モシモニア
住まいの防災

ブロック塀と外構の点検|倒れる塀からわが家と通行人を守る、家庭でできるチェック

ツムギ住まいの防災・ライフライン担当
・ 約34分で読めます
ブロック塀と外構の点検|倒れる塀からわが家と通行人を守る、家庭でできるチェック

家具を固定し、寝室を見直し、窓ガラスに飛散防止フィルムを貼った。家の中の備えが一段落したところで、玄関を出て振り返ってみてください。門から道路までの数メートル。そこに立っているブロック塀を、最後にじっくり見たのはいつでしょうか。外構は「毎日通っているのに、いちばん見ていない場所」になりがちです。しかも塀は、倒れたときに自分の家族だけでなく、たまたま前を歩いていた人まで巻き込む可能性があります。この記事では、家庭でできる目視の一次チェックと、危ないと分かったあとの進め方を、公的資料で確認できた範囲で整理します。

なぜ家の中より先に、外まわりを見る価値があるのか

住まいの防災は、どうしても室内から手をつけます。家具の固定も、寝室の配置も、目に見えて安心が増えるからです。一方で敷地の外まわりは、こんな理由で後回しになります。

まず、塀は「壊れていないように見える」ことが多いからです。少し傾いていても、細いひびが入っていても、毎日見ていると変化に気づけません。次に、直そうとすると工事になるからです。家具の固定は自分でできても、塀は自分では触れません。そして三つめに、塀は自分たちが使う場所ではないからです。毎日通り抜けるだけで、そこで過ごすわけではありません。

けれども塀には、家の中の家具とは決定的に違う性質があります。道路に面していると、倒れたときに家族以外の人に及ぶという点です。民法第717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者が損害を賠償する責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が賠償しなければならない、と定めています。同条第2項では、竹木の栽植または支持に瑕疵がある場合にも準用されるとされています。

土地の工作物等の占有者および所有者の責任は、民法第717条(e-Gov法令検索)に定められています。個別の事案でどう判断されるかは事情によって異なるため、実際の責任関係については弁護士等の専門家にご確認ください。

これは脅しではなく、順番の話です。わが家の塀を点検することは、家族を守る行為であると同時に、通りがかりの人の安全にもつながります。そして自分が加害の側になりうる不安を、点検という具体的な行動に置き換えられます。「気になっているけれど調べていない」状態がいちばん落ち着かないので、まずは測って写真を撮るところから始めましょう。

メモ

2018年(平成30年)6月18日の大阪府北部地震では、塀の倒壊による被害が発生しました。これを受けて国土交通省は同月21日、学校に限らず広く一般の建築物を対象として、既設の塀(ブロック塀や組積造の塀)の所有者等へ安全点検を行うよう注意喚起することを、特定行政庁に対して要請しています。今回紹介するチェックポイントは、このときに公表されたものが現在も国土交通省のサイトで案内されているものです。

建物本体の強さを確かめるなら

わが家の耐震性を確かめる|1981年・2000年の基準の違いと、診断・補助制度・費用の目安

まず知っておきたい、2種類の塀と法令の数値

塀の点検を始める前に、自分の家の塀がどちらのタイプかを知っておくと理解が早くなります。建築基準法施行令は、塀を大きく2つに分けて基準を定めています。

ひとつは補強コンクリートブロック造の塀(第62条の8)です。コンクリートブロックを積み、中に鉄筋を通してコンクリートやモルタルを充填したものです。もうひとつは組積造のへい(第61条)で、れんが造・石造や、鉄筋の入っていないブロック造がこれにあたります。同じように見えても、求められる数値はまったく違います。

なお建築基準法第2条第1号では、建築物の定義に「これに附属する門若しくは塀」が含まれています。住まいに付属する塀は、建築基準法の対象になるということです。

補強コンクリートブロック造の塀(施行令第62条の8)

項目施行令の定め
高さ2.2m以下とすること
壁の厚さ15cm以上(高さ2m以下の塀にあっては10cm以上)
鉄筋(端部)壁頂および基礎には横に、壁の端部および隅角部には縦に、それぞれ径9mm以上の鉄筋を配置
鉄筋(壁内)径9mm以上の鉄筋を縦横に80cm以下の間隔で配置
控え壁長さ3.4m以下ごとに、径9mm以上の鉄筋を配置した控壁で、基礎の部分において壁面から高さの1/5以上突出したものを設ける
鉄筋の定着鉄筋の末端はかぎ状に折り曲げ、縦筋は壁頂および基礎の横筋に、横筋はこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着する
基礎基礎の丈は35cm以上、根入れの深さは30cm以上

