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在宅医療機器を使う家族がいる家庭の停電対策|電気が要るものの棚卸しと電源の二重化

シュン・家族・ペット防災担当
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在宅医療機器を使う家族がいる家庭の停電対策|電気が要るものの棚卸しと電源の二重化

家族の誰かが在宅で医療機器を使っていると、停電はただの不便ではなくなります。人工呼吸器、在宅酸素療法の酸素濃縮装置、たん吸引器、電動ベッド、エアマット、輸液や経管栄養のポンプ、冷蔵保存が必要な薬。どれも「コンセントが生きている」ことを前提にした道具です。この記事では、わが家の「電気が要るもの」を平時に洗い出し、電源を二重化し、連絡先と届け出まで済ませるところまでを、公的機関や都道府県の資料をもとに手順として整理します。医療上の判断はここでは扱いません。何をどう確認すればよいかという段取りの部分だけをお渡しします。

メモ

この記事は、機器の設定や医療的な処置の方法を説明するものではありません。バッテリーの持続時間、代替手段の可否、避難の判断はいずれも機種と本人の状態によって大きく異なります。必ず主治医、訪問看護ステーション、機器の取扱業者(メーカー・供給業者)に確認してください。

この記事の役割|すでに公開している記事との違い

モシモニアには停電や薬、避難計画の記事がすでにあります。本記事はそれらの交差点にあたる「電源が止まると命に関わる機器がある家庭」に絞った内容です。重複する部分は簡潔にとどめ、それぞれの記事に送ります。

記事扱っていること本記事との関係
停電への備えと停電時の過ごし方明かり・電源・情報・食の一般的な停電対策本記事は「止まると困る機器」に絞った実務編
ポータブル電源・モバイルバッテリーの選び方容量(Wh)と出力(W)の考え方、世帯人数別の目安本記事は医療機器につなぐ前提での確認事項
持病の薬を災害で切らさない備えお薬手帳、備蓄日数、災害時の処方の特例本記事は冷蔵保存や電源が要る医療の側
個別避難計画の作り方市町村の制度と相談の進め方本記事は計画に書き込む中身(電源と代替手段)
シニアと暮らす家庭の防災備えの全体像、離れて暮らす親本記事は医療機器がある家庭の特化編

停電対策の全体像はこちら

停電への備えと停電時の過ごし方|明かり・電源・冷蔵庫の現実的な対策

まず、主治医と機器業者に確認する5つのこと

備えの出発点は買い物ではありません。「うちの機器は、電気が止まったら何分持つのか」を正確に知ることです。ここが曖昧なまま電源を買っても、足りているのか余っているのか判断できません。

  1. 1

    内部バッテリーの持続時間

    機器本体に内蔵されたバッテリーで何時間動くか。設定条件や劣化の度合いで変わるため、カタログ値ではなく「今のこの機器で、この設定なら何時間か」を業者に聞きます。取扱説明書の該当ページに付箋を貼っておくと、当日探さずに済みます。
  2. 2

    外部バッテリーの型番と本数

    機器専用の外部バッテリーがあるか、型番は何か、何本まで接続できるか。福岡県は在宅で人工呼吸器を使う方に向けて、複数台の外部バッテリーを用意し、購入の年月日を貼って定期的に新しいものと交換するよう案内しています。
  3. 3

    電気を使わない代替手段の有無

    人工呼吸器なら蘇生バッグ(アンビューバッグ)、吸引器なら足踏み式や手動式。福岡県の同じページは、蘇生バッグを人工呼吸器が使用できなくなった場合に呼吸確保に最も役立つものと位置づけ、吸引器は充電式・足踏み式・手動式のいずれかを準備するよう促しています。手元にあるか、使い方を習ったかを確認します。
  4. 4

    停電時のアラームと復旧時の再設定

    電源の異常を知らせるアラームが正常に作動するかを確認しておくこと、そして電気が戻ったときに機器を元の設定に戻せることの両方が要ります。埼玉県難病医療連絡協議会・埼玉県の手引きは、人工呼吸器の再設定ができるように初期設定を専門職と確認しておくことをチェック項目に挙げています。
  5. 5

    停電時の連絡先

    機器の取扱業者の24時間つながる番号、訪問看護ステーション、主治医の医療機関。埼玉県の手引きの連絡表には、医療機関・訪問看護ステーション・人工呼吸器取扱事業者・ケアマネジャー・相談支援専門員・市役所・消防署・保健所・電力会社が並んでいます。これを1枚にまとめて、機器のそばと持ち出し袋の両方に置きます。

