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日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とは|防災の日の政府訓練から読み解く「後発地震注意情報」と家庭の備え

カエデ・避難計画・防災情報担当
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日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とは|防災の日の政府訓練から読み解く「後発地震注意情報」と家庭の備え

2026年9月1日の「防災の日」に、政府は令和8年度の総合防災訓練を行いました。首相官邸の発表によると、今年度は首都直下地震と、日本海溝地震・千島海溝地震を想定した訓練が実施されています。「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」は、南海トラフ地震や首都直下地震にくらべると名前を聞く機会が少ないかもしれません。けれどもこの地震の想定には、津波が到達するまでの時間の短さと、雪と寒さという、ほかにはない特徴があります。そしてこの地域には「北海道・三陸沖後発地震注意情報」という、南海トラフ地震臨時情報とよく似た、けれど少し違う情報が用意されています。この記事では、内閣府と気象庁の資料をもとに、この地震の姿と情報の読み方、そして家庭で今日からできることを整理します。

本記事の制度・数値は、内閣府(防災担当)の「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策」および「北海道・三陸沖後発地震注意情報 防災対応ガイドライン」、中央防災会議 防災対策実行会議のワーキンググループ報告書(令和4年3月22日)、気象庁「北海道・三陸沖後発地震注意情報について」にもとづきます。実際の避難や防災対応の判断は、お住まいの自治体および気象庁の最新の情報を優先してください。

2026年の「防災の日」に、政府は何を想定して訓練したのか

首相官邸の「総理の一日」によると、令和8年9月1日(防災の日)、高市総理を始めとする全閣僚が参加して令和8年度総合防災訓練が行われました。今年度は首都直下地震と日本海溝地震・千島海溝地震を想定した訓練が行われ、総理は訓練として総理大臣官邸へ徒歩で参集し、第1回緊急災害対策本部会議および臨時の閣議を開催したうえで、記者会見で地震の概要と政府の対応状況を説明する、という流れでした。その後は神奈川県厚木市の九都県市合同防災訓練会場へ移動しています。

具体的な地震の規模については、時事通信の報道によると、訓練は午前7時に北海道十勝沖を震源とするマグニチュード8.3の地震により、北海道日高地方東部で震度7を観測したという想定で行われ、本部会議には北海道の鈴木直道知事、青森県の宮下宗一郎知事らがオンラインで参加して被災状況を説明した、と伝えられています。この規模と震度の数値は、本記事執筆時点で政府の公表資料としては確認できなかったため、報道による情報として扱います。

メモ

訓練の想定は「予言」ではありません。政府の総合防災訓練は、関係機関の体制が実際に機能するかを検証するために行うもので、その年に起きやすい地震を予測して選んでいるわけではないと理解しておくと、ニュースを落ち着いて受け止められます。

訓練の想定は「総合防災訓練大綱」で毎年決まる

政府の訓練の枠組みは、中央防災会議が毎年度決定する「総合防災訓練大綱」に示されています。令和8年度の大綱は令和8年7月14日に決定され、「防災の日」政府本部運営訓練について、内閣総理大臣を始めとする全閣僚の参加の下、千島海溝地震、日本海溝地震を想定し、関係地方公共団体等と連携して、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震における具体的な応急対策活動に関する計画を踏まえた訓練を実施する、と明記されています。首都直下地震を想定した九都県市合同防災訓練との連携や、閣僚の徒歩等による官邸への参集訓練も位置づけられています。

シナリオを作る際の考え方も示されています。千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震や南海トラフ地震をはじめとする検討成果を踏まえ、より実践的かつ起こり得る最悪事態の想定(複合災害や、寒冷期、休日、発生時間帯や避難方法、北海道・三陸沖後発地震注意情報発表や南海トラフ地震臨時情報の想定など)を取り入れる、という記述です。つまり「寒冷期」と「後発地震注意情報」は、国の訓練設計のなかで最初から意識されている要素だということになります。

ヒント

今年の訓練が千島海溝・日本海溝だったからといって、来年も同じとは限りません。過去には首都直下地震や南海トラフ地震を主題にした年もあります。「今年はどこが想定されたか」より、「自分の地域は何が想定されているか」を確認するほうが、家庭にとってはずっと役に立ちます。