数値は建築基準法施行令第62条の8(e-Gov法令検索)によります。同条の柱書では、高さ1.2m以下の塀については控え壁(第5号)と基礎の丈・根入れ(第7号)の規定が適用除外とされ、また国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合はこの限りでない、とも定められています。鉄筋の定着については、縦筋をその径の40倍以上基礎に定着させる場合には縦筋の末端を基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる、というただし書きがあります。

組積造のへい(施行令第61条)

項目施行令の定め
高さ1.2m以下とすること
壁の厚さ各部分の壁の厚さは、その部分から壁頂までの垂直距離の1/10以上
控え壁長さ4m以下ごとに、壁面からその部分における壁の厚さの1.5倍以上突出した控壁(木造のものを除く)を設ける
基礎基礎の根入れの深さは20cm以上

数値は建築基準法施行令第61条(e-Gov法令検索)によります。控え壁については、その部分における壁の厚さが第2号の規定による壁の厚さの1.5倍以上ある場合はこの限りでない、というただし書きがあります。

れんがや自然石を積んだ塀、鉄筋の入っていない古いブロック塀は、高さの上限が1.2mと、補強コンクリートブロック造よりずっと低く抑えられています。「昔ながらの石積みの塀が腰より高い」という場合は、この時点で確認が必要な状態だと考えてください。

注意

ここに挙げた数値は、塀をつくるときに満たすべき基準です。建てた当時の基準に適合していた塀が、その後の基準改正によって現行の数値に合わなくなっている場合もあります。数値に合わないからといって直ちに違法というわけではありませんが、地震や強風に対する安全性の観点では確認が必要な状態です。判断は自治体の建築部局や専門家に委ねてください。

家庭でできる一次チェック|国土交通省のチェックポイント

国土交通省は「ブロック塀等の点検のチェックポイント」として、まず外観で1から5をチェックし、ひとつでも不適合がある場合や分からないことがあれば専門家に相談する、という進め方を示しています。6番目の鉄筋については、専門家に相談する項目として区別されています。

準備するものは3つだけです。5m以上のメジャー(コンベックス)、スマートフォン、メモです。作業時間は塀1面あたり10分ほどを見ておけば足ります。

  1. 1

    塀の全体像を写真に撮る

    まず道路の反対側に立って、塀の全体が入る写真を撮ります。真正面からと、塀に沿って斜めから、最低2枚。斜めからの写真は、傾きを後で見返すときに役立ちます。撮影日をメモに残しておくと、次回の点検で比較できます。
  2. 2

    高さを測る

    地盤から塀の頂部までをメジャーで測ります。国土交通省のチェックポイントでは「塀の高さは地盤から2.2m以下か」が第1項目です。塀の両側で地面の高さが違う場合(片側が擁壁や盛土になっている場合など)は、高い側・低い側の両方の数値を記録しておきます。塀の上にフェンスや目隠しが載っている場合は、その分も含めて写真とメモを残し、高さの数え方は自治体や専門家に確認してください。
  3. 3

    厚さを測る

    塀の端部や門柱との取り合い部分で、壁の厚さを測ります。チェックポイントでは「塀の厚さは10cm以上か。(塀の高さが2m超2.2m以下の場合は15cm以上)」とされています。ブロックの規格上、厚さ10cmと15cmは見た目でも差が分かるので、迷ったら定規を当てて写真を撮ってください。
  4. 4

    控え壁があるかを確かめる

    塀の長さに沿って歩き、直角に飛び出した短い壁(控え壁)があるかを見ます。チェックポイントでは、塀の高さが1.2m超の場合に「塀の長さ3.4m以下ごとに、塀の高さの1/5以上突出した控え壁があるか」とされています。たとえば高さ1.8mの塀なら、突出は36cm以上が目安になります。庭側から見ないと分からないことも多いので、内側からも確認してください。
  5. 5

    基礎があるかを見る

    塀の足元が地面から直接立ち上がっているのか、それともコンクリートの基礎の上に載っているのかを見ます。チェックポイントの第4項目は「コンクリートの基礎があるか」です。土や砂利で隠れている場合は、指で軽く払って様子を見る程度にとどめ、掘り返す必要はありません。基礎の根入れ深さ(30cm以上)は掘らないと分からないので、専門家に相談する項目です。
  6. 6