外部バッテリーの複数準備・購入年月日の記載・定期交換、アラームの作動確認、蘇生バッグと吸引器の位置づけは、福岡県「在宅で人工呼吸器を御使用の方及びその御家族等の方へ(停電への備え)」の記載にもとづきます。人工呼吸器の再設定と連絡表の項目は、埼玉県難病医療連絡協議会・埼玉県「在宅難病人工呼吸器等使用患者さん(ご家族)のための平時から備える災害対策の手引き」(令和6年12月2日更新)によります。

わが家の「電気が要るもの」棚卸し表を作る

別府市防災局防災危機管理課がまとめ、中央防災会議の防災対策実行会議に委員提出資料として出された「医療的ケアが必要な人と家族のための災害時対応ガイドブック」は、電源を必要とする機器の例として、人工呼吸器、加湿器、吸引器、モニター、酸素濃縮器、栄養ポンプ、腹膜透析器を挙げています。実際の家庭ではここに電動ベッド、エアマット、意思伝達装置、吸入器、体温調整のための電気毛布や扇風機、冷蔵保存の薬を入れる冷蔵庫が加わります。

まず、次の形の表を紙かスマホのメモで作ってください。空欄が残っても構いません。空欄が残ること自体が「業者に聞くこと」のリストになります。

機器名消費電力(W)内部バッテリー外部バッテリー電気を使わない代替優先度
人工呼吸器銘板を見て記入○時間○型×○本蘇生バッグ1
たん吸引器銘板を見て記入○時間予備の充電式足踏み式・手動式1
酸素濃縮装置銘板を見て記入機種による機種による携帯用酸素ボンベ1
経管栄養ポンプ銘板を見て記入○時間―停電時の注入方法を主治医・訪問看護に確認2
電動ベッド銘板を見て記入――手動でのギャッジアップ2
エアマット銘板を見て記入――手による体位交換2
意思伝達装置銘板を見て記入○時間―文字盤2
冷蔵保存の薬冷蔵庫のW――保冷剤とクーラーボックス1

消費電力は、本体の裏や底面にある銘板(定格ラベル)に「消費電力」「W」「VA」として書かれています。ここを写真に撮っておくと、あとで機器業者やポータブル電源の販売店に相談するときにそのまま見せられます。なおVAはWと同じ数値ではなく、また酸素濃縮装置や電動吸引器のようにモーターやコンプレッサーを持つ機器は、動き始めるときに定格より大きな電流が流れます。銘板の数値ちょうどの出力の製品では起動できないことがあるため、どの容量・出力なら足りるかは銘板の写真を見せたうえで機器の取扱業者に確認してください。

ヒント

優先度は「止まったら何分で困るか」で付けると迷いません。分単位で困るものが1、時間単位で困るものが2、日単位で困るものが3。1が2つ以上ある家庭は、電源の二重化を早めに相談する価値があります。

埼玉県の手引きが挙げている「電動機器の停電時の対応」の項目も、そのまま棚卸しに使えます。電動ベッドは手動でギャッジアップする方法を知っているか、ホームエレベーターは停電時の作動を知っているか、意思伝達装置はパソコンだけでなく文字盤にも慣れているか、エアマットが止まったときの体位交換の方法を知っているか。道具を買う前に、こうした「電気なしでどうするか」を家族で確認しておくほうが先です。

停電後に使える時間を、足し算で出す

埼玉県難病医療連絡協議会・埼玉県の手引きは、非常用電源の第1段階として、次の計算をするよう促しています。

内部バッテリー[ ]時間+外部バッテリー1台あたり[ ]時間×[ ]台=合計で約[ ]時間、停電後に使用できる。

そのうえで「目標8時間」と示されています。まず8時間を確保し、その間にラジオなどで情報を集めながら次の手を準備するという考え方です。

合計時間の計算式と「目標8時間」は、埼玉県難病医療連絡協議会・埼玉県「在宅難病人工呼吸器等使用患者さん(ご家族)のための平時から備える災害対策の手引き」(令和6年12月2日更新)の記載によります。必要な時間は機種・設定・本人の状態によって異なるため、目標値は主治医と機器業者に相談して決めてください。

