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被災して住宅ローンが払えなくなったら|「自然災害債務整理ガイドライン」のしくみと、平時に家族で確かめておくこと

ミナト・編集長 / 備蓄・非常食担当
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被災して住宅ローンが払えなくなったら|「自然災害債務整理ガイドライン」のしくみと、平時に家族で確かめておくこと

災害で家が壊れても、住宅ローンの契約は残ります。住めない家のローンを払いながら、仮住まいの家賃や修理費も工面しなければならない。いわゆる「二重ローン」の不安は、被災後の生活再建でもっとも重い悩みの一つです。この記事では、そうしたときに使える公的な枠組みとして、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(通称「自然災害債務整理ガイドライン」)のしくみを、運営機関と金融庁の資料で確かめながら整理します。後半では、いざというときに慌てないよう、平時に家族で確かめておきたいことをまとめました。

本記事の制度の説明は、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」および同Q&A、一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関の公式サイト、金融庁の公表資料・リーフレット、政府広報オンライン、内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」(令和8年6月1日現在)、大阪弁護士会・第二東京弁護士会の案内にもとづきます(いずれも2026年9月25日閲覧)。お金にかかわる判断は個別の事情で大きく変わります。実際に利用できるか、どのような内容になるかは、ローンの借入先の金融機関と登録支援専門家(弁護士など)に相談してください。

どんな制度か|「破産によらない債務整理」の準則

政府広報オンラインは、このガイドラインを「平成27年(2015年)12月に取りまとめられた民間の自主的なルール」と説明し、平成28年(2016年)4月から適用が開始されたとしています。金融庁は平成27年12月25日に、一般社団法人全国銀行協会を事務局とする研究会からガイドラインとQ&Aが公表されたことを知らせ、金融機関に積極的な活用を促す立場を示しました。

ガイドライン本文の「目的」には、災害の影響で住宅ローン、住宅のリフォームローンや事業性ローンなどの既往債務(災害前から負っていた借金)を弁済できなくなった個人の債務者について、破産などの法的倒産手続によらず、債権者と債務者の合意にもとづいて債務の全部または一部を減免することなどを内容とする債務整理を、公正かつ迅速に行うための準則を定める、と書かれています。法的拘束力はないものの、金融機関などに自発的に尊重され遵守されることが期待されている、という位置づけです。

運営しているのは、一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関です。組織概要によると、平成29年4月に「一般社団法人自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関」として設立され、平成31年4月に東日本大震災向けの運営委員会と合併して現在の名称になりました。正会員には全国銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国労働金庫協会、農林中央金庫が名を連ね、準会員には住宅金融支援機構なども入っています。

対象になる災害

対象は、東日本大震災と、研究会が設置された平成27年9月2日以降に災害救助法が適用された自然災害です。地震に限らず、台風・大雨・大雪・土砂崩れ・大規模火災なども、災害救助法が適用されていれば対象になります。運営機関のサイトには、対象となる災害の一覧が掲載されています。

2026年は適用が相次いでいます。運営機関の一覧(令和8年9月24日現在)には、「令和8年熊本地震」(令和8年7月28日適用)、「令和8年8月13日からの大雨に伴う災害(令和8年8月千葉豪雨)」、「令和8年8月27日からの大雨に伴う災害」、「令和8年台風第24号及び前線による大雨に伴う災害」、「令和8年台風第25号に伴う災害」(令和8年9月20日適用)などが並んでいます。

メモ

運営機関は「本ガイドラインは、災害救助法適用市町村以外にお住まいの方も対象になります」と明記しています。対象かどうかを分けるのは「その災害に災害救助法が適用されたか」と「その災害の影響で返済できなくなったか」です。自宅のある市町村が適用区域に入っていないからといって、最初から諦める必要はありません。

対象になる人

運営機関の説明では、対象となり得るのは、自然災害の影響によって住宅ローンや事業性ローンなどの既往債務を弁済することができない、または近い将来弁済できないことが確実と見込まれ、破産手続などの法的倒産手続の要件に該当するなどの一定の要件を満たした個人の債務者です。法人の債務は対象になりません。