    傾き・ひび割れを確かめる

    最後に「塀は健全か」を見ます。塀に傾き、ひび割れはないか。傾きは、糸に重りを付けた下げ振りやスマートフォンの水平器アプリでも当たりが付けられます。ひび割れは、目地に沿った線状のものと、ブロックを斜めに横切るものを区別して写真に残してください。あわせて、鉄筋のさびによる茶色いにじみ、白い粉が吹いたような跡(エフロレッセンス)、ブロックの欠け・ぐらつきもメモしておきます。

点検項目と数値は、国土交通省「ブロック塀等の点検のチェックポイント」によります。同資料は「ブロック塀について、以下の項目を点検し、ひとつでも不適合があれば危険なので改善しましょう」としたうえで、外観で1から5をチェックし、ひとつでも不適合がある場合や分からないことがあれば専門家に相談すること、を示しています。第6項目(鉄筋)は「塀の中に直径9mm以上の鉄筋が、縦横とも80cm間隔以下で配筋されており、縦筋は壁頂部および基礎の横筋に、横筋は縦筋にそれぞれかぎ掛けされているか」「基礎の根入れ深さは30cm以上か(塀の高さが1.2m超の場合)」で、専門家に相談する項目とされています。同資料は日本建築防災協会のパンフレット「地震からわが家を守ろう」(2013年1月)をもとに国土交通省において一部変更したものです。

ブロック塀の一次チェック(外観で見る5項目)

  • 塀は高すぎないか(地盤から2.2m以下か)
  • 塀の厚さは十分か(10cm以上か。高さ2m超2.2m以下なら15cm以上か)
  • 控え壁はあるか(高さ1.2m超の場合、長さ3.4m以下ごとに高さの1/5以上突出しているか)
  • コンクリートの基礎があるか
  • 塀に傾き、ひび割れはないか

組積造(れんが造、石造、鉄筋のないブロック造)の塀の場合は、チェックポイントの数値が変わります。同資料では、高さは地盤から1.2m以下か、塀の厚さは十分か、塀の長さ4m以下ごとに塀の厚さの1.5倍以上突出した控え壁があるか、基礎があるか、傾き・ひび割れはないか、の5項目を外観で見て、専門家に相談する項目として基礎の根入れ深さが20cm以上かを挙げています。

注意

点検はあくまで目視と採寸までにしてください。ブロックを叩いて音を聞く、鉄筋の有無を確かめようとして穴をあける、ぐらついている部分を押してみる、といった行為は避けます。とくに傾きやぐらつきがある塀には近づきすぎず、真下に立たないようにしてください。子どもと一緒に点検する場合も、塀に寄りかからせないよう気をつけましょう。

危ないと分かったら|自分で壊さず、相談へ進む

チェックで不適合が見つかったとき、いちばんやってはいけないのが自分で解体しようとすることです。ブロック塀は思っている以上に重く、鉄筋が入っていれば途中で自立しなくなり、入っていなければ一気に崩れます。倒れる方向を制御できません。

国土交通省が特定行政庁への要請文で示した進め方は、危険性が確認された場合には速やかに注意表示を行うとともに、補修・撤去等を行うというものです。順番として、まず周囲の人に知らせ、それから工事に進みます。

  1. 1

    通行人に見える形で注意表示をする

    すぐに工事ができない場合でも、その日のうちにできることがあります。塀の前にカラーコーンやプランターを置いて歩行者を少し離す、貼り紙で注意を促す、といった応急の対応です。夜間も見えるように反射材を使うとより確実です。あわせて、家族の動線(自転車置き場、ゴミ出しの通り道など)を塀の真下から外します。
  2. 2

    自治体の建築部局に電話する

    市区町村の建築指導課・建築課・住宅課などが窓口です。「自宅のブロック塀を点検したら、高さと控え壁が基準に合わないようだ」と伝えれば、相談の受け方や補助制度の有無を案内してもらえます。自治体によっては無料相談会や専門家派遣を用意しています。たとえば東京都杉並区は、区役所1階ロビーで休祝日を除く毎月第1・第3火曜日(建築総合相談会)と第2水曜日(耐震相談会)の午後1時から4時に、予約不要の無料相談会を開いていると案内しています。ただし会場の都合などで開催がない場合があるため、出向く前に区役所へ電話などで確認するよう案内されています。持ち物として、現況写真や図面を持参するよう求められています。
  3. 3

