耐火金庫・耐火バッグの選び方比較|JIS S 1037の「30分・1時間・2時間」の読み方と、通帳・権利証の原本を家で守る4タイプ


非常用持ち出し袋を整えて、書類のコピーも防水ケースに入れた。そこでふと気になるのが、家に置いたままの原本です。不動産の権利関係の書類、保険証券、ふだん使わない通帳や実印、子どもの写真のアルバム。避難のときにすべてを持ち出すのは現実的ではなく、留守中や夜間に火災が起きれば、持ち出す機会そのものがありません。
そうした「家に残すもの」を火から守る道具が、耐火金庫や耐火バッグです。ただ、価格は千円台から10万円前後まで幅があり、「2時間耐火」「PR・2TKS」「耐熱〇〇℃」といった表示の意味がわからないまま選んでしまいがちです。この記事では、耐火金庫の日本産業規格であるJIS S 1037と、金庫の業界団体である日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会(以下、日セフ連)の公開資料をもとに、表示の読み方と家庭で選ばれている4タイプを比べます。
ヒント
まず線引き|持ち出すもの、家で守る原本、データで残すもの
耐火金庫は「避難のときに持って出る道具」ではありません。持ち出せなかったときに、家の中で中身を待たせておく道具です。だからこそ、最初に「何を持ち出し、何を家に残すか」を分けておくと、必要な容量やタイプが決まります。
| 分け方 | 例 | 守り方 |
|---|---|---|
| 持ち出すもの | 本人確認書類のコピー、当座の現金、常備薬、ふだん使う通帳やキャッシュカード | 持ち出し袋や日常のバッグへ。雨から守るなら防水ケースに入れる |
| 家で守る原本 | 登記識別情報通知や登記済証(いわゆる権利証)、保険証券、各種の契約書、ふだん使わない通帳、実印 | 耐火金庫などにまとめる。コピーや証券番号の控えは別の場所へ |
| 替えのきかない思い出 | 写真プリント、手紙、子どもの作品 | 耐火保管とあわせて、写真に撮ってデジタルでも残す |
| データ | 写真データ、書類をスキャンしたファイル | 一般紙用の耐火金庫には頼らず、クラウドや離れた場所に複製する |
原本を守る意味は、なくしたときの手間を考えるとわかりやすくなります。たとえば法務局の案内では、登記識別情報を紛失などで提供できない場合、登記官による事前通知や、司法書士などの資格者が本人確認をした旨の書類を出す方法など、別の手段で本人確認を行う必要があるとされています。資格者に本人確認情報を作ってもらう場合は手数料がかかることもあります。手続きの道は残されていますが、ふだんから原本を守っておくほうが、いざというときの負担は小さくなります。
登記識別情報を提供できない場合の本人確認手続き(事前通知、資格者による本人確認情報の提供など)は、法務局「登記識別情報を紛失したなどの理由により、登記申請の際に登記識別情報を提供することができない場合はどうしたらよいのですか?」によります。個別の手続きは、管轄の法務局や司法書士にご確認ください。
コピーの分散保管や、お金と書類の備えの全体像は別の記事にまとめています。この記事では「家に残す原本を火から守る道具」に絞ってお読みください。
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JIS S 1037の読み方|「177℃」「2時間」「KS」の意味
規格の現状
耐火金庫の日本産業規格は、JIS S 1037「耐火金庫」です。日本規格協会の履歴によると、1966年に制定され、直近では2020年3月23日に改正、2024年10月21日に確認されています。日セフ連の解説によると、2020年の改正では、耐破壊試験に関わる部分として本体枠や扉枠の板厚、四隅の溶接構造などの規定が加えられました。
以下で紹介する耐火試験の数値は、2013年版の規格本文と、日セフ連が現在公開している耐火金庫の解説で確認できる内容です。
保管物による区分|紙用とデータ用は別物
JIS S 1037は、まず「何を守る金庫か」で区分しています。
| 記号 | 区分 | 合格の条件(庫内) |
