうあ連盟ほか)「災害時・聴覚障害者への支援のためのリーフレット」によります。

避難所での生活全般の過ごし方は、こちらの記事で整理しています。

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家族ごとのチェックリストと年1回の点検

補助具の備えは、家族の誰が何を使っているかで中身が変わります。「うちの場合」を書き出すところから始めましょう。

メガネ・コンタクトを使う家族

  • 古いメガネをケースに入れて持ち出し袋へ(子どもの分も)
  • 枕元にメガネケースの定位置を決めた
  • コンタクトの人は1日使い捨てタイプの予備を数日分(眼科に相談のうえ)
  • 『災害のときはメガネ』を家族で共有した
  • メガネの度数(処方)の控えをスマホに写真で残した

補聴器を使う家族

  • 空気電池の予備を持ち出し袋と枕元の両方に。型番を家族もメモした
  • 充電式なら専用充電器・ケーブルを持ち出し袋に。モバイルバッテリーで充電できるか販売店に確認した
  • 乾燥ケース(乾燥剤)を持ち出し袋に入れた
  • 『聞こえにくいので筆談で』と書いたカードと筆記用具、小さなライトを用意した
  • 補聴器と携帯電話は寝る前に枕元に置く習慣にした

入れ歯を使う家族

  • 入れ歯ケースと入れ歯洗浄剤を持ち出し袋に入れた
  • 義歯安定剤(使っている人)、液体ハミガキ、口腔用ウェットティッシュ、紙コップを入れた
  • 寝る前に外した入れ歯はケースごと枕元の定位置に置くと決めた
  • 古い入れ歯を予備にできるか、かかりつけの歯科医師に相談した
  • 水が少ないときの歯みがきと入れ歯の手入れの方法を本人と共有した

点検は「防災週間」に、少なくとも年1回

日本歯科医師会のWebマガジンでは、オーラルケア用品を複数の場所に分散して保管し、半年に1度は使用期限などを確認するよう勧めています。本記事では、続けやすさを優先して「少なくとも年1回、できれば半年に1度」を目安に提案します。補助具の備えも用意したまま放置すると、電池の使用推奨期限が過ぎていたり、洗浄剤が固まっていたり、子どものメガネがすっかり合わなくなっていたりします。

毎年9月1日の防災の日を含む防災週間など、家族で決めた日に、次の3点を確認しましょう。

  1. 消耗品の期限: 空気電池の使用推奨期限、入れ歯洗浄剤やケア用品の期限、使い捨てコンタクトの期限
  2. 予備の「合い具合」: 予備メガネの度数が大きく変わっていないか、古い入れ歯が使えるか。作り替えのたびに、外した旧品を予備へ回す
  3. 伝える道具: カードの内容、連絡先、家族の状況の変化(新しく補聴器を使い始めた、など)

ヒント

点検日を、薬の期限や持ち出し袋の食品の入れ替えと同じ日にまとめると忘れにくくなります。高齢の親が離れて暮らしている場合は、帰省のときに一緒に持ち出し袋を開けて、補助具の予備が入っているかを確かめる時間を取ってみてください。

よくある質問

予備のメガネは新しく作るべきですか
まずは作り替える前の古いメガネで十分です。度数が少し合わなくても、避難所で掲示を読む、足元を確認するといった目的には役立ちます。古いメガネがない場合や、度数の変化が大きい場合は、眼鏡店や眼科に相談して予備を作ることも検討してください。
避難所でコンタクトレンズは使えませんか
日本眼科医会は、避難所生活ではコンタクトレンズの装用を控え、できるかぎりメガネを使うよう呼びかけています。避難所では手指やケースの衛生を保ちにくく、目の感染症のリスクが高まると考えられるためです。どうしても使う場合は着け外しの前の手指の衛生に十分気を配り、水道水や飲料水でレンズを洗ったり保存したりしないでください。異常を感じたらすぐ外して眼科を受診しましょう。
補聴器の電池は何個くらい備えればよいですか
電池の持ちは機種や使い方で大きく異なるため、一律の目安はありません。ふだん1個で何日使えるかを確かめ、食料や水の備蓄の目安としてよく示される「できれば1週間分」と同じ期間で必要な数を逆算しておくのが現実的です(備蓄の目安は家庭の備蓄品リストの記事で扱っています)。パッケージに表示された使用推奨期限を守り、シールをはがさずに保管してください。充電式の場合は専用充電器と、モバイルバッテリーで充電できるかの確認が備えの中心になります。
入れ歯を外して寝る習慣がなくても大丈夫ですか
日本歯科大学生命歯学部の資料では、入れ歯とあごの粘膜の間で細菌が増えて炎症を起こすことがあると説明され、できれば夜間は外すことが勧められています。新潟県の資料でも、夜寝るときは入れ歯を外すよう案内されています。ただし個々の状態によるので、外して寝るべきかどうかや、避難生活での扱いはかかりつけの歯科医師にご相談ください。少なくとも、食後に外して汚れを落とすことは続けましょう。
避難所で補助具の支援は受けられますか
眼科医会や歯科医師会、聴覚障害者の団体、眼鏡店などが、災害時に避難所の巡回や物資の提供を行った例はあります。ただし、いつ・どこで受けられるかは災害ごとに異なり、その人専用の補助具がすぐ届くとは限りません。受付で配慮してほしいことを伝え、自治体の案内や避難所の掲示で支援の情報を確かめつつ、家庭の備えを基本に考えてください。

まとめ|「見える・聞こえる・噛める」を家庭で守る

補助具の備えは、高価な防災グッズをそろえる話ではありません。引き出しに眠っている古いメガネをケースに入れる、補聴器の電池をひとパック多めに買う、入れ歯ケースと洗浄剤を持ち出し袋に足す。この程度の小さな行動で、避難生活での「見えない・聞こえない・噛めない」をかなり防げます。

今日できる一歩

  • 古いメガネを1本、ケースに入れて持ち出し袋へ
  • 補聴器を使う家族の電池の型番を聞いて、予備をひとパック用意する
  • 入れ歯ケースと入れ歯洗浄剤を持ち出し袋に入れる
  • 『聞こえにくいので筆談で』などのカードを1枚書く
  • 防災週間に家族の補助具を点検する日をカレンダーに入れる

補助具の予備を入れる持ち出し袋の全体像は、チェックリストの記事で見直せます。

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非常用持ち出し袋の中身チェックリスト|最初の一晩をしのぐための必需品と選び方

補聴器の電池など消耗品をどのくらい用意するかは、水や食料の備蓄の目安(最低3日分、できれば1週間分)を扱った記事が参考になります。

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高齢の家族の備え全体は、シニアと暮らす家庭の防災の記事にまとめています。補助具の備えを、その一部として組み込んでみてください。

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出典・参考

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