    専門家に見てもらう

    建築士のほか、ブロック塀に特化した資格として「ブロック塀診断士」があります。一般社団法人日本エクステリア建設業協会(JPEX)が認定する資格で、同協会は、既設のブロック塀等の性能評価を行う者の資格を認定し、地域の行政庁と連携してブロック塀等の危険箇所の改善のための指導を行い、地震・台風におけるブロック塀等の災害を防止することを目的として平成10年4月に制定した制度だと説明しています。診断士は都道府県別の名簿で探すことができます。
  4. 4

    工事の方針を決める

    診断結果をもとに、撤去する・低くする・フェンスに替える・生垣にする、といった選択肢を比較します。この段階で補助制度の要件(高さ、道路への面し方、工事の種類)に合うかを確認しておくと、申請でつまずきません。多くの自治体は工事着手前の申請を条件にしているため、契約前に自治体へ確認してください。

危険性が確認された場合の対応(速やかな注意表示と補修・撤去等)は、国土交通省が平成30年6月21日に公表した「建築物の既設の塀(ブロック塀や組積造の塀)の安全点検について」によります。ブロック塀診断士の制度概要は一般社団法人日本エクステリア建設業協会、無料相談会の実施は東京都杉並区の案内によります。

「塀を直すとなると何十万円もかかるはずだから、見なかったことにしたい」という気持ちは、多くの方が持っています。ただ実際には、塀を全部つくり直す以外にも、道路側だけ撤去する、高さを下げてフェンスを載せる、といった中間の選択肢があります。しかも補助制度は、新しい塀を建てるより「撤去」に手厚いことが少なくありません。まず調べてみると、想像していた金額とは違う景色が見えてくることがあります。
編集部

自治体の補助制度|あるところとないところの差が大きい

ブロック塀等の撤去・改修に対する補助制度は、多くの自治体に用意されています。ただし全国一律ではありません。

国土交通省がまとめた都道府県別の総括表によると、令和6年4月1日現在、全国1,741市区町村のうち、ブロック塀等の安全対策に対する補助が受けられるのは826市区町村で、割合は47%です。都道府県別に見ると差が大きく、富山県・静岡県・鳥取県・愛媛県が100%、宮城県と高知県が97%である一方、京都府と沖縄県は0%、北海道は1%、秋田県は4%となっています。

補助制度の整備状況は、国土交通省「ブロック塀等の安全対策に対する補助制度の整備状況(都道府県別総括表)」(令和6年4月1日現在)によります。この表は補助が受けられる市区町村数と割合を都道府県ごとに集計したもので、制度の内容や金額までは示していません。年度によって制度が新設・終了することもあるため、最新の状況はお住まいの市区町村にご確認ください。

つまり「補助があるはず」とも「うちの地域にはない」とも決めつけられない、というのが現状です。まずは市区町村のサイトで「ブロック塀 補助」「ブロック塀 撤去 助成」と検索してみてください。あわせて、一般財団法人日本建築防災協会が都道府県別に支援制度の情報をまとめたページも入口になります(同ページは2021年4月1日時点の内容と記載されているため、最新の内容は自治体で確認してください)。

制度の設計は自治体ごとにかなり違います。公表されている3つの例を並べてみます。

自治体対象の主な要件補助の内容(例)
横浜市道路等に面する高さ1m以上のブロック塀等で、地震時に倒壊のおそれがあると市が現地調査で判定したもの除却は工事費の9/10または長さ1mあたり13,000円の低い方。軽量フェンス・生垣等の新設も対象。除却と新設の合算で、塀の長さ10m未満は30万円、10〜20m未満は40万円、20m以上は50万円が上限
東京都杉並区幅員4m以上の道路に面する、区が危険と判断した高さ80cm以上のブロック塀等(石積塀・万年塀を含む)撤去のみは、実費の2/3または1mあたり28,000円の低い方で上限50万円。撤去と新設をあわせて行う場合は、撤去分(同じ計算)に新設工事費の2/3を加えた額で上限50万円。この撤去及び新設のケースで、塀の面する道路が通学路かつ避難路のときに限り、上限が100万円に読み替えられる
兵庫県姫路市個人住宅の場合、市立小学校が定める通学路に面するもの、または同小学校から500m以内にある道路等に面するもので、高さ60cmを超え、点検表の基準に適合しない項目があるもの補助率2/3、工事費は1平方メートルあたり1万円が限度、補助限度額は個人住宅で20万円(幼稚園・保育所等は90万円、社会福祉施設等は160万円)