|---|---|---|
| P | 一般紙用 | 加熱試験中と炉内冷却中、内部温度がいずれも177℃以下。庫内の新聞紙の変色・劣化などが著しくなく、判読できる |
| F | フレキシブルコンピュータディスク用 | 加熱試験中と炉内冷却中、内部温度が52℃以下、かつ内部湿度が80%以下 |
家庭向けとして売られている耐火金庫の多くは、紙を守る一般紙用です。177℃という数字は「紙が判読できる状態で残るか」を見るための基準で、データ媒体を守るための基準はこれとは別に定められています。この違いは後の「見落としやすいこと」で詳しく触れます。
耐火時間|炉をどれだけ加熱するかの区分
耐火時間は、30分・1時間・2時間・3時間・4時間の5区分です。試験では、規格が定める標準温度曲線に沿って加熱炉の温度を上げていきます。2013年版の規格本文の表では、加熱開始から各時間の炉内温度が次のように定められています。
| 区分 | 記号 | 加熱時間 | その時点の炉内温度(標準温度曲線) |
|---|---|---|---|
| 30分耐火 | 0.5T | 30分 | 843℃ |
| 1時間耐火 | 1T | 60分 | 927℃ |
| 2時間耐火 | 2T | 120分 | 1,010℃ |
| 3時間耐火 | 3T | 180分 | 1,052℃ |
| 4時間耐火 | 4T | 240分 | 1,093℃ |
メモ
「KS」=急加熱・耐衝撃|床が抜けて落ちる場面を想定
記号の末尾に「KS」が付くのは、通常の加熱試験に加えて「急加熱・衝撃落下併用試験」にも合格した一般紙用の金庫です。日セフ連の解説によると、この試験では、あらかじめ1,090℃以上に熱した炉に金庫を入れて急加熱し、破裂がないことを確かめたうえで、9.1メートルの高さから落下させます。その後、金庫を逆さにして炉に戻し、再び加熱します。試験後に施錠状態が保たれ、庫内の新聞紙が判読できることが条件です。
日セフ連はこの落下試験を「床落ち対策」と説明しています。火災で床が焼け落ち、金庫が階下へ落ちる場面を想定したものです。2階に置く予定がある家庭や、火災と地震の両方を考えたい家庭では、KSの有無が比較のポイントになります。
型式記号の読み方|「PR・2TKS」を分解する
日セフ連の一覧表や金庫の表示では、区分を組み合わせた記号が使われます。
| 記号の部分 | 意味 |
|---|---|
| P / F | P=一般紙用、F=フレキシブルコンピュータディスク用 |
| R / N | R=リロッキング機能付き、N=リロッキング機能なし |
| 0.5T〜4T | 耐火時間(0.5T=30分、1T=1時間、2T=2時間など) |
| KS | 急加熱・衝撃落下併用試験にも合格(一般紙用のみ) |
たとえば「PR・2TKS」は、一般紙用・リロッキング機能付き・2時間耐火・急加熱・耐衝撃という意味です。「PN・1T」なら、一般紙用・リロッキング機能なし・1時間耐火で、急加熱・衝撃落下の試験は含みません。リロッキング機能とは、符号錠やテンキー錠などの錠を庫内側に打ち抜いて壊すと、戸締り機構が自動で施錠される機能のことです。
あわせて「TS-15」という表示を見かけることがあります。これはJIS S 1037に定められた耐破壊性能で、決められた工具を使って15分間、扉を開けたり外したりできないかを確かめるものです。日セフ連はバールを中心にした破壊テストと説明しています。工具やガス溶断に耐える時間で等級を分ける「防盗金庫」の試験(TL・TRTLなど)とは別のものです。
本体の表示で確かめたいこと
2013年版の規格本文では、規格の要求事項に適合した耐火金庫に、次の事項を表示することが定められています。
- 規格番号と改正の西暦年
- 種類(例 PR・2TKS)
- 製造年月、またはその略号
- 製造業者名、またはその略号
買う前には型式記号を、すでに家にある金庫では製造年月を確認する、というのが表示の基本的な使い方です。製造年月は、あとで触れる「耐用年数」の判断にも使います。