令和8年度の大綱には、令和7年7月に発生したカムチャツカ半島東方沖を震源とする地震に伴う津波、同年12月の青森県東方沖を震源とする地震など、昨今の社会状況等を踏まえて基本的な考え方を示す、という趣旨の記述もあります。北日本の太平洋側で実際に地震と津波が続いたことが、訓練の背景にあると読み取れます。とくに2025年12月の青森県東方沖の地震は、後で詳しく触れる「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が実際に発表された出来事でした。

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とは何か

どこで起きる地震か

内閣府の解説ページによると、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とは、房総半島東方沖から三陸海岸の東方沖を経て択捉島の東方沖までの日本海溝と千島海溝の地殻の境界等を震源とする大規模な地震です。この周辺では古来より、マグニチュード7から8を超える巨大地震や、地震の揺れが小さくても大きな津波を発生させる「津波地震」と呼ばれる地震まで、多種多様な地震が発生し、幾度となく大きな被害を及ぼしてきたとされています。

2011年の東北地方太平洋沖地震(M9.0)を受けて、国は「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を検討していくべきである」という考え方に立ちました。その流れのなかで日本海溝・千島海溝についても最大クラスの想定が作られ、令和3年12月に被害想定が、令和4年3月にワーキンググループの報告書が公表されています。推計は、岩手県から北海道えりも岬沖合の領域を「日本海溝モデル」、えりも岬から東の領域を「千島海溝モデル」として、2つに分けて行われました。

想定される揺れと津波

内閣府の解説ページに示された推計結果は次のとおりです。

項目日本海溝モデル千島海溝モデル
想定される震度岩手県大船渡市や青森県六ケ所村で震度6強北海道えりも町や厚岸町で震度7
想定される津波高(満潮時)岩手県宮古市で30m、青森県八戸市で27m、福島県南相馬市で19m、宮城県気仙沼市で16m北海道えりも町や釧路町で28m

気象庁も、北海道から岩手県の太平洋側の広い範囲で強い揺れが推定されると解説しています。

注意

気象庁は、この震度分布はあくまで「最大クラスの津波を発生させるプレート境界の海溝型地震」の推計結果であり、それぞれの地点では、ほかの海溝型地震、活断層による地震、沈み込むプレート内の地震のほうが大きい震度となる場合があることに留意が必要だと注記しています。「この想定より弱い揺れで済む」と読まないでください。

震度・津波高の推計値は内閣府「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の解説ページ」および気象庁「想定される震度や津波の高さ」によります。

想定される被害と、対策で減らせる部分

被害想定の数値は大きく、初めて見ると気持ちが重くなります。ただ、中央防災会議のワーキンググループ報告書は、この想定について「対策を講じれば、被害量は減じることができる」「起こりうる事象を冷静に受け止め、正しく恐れることが重要」と明記しています。数字は脅すためではなく、対策の効き目を測るために置かれています。

推計項目(被害が最大となるケース)日本海溝モデル千島海溝モデル
死者数(冬・深夜)約19万9千人約10万人
低体温症要対処者数(冬・深夜)約4万2千人約2万2千人
全壊棟数(冬・夕方)約22万棟約8万4千棟
経済的被害額約31兆円約17兆円

そして報告書は、対策による効果も推計しています。避難意識の改善による避難の迅速化、津波避難ビル・タワー等の活用・整備、建物の耐震化率の向上により、死者数は日本海溝モデルで約19万9千人から約3万人へ、千島海溝モデルで約10万人から約1万9千人へと、いずれも約8割減らせると見込まれています。つまり、この想定でいちばん効くのは「早く避難すること」です。設備の整備は行政の仕事ですが、避難の迅速化は家庭側でも動かせます。

国の白書が家庭に期待している備えはこちら

令和8年版防災白書「国難級の地震・津波」を家庭目線で読み解く

冬の深夜がいちばん厳しくなる理由

上の表で、死者数の最大ケースが「冬・深夜」になっている点に注目してください。報告書は、冬季は防寒準備や積雪・凍結による避難速度の低下のため避難に時間を要すること、海岸域の人口が昼夜で異なることなどを踏まえ、季節・時間帯・風速を複数設定して推計したと説明しています。そして、この地域特有の課題として次の点が挙げられています。