表の内容は、横浜市・東京都杉並区・兵庫県姫路市がそれぞれ公表している制度の説明にもとづきます(令和8年度の受付は、横浜市が令和8年4月1日から12月31日まで、姫路市が令和8年11月11日正午までと案内されています。いずれも予算の状況により早期に終了する場合があります)。金額はあくまで各自治体が定めた補助の上限であり、工事費の相場を示すものではありません。対象要件・補助率・限度額・受付期間は自治体と年度によって異なるため、必ずお住まいの自治体の最新の案内をご確認ください。

3つの例を見比べると、共通点が見えてきます。ひとつは「道路に面していること」が要件になりやすいこと。もうひとつは、通学路や避難路に面する塀が優遇されやすいことです。そして高さの下限(横浜市は1m以上、杉並区は80cm以上、姫路市は60cm超)は自治体ごとに違い、思ったより低い塀でも対象になりえます。腰くらいの高さだからと除外して考えないでください。

ヒント

工事費の目安を知りたいときは、補助制度の単価が手がかりになります。ただしこれは自治体が補助の計算に使う上限単価であって、実際の見積りではありません。塀の長さ、基礎の状態、重機が入れるか、処分場までの距離などで大きく変わります。複数の業者から相見積りを取り、内訳(解体・運搬・処分・仮設・新設)を分けて出してもらうと比較しやすくなります。

避難路沿道の塀には、耐震診断が義務づけられる場合がある

補助制度とは別に、法律上の仕組みもあります。国土交通省は平成30年11月27日、避難路沿道の一定規模以上のブロック塀等を耐震診断の義務付け対象に追加する政令を閣議決定したと発表しました。都道府県または市町村が指定する避難路の沿道にある、一定の高さ・長さの既存耐震不適格のブロック塀等が対象で、平成30年11月30日公布・平成31年1月1日施行です。

制度の内容は国土交通省の報道発表「避難路沿道の一定規模以上のブロック塀等を耐震診断の義務付け対象に追加」(平成30年11月27日)によります。国土交通省「ブロック塀等の安全確保対策について」では、この仕組みが令和3年5月28日現在で4都府県22市町において適用されていると記載されています。適用の有無や指定された避難路の範囲は自治体によって異なるため、該当しそうな場合はお住まいの自治体にご確認ください。

自宅の塀がこれに該当することは多くはありませんが、道路に長く面した塀を持っている場合は、自治体の案内を一度確認しておくと安心です。

点検を年間の習慣にする

防災週間にわが家の備えを総点検|防災の日(9月1日)に見直す備蓄・持ち出し袋・連絡ルール

ブロック塀だけではない|外構まわりで見ておきたいもの

敷地の外まわりには、塀のほかにも「固定されている前提のもの」がいくつも並んでいます。地震では倒れ、強風では動くという、二方向のリスクがあります。

風の影響については、気象庁が「風の強さと吹き方」として、平均風速ごとに起きる現象の目安を示しています。たとえば平均風速20m/s以上25m/s未満で「固定されていないプレハブ小屋が移動、転倒する」、25m/s以上30m/s未満で「看板が落下・飛散する」、30m/s以上35m/s未満で「固定の不十分な金属屋根の葺材がめくれる」、40m/s以上で「ブロック壁で倒壊するものがある」といった記述です。

風速ごとの目安は気象庁「風の強さと吹き方」によります。同表は、平均風速が10分間の平均、瞬間風速が3秒間の平均であること、瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多いが大気の状態が不安定な場合等は3倍以上になることがあること、風速が同じでも建物・構造物の状態や風の吹き方によって被害が異なる場合があることを注記しています。表の人や物への影響は日本風工学会の「瞬間風速と人や街の様子との関係」を参考に作成されているとされています。

注目したいのは、繰り返し出てくる「固定されていない」「固定の不十分な」という言葉です。同じ風でも、留め方で結果が変わるということです。平時の点検は、まさにこの留め方を見に行く作業になります。