区分・合格条件・標準温度曲線の数値・急加熱と衝撃落下の試験・表示事項は、JIS S 1037の規格本文(2013年版。kikakurui.com掲載)と、日セフ連「耐火金庫について」「防盗金庫について」によります。規格の改正・確認の履歴は日本規格協会の規格情報、2020年改正の内容は日セフ連「JISマーク」の改訂の系譜によります。規格の詳細は最新版の規格票でご確認ください。
JIS認証品・日セフ連の型式認定品・メーカー独自表示の違い
同じ「耐火金庫」でも、性能の裏づけには段階があります。表示を見るときは、次の3つのどれにあたるかを意識すると迷いにくくなります。
| 表示の種類 | 誰が性能を確かめているか | 見分け方 |
|---|---|---|
| JIS認証製品 | 国に認定された登録認証機関(建材試験センターなど)が、製品試験と審査でJISへの適合を確認。取得後も3年ごとの更新審査で製品試験を受ける | JISマークと型式記号。日セフ連の「JIS認証製品 型式認定一覧表」に型式が載っている |
| 日セフ連の型式認定品(非JIS認証) | 建材試験センターで実施された性能試験の結果をもとに、日セフ連が型式を認定 | 日セフ連の「非JIS認証製品 型式認定一覧表」に型式が載っている。耐火性能はJISと同じ体系の記号(例 PN・2TKS)で書かれている |
| メーカー独自・海外規格の表示 | メーカー自身や海外の試験機関など。試験の条件は製品ごとに異なる | 「〇分耐火」「耐熱〇〇℃」「準耐火」など。どの規格・どの機関で、何の温度を何分測ったのかを確認する |
JISマーク制度(登録認証機関による製品試験と審査、3年ごとの更新審査)は日セフ連「JISマーク」、型式認定制度は日セフ連「金庫の認定品リスト」の説明によります。
日セフ連の一覧表で型式を照合する手順
- 1
型式と記号を控える
商品ページや本体のラベル、カタログで、型式(品番)と「PR・2TKS」のような耐火性能の記号を控えます。 - 2
日セフ連の認定品リストを開く
日セフ連のサイトの「金庫の認定品リスト」から、「JIS認証製品 型式認定一覧表」と「非JIS認証製品 型式認定一覧表」の2つのPDFを開きます。執筆時点ではどちらも2026年5月現在の版が公開されています。 - 3
型式で検索して記号を見比べる
PDF内の検索機能で型式を探し、一覧の耐火性能欄の記号が、商品の表示と一致しているかを確かめます。一覧には耐破壊・防盗性能の記号も併記されています。 - 4
載っていなければメーカーに確認する
見つからない場合は、どの規格に基づき、どの機関で耐火試験をしたのかをメーカーや販売店に問い合わせます。
メモ
耐火バッグの「耐熱〇〇℃」はどう読むか
JIS S 1037が対象にしているのは、扉や引出しなどの開閉方式を持つ耐火金庫です。布製の耐火バッグは、この規格の区分で性能が表示されるものではありません。通販サイトでは、商品名に「耐熱〇〇℃」と大きな数字を掲げたものも見られます。
ここで確かめたいのは、その数字が「素材そのものが耐えられる温度」なのか、「外から加熱したときに袋の中が何℃以下に保たれたのか」という点です。JISの一般紙用が見ているのは後者の「庫内177℃以下」と「紙が判読できるか」です。中の温度や試験の条件が書かれていない表示は、耐火金庫のJIS区分とは比べられないものとして扱うのが安全です。
タイプ別に比較|家庭で選ばれている4タイプ
ここまでの読み方をふまえて、家庭で選ばれている代表的な4タイプを整理します。価格は執筆時点の通販サイトでの目安で、容量・耐火時間・錠の種類によって大きく変わります。
| タイプ | 耐火性能の根拠 | 容量・重さの目安 | 価格帯の目安 | 持ち出し | データ媒体 |
|---|---|---|---|---|---|
| 家庭用の耐火金庫(据え置き) | JIS認証、または日セフ連の型式認定の記号で確認できる製品がある | A4書類が入る10L台〜数十L。重さは20kg台〜数十kg以上 | 1.5万〜10万円前後 | 向かない | 一般紙用は向かない |