同じ手引きは、バッテリーの管理についても具体的です。使わなくても2年程度しか持たないとして、定期的に買い替えること、定期的に外部バッテリーを充電すること、たまに実際に使ってみること、停電時のバッテリーの手配について医療機器メーカーと相談しておくことを挙げています。電動式の吸引器についても、2年ごとに購入して交互に使用・充電しておくとよいという実務的なコツが添えられています。

別府市のガイドブックも、外部バッテリーはメーカー正規品または医療用の非常用携帯バッテリーを用意すること、劣化により充電時間が長くなったり供給できる時間が短くなったりすることがあるため、メーカーの保証期間を確認しておくことを求めています。

注意

「置いてあるから大丈夫」がいちばん危ないパターンです。買った日を本体に書き、年に1回は実際に外部バッテリーで動かしてみる。この2つだけでも、いざというときの空振りをかなり減らせます。

電源を二重化する|5つの手段と、それぞれの注意点

バッテリーだけでは長時間の停電に届きません。別府市のガイドブックと埼玉県の手引きは、段階を分けて手段を用意することを勧めています。それぞれの特徴を整理します。

手段位置づけ押さえておきたいこと
機器専用の外部バッテリー第1段階の主役メーカー正規品または医療用を複数。購入日を貼り定期交換
UPS(無停電電源装置)停電の瞬間をつなぐ常時接続しておくと停電時に瞬時に切り替わり、突然の停止を防ぐ
蓄電池・ポータブル電源第2段階の中心本人や介助者が運搬できる大きさで、正弦波の交流出力のもの。購入のほかレンタルも
車+インバーター第2段階の補助車種で方法が異なる。保管場所が浸水・倒壊しないか平時に確認。給電中はエンジンをかけ続けるため、車庫内でのアイドリングは行わない
発電機第2段階の最後屋内では絶対に使用しない。外部バッテリーの充電用と割り切る使い方もある

別府市のガイドブックは、蓄電池について「医療機器を使用する本人や介助者が使用・運搬可能な、正弦波交流出力のものを選ぶ」と明記しています。ポータブル電源を検討するときは、容量(Wh)と定格出力(W)に加えて、この出力波形の項目を必ず見てください。

UPSの説明、蓄電池の選び方(正弦波交流出力・運搬可能)、車から電源をとる際の保管場所への留意は、別府市防災局防災危機管理課「医療的ケアが必要な人と家族のための災害時対応ガイドブック 支援者版」(内閣府 中央防災会議 防災対策実行会議 第18回・令和4年9月20日の委員提出資料)の記載によります。

埼玉県の手引きは第2段階として、自動車のシガーソケットから電気を取る(エンジンはかけたまま、機器の電源に直流12Vがそのまま使える場合のみ)、高性能なインバーターを持った発電機から交流100Vを取る、自動車のシガーソケットから高性能なインバーターで交流100Vを取る、発電機の交流100Vで外部バッテリーを充電し交換しながら使う(この場合は外部バッテリーが3つ以上必要)という4つを挙げたうえで、インバーターを介する方法についてはあくまでも自己責任であり、平常時にきちんと機器が動くかテストをするよう明記しています。また、機器に直接つなげられないインバーターや発電機であっても、バッテリーの充電はできるとも書かれています。

注意

ポータブル電源や車載インバーターを医療機器につなぐ前に、必ず機器の取扱業者・メーカーに可否を確認してください。医療機器への使用を想定していない製品もあります。確認が取れないうちは「機器に直結する」のではなく「外部バッテリーの充電に使う」という使い方のほうが安全側です。

容量(Wh)と出力(W)の基本はこちら

防災用ポータブル電源・モバイルバッテリーの選び方|容量と出力の目安、後悔しない選び方

発電機は屋内で使わない。車のアイドリングも同じ

ここだけは断定的に書きます。消費者庁が経済産業省・製品評価技術基盤機構(NITE)と同時に公表した2023年8月29日の注意喚起は、発電機について屋内では絶対に使用しないこと、自動車内やテント内での使用は屋内と同等以上の危険性があること、屋外であっても排ガスが逆流しないよう出入口や窓などの開口部から離れた風通しのよい場所で使うことを求めています。一酸化炭素は無色無臭で、気づかないうちに中毒に至る危険があります。