外構まわりの平時チェック

  • 門柱・門扉:ぐらつき、傾き、基礎まわりのひび。表札やインターホンの取り付けのゆるみ
  • カーポート・テラス屋根:柱脚のアンカーボルトのさび・ゆるみ、屋根パネルの留め具の欠け、パネル自体のひび。積雪地では雪の重さも含めた仕様か
  • 物置:アンカー(転倒防止金具)で地面や基礎に固定されているか。置いただけになっていないか。扉のロックが効くか
  • テレビアンテナ:支線(ステー)のたるみ・さび、屋根馬のずれ、マストの傾き。屋根に上がらず地上から双眼鏡やスマホのズームで見る
  • エアコン室外機:架台のさび、防振ゴムのつぶれ、壁面設置なら金具のゆるみ。屋上・ベランダ設置は固定の状態を確認
  • 給湯器・エコキュート:脚部の固定、配管まわりのゆるみ
  • 外部階段・手すり:溶接部やビス留め部のさび、ぐらつき
  • 植木・庭木:根元の傾き、幹の空洞や大きな枯れ枝、電線への接触
  • 置いてあるもの:植木鉢、プランター、自転車、物干し竿、ゴミ箱、脚立、灯油タンク、洗車用品。強風時に片づける場所が決まっているか
  • 擁壁・法面:ひび割れ、はらみ出し、水抜き穴の詰まり、上部の地面のへこみ

このうち、カーポートの柱脚や物置のアンカー、アンテナの支線は、屋外にあるぶん劣化が進みます。設置から10年、20年と経っていれば、施工した業者やメーカーの相談窓口に点検を依頼する価値があります。とくに物置は「置いただけ」の状態が珍しくありません。アンカー工事はあとからでも施工できることが多いので、購入時の書類を探して確認してみてください。

庭木については、民法第233条が、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に枝を切除させることができると定めています。あわせて、竹木の所有者に催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しないとき、竹木の所有者やその所在を知ることができないとき、急迫の事情があるときには、土地の所有者が自らその枝を切り取ることができるとされています。根が境界線を越えるときは切り取ることができる、とも定められています。逆にいえば、自分の庭木が隣家や道路にはみ出している場合は、自分の側で整える必要があるということです。

台風が近づいてからの家まわりの対応

台風が近づく前に家でやっておく備え|接近48〜24時間前の「家まわり」直前チェック

賃貸・分譲・隣家と共有している塀の場合

塀の所有関係は、思っているより複雑です。進め方を3つのパターンで整理します。

賃貸住宅の場合

塀を含む建物と敷地の管理は、原則として所有者(貸主)の責任です。借りて住んでいる立場でできるのは、状態を伝えることです。写真を撮り、気になる点をメモにして、管理会社または大家さんに連絡します。「傾いています」より「地盤から高さ2.1m、控え壁が見当たらず、上から3段目に横向きのひび割れがあります」と具体的に伝えるほうが、点検につながりやすくなります。

伝えたあとは、家族の動線を塀の真下から外す、自転車を別の場所に置く、といった自分でできる調整を進めておきましょう。

分譲マンション・戸建ての共有部分の場合

分譲マンションの敷地内の塀は、区分所有法上の「共用部分」(専有部分以外の建物の部分や、専有部分に属しない建物の附属物)ではなく、敷地または附属施設として扱われるのが一般的です。同法第21条は、建物の敷地や共用部分以外の附属施設が区分所有者の共有に属する場合には、共用部分の管理に関する規定を準用すると定めています。管理規約で扱いが定められていることもあります。いずれにせよ、点検も工事も管理組合の議題になり、個人で業者に依頼することはできません。理事会や総会で「敷地内の塀の点検状況」を確認するところから始めます。管理会社に長期修繕計画のなかで外構がどう扱われているかを尋ねるのも有効です。

共用部分の定義は建物の区分所有等に関する法律第2条第4項、敷地・附属施設への準用は同法第21条(e-Gov法令検索)によります。個々のマンションで塀がどう位置づけられているかは管理規約によっても異なるため、実際の手続きは管理組合・管理会社にご確認ください。

隣家と共有している塀の場合

もっとも判断が難しいのがこのパターンです。民法第229条は、境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝および堀は、相隣者の共有に属するものと推定する、と定めています。また第225条は、二棟の建物がその所有者を異にし、かつその間に空地があるときは、各所有者は他の所有者と共同の費用でその境界に囲障を設けることができるとし、当事者間に協議が調わないときの囲障は板塀または竹垣その他これらに類する材料のもので、かつ高さ2mのものでなければならないと定めています。第226条では、囲障の設置および保存の費用は相隣者が等しい割合で負担する、とされています。

囲障の設置・費用負担・共有の推定は、民法第225条・第226条・第229条(e-Gov法令検索)によります。実際の塀が境界線上にあるのか、どちらか一方の敷地内にあるのかによって扱いは変わり、過去の経緯や合意によっても異なります。個別の判断は、法務局での公図・地積測量図の確認や、土地家屋調査士・弁護士等への相談を経て行ってください。