  • 冬季は吹雪や積雪寒冷により避難に時間を要する
  • 冬季は屋外や寒い屋内での避難は低体温症のリスクが生じる
  • 積雪・凍結等による家屋の倒壊やライフライン等の被害増大、輸送・復旧活動の阻害、雪崩・崩落雪の懸念

あわせて、北海道・東北地方の沿岸地の特性として、全国からの応援体制が脆弱になる懸念や、平野部が広がり近くに高台がない場所では徒歩避難が困難なことも挙げられています。

「低体温症要対処者」という指標

この想定でとくに独特なのが、「低体温症要対処者数」という項目です。報告書の定義では、津波から難を逃れた後、屋外で長時間、寒冷状況にさらされることで低体温症により死亡のリスクが高まる者を低体温症要対処者とし、後背地に道路や街が広がっていない高台など、二次避難が困難な場所に逃げた者の数を推計しています。つまり「津波からは逃げ切ったのに、そのあとの寒さで命が危うくなる人」を、あらかじめ数えているわけです。

報告書は、この人数について、既存施設の有効活用や、避難所への二次避難路・備蓄倉庫(防寒備品)の整備などにより「限りなく小さく(リスクの最小化)」できると推計しています。ガイドラインの概要資料では、これに加えて「国民一人一人の防寒備品の準備・装着」も対策に挙げられています。家庭でできる防寒の備えが、この推計のなかに位置づけられている、ということです。

「津波から逃げる」までしか考えていませんでした。高台に上がったあと、そこで何時間も過ごすかもしれないという発想がなかったので、玄関の持ち出し袋に防寒の一式を足しました。
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「特別強化地域」が示す、逃げる時間の短さ

日本海溝・千島海溝沿いの地震には専用の法律があります。「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」です。この法律にもとづき、国は「地震防災対策推進地域」と「津波避難対策特別強化地域」の2種類を指定しています。内閣府が公表している市町村一覧(令和4年9月30日現在)によると、推進地域は北海道・青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・千葉県の1道7県で計272市町村、特別強化地域はこのうち栃木県を除く1道6県で計108市町村です。

注目したいのは指定基準です。推進地域は「震度6弱以上」または「大津波(3m以上)が予想される地域のうち、この水位よりも高い海岸堤防がない地域」などを基準としています。一方、特別強化地域は「陸上において津波により30cm以上の浸水が地震発生から40分以内に生じる地域」とされ、注として「積雪寒冷地域以外は30分以内とする(茨城県以南)」と定められています。

この「40分」「30分」という数字は、制度の設計そのものが「逃げる時間はとても短い」という前提に立っていることを示しています。積雪寒冷地では移動に時間がかかるぶん、基準の時間が10分長く取られている点も、この地域の特徴が反映された結果です。内閣府の防災対応ガイドラインでも、最大クラスの地震では北海道から千葉県までの広い範囲で高さ3m以上の津波が到達し、北海道・青森県・岩手県を中心に地震発生後30分以内に高い津波が到達すると整理されています。

注意

避難の合図は「警報の数値」ではなく「揺れ」です。強い揺れや、弱くても長くゆっくりした揺れを感じたら、警報や避難指示を待たずに高い場所へ向かう。これは日本海溝・千島海溝に限らず、沿岸にいるときに共通する行動の基本です。

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北海道・三陸沖後発地震注意情報の読み方

ここからが、この地域のもうひとつの特徴です。

どんなときに、いつ出るのか

気象庁によると、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、北海道の根室沖から東北地方の三陸沖の巨大地震の想定震源域やその周辺でモーメントマグニチュード(Mw)7.0以上の地震が発生し、大規模地震の発生可能性が平常時より相対的に高まっている際に発表される情報です。運用の開始時期は、内閣府のガイドライン概要資料に令和4年(2022年)12月と記載されています。

発表条件は、巨大地震の想定震源域内でMw7.0以上の地震が発生した場合と、想定震源域に影響を与える外側のエリアでMw7.0以上の地震が発生し、想定震源域に影響を与えると評価された場合の2つです。発表までの流れは、気象庁において一定精度のMwを推定し(地震発生後2時間程度)、条件を満たす先発地震であると判断でき次第、情報が発表されます。その後、準備が整い次第、内閣府・気象庁の合同記者会見が行われ、気象庁から情報の説明が、内閣府からとるべき防災対応の呼び掛けが行われます。