東京電力パワーグリッドも、医療機器を使う家庭に小型発電機等を貸し出す案内の中で、排気ガスには一酸化炭素などの有害物質が含まれるため室内では使用しないでくださいと明記しています。

同じことが、車から電源をとる方法にも当てはまります。シガーソケットやインバーターを使うにはエンジンをかけ続ける必要がありますが、車庫やカーポート、建物に近い場所でのアイドリングは排気が室内へ回り込むおそれがあります。JAFの試験では、雪で車体が覆われてマフラーが塞がれた条件で、車内の一酸化炭素濃度が16分後に400ppm、22分後に1000ppmまで上がったことが報告されています。車から給電するときは、風通しのよい屋外に停め、排気口の周囲を塞がないこと、雪の日はマフラー周辺の除雪を繰り返すことを前提にしてください。付き添う人が車内で長時間過ごすのも避けます。

発電機の一酸化炭素中毒に関する注意は、消費者庁「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!」(2023年8月29日、経済産業省・製品評価技術基盤機構と同時発表)、および東京電力パワーグリッド「停電時の注意点について」の記載によります。車のアイドリング時の一酸化炭素については、JAFのユーザーテストによります。

なお、発電機や車を使うと騒音と排気の問題が出ます。埼玉県の手引きは、近所にあらかじめ療養状況を知らせておくなど、日ごろからのつきあいを欠かさないよう勧めています。

電気を使わない手段を、家族2人以上が使えるようにする

電源を厚くしても、いつかは尽きます。第3段階として、電気を使わない方法に切り替えられることが要ります。埼玉県の手引きは、第3段階として蘇生バッグや人工鼻、酸素ボンベなど電気を使わない製品の使用を挙げています。そのうえで別の章では、蘇生バッグと足踏み式(または手動式)吸引器について、それぞれ家族等2名以上の操作者を確保することをチェック項目にしています。理由も明快です。交替しないと疲れてしまい、ほかの行動ができなくなるからです。

足踏み式吸引器については、1人では操作が困難なため2人がかりで実施するよう、応援の人をあらかじめ頼んでおくことが示されています。同手引きは「蘇生バッグを使ったり、人工呼吸器の再設定など、普段していないことは、非常時にいきなりできるものではありません。普段からの練習が必要です」とも書いています。

ヒント

練習の機会は作らなくても訪れます。訪問看護師が来る日に「今日、蘇生バッグの手順を見ていただけますか」と頼む。機器業者の定期点検の日に、外部バッテリーへの切り替えを一緒にやってみる。すでにある予定に1つ足すのが、いちばん続きます。

在宅酸素療法(HOT)の家庭で押さえること

酸素濃縮装置は電気で動くため、停電すると止まります。独立行政法人環境再生保全機構の情報誌は、携帯用酸素ボンベを枕元に置いておき、酸素濃縮器からボンベにチューブを切り替えれば酸素を吸入し続けられると説明し、切り替え方法は事前に指導を受けておくことが大切だとしています。ボンベの残量と本数の確認は、停電に備えるうえで欠かせません。

もう1つ、停電と組み合わさると危険が増すのが火気です。厚生労働省(医薬局医薬安全対策課安全使用推進室)は、酸素濃縮装置等の使用中は装置の周囲2メートル以内に火気を置かないこと、酸素吸入中はたばこを絶対に吸わないことを呼びかけています。同時に、火気の取扱いに注意し取扱説明書どおりに正しく使用すれば酸素が原因で火災になることはないので、過度に恐れることなく医師の指示どおりに酸素を吸入してくださいとも明記しています。

携帯用酸素ボンベへの切り替えは、独立行政法人環境再生保全機構「WEB版すこやかライフ」No.48の記事によります。周囲2メートル以内に火気を置かないことと、過度に恐れる必要はないという記述は、厚生労働省「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」によります。消防庁予防課も「在宅酸素療法時の火気の取扱いにご注意ください」で同様の注意を呼びかけています。

停電中はろうそくやカセットこんろを使いたくなりますが、酸素を使っている部屋では距離の確保が必要です。明かりは電池式のランタンやヘッドライトに置き換えます。埼玉県の手引きの備蓄リストにも、ヘッドライト型懐中電灯2個と乾電池30本が挙げられています。

停電の前・最中・あとにやること

予測できる停電の前(台風・大雨・計画停電)