ガイドラインが定める要件は、要約すると次のとおりです。

要件の柱内容(ガイドライン第3項(1)の要約)
災害の影響で返せない住居・勤務先などの生活基盤や事業基盤が災害の影響を受け、既往債務を返せない、または近い将来返せないことが確実と見込まれる
誠実さと開示弁済について誠実で、財産状況(負債を含む)を適正に開示している
災害前に延滞などの契約違反がない災害前に、期限の利益喪失事由にあたる行為がなかった(その債権者が同意すれば例外あり)
債権者にも合理性がある破産や民事再生と同等以上の回収が見込めるなど、債権者にとっても経済的な合理性が期待できる
そのほか事業者なら事業に再建の可能性があること、反社会的勢力でないこと、破産法上の免責不許可事由がないこと

「災害の影響」は家が壊れた場合に限りません。Q&A(Q.3-1)は、間接的な影響として、勤め先が被災して失業した、給料が下がったといった例を挙げています。また「返せない」かどうかは、財産や収入、信用、債務総額、返済期間、利率といった支払条件、家計の状況などを総合的に考慮して判断されるとされています(Q.3-2)。借入れは住宅ローンに限らず、自動車ローンやリフォームローンなども債務整理の対象に含まれます(Q.3-8)。

注意

ガイドラインで整理できるのは、災害が起きる前に借りていたお金に限られます。Q&A(Q.5-1)は「災害の発生後に行った借入は含まれません」としており、金融庁のリーフレットも「新しいローンを組んでからガイドラインを利用できますか」という問いに「原則として、利用できません」と答えています。被災後に建て替えや購入のための新しいローンを検討するときは、その前に借入先の金融機関へ相談してください。

使うと何が違うのか|運営機関と金融庁が示す3つのメリット

借金を整理する方法には、裁判所の「破産」や「個人再生」といった法的手続があります。政府広報オンラインは、これらを行うと官報に名前が載り、個人信用情報として登録されるため、新たな借入れやクレジットカードの作成ができなくなる、と説明しています。ガイドラインは、こうした不利益を避けながら、簡易裁判所の特定調停を使って債務の免除を受ける道を開いたものです。

運営機関のリーフレット、金融庁、政府広報オンライン、内閣府の「被災者支援に関する各種制度の概要」は、いずれもメリットを次の3つに整理しています。

メリット公的資料での説明
手続支援が無料国の補助により、弁護士などの「登録支援専門家」による手続支援を無料で受けられる
財産の一部を手元に残せる義援金などに加え、財産の一部をローンの支払いに充てずに手元に残せる。具体的には被災状況や生活状況などの個別事情により異なる
信用情報に登録されない債務整理をしたことが個人信用情報として登録されないため、その後の新たな借入れに影響が及ばない

信用情報については例外があります。ガイドラインQ&A(Q.10-3)は、債務整理を行ったことやそれに関連する情報は信用情報登録機関に報告・登録しないとしたうえで、「対象債務者が弁済計画を履行できずに、信用情報登録機関への報告事由が発生した場合には、信用情報登録機関への報告・登録を行うこととなります」としています。債務整理が成立したあとも、調停で決まった返済を続けることが前提です。

3つのメリットは、東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関のリーフレット(2026年7月版)、政府広報オンライン、財務省北陸財務局の案内、内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」(令和8年6月1日現在)14ページの記載によります。

登録支援専門家とは

登録支援専門家は、弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士のうち、各団体に登録された専門家です。Q&A(Q.4-1)によると、債権者や債務者の代理人としてではなく、利害関係のない中立・公正な立場から手続を支援します。ただし、債務の減免を求める内容の調停条項案について、関係者間の調整や金融機関への説明、特定調停の申立て支援などの業務は、必ず弁護士が行う必要があるとされています。