メモ

Mw(モーメントマグニチュード)は、震源断層のずれの規模を精査して得られるもので、地震発生直後に地震波の最大振幅から計算して津波警報等や地震情報に用いるマグニチュードとは別物です。精査に時間がかかるため、「地震発生から2時間程度」という時間差が生まれます。速報のMと後から出るMwの数字が一致しなくても、誤報ではありません。

何を求めている情報なのか

情報が発表されたら、地震発生から1週間程度、社会経済活動を継続しつつ、日頃からの地震への備えの再確認をすることに加え、揺れを感じたり津波警報等が発表されたりしたら、すぐに避難できる態勢を準備する。これが気象庁が示す基本です。内閣府のガイドラインは、住民がとるべき防災対応を次の2つに大別しています。

分類内容の例
日頃からの地震への備えの再確認家具等の固定、家族との安否確認手段の取決め、安全な避難場所・避難経路の確認、出火・延焼防止の装備の確認、飲料水・食料・燃料・携帯トイレなどの備蓄の確認
情報の発表に伴う特別な備えすぐに逃げられる服装での就寝、子どもや高齢者等の要配慮者と同室で就寝、室内で最も安全かつ避難しやすい部屋で就寝、非常持出品を日中は常時携帯し就寝時は枕元に置く、身分証明書や現金・貴重品の常時携帯、防寒具等の積雪寒冷下に備えた装備を持ち出しやすい場所に置く、携帯端末の音量を平時より上げる

「特別な備え」がどれも大がかりでないことに気づきます。買い足すものではなく、置き場所と寝る前の一手間を変えるだけの内容が中心です。

ヒント

呼び掛けの期間は、地震発生から1週間(168時間が経過した以降の正時まで)です。ガイドラインでは、1週間が経過した後も後発地震の可能性がなくなったわけではないため、引き続き平時からの備えを徹底するよう促す、と整理されています。「1週間で終わり」ではなく「特別な備えは1週間、ふだんの備えはずっと」という区切りです。

「必ず起きる」情報ではない

ここが最も誤解されやすいところです。気象庁は、この情報について、後発地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測する情報ではなく、ましてや発生を予知する情報でもない、極めて不確実性が高い情報だと明記しています。根拠として示されているのは世界の統計です。過去100年程度(1904年〜2021年)にMw7.0以上の地震は1529事例あり、そのうち発生後7日以内に周辺でMw8クラス以上(Mw7.8以上)の地震が発生したのは19事例でした。確率はおおむね1%程度(百回に1回程度)で、これは平常時のMw8クラスの地震発生可能性に比べると十倍程度にあたる、という説明です。

一方で、実際に千島海溝沿い・日本海溝沿いで後発地震が発生した事例も2件確認されています。

先発地震後発地震間隔
1963年 択捉島南東沖 Mw7.0Mw8.5約18時間後
2011年 東北地方太平洋沖 Mw7.3Mw9.0(東北地方太平洋沖地震)約2日後

気象庁は留意事項として、後発地震の発生可能性は先発地震から時間が経つほど低くなること、震源から遠いところほど低くなること、後発地震の規模が大きいほど低くなること、そして統計的には先発地震を伴わずに大規模地震が突発的に発生することのほうが多く、大地震の前に必ずこの情報が出るものではないことを挙げています。

注意

「情報が出ていないから当分は大丈夫」という読み方は、いちばん危険な誤読です。気象庁の説明では、Mw8クラス以上の大規模地震は、この情報が発表されていない状況で突発的に発生することが多いとされています。情報は備えを一段上げる合図であって、地震の予告ではありません。

内閣府のガイドラインには、印象に残る言い回しもあります。情報発表時に地震が起こらなかった場合でも、それを「空振り」と捉えるのではなく、防災訓練や防災意識の向上につなげる「素振り」と捉えましょう、という考え方です。あわせて、南海トラフ地震臨時情報との違いとして「事前避難を伴う情報を発表しない」ことも整理されています。さらに気象庁のページには、情報発表時は社会経済活動を継続した上で必要な防災対応を実施すること、国や自治体からの事前避難の呼び掛けはしないことが、はっきり書かれています。仕事や学校を止める情報ではない、という点は覚えておくと迷いません。