  1. 1

    すべてのバッテリーを満充電にする

    機器の内部バッテリー、外部バッテリー全数、ポータブル電源、スマートフォン。前日のうちに済ませます。埼玉県の手引きは、車から給電する備えの一部として、普段から自動車の燃料を半分以上にしておくことを挙げています。台風の予報が出たら、この点も合わせて確認しておくと安心です。
  2. 2

    残薬と衛生材料を数える

    同手引きは、残薬を確認し少ない場合は早めに受診すること、食料や水を確認して足りなければ買い足すことを挙げています。吸引チューブ、回路一式、人工鼻、アルコール綿などの消耗品も同時に数えます。
  3. 3

    機器業者と訪問看護に一報を入れる

    「台風が近づいているので、停電時の連絡方法を確認させてください」と伝えるだけで十分です。先方の災害時体制も聞けます。
  4. 4

    機器を水と風から守る位置に動かす

    別府市のガイドブックは、医療機器は水気厳禁だと強調しています。浸水のおそれがあるなら2階へ、窓ガラスの近くなら壁側へ。ハザードマップで自宅の浸水深を確認しておきます。
  5. 5

    避難するかどうかを、先に決めておく

    「どうなったら避難するか」を家族と支援者で共有します。移動に時間がかかる家庭ほど、判断は早いほうが現実的です。

避難の段取りを制度から整える

個別避難計画の作り方|ひとりで避難が難しい家族のために、家族の側から動かす手順

実際に停電したとき

慌てて機器を触るより先に、順番を決めておくと迷いません。第1に、機器が内部バッテリーに切り替わっているか、アラームが鳴っていないかを確認する。第2に、外部バッテリーに切り替える手順を落ち着いて実行する。第3に、ラジオやスマートフォンで停電の範囲と復旧見通しを確認する。第4に、支援者へ連絡する。

別府市のガイドブックは、災害が発生した際には主な支援者(主治医、訪問看護ステーション、医療機器取扱業者、支援機関等)に安否と「どこで・どんな状況にあり、何が必要か」を伝えることが重要だとしています。この3点セットの言い方をあらかじめメモしておくと、動揺していても伝えられます。

埼玉県の手引きは、災害時は携帯電話に発信規制がかかり固定電話もつながりにくくなる一方、携帯メールのほうが機能しやすいこと、ファックス機能付きや子機付きなど電源が必要な電話機は停電時に使えないことも示しています。連絡手段は電話だけにしないでください。

連絡手段を複線化する

家族の安否確認、決めていますか|災害用伝言ダイヤル171と連絡手段の備え

復旧したあと

電気が戻ったときが、もう1つの山場です。機器を元の設定に戻せるか、初期設定を専門職と確認しておくことは前述のとおりです。あわせて、通電火災への注意も要ります。消費者庁の注意喚起は、避難時に時間的猶予がある場合は分電盤のブレーカーを切ること、電熱器具は停電時に電源プラグをコンセントから抜くこと、復旧後はコードの損傷や焦げ跡がないか外観を確認し、ブレーカーを入れたあと1台ずつプラグを差して動作確認すること、異音や異臭があれば使用を中止することを挙げています。

注意

医療機器については、この「外観の確認」をとくにていねいに行ってください。ブレーカーを戻す前に、機器やコードが濡れていないか、焦げ跡や損傷がないか、機器がどの状態になっているかを確認し、少しでも異常があれば通電せずに取扱業者へ連絡します。復旧の順番や再設定に迷ったら、自己判断で進めず取扱業者・訪問看護に相談するのが安全側です。

通電火災と感震ブレーカー

感震ブレーカーと通電火災対策|地震のあとの「電気の火事」を家庭で防ぐ

平時に済ませておく届け出と相談

道具の話が終わったら、次は紙の手続きです。ここは家族が動けば進む部分が多く、費用もかかりません。

電力会社への相談・登録

東京電力パワーグリッドは、自宅で人工呼吸器等の医療機器を使用していてバッテリー等の代替電源がない場合、同社が保有する小型発電機等を可能な限り貸し出すとして、最寄りのカスタマーセンターへの連絡を案内しています。加えて、東京都北区は、在宅で人工呼吸器を使用している方が東京電力パワーグリッドに患者登録することで、停電の際の復旧見通しなどを個別に知らせてもらえると案内しています(同区の案内では、在宅酸素療法器と睡眠時無呼吸症候群治療器は人工呼吸器ではないため登録の対象外とされています)。