| 小型の耐火手提げ金庫 | メーカー独自や海外規格の表示が中心 | 5L〜十数L程度。手で持ち運べる大きさ | 5千〜2万円前後 | 重さしだいで可能 | 製品の表示を確認 |
| 耐火・耐水の書類保管庫 | 海外規格やメーカー試験による耐火・耐水の表示。データ媒体への対応をうたう型もある | A4ファイルが入る20L前後〜。重さは20kg以上が多い | 1.5万〜10万円前後 | 向かない | 対応をうたう型のみ検討 |
| 耐火バッグ | JIS S 1037の区分はない。耐熱温度などはメーカー独自の値 | A4書類が入る程度。軽い | 1千〜5千円前後 | 可能 | 向かない |
1. 家庭用の耐火金庫(据え置き)
権利証や保険証券、実印など、家に残す原本をまとめて守りたい家庭の本命です。型式記号を日セフ連の一覧表で照合できる製品を選ぶと、表示の意味を自分で確かめられます。国内メーカーの家庭向けシリーズには、2時間耐火でKSの記号が付く型も一覧に掲載されています。
注意したいのは、耐火金庫は防犯のための金庫ではないことです。日セフ連は、耐火金庫を「防盗性能よりも耐火性能に重点を置くもの」と定義しています。多額の現金や貴金属を入れる場合は、防盗性能の等級を持つ防盗金庫を別に検討します。また重量物のため、搬入や設置は販売店や専門業者に相談するのが基本です。
家庭用耐火金庫(据え置き・A4書類対応)
広告価格の目安: 小型の1時間耐火で1.5万円前後から、国内メーカーの2時間耐火では数万〜10万円前後
原本をまとめて家で守る中心のタイプ。購入前に型式記号(PR・2TKSなど)を控え、日セフ連の一覧表で照合できるか確かめるのがおすすめです。2階に置くならKSの有無、置き場所の床と固定方法まで含めて選んでください。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。
2. 小型の耐火手提げ金庫
取っ手が付いた小ぶりな耐火ボックスで、パスポートや通帳、印鑑など、かさばらない貴重品の保管に向きます。持ち運べるので、避難の余裕があるときに持ち出す選択肢も残せます。
耐火性能は「30分耐火」などメーカー独自の表示や、海外規格の表示が多く見られます。どの条件で試験した値なのかを確認しましょう。また、小さく軽いぶん持ち去られやすく、日セフ連の耐震対策ガイドラインは、小型金庫を家具の上や戸袋に置くと地震で移動・落下するおそれがあり極めて危険だとしています。置くなら床の上です。
小型の耐火手提げ金庫(A5〜A4サイズ)
広告価格の目安: 5千〜2万円前後(容量と表示される耐火時間で幅があります)
かさばらない貴重品を小分けに守りたい家庭向け。耐火の表示はメーカーの値が中心なので、何分・何℃の条件か、庫内温度の基準が示されているかを確認してから選びます。置き場所は家具の上ではなく床の上に。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。
3. 耐火・耐水の書類保管庫
耐火に加えて、耐水や防水の性能をうたう箱型の保管庫です。A4ファイルを立てて入れられる容量のものが多く、海外メーカーの製品も広く流通しています。消火の放水や浸水が気になる家庭の候補になります。
JIS S 1037は耐火(庫内の温度と湿度)について定めた規格で、浸水や水没に対する性能は定めていません。耐水・防水の表示は、メーカーがどんな条件(水深や時間など)で試験したかを製品ごとに確認します。データ媒体への対応をうたう型も、対象となる媒体と条件を確かめてから選びましょう。
耐火・耐水の書類保管庫(A4ファイル対応)
広告価格の目安: 1.5万〜10万円前後(容量・耐火時間・データ媒体への対応で幅があります)
火災に加えて放水や浸水も気になる家庭向け。耐水・防水の性能には耐火金庫のJIS区分のような共通の物差しがないため、試験の条件を製品ごとに読み比べてください。重さがあるので、置き場所は搬入前に決めておきます。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。
4. 耐火バッグ