実際に発表された2回

内閣府のガイドライン概要資料には、令和4年12月の運用開始以降、情報発表条件を満たす地震が発生したのは2025年12月と2026年4月である旨が記載されています。

1回目は2025年12月です。気象庁の地震・火山月報(防災編)によると、12月8日23時15分に青森県東方沖の深さ54kmでM7.5の地震が発生し、青森県八戸市で震度6強を観測、岩手県の久慈港で64cm、北海道の浦河で50cmなど太平洋沿岸を中心に津波が観測されました。気象庁は震源位置や規模を精査した結果、9日02時00分に情報を発表し、特別な注意の呼び掛け期間は12月16日00時00分に終了しています。2回目は2026年4月で、4月20日の夕方に三陸沖で発生した地震(Mw7.4)を受けて同日19時30分に発表され、呼び掛け期間は4月27日17時に終了しました。

2025年12月の地震の規模・震度・津波観測値は気象庁「地震・火山月報(防災編)令和7年12月」特集、情報の発表時刻は内閣府・気象庁の報道発表資料(令和7年12月9日、令和8年4月20日、同4月27日)によります。

なお、ガイドラインの概要資料では、過去約100年間に情報発表条件を満たす地震は計48回発生しており、情報の発表頻度はおおむね2〜3年に1回程度(約2.5年に1回)と見込まれています。めったに出ない情報ではありますが、一生に何度かは出会う可能性がある、という頻度感です。

南海トラフ地震臨時情報との違いと共通点

「1週間、備えを上げる情報」と聞くと、南海トラフ地震臨時情報を思い出す方も多いはずです。内閣府のガイドラインには、両者の違いを整理したコラムがあります。

観点北海道・三陸沖後発地震注意情報南海トラフ地震臨時情報
「調査中」の情報発表しない「調査中」を発表する(評価検討会の臨時開催を知らせる)
情報の段階1種類巨大地震警戒・巨大地震注意などのキーワードで分かれる
事前避難事前避難を伴う情報は発表しない「巨大地震警戒」では事前避難が呼びかけられる
呼びかけられる防災対応日頃からの備えの再確認と、迅速な避難体制の準備「巨大地震注意」では、後発地震注意情報と同じ内容
期間の目安地震発生から1週間程度「巨大地震注意」は1週間程度。「巨大地震警戒」は1週間の事前避難に加え、その後さらに1週間の特別な備え

ガイドラインは、この違いの背景として、千島海溝沿い・日本海溝沿いでは南海トラフ沿いにおける「半割れケース」のような事例が確認されていないことを挙げています。想定震源域の半分が先に壊れるという明確なパターンが見えていないため、事前避難という強い対応まではとらない設計になっている、と読むことができます。一方で共通点もはっきりしています。どちらも「地震を予知する情報ではない」「発表されても必ず起きるわけではない」「社会経済活動は続けたうえで備えを一段上げる」という考え方で作られており、家庭がとる対応の中身は、南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」とほぼ同じです。

南海トラフ地震臨時情報の3つのキーワードと家庭の対応はこちら

「南海トラフ地震臨時情報」が出たら家庭は何をする?注意・警戒でやること

情報が出たとき、家庭は実際にどう動いたのか

2025年12月の発表を受けて内閣府が行った調査があります。大規模地震防災対策推進検討会(令和8年3月2日)の資料によると、2026年1月から2月にかけて、呼び掛けの対象地域の自治体(1道6県182市町村)、その地域に係る事業を実施している指定公共機関等の事業者101社、そして住民3,500人を対象に調査が実施されました。

住民のうち情報を「見聞きしたことがある」と答えた人は77%で、そのうち情報発表前から防災対応の内容を知っていた人は53%、今回の発表で初めて知った人は30%でした。実際にとった対応(複数回答)は、食料・水の備蓄・確認が24%、津波ハザードマップの確認が18%、非常用持ち出し袋の準備・確認が14%、住まいの指定緊急避難場所・避難経路の確認が13%、家具の転倒防止対策が9%、枕元に防災グッズを置くなど「すぐに逃げられる態勢」をとった人が8%でした。一方、「日頃からの備えがあるため特に何もしていない」が22%、「日頃の備えはないが特に何もしていない」が35%です。