一方、関西電力送配電は、停電が予定されている場合の注意点として、自宅で人工呼吸器などの医療機器を使用している場合はバッテリーなどの代替電源の準備を求め、停電中の健康状態が心配な場合は事前に医療機関などに相談するよう案内しています(同ページには患者登録の案内はありません)。

発電機の貸出と患者登録の内容は、東京電力パワーグリッド「停電時の注意点について」および東京都北区「在宅人工呼吸器使用者の停電時に備えた患者登録」の記載によります。関西電力送配電の案内は「停電が予定されている場合の注意点」によります。

つまり、扱いは送配電会社によって異なります。「電力会社に登録すれば大丈夫」と一般化せず、お住まいのエリアの一般送配電事業者に、登録制度の有無と申込方法を直接確認してください。

自治体の非常用電源の助成

在宅で人工呼吸器を使う方に向けて、非常用電源の購入費を助成する制度を設けている自治体があります。ただし対象者の要件は制度ごとにかなり狭く定められている点に注意が必要です。東京都の「在宅人工呼吸器使用難病患者非常用電源設備整備事業」は、指定難病または東京都難病医療費助成対象疾病にり患している在宅人工呼吸器使用難病患者が対象で、自家発電装置・無停電電源装置・蓄電池のうち自家発電装置と蓄電池はどちらか一方を選ぶ仕組みです(耐用年数は自家発電装置6年、蓄電池5年。申請は在宅人工呼吸療法を実施する医療機関が行います)。区市町村レベルでも、江戸川区や札幌市などが購入費の助成を実施していますが、江戸川区は災害時個別支援計画の作成済みであることを、札幌市は身体障害者手帳の所持などを要件にしており、対象の決め方は自治体ごとに異なります。

制度の名称、対象、上限額、申請窓口はいずれも自治体ごとに異なります。まずは市区町村の障害福祉担当課か保健所・保健センターに「在宅人工呼吸器 非常用電源 助成」と伝えて問い合わせるのが早道です。

個別支援計画・個別避難計画

自治体が在宅人工呼吸器使用者の災害時個別支援計画を作る取組もあります。港区の例では、区が本人・家族・関係者とともに、蘇生バッグやバッテリーなどの医療器具、生活物資の準備、いざというときの行動、支援者の確認を検討し、作成後は関係者間で共有して原則年1回更新するとされています。

これとは別に、災害対策基本法にもとづく避難行動要支援者名簿と個別避難計画があります。名簿の作成は平成25年の法改正で市町村の義務とされ、個別避難計画の作成は令和3年の法改正で市町村の努力義務とされました。努力義務であるため作成の進み方は自治体で差があり、内閣府(防災担当)が市町村向けの取組指針や手引きを公開しています。医療機器を使っている家庭は、この2つの計画に「電源の確保」を具体的に書き込めるかどうかが要です。何時間分の電源があり、尽きたらどうするのか、避難するならどこへ、誰の車で、何を持って行くのか。ここを言葉にしておくことが、当日の判断を軽くします。

災害時個別支援計画の運用例は東京都港区「在宅人工呼吸器使用者災害時個別支援計画の作成」、避難行動要支援者名簿と個別避難計画の制度は内閣府(防災担当)の公表資料によります。制度の運用は市区町村ごとに異なるため、お住まいの自治体にご確認ください。難病の方向けの都道府県別資料は、難病情報センターの「災害時難病患者支援ホームページリンク集」からたどれます。

自宅にとどまるか、移るか|判断は事前に決めておく

避難の判断は、当日に一から考えるものではありません。埼玉県の手引きは、地震の場合に自宅の損壊が軽微でインフラの被害も大きくなければ自宅待機も選択できるとしたうえで、自宅の損壊がひどい場合、電気・ガス・水道などインフラの損壊がひどい場合、呼吸器が損壊した場合は危険な状況であるため避難しましょうと示し、避難所の場所や発電機を借りられるかなどを各市町村に事前に確認しておくよう促しています。

一方で、避難先にも制約があります。同手引きは、避難所にたどり着いても人工呼吸器装着者のための食事や医療機器まで配慮されていない場合が多いことに触れています。別府市のガイドブックに寄せられた家族の声も、避難所の衛生環境やプライバシー、機器の騒音を理由に自宅避難が最優先だと考えていること、それが難しい場合は日ごろ利用している医療機関や福祉事業所を福祉避難所として使えると安心であることを伝えています。