金融庁のQ&Aリーフレットは、登録支援専門家が必要な書類の作成や金融機関との協議などを支援するので、申出人に法律や金融の知見がなくても大丈夫、と説明しています。

手元に残せる財産の目安

ここは数字がひとり歩きしやすいところなので、資料ごとに書かれている内容を分けて示します。

  • ガイドラインQ&A(Q.8-9)は、破産手続で「自由財産」と扱われる財産を手元に残せるとし、例として「差押禁止財産(生活に欠くことのできない家財道具等)」「現預金(上限があります)」などを挙げています。Q&A自体には上限額の数字は書かれていません
  • 同じQ&Aは、被災者生活再建支援金、災害弔慰金・災害障害見舞金についても、基本的に手元に残すことが可能になると考えられる、としています
  • 金融庁「金融庁の1年(2024事務年度版)」の資料では、債務整理のイメージ(例)として、現預金500万円と被災者生活再建支援金100万円を「手元に残せる財産」とする図が示されています。ただし、これは「あくまでもイメージ」で、債務免除の額などは被災状況や生活状況などの個別事情により異なると注記されています
  • 大阪弁護士会の案内では、「最大500万円の現預金、被災者生活再建支援金、災害弔慰金・災害障害見舞金、義援金等の財産を手元に残せます」と説明されています
  • 第二東京弁護士会の案内では、「最大500万円の現預金、家財地震保険金最大250万円、被災者生活再建支援金、災害弔慰金・災害障害見舞金、義援金といった財産を手元に残せます」と説明されています。ガイドライン本文とQ&Aには、現預金や家財の地震保険金の金額は書かれていません

つまり「現預金は500万円まで、家財の地震保険金は250万円までが弁護士会の案内で目安として示されているが、実際にいくら残せるかは個別の事情と協議で決まる」と受け止めておくのが安全です。

家に住み続けることはできるか

金融庁のQ&Aリーフレットは、「債務整理をしても家や土地を手元に残すことはできますか」という問いに「できます」と答えています。ただし、その家や土地について登録支援専門家が公正に評価した金額を、一括または分割で支払う必要があるとしています。家を残すかどうかで返済の形が変わるため、家族の住まいの方針とあわせて専門家と相談することになります。

保証人はどうなるか

ガイドライン第8項(5)は、主たる債務者が通常想定される範囲を超えた災害の影響で返済できないことを踏まえ、保証契約の経緯や保証人の生活実態などを考慮して、保証履行を求めることが相当と認められる場合を除き、個人の保証人には保証履行を求めないこととしています。親族が保証人になっている場合も、まずは相談の中で確認してください。

手続きの流れ|最初の一歩は「いちばん多く借りている金融機関」へ

運営機関の「手続の流れ」は、7つのステップで示されています。

  1. 1

    手続着手の申出

    最も多額のローンを借りている金融機関等(主たる債権者)へ、ガイドラインの手続着手を希望することを申し出ます。Q&A(Q.5-1)は口頭での申出を案内しており、個人の場合は住宅ローンの借入先に申し出るのが一般的だとしています。金融機関から借入先、借入残高、年収、資産(預金など)の状況などを聞かれることがあるので、借入れの状況がわかる資料を手元に用意します。
  2. 2

    登録支援専門家による手続支援を依頼

    金融機関から着手に同意する書面を受け取ったら、地元の弁護士会などを通じて運営機関に登録支援専門家の委嘱を依頼します。ガイドラインは、金融機関が申出を受けてから10営業日以内に同意・不同意を書面で示すこと、要件を満たさないことが明白な場合を除いて不同意にしてはならないことを定めています。
  3. 3

    債務整理(開始)の申出

    対象となるすべての金融機関等に債務整理を申し出て、申出書のほか財産目録などの必要書類を提出します。書類の作成は登録支援専門家の支援を受けられます。債務整理の申出後は、債務の返済や督促が一時停止になります。
  4. 4

    調停条項案の作成

    登録支援専門家の支援を受けながら、金融機関等との協議を通じて、ローンの免除や減額といった債務整理の内容を盛り込んだ「調停条項案」を作ります。
  5. 5

    調停条項案の提出・説明

    登録支援専門家を経由して金融機関等に提出・説明します。金融機関等は1か月以内に同意するか否かを回答します。
  6. 6

    特定調停の申立て

    対象にしようとするすべての借入先から同意が得られたら、簡易裁判所へ特定調停を申し立てます。申立費用は原則として債務者の負担です。登録支援専門家は申立書類の作成などを支援できますが、原則として調停の場には債務者本人が出頭します。
  7. 7

    調停条項の確定

    特定調停手続で調停条項が確定すれば、債務整理が成立します。

Q&A(Q.6-1)が挙げる申出時の必要書類は、住民票の写し、陳述書と添付資料(給与明細書・源泉徴収票・課税証明書の写しなど)、財産目録と添付資料(預貯金通帳・証書の写しなど)、債権者一覧表、家計収支表(直近2か月)、事業収支実績表(直近6か月、事業者の場合)、り災証明書・被災証明書などです。