内閣府はこの結果について、「特別な備え」(すぐに逃げられる態勢の維持等)をとった住民は最大で1割程度、「日頃からの備えの再確認」(備蓄の確認等)をとった住民は最大で2割程度で、具体的な防災対応まで浸透できていないことが課題だと整理しています。

ヒント

この数字は、責める材料ではなく設計のヒントです。情報が出てから何をするかを考えると、たいていは間に合いません。逆に言えば、「この情報が出たら、わが家はこの3つをやる」と平時に決めてメモしておくだけで、上位1割の行動になれます。

わが家の「情報が出たらやること」を3つ決める

  1. 1

    寝るときの一手を決める

    たとえば「寝室のドア近くに上着とスニーカー、ヘッドライトを置く」。ガイドラインが挙げる、すぐに逃げられる服装での就寝や、非常持出品を枕元に置くという対応にあたります。冬なら、防寒具を持ち出しやすい場所に移すところまで含めます。
  2. 2

    持ち歩くものを決める

    日中は非常持出品を常時携帯する、身分証明書や現金・貴重品を持ち歩く、という対応です。通勤・通学カバンに入る最小限を先に決めておくと続きます。
  3. 3

    通知の受け取り方を決める

    携帯電話等の緊急情報を取得できる端末の音量を平時より上げる、ラジオや防災行政無線の受信機を生活空間に置く、という対応です。深夜に情報が出る可能性を考えると、音量設定は手間の割に効果があります。決めた3つは紙1枚にして、家族が見る場所に貼っておきます。

備蓄・持ち出し袋・連絡ルールの総点検はこちら

防災週間にわが家の備えを総点検|防災の日(9月1日)に見直す備蓄・持ち出し袋・連絡ルール

北日本以外に住んでいる人にとっての意味

「うちは太平洋側の北のほうではないから関係ないのでは」と感じた方もいると思います。けれども、この訓練から持ち帰るべきことは、地域を問わず同じです。

まず、政府の総合防災訓練は年度ごとの大綱にもとづいて想定が決まります。令和8年度は千島海溝・日本海溝と首都直下が題材でしたが、これは「今年はここが危ない」という意味ではありません。自分の住む地域が題材にならない年のほうが多い、ということでもあります。自分の地域については、自治体が公表している被害想定とハザードマップを見るのが確実です。

次に、後発地震注意情報の読み方は、他の防災情報にもそのまま応用できます。数字(確率や規模)より「誰が・いつまでに・何をするか」を読むこと。「必ず起きる」と書かれていない情報を予告として読まないこと。情報が出ていない状態のほうが標準であり、備えは平時に作っておくこと。この3つは、南海トラフ地震臨時情報でも、噴火警戒レベルでも、大雨の警戒レベルでも共通します。

そして、低体温症のリスクは雪国だけの話ではありません。停電で暖房が止まれば、本州の平野部でも室温は下がります。報告書が挙げている「乾いた衣服、防寒具、暖房器具、発熱剤入り非常食」という組み合わせは、雪の降らない地域の冬の停電にもそのまま当てはまります。

  1. 1

    国土交通省のハザードマップポータルサイトを開く

    「わがまちハザードマップ」から市区町村名で検索すると、その自治体が公開しているハザードマップにたどりつけます。内閣府のガイドラインでも、避難場所・避難経路の確認方法として自治体サイトとこのポータルが挙げられています。
  2. 2

    自宅・職場・学校の位置に印をつける

    津波、洪水、土砂災害、高潮など、種類ごとに色分けが違います。「うちはどの災害の色に入っているか」を分けて見るのがコツです。
  3. 3

    自治体の被害想定を探す

    都道府県や市区町村が「地震被害想定調査」として公表していることが多く、震度や津波の到達時間が地域ごとに示されています。北海道・東北の太平洋側にお住まいなら、内閣府の推進地域・特別強化地域の市町村一覧に自分のまちが入っているかもあわせて確認できます。
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    指定緊急避難場所と、そこまでの経路を歩く