耐熱性をうたう素材で作られた、ファスナー付きの袋です。軽くて安く、置き場所を選ばないので、金庫を置けない住まいでの書類入れや、持ち出し袋の中の書類ポーチとして使いやすいタイプです。耐火金庫の中で書類を小分けにする使い方もあります。
一方で、先に触れたとおりJIS S 1037の区分はなく、耐熱温度などの数字はメーカー独自の値です。鍵が付いていても防犯の性能は期待できません。「金庫の代わり」ではなく、「燃えにくい書類ケース」くらいに位置づけて使うのが現実的です。
耐火バッグ(A4書類対応・ファスナー式)
広告価格の目安: 1千〜5千円前後(サイズ・枚数セットで幅があります)
金庫を置けない住まいや、持ち出し袋の書類ポーチとして手軽に始められるタイプ。耐熱の数字は袋の中の温度を示すものとは限らないため、表示の条件を確認し、原本の守り方の主役ではなく補助として使うのがおすすめです。
※価格・在庫は変動します。最新の情報は各販売サイトでご確認ください。
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見落としやすい5つのこと
1. 一般紙用の金庫は、USBメモリやディスクを守る前提ではない
一般紙用の合格基準は「庫内177℃以下で紙が判読できること」です。データ媒体向けには、JISで「内部温度52℃以下・湿度80%以下」という別の区分が設けられています。つまり、一般紙用の金庫に入れたUSBメモリやディスクが火災後も読めるかどうかは、規格では確かめられていません。
実際にコクヨの家庭用耐火金庫の取扱説明書では、万一の火災時には庫内が100℃を超える場合があり、多量の水蒸気も発生するため、高熱や水蒸気に耐えられないものは収納しないよう注意しています。耐えられないものの例として、磁気テープやビデオテープ、コンパクトディスク、磁気カード、フィルム類が挙げられ、真珠などの宝石も含まれています。また火災時には、高熱や耐火材から出る蒸気、ススなどで収納物が相当に汚れるとも書かれています。
写真データや書類のスキャンは、クラウドや、実家など離れた場所に置いた記憶媒体に複製しておくのが確実です。
保管物による区分(一般紙用177℃以下、フレキシブルコンピュータディスク用52℃以下・湿度80%以下)はJIS S 1037、火災時の庫内の状態と収納に適さない物の例はコクヨ「ホームセーフ(耐火金庫)取扱説明書」によります。収納できる物は製品ごとの取扱説明書でご確認ください。
2. 耐火性能の「有効耐用年数」は製造後約20年
金庫は半永久的に使えると思われがちですが、日セフ連は耐火性能の有効耐用年数の基準を製造後約20年と定めています。耐火材の主成分であるセメント硬化物に含まれる水分のうち、素材のすき間に保持されている自由水が少しずつ気化し、製造後20年を経過すると、結晶水と自由水を合わせた水分量の20%程度が失われるためです。水分量の低下とともに耐火性能も下がります。
コクヨの取扱説明書には、日セフ連による製造20年後の金庫の残存性能確認試験で、庫内温度が200〜300℃にも上昇し、庫内の一般紙が茶褐色に変質して文字の判読が難しかったという結果も紹介されています。また、シリンダー錠やテンキー錠などの耐用年数は20年ではないとも注意されています。
家にある金庫は、本体の表示で製造年月を確かめましょう。日セフ連は、砂入りの金庫や、主に戦後から昭和30年代ごろまでの粉末(ケイソウ土)の耐火材を使った昔の金庫、20〜30年以上使った金庫を、耐火性能がすでに限界に達したと考えられる例として挙げています。
有効耐用年数の考え方と耐火材の水分の経年変化は日セフ連「金庫の耐用年数」、製造20年後の残存性能確認試験の結果と錠の耐用年数の注意はコクヨ「ホームセーフ(耐火金庫)取扱説明書」によります。設置環境や使用条件によって耐火性能の低下率は変わります。
3. 地震で動かない・落ちない置き場所と固定
金庫は重いぶん、固定しないと地震で動いたり倒れたりします。日セフ連の「耐火金庫・防盗金庫耐震対策ガイドライン」(第3版、2024年2月1日)では、次のような点が示されています。