期間の目安について、金融庁のQ&Aリーフレットは、ローン残高や借入先の数、資産の状況などによるものの「平均約1年」かかるとしています。また、返済が止まるのは「金融機関に債務整理を申し出て、金融機関に書類が受領されたときから」とされています。最初の着手の申出をしただけでは返済は止まらないので、その間の返済が苦しいときは、借入先にあわせて相談してください。

メモ

運営機関の利用状況(令和8年6月末時点)によると、自然災害案件で登録支援専門家に手続支援を委嘱した件数は1,541件、債務整理成立件数は679件です。成立には金融機関の同意が必要で、政府広報オンラインも、債務整理の結果として収入や資産の状況に応じた一定額の返済が必要になる場合があると説明しています。「申し出れば必ずゼロになる」制度ではないことを前提に、早めに相談するのが現実的です。

金融機関の対応に困ったとき

運営機関は、主たる債権者に着手を申し出たのに、正当な理由なく同意書面が交付されない、または遅れている場合の苦情・相談窓口を、金融機関の種別ごとに一覧にしています。たとえば借入先が銀行なら全国銀行協会相談室(0570-017109 または 03-5252-3772、令和6年10月31日現在の一覧による)、住宅金融支援機構ならお客さまコールセンターが窓口として掲載されています。最新の連絡先は運営機関の一覧で確認してください。

注意

運営機関のリーフレットは、「金融庁、財務局及び運営機関が他の事業者に本件事業等を委託することはありません」と明記し、ガイドライン利用の支援と称して報酬を求める悪質業者に注意するよう呼びかけています。運営機関の名をかたる偽サイトの存在も確認されています。「代わりに申請します」「手数料を払えば減額できます」といった勧誘には応じず、借入先の金融機関、お住まいの地域の弁護士会、金融庁・財務局に相談してください。

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生活再建支援金・地震保険・罹災証明書との関係

被災後のお金の制度はいくつもあり、どれがどれの代わりになるのか混乱しがちです。内閣府の「被災者支援に関する各種制度の概要」(令和8年6月1日現在)では、このガイドラインは「被災者(個人・個人事業主)の債務整理支援」という名前で、支援の種類は「減免・猶予(延長・金利の引き下げ含む)、サービス」とされています。被災後の状況から制度を探す一覧では、「税金や保険料等の軽減や支払猶予等をしてほしい」「住まいを建て替え・取得したい」「中小企業事業の再建資金が必要【中小企業者】」などの欄に載っています。

制度・仕組み性格ガイドラインとの関係
被災者生活再建支援金住宅が全壊するなど生活基盤に著しい被害を受けた世帯への給付。使途は限定されない(内閣府)Q&Aは、差押禁止財産とする法律の手当てがあることなどから返済能力の判断に含めるのは適当でないとし、基本的に手元に残せると考えられるとしている
罹災証明書市町村が住家の被害の程度を証明する書類債務整理の申出時の必要書類の一つ。証明書がない場合も、合理的な理由があれば陳述書に必要事項を書いて提出できるとされている(Q&A Q.3-1)
地震保険火災保険にセットで契約する保険。地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失の被害を補償する(財務省)別の仕組み。ガイドライン本文とQ&Aに地震保険金の扱いについての個別の記載はない。第二東京弁護士会の案内は、家財の地震保険金(最大250万円)を手元に残せる財産の例に挙げている
住宅金融支援機構の返済方法の変更被災の程度に応じた払込みの猶予(1〜3年)、猶予期間中の金利引下げ、返済期間の延長(内閣府資料)内閣府資料の同項目には「返済の免除・減額を受けられる場合があります」とあり、債務整理支援(本ガイドライン)の項目が参照先として示されている

地震保険について補足すると、財務省は、火災保険では地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・拡大した損害は補償されないと説明しています。地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30〜50%の範囲で決め、建物5,000万円・家財1,000万円が限度です。ガイドラインQ&Aには地震保険金の扱いについての個別の記載は見当たらず、「返せない」かどうかは財産や収入などを総合的に考慮して判断されるとされています(Q.3-2)。一方で、前述のとおり第二東京弁護士会の案内は、家財の地震保険金を最大250万円まで手元に残せる財産の例に挙げています。実際の扱いは個別の協議で決まるため、保険金を受け取ったあとでガイドラインを使えるかどうか、どこまで手元に残せるかは、自己判断せずに借入先と登録支援専門家に確かめてください。