    地図の上では近く見えても、坂や踏切、夜間の暗さで印象は変わります。冬は路面凍結も想定して、一度実際に歩いてみてください。

寒い時期の地震に備える|家庭でできる防寒の一手

高台は「ゴール」ではなく「通過点」

報告書は、冬季に高台等の屋外の避難場所へ逃れた場合に低体温症のリスクが生じること、屋内での避難でも寒さにより低体温症となる場合があることを指摘し、高台等に一時避難した人が避難所へ移動するための二次避難の経路を事前に把握しておくことの啓発が必要だとしています。家庭で言い換えると、「まず高いところへ逃げる」の次に「そのあと、どの屋内へ移るか」までを一度考えておく、ということです。

また、ガイドラインの住民向けの記載には、家族の集合場所について「屋外の高台等ではなく、風雪を避けられる場所とする」という注記もあります。避難計画を決めるとき、つい「◯◯公園」のような屋外を選びがちですが、寒い季節を想定するなら屋内の候補も持っておきたいところです。

停電・避難時の防寒・保温グッズの選び方はこちら

停電・避難時の防寒・保温グッズの選び方比較|電源に頼らず暖をとる5タイプを「重ね着・断熱・局所加温」で組み合わせる

備えるものは、特別なものでなくてよい

ガイドラインが挙げる「日頃からの地震への備えの再確認」のうち、寒さに関わるのは、飲料水・食料品・燃料・携帯トイレ等の備蓄の確認、停電時に情報を得るための携帯ラジオ・予備バッテリー・携帯電話の充電器等の確認、寒冷下での避難に備えたしっかりとした防寒着・毛布・発熱剤入り非常食等の準備の確認、要配慮者の薬や備品・非常持出品の確認です。専門的な装備を求めているわけではなく、家にあるものの置き場所を変えるだけでも、かなりの部分は満たせます。

寒い季節の地震に向けて、家で確認しておきたいこと

  • 持ち出し袋に、上着・帽子・手袋・靴下の替えなど、乾いた衣類が入っているか
  • アルミブランケットや薄手の毛布など、体温を保つものが1人分ずつあるか
  • 発熱剤で温められる非常食や、温かい飲みものを作れる手段があるか
  • 停電時に使える明かりと、携帯ラジオ、モバイルバッテリーがあるか
  • 寝室のそばに、すぐ履ける靴と上着を置いてあるか
  • 家族の集合場所に、風雪をしのげる屋内の候補が含まれているか
  • 避難場所までの経路に、凍結や積雪で通りにくくなる場所がないか

注意

暖房器具は、使い方を誤ると一酸化炭素中毒や火災の原因になります。屋内で燃焼式の暖房や調理器具を使うときは、必ず製品の取扱説明書にしたがい、換気を確保してください。避難所など共同の場所での使用可否は、施設の管理者や自治体の指示に従ってください。

なお、ガイドラインの同じ項目には「暖房機器の転倒防止」も明記されており、出火・延焼防止として消火器の準備、感震ブレーカーの設置と動作確認、屋外灯油タンクが倒れないかの確認、火災警報器の電池切れの確認も挙げられています。冬は暖房を使う季節であり、揺れたときに火の元が増える季節でもあります。防寒の備えと出火防止の備えは、セットで考えるのが合理的です。

まとめ|訓練を「わが家の宿題」に翻訳する

2026年9月1日の政府総合防災訓練から見えてきたのは、次の3つです。

1つ目は、この地震の想定が「冬の深夜」を最悪ケースに置き、津波から逃げたあとの低体温症まで数えているという特徴です。避難は「高いところへ行く」で終わりではなく、「そのあと暖かい場所へ移る」までが計画になります。

2つ目は、津波避難対策特別強化地域の指定基準が「地震発生から40分以内(積雪寒冷地域以外は30分以内)に30cm以上の浸水」であるように、制度そのものが「逃げる時間の短さ」を前提にしていることです。だからこそ、対策により死者数が約8割減ると推計されるほど、早期避難の重みが大きくなります。