- 脚車(キャスター)の付いた金庫は車輪の方向に動きやすく、揺れが車輪の方向でピータイルなど樹脂系の床材の場合、震度4程度で移動する可能性がある(床材や揺れ方で大きく異なる目安)
- 高さが高く奥行きが浅い金庫ほど転倒しやすく、建物の上の階ほど揺れの力が大きくなる
- 小型金庫を家具の上や戸袋に置くと、地震で移動して落下するおそれがあり極めて危険
- 重い金庫は床の耐荷重も確認事項。一般住宅の床の積載荷重の目安(1,800N/㎡、約183kg/㎡)をもとにした設置可否の考え方が示され、超える場合は建物の設計者への相談が勧められている
- 耐震対策の基本は床面への固定。アンカーによる固定はコンクリートの床にのみ有効で、木製の床や軽量コンクリートの床にはアンカー固定ができない
戸建ての木造住宅や賃貸住宅では、アンカー固定が難しい場合も多いはずです。その場合も、家具の上や高い棚ではなく床に直接置く、背の高い家具が倒れてこない場所を選ぶ、扉の開く向きに避難の動線をふさがないといった配慮はできます。固定金具や敷板など、製品に合う固定方法はメーカーや販売店に確認してください。
地震時の金庫の移動・転倒・落下、床の積載荷重、固定方法とアンカー施工の可否は、日セフ連「耐火金庫・防盗金庫耐震対策ガイドライン」第3版(2024年2月1日)によります。具体的な施工方法や得られる耐震性能は、各メーカーにお問い合わせください。
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4. 浸水と消火の放水、火災後の開け方
耐火金庫は火に強くても、水に強いとは限りません。コクヨの家庭用耐火金庫の取扱説明書は、その製品には防水性能がなく、火災時の放水や水害で水をかけられたり浸水したりすると内部に水が入る、と明記しています。
ハザードマップで自宅が浸水想定区域に入っている場合は、置く階や高さを考えるほか、原本をチャック付きの袋や防水ケースに入れてから金庫にしまうといった二重の備えが考えられます(こちらは編集部の提案です)。耐水・防水をうたう製品を選ぶ場合も、試験の条件を確認してください。
また同じ取扱説明書では、万一火災にあったときは金庫が完全に冷えきってから開けるよう注意しています。開けたときに収納物の紙類が燃え出すことがあるためです。火災のあとに扉が開かない場合は、無理に開けず購入先に相談しましょう。
防水性能がないことと火災後の開け方の注意は、コクヨ「ホームセーフ(耐火金庫)取扱説明書」によります。防水・耐水の性能の有無は製品ごとに異なるため、お手持ちの製品の取扱説明書をご確認ください。
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5. 鍵と暗証番号を「家族が開けられる」形で残す
原本を金庫に入れると、今度は「自分以外の家族が開けられない」という問題が起きます。コクヨの取扱説明書は、取扱説明書や暗証番号の控え、スペアキーを庫内に入れないこと、キーと暗証番号の控えを別々に保管することを求めています。日セフ連の金庫Q&Aでは、テンキーが動かないときは電池切れのおそれがあるため電池を交換し(アルカリ乾電池を推奨)、それでも開かなければ購入先か日セフ連に連絡するよう案内しています。
家族で決めておきたいのは、「控えを誰がどこに持つか」と「何が入っているかのリスト」です。離れて暮らす親や子にも所在だけ伝えておくと、万一のときに原本を探し回らずに済みます。なお中古の金庫は、前の所有者が鍵や番号を知っている可能性があり、耐火性能の耐用年数の点からも製造年の確認が必要だと日セフ連は注意しています。
鍵・暗証番号控えの保管の注意はコクヨ「ホームセーフ(耐火金庫)取扱説明書」、テンキーが動かないときや中古金庫の注意は日セフ連「金庫Q&A」によります。
よくある質問
耐火金庫があれば、持ち出し袋に書類を入れなくてもよいですか
2時間耐火なら、火事が2時間続いても中身は無事ですか
耐火バッグと耐火金庫は、どちらを選べばよいですか
親から引き継いだ古い金庫は、耐火金庫として使えますか
USBメモリや外付けの記憶装置は、耐火金庫に入れておけば安心ですか
木造の家や賃貸住宅でも、金庫を床に固定できますか