実務的な進め方としては、まず自分の敷地の境界がどこかを確認します(法務局で公図や地積測量図を取得する、購入時の測量図を探す)。そのうえで、隣家に「うちの塀を点検したら気になる点があったので、共有かどうか一度確認したい」と切り出します。いきなり工事の話をせず、点検の話から入るほうが進みやすくなります。なお、補助制度を使う場合、塀が共有であれば所有者全員の同意書などを求められることがあります。申請の条件は自治体によって異なるので、業者と契約する前に窓口で確認しておくと二度手間を避けられます。

ご近所と一緒に進める防災

ご近所・地域との共助の始め方|つきあいが薄くてもできる、災害時の助け合いの備え

通学路と、子どもの登下校経路を見る

自宅の塀を点検し終えたら、もう一歩だけ範囲を広げてみてください。子どもが毎日歩く道です。

国土交通省は、ブロック塀等の安全確保対策のひとつとして、行政・専門家・地域住民等が連携して行う通学路の安全点検等、地域の安全確保のための先進的な取組への支援を、平成30年度第2次補正予算から令和2年度まで実施していました。通学路が地域ぐるみで見る対象として位置づけられてきた、ということです(現行基準に適合しない塀の除却・改修に対する防災・安全交付金等による支援は、終期を示さずに掲載されています)。文部科学省も、学校施設におけるブロック塀等の安全点検等の状況について調査を行い、平成30年8月10日・令和元年8月7日・令和2年12月23日の3回、結果を公表しています。学校の敷地も、通学路も、行政の側で点検が行われてきた領域だということです。

家庭でできるのは、通学路を子どもと一緒に歩いて、塀の前で立ち止まってみることです。「ここは背より高い塀が続いているね」「揺れたら、この道の真ん中側を歩こうね」と、その場で話すほうが、家で地図を見ながら説明するより伝わります。ポイントは3つです。

  1. 塀が長く続く区間で、逃げ場がない場所はどこか
  2. 自動販売機、大きな看板、古い門柱など、塀以外に倒れうるものはあるか
  3. 揺れたときに、いったん身を寄せられる広い場所(公園、駐車場、店の駐車スペース)はどこか

見つけた気になる場所は、写真を撮って学校や自治会に伝えることもできます。個人の敷地内の塀を勝手に評価して所有者に伝えるのは避け、学校や自治体を通すのが穏当です。

メモ

危険そうな塀を見つけたときに、その場で子どもに強い言い方をすると、通学そのものが不安になってしまうことがあります。「この道は危ない」ではなく「地震のときは、塀から少し離れて歩こうね」と、行動の形で伝えるようにしてください。備えは、こわがるためではなく、迷わないためのものです。

学校・保育園との引き渡しの取り決め

災害時、学校・保育園の子どもをどう引き取る|引き渡しルールの確認と共働き家庭の備え

点検を1回で終わらせないための工夫

外構の点検がやっかいなのは、変化がゆっくりだからです。1年で急に傾く塀はまれで、10年かけて少しずつ傾きます。だからこそ、記録が効きます。

おすすめは、点検のたびに同じ位置・同じ角度から写真を撮ることです。塀の端の電柱やマンホールなど、動かないものを目印にして立ち位置を決め、スマートフォンのアルバムに「わが家の外構点検」というフォルダをつくって年ごとに入れておきます。数年分並べると、目で見て分からなかった変化が見えてきます。

タイミングは、年に1回か2回で十分です。台風シーズンの前と、防災の日(9月1日)に合わせるという決め方が分かりやすいでしょう。昭和35年以来、年2回実施されている「建築物防災週間」に合わせるという手もあります。国土交通省は、建築物防災週間をはじめとする機会をとらえてブロック塀の点検のチェックポイントを周知徹底するとしています(千葉県の案内によれば、令和7年度春季の建築物防災週間は令和8年3月1日から3月7日まで。パンフレットは国土交通省・建築物防災推進協議会の作成と記載されています)。

年1回の外構点検メニュー(所要30分)

  • 塀の全体写真を、去年と同じ位置から撮る
  • 高さ・厚さ・控え壁の間隔を測り直す(数値が変わることは基本的にないので、確認のつもりで)
  • 傾きとひび割れの有無を、去年の写真と見比べる
  • 門柱・カーポート・物置・アンテナ・室外機の固定を触って確かめる
  • 植木鉢や自転車など、置いているものの片づけ場所を家族で共有する
  • 庭木の枝が隣家や道路にはみ出していないか見る
  • 気になる点があれば、その日のうちに自治体の建築部局に電話する