3つ目は、北海道・三陸沖後発地震注意情報が「予告」ではなく「素振り」の合図だということです。1週間、備えを一段上げる。そのために平時から「情報が出たらやること」を決めておく。この形は、南海トラフ地震臨時情報でも同じように使えます。

ハザードマップを開き、自分の地域の想定を知り、家族で1枚のメモを作る。訓練の日を、そのきっかけにしてみてください。なお、避難や防災対応の実際の判断は、お住まいの自治体および気象庁が発表する最新の情報を優先してください。

2026年の政府総合防災訓練は、どんな想定で行われたのですか?
首相官邸の発表によると、令和8年9月1日(防災の日)に全閣僚参加のもとで令和8年度総合防災訓練が行われ、今年度は首都直下地震と日本海溝地震・千島海溝地震を想定した訓練が実施されました。地震の規模については、時事通信の報道で、午前7時に北海道十勝沖を震源とするマグニチュード8.3の地震により北海道日高地方東部で震度7を観測したという想定だったと伝えられています。この規模・震度の数値は報道による情報です。
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震では、どのくらいの被害が想定されているのですか?
内閣府の解説ページによると、被害が最大となるのは避難に時間がかかり積雪の影響で移動が難しい「冬の深夜」で、想定される死者数は日本海溝モデルで約19万9千人、千島海溝モデルで約10万人です。津波から逃れたあとに低体温症で死亡するリスクが高まる「低体温症要対処者」は、日本海溝モデルで約4万2千人、千島海溝モデルで約2万2千人と推計されています。一方で、避難の迅速化や津波避難ビル・タワー等の活用・整備、建物の耐震化率の向上により、死者数は約8割減らせると見込まれています。
「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出たら、避難しなければいけませんか?
いいえ。気象庁は、この情報の発表時は社会経済活動を継続した上で必要な防災対応を実施することとし、国や自治体からの事前避難の呼び掛けはしないと明記しています。内閣府のガイドライン概要でも、南海トラフ地震臨時情報との違いとして「事前避難を伴う情報を発表しない」ことが整理されています。求められているのは、日頃からの地震への備えの再確認と、すぐに逃げられる態勢の維持や非常持出品の常時携帯といった「特別な備え」です。また気象庁は、この情報は後発地震を予知するものではなく、世界の事例ではMw7.0以上の地震の後7日以内にMw8クラス以上が発生した割合はおおむね1%程度(百回に1回程度)としています。ただし先発地震で津波警報等が発表されている場合は、その避難が最優先です。実際の行動は自治体の呼び掛けにしたがってください。
南海トラフ地震臨時情報と、どこが違うのですか?
内閣府のガイドラインでは、主な違いとして2点が挙げられています。1つは、北海道・三陸沖後発地震注意情報には「調査中」にあたる情報がなく、評価検討会の開催を知らせる段階がないこと。もう1つは、事前避難を伴う情報を発表しないことです。南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震警戒」では事前避難が呼びかけられますが、後発地震注意情報にはその段階がありません。家庭が呼びかけられる防災対応の中身は、南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」と同じとされています。
北日本に住んでいなくても、この話は関係ありますか?
はい。政府の総合防災訓練の想定は毎年度の総合防災訓練大綱で決まり、年によって首都直下地震や南海トラフ地震が題材になることもあります。持ち帰るべきなのは特定の地震名ではなく、「自分の地域の想定を確認する」という行動です。国土交通省のハザードマップポータルサイトや自治体が公表する被害想定で、自宅・職場・学校のリスクを確かめるところから始めてみてください。停電で暖房が止まったときの低体温症対策は、雪の降らない地域の冬にも共通する課題です。
特別強化地域とは何ですか?自分のまちが対象か知りたいです。
「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震津波避難対策特別強化地域」は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法にもとづく指定です。指定基準は、陸上において津波により30cm以上の浸水が地震発生から40分以内(積雪寒冷地域以外は30分以内)に生じる地域とされています。内閣府の市町村一覧(令和4年9月30日現在)では、推進地域が北海道・青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・千葉県の1道7県272市町村、特別強化地域がこのうち栃木県を除く1道6県108市町村です。ご自身の市町村が対象かは、この一覧か自治体の防災ページで確認できます。

出典・参考

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