福岡県も、主治医と長時間の停電が起こることに備えて、避難場所や入院可能な医療機関を協議しておくよう案内しています。つまり、家庭で決めておくべきことは次の3つに集約できます。

  • どういう状態になったら自宅を出るのか(電源の残り時間、建物の状態、断水の有無)
  • 出るとしたらどこへ行くのか(受け入れを事前に相談した医療機関、福祉避難所、親戚宅)
  • どうやって行くのか(誰の車で、機器と消耗品をどう運ぶか、機器を濡らさない方法)

メモ

この3つは、主治医・訪問看護・ケアマネジャーや相談支援専門員と一緒に決めるものです。家族だけで結論を出さず、次の受診や訪問の機会に「停電が長引いたときの行き先を相談したい」と切り出してみてください。

1週間を自宅で過ごすための備蓄

埼玉県の手引きは、約1週間自宅で過ごさざるを得ない場合を想定した準備を示しています。備蓄の例として、ミネラルウォーター22リットル(2リットル11本の例)、加湿用の蒸留水2リットル×10本、カセットこんろ用の燃料14本、栄養食21食分、ヘッドライト型懐中電灯2個、乾電池30本。医薬品・医療材料も1週間の使用に備えるとして、蘇生バッグ、呼吸器回路一式、人工鼻、気管カニューレ、滅菌精製水、アルコール綿、吸引チューブ、内服薬、健康保険証・障害者手帳・お薬手帳などが並びます。

別府市のガイドブックは、冷所保存の薬剤(インスリン製剤、抗利尿ホルモン剤など)や、体温調整のためのグッズ(電気毛布、ヒーター、湯たんぽ、扇風機など)の準備にも触れています。停電中の保冷方法は、事前に薬剤師に確認しておくのが確実です。

備蓄の品目と数量の例は、埼玉県難病医療連絡協議会・埼玉県の手引きに記載された1週間分の備蓄目標の例、冷所保存の薬剤や体温調整グッズの記述は別府市防災局防災危機管理課のガイドブックによります。必要量は機器の種類や本人の状態によって変わるため、実際の数量は訪問看護や機器業者と相談して決めてください。

薬の備えと災害時の特例

持病の薬を災害で切らさない備え|お薬手帳・備蓄日数・災害時の特例をやさしく整理

在宅医療機器がある家庭の停電対策チェック

  • 電気が要るものを1枚の表に書き出した(機器名・消費電力・内部バッテリー・代替手段・優先度)
  • 内部バッテリーと外部バッテリーの合計時間を計算し、目標時間を主治医・機器業者と決めた
  • 外部バッテリーに購入年月日を書き、定期的に充電・買い替えている
  • 年に1回、実際に外部バッテリーへ切り替えて動くことを確認している
  • 蘇生バッグ・足踏み式や手動式の吸引器など、電気を使わない手段が手元にある
  • その代替手段を家族など2人以上が操作できる
  • 電動ベッドの手動操作、エアマット停止時の体位交換、文字盤の使い方を確認した
  • ポータブル電源や車載インバーターを機器につないでよいか業者に確認した
  • 発電機は屋外の風通しのよい場所でのみ使うと家族で共有した
  • 電源復旧時の再設定の手順を専門職と確認した
  • 停電時の連絡先を1枚にまとめ、機器のそばと持ち出し袋に置いた
  • お住まいのエリアの送配電会社に、登録制度の有無を確認した
  • 自治体の非常用電源の助成制度を問い合わせた
  • 避難行動要支援者名簿・個別避難計画(または災害時個別支援計画)について相談した
  • どうなったら自宅を出るか、どこへ行くかを主治医と決めた
  • 水・蒸留水・消耗品・薬を1週間分を目安に備蓄している