いずれにしても、保険は「被災後に受け取れるお金を増やす備え」、ガイドラインは「返せなくなった借金の負担を減らす枠組み」で、役割が違います。どちらか一方で足りるものではなく、平時の備えとして保険を整え、それでも返済が難しくなったときの道としてガイドラインを知っておく、という順番で考えると整理しやすくなります。

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ヒント

令和8年熊本地震のように、特定非常災害に指定された災害では、特定調停を含む民事調停の申立手数料が免除される措置がとられることがあります。法務省によると、令和8年熊本地震では、令和8年7月28日に災害救助法の適用区域に住所などを有していた人が、令和11年6月30日までに災害に起因する民事の紛争について民事調停を申し立てる場合、申立手数料が免除されます。対象かどうかは災害ごとに異なるので、運営機関の一覧や法務省の案内で確かめてください。

平時にやっておくこと|家族で10分話しておく

ガイドラインは被災後の制度ですが、使いやすさは平時の準備で変わります。申出のときに聞かれるのは借入先、借入残高、年収、資産の状況です。被災直後の混乱の中で、通帳や契約書が流されたり、家族の誰も借入先を知らなかったりすると、最初の一歩が遅れてしまいます。

1. ローンの契約書類と借入先の連絡先を控えておく

住宅ローンの契約書(金銭消費貸借契約書)、返済予定表、保証会社や団体信用生命保険の書類、借入先の支店名と電話番号を、1冊のファイルにまとめます。あわせてスマートフォンで撮影し、クラウドにも控えを残しておきます。自動車ローンやカードローンなど、ほかの借入れも一覧にしておくと、申出の必要書類の一つである「債権者一覧表」の下書きになります。

ローンと家計の控えチェック

  • 住宅ローンの契約書と返済予定表の保管場所を家族が知っている
  • 借入先の金融機関名・支店名・電話番号をメモした
  • 住宅ローン以外の借入れ(自動車ローン、リフォームローン、カードローンなど)を一覧にした
  • 給与明細・源泉徴収票など収入がわかる書類の保管場所を決めた
  • 預貯金の口座(銀行名・支店)を一覧にした
  • 書類の写真をクラウドや家族の端末にも複製した

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2. 地震保険と水災補償の加入状況を確かめる

ガイドラインは「返せなくなったとき」の道です。その前に、保険で受け取れるお金があれば、生活再建の選択肢は広がります。火災保険の証券を開いて、地震保険がセットされているか、水災補償が外れていないかを確認しておきましょう。住宅ローンを組んだときに加入した火災保険は、契約から時間がたって内容を覚えていないことも多いものです。

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3. 家族の誰が手続きをするか決めておく

ローンの名義人が被災でけがをしたり、仕事の再建に追われたりすることもあります。手続きの中心になる人と、書類を探す・連絡を取るといった補助をする人を、あらかじめ話し合っておくと安心です。特定調停には原則として債務者本人の出頭が必要なので、名義人本人が動けるかどうかも含めて考えておきます。

4. 「こういう制度がある」と家族で共有しておく

被災直後に「もう破産するしかない」と思い込んでしまう前に、「借入先に相談すれば、破産によらない道がある」と知っているだけでも、判断は落ち着きます。この記事を家族で読んでおく、運営機関のサイトをブックマークしておく、といった小さな共有も備えの一つです。

家を建てたときの書類は全部夫が管理していて、私は借入先の銀行名すら知りませんでした。もしものときにどこへ電話すればいいのか、一度二人で確かめておくだけで安心感が違いました。
住宅ローンを返済中の読者