使わなくなった古い金庫は、どう処分すればよいですか
まとめ|「表示を読める金庫」を、動かない場所に置く
家に残す原本を火から守るなら、まず「何を持ち出し、何を家に残すか」を分け、残すものの量で容量を決めます。そのうえで、耐火金庫の型式記号を読み、日セフ連の一覧表で照合できるかを確かめる。一般紙用の177℃、耐火時間、KSの意味がわかれば、数万円の買い物で迷う場面はかなり減ります。
そして、買って終わりにしないことです。データは別に複製し、金庫は床に置いて固定を検討し、浸水の心配があれば原本を袋に入れてからしまう。鍵と暗証番号の控えは家族で所在を共有し、製造から20年が近づいたら入れ替えを考える。ここまでそろって、はじめて「もしも」のときに原本が残る備えになります。
今日からの一歩
- 家に残す原本(権利証・保険証券・契約書・実印など)を書き出し、必要な容量を見積もる
- 原本のコピーと証券番号の控えを、持ち出し袋や別の場所にも用意する
- 候補の金庫の型式記号を控え、日セフ連の一覧表で照合する
- 家にある金庫の製造年月を確認し、製造後約20年を目安に入れ替えを検討する
- 写真データや書類のスキャンは、クラウドや離れた場所に複製する
- 金庫は家具の上ではなく床に置き、固定方法をメーカーや販売店に確認する
- 鍵と暗証番号の控えを別々に保管し、所在を家族で共有する
災害時の判断や手続きは、お住まいの自治体や公的機関、各メーカーの最新情報を優先してください。原本を守る道具は、暮らしを立て直すための備えのひとつです。できるところから少しずつ整えていきましょう。
出典・参考
- JIS S 1037 耐火金庫(規格本文。掲載ページの表題は2020年版、本文は2013年版)/kikakurui.com
- JIS S 1037 耐火金庫(発行・改正・確認の履歴)/日本規格協会 JSA GROUP Webdesk
- 耐火金庫について/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会(日セフ連)
- JISマーク(JIS制度と耐火金庫JIS規格の改訂の系譜)/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 金庫の賢い選び方(耐火金庫と防盗金庫)/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 防盗金庫について/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 金庫の認定品リスト(型式認定制度について)/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- JIS認証製品 型式認定一覧表(2026年5月現在)/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 非JIS認証製品 型式認定一覧表(2026年5月現在)/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 金庫の耐用年数/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 耐火金庫・防盗金庫耐震対策ガイドライン 第3版(2024年2月1日)/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 金庫Q&A/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- 金庫の廃棄相談室/日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会
- ホームセーフ(耐火金庫)取扱説明書/コクヨ
- 登記識別情報を紛失したなどの理由により、登記申請の際に登記識別情報を提供することができない場合はどうしたらよいのですか?/法務局
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