よくある質問

内部バッテリーは何時間持つものですか
機種、設定、劣化の度合いによって大きく異なるため、一般的な時間をここで示すことはできません。必ず取扱説明書の記載と、機器の取扱業者・主治医への確認で「今のこの機器の場合」の数値を把握してください。埼玉県難病医療連絡協議会・埼玉県の手引きは、内部バッテリーの時間と外部バッテリー1台あたりの時間×台数を足して合計時間を算出し、まず8時間を目標に置くという考え方を示しています。
市販のポータブル電源を人工呼吸器につないでも大丈夫ですか
製品によって異なるため、自己判断でつながず、必ず機器の取扱業者・メーカーに可否を確認してください。別府市防災局防災危機管理課のガイドブックは、蓄電池について本人や介助者が使用・運搬可能で正弦波交流出力のものを選ぶよう示しています。埼玉県の手引きは、インバーターを介して電源を取る方法についてあくまでも自己責任であり、平常時にきちんと機器が動くかテストをするよう明記しています。確認が取れない場合は、機器に直結せず外部バッテリーの充電に使う方法もあります。
発電機を買っておけば安心ですか
発電機は選択肢の1つですが、それだけで安心とは言えません。消費者庁は経済産業省・製品評価技術基盤機構と同時に公表した注意喚起で、発電機を屋内で絶対に使用しないこと、自動車内やテント内は屋内と同等以上に危険であること、屋外でも開口部から離れた風通しのよい場所で使うことを求めています。燃料の備蓄や騒音の問題もあります。埼玉県の手引きは、発電機の交流100Vで外部バッテリーを充電し、交換しながら機器を使う方法(外部バッテリーが3つ以上必要)も示しています。
電力会社に登録すれば、停電しても優先的に復旧してもらえますか
優先復旧を約束する制度としては案内されていません。東京都北区の案内では、東京電力パワーグリッドへの患者登録により停電の際の復旧見通しなどを個別に知らせてもらえるとされています。東京電力パワーグリッドは、代替電源がない医療機器使用者に小型発電機等を可能な限り貸し出すとしています。一方、関西電力送配電は代替電源の準備と医療機関への事前相談を案内しており、扱いは送配電会社ごとに異なります。お住まいのエリアの会社に直接ご確認ください。
停電したら、まず何をすればよいですか
機器の状態確認と、支援者への連絡です。別府市のガイドブックは、災害が発生した際には主治医・訪問看護ステーション・医療機器取扱業者・支援機関等に安否と「どこで・どんな状況にあり、何が必要か」を伝えることが重要だとしています。埼玉県の手引きは、災害時は携帯電話に発信規制がかかり固定電話もつながりにくい一方、携帯メールのほうが機能しやすいこと、電源が必要な電話機は停電時に使えないことも示しています。連絡手段は複数用意しておいてください。
避難所に行けば電源はありますか
避難所の状況は地域や施設によって異なり、必ず使えるとは限りません。埼玉県の手引きは、避難所にたどり着いても人工呼吸器装着者のための食事や医療機器まで配慮されていない場合が多いとしたうえで、避難所の場所や発電機を借りられるかを各市町村に事前に確認しておくよう促しています。福岡県も、主治医と長時間の停電に備えて避難場所や入院可能な医療機関を協議しておくよう案内しています。事前の確認と相談が要になります。
どこに相談を始めればよいか分かりません
すでに関わっている専門職から始めるのが確実です。訪問看護ステーション、機器の取扱業者、ケアマネジャーや相談支援専門員、そして市区町村の保健所・保健センターや障害福祉担当課です。難病の方については、難病情報センターが「災害時難病患者支援ホームページリンク集」として都道府県の資料をまとめており、お住まいの地域の手引きを探す入口になります。

まとめ|表を1枚書くところから

在宅医療機器のある家庭の停電対策は、専門的で難しそうに見えますが、家族が担う部分は意外と地味です。電気が要るものを書き出す。持続時間を業者に聞く。外部バッテリーに買った日を書く。連絡先を1枚にまとめる。電力会社と自治体に問い合わせる。どれも医療の知識は要りません。

そして、いちばん効くのは「事前に決めておくこと」です。何時間で電源が尽きるのか、尽きたらどうするのか、どうなったら家を出るのか、どこへ行くのか。これを主治医と機器業者、訪問看護、自治体と一緒に言葉にしておけば、当日は決められた手順をなぞるだけになります。

今日できることを1つだけ選ぶなら、機器の裏の銘板を写真に撮って、機器名と消費電力をメモに書くことです。そこから表が1枚できれば、次に誰へ何を聞けばよいかが自然に見えてきます。備えは完璧である必要はありません。空欄が減っていけば、それで前に進んでいます。

シニアと暮らす家庭の備え全般

シニアと暮らす家庭の防災|薬・避難・家の安全、離れて暮らす親のためにできること

出典・参考

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