よくある質問

自宅のある市町村に災害救助法が適用されていません。対象外ですか
運営機関は『本ガイドラインは、災害救助法適用市町村以外にお住まいの方も対象になります』と説明しています。対象となるのは、平成27年9月2日以降に災害救助法が適用された自然災害(と東日本大震災)の影響で、既往債務を返せなくなった、または近い将来返せないことが確実と見込まれる個人です。たとえば勤め先が被災して収入が減った場合など、間接的な影響も考えられるとQ&Aは説明しています。対象になるかは、まずローンの借入先に相談してください。
家は大きく壊れていませんが、勤め先が被災して収入が減りました。使えますか
ガイドラインQ&A(Q.3-1)は、災害の影響には直接的なものと間接的なものがあるとし、勤め先が被災したことによる失業や給料の減少を間接的な影響の例として挙げています。ただし、返済できないかどうかは財産や収入、家計の状況などを総合的に考慮して判断されます。借入先の金融機関に状況を伝えて相談してください。
申し出たら、すぐに返済は止まりますか
最初の『手続着手の申出』だけでは止まりません。運営機関によると、返済や督促が一時停止になるのは、登録支援専門家の委嘱を経て、すべての借入先に『債務整理(開始)の申出』をしたあとです。金融庁のQ&Aリーフレットも、金融機関に書類が受領されたときから債務整理が終わる日までローンの返済や督促は一時停止する、としています。それまでの返済が難しいときは、借入先に相談してください。
家を手放さなければいけませんか
金融庁のQ&Aリーフレットは、家や土地を手元に残すことは『できます』としています。ただし、その家や土地について登録支援専門家が公正に評価した金額を、一括または分割で支払う必要があります。住まいの方針によって返済の形が変わるので、登録支援専門家と相談しながら決めることになります。
費用はかかりますか
登録支援専門家による手続支援は、国の補助により無料で受けられるとされています。一方、簡易裁判所への特定調停の申立費用は原則として債務者の負担です。ただし令和8年熊本地震のように、法令上の手当てで申立手数料が免除される災害もあります。対象かどうかは災害ごとに異なるため、運営機関の一覧や法務省の案内で確かめてください。
親が住宅ローンの保証人になっています。親に請求がいきますか
ガイドライン第8項(5)は、保証契約の経緯や保証人の収入・資産、災害による影響などを考慮して、保証履行を求めることが相当と認められる場合を除き、個人の保証人には保証履行を求めないこととしています。個別の判断になるため、手続きの中で登録支援専門家に確認してください。
被災後に新しい住宅ローンを組んでしまいました。あとから使えますか
ガイドラインで整理できるのは災害の前に借りていた債務に限られ、災害後の借入れは含まれません。金融庁のQ&Aリーフレットは、新しいローンを組んでからの利用は『原則として、利用できません』としつつ、詳しくは金融機関に相談するよう案内しています。建て替えや購入のローンを検討する段階で、先に借入先へ相談するのが安全です。
『ガイドラインの申請を代行します』という業者から連絡がありました
運営機関のリーフレットや財務局の案内は、金融庁・財務局・運営機関が他の事業者に本件事業を委託することはないとし、支援と称して報酬を求める悪質業者に注意するよう呼びかけています。個人情報を伝えたり、お金を振り込んだりせず、借入先の金融機関、お住まいの地域の弁護士会、金融庁や財務局に相談してください。

おわりに|「借入先に相談すれば道がある」を知っておく

家を失ったうえに住宅ローンが残る。その不安に対して、国と金融業界は「自然災害債務整理ガイドライン」という枠組みを用意しています。破産によらず、債務整理をしたこと自体は信用情報に登録されず、弁護士などの専門家の支援を無料で受けながら、ローンの減額や免除を申し出ることができる。最初の一歩は、いちばん多く借りている金融機関に「ガイドラインの手続に着手したい」と伝えることです。

一方で、減額や免除には金融機関の同意が必要で、手元に残せる財産の額も一律ではありません。この記事は公的資料をもとにした全体像の整理であり、あなたの家庭で使えるかどうか、どのような内容になるかを判断するものではありません。個別の判断は、ローンの借入先の金融機関と登録支援専門家に相談してください。

平時にできることはシンプルです。ローンの書類と借入先の連絡先を控えておく。保険の内容を確かめておく。家族の誰が手続きを担うかを話しておく。今夜10分、家族で話すことから始めてみてください。

制度の目的・要件・保証人の扱い・信用情報の扱いは「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(平成27年12月策定、令和2年10月改正)、自由財産・必要書類・災害の影響の考え方・信用情報登録の例外は同Q&A、対象災害の一覧と手続の流れ・利用状況は一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関の公式サイト(令和8年9月24日現在の一覧、令和8年6月末時点の利用状況)、手元に残せる財産のイメージ例は金融庁「金融庁の1年(2024事務年度版)」、金額の目安は大阪弁護士会・第二東京弁護士会の案内、家や土地の扱い・期間の目安・返済の一時停止は金融庁のQ&Aリーフレット、制度の位置づけは内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」(令和8年6月1日現在)、申立手数料の特例措置は法務省の案内、地震保険の概要は財務省「地震保険制度の概要」によります(いずれも2026年9月25日閲覧)。制度・運用は改定されることがあります。

出典・参考

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