室内の安全対策とあわせて

家具の固定と寝室の安全対策|地震のけがを減らす週末1回の作業手順

よくある質問

ブロック塀の点検は、どこまで自分でやってよいですか
国土交通省の「ブロック塀等の点検のチェックポイント」では、まず外観で5項目(高さ、厚さ、控え壁、基礎、傾き・ひび割れ)をチェックし、ひとつでも不適合がある場合や分からないことがあれば専門家に相談する、という進め方が示されています。鉄筋の有無や基礎の根入れ深さは専門家に相談する項目です。家庭でできるのは目視と採寸までと考え、ブロックを叩く・穴をあける・押してみるといった行為は避けてください。危険が疑われる塀を自分で解体・補強しようとするのも危険です。
うちの塀は高さ1.8mですが、法令の2.2m以下なので大丈夫ということですか
高さの項目だけを満たしていても、他の項目に不適合があれば安全とは言えません。建築基準法施行令第62条の8は、高さのほかに壁の厚さ、鉄筋の配置、控え壁、基礎の丈と根入れ深さも定めています。高さ1.2mを超える塀では控え壁(長さ3.4m以下ごとに高さの1/5以上突出)が求められます。高さ1.8mなら36cm以上の突出が目安です。すべての項目を確認し、ひとつでも合わないところがあれば専門家に相談してください。
補助制度はどの自治体にもありますか
全国一律ではありません。国土交通省の集計(令和6年4月1日現在)では、全国1,741市区町村のうち補助が受けられるのは826市区町村(47%)で、都道府県によって0%から100%まで大きな差があります。まずはお住まいの市区町村のサイトで「ブロック塀 補助」などと検索し、見つからなければ建築指導課などに電話で確認してください。制度は年度ごとに新設・終了することがあります。
塀を撤去するといくらかかりますか
公的に示された全国的な相場はありません。目安を得る手がかりとして、自治体が補助の計算に使う上限単価を参考にできます。たとえば横浜市は除却について長さ1mあたり13,000円、杉並区は撤去について1mあたり28,000円という単価を示していますが、これらは補助額の計算上の上限であって工事費の相場ではありません。実際の費用は塀の長さ・高さ・基礎の状態・重機の入りやすさ・処分費などで変わります。複数の業者から内訳付きの見積りを取り、あわせて自治体の補助制度の要件を確認してください。
隣の家との境にある塀が気になります。勝手に工事してよいですか
できません。民法第229条では、境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝および堀は相隣者の共有に属するものと推定するとされており、共有であれば単独で処分することはできません。まずは法務局で公図や地積測量図を確認し、購入時の測量図も探して、塀がどちらの敷地にあるのかを確かめてください。そのうえで、隣家には工事の話ではなく点検の話から相談するのが進めやすい方法です。判断が難しい場合は土地家屋調査士や弁護士等にご相談ください。
賃貸に住んでいます。敷地の塀が傾いている気がします
塀を含む敷地の管理は原則として所有者(貸主)の責任です。写真を撮り、高さやひび割れの位置など具体的な内容をメモにして、管理会社または大家さんに連絡してください。あわせて、自転車置き場や日常の動線を塀の真下から外すなど、自分でできる調整を進めておくと安心です。
カーポートや物置は、地震と台風のどちらを心配すればよいですか
どちらも見ておきたい対象です。気象庁「風の強さと吹き方」では、平均風速20m/s以上25m/s未満で「固定されていないプレハブ小屋が移動、転倒する」、30m/s以上35m/s未満で「固定の不十分な金属屋根の葺材がめくれる」といった目安が示されており、いずれも固定の状態が結果を左右することが読み取れます。地震に対しても、柱脚のアンカーのゆるみやさびは弱点になります。平時の点検では、留め具の状態と設置からの経過年数を確認し、古いものは施工業者やメーカーの窓口に相談してください。

まとめ|玄関を出て、5分だけ塀を見る

外構の点検は、大きな決断から始まるわけではありません。メジャーを1本持って玄関を出て、塀の高さを測る。写真を撮る。ひび割れがないか目で追う。ここまでで5分から10分です。

そのうえで、国土交通省が示す5項目のうちひとつでも合わないところがあったなら、次の一歩は自分で工事を考えることではなく、自治体に電話することです。補助制度の有無、無料相談会の日程、専門家の探し方。窓口はそのためにあります。

塀は、家族を守るためのものであると同時に、道を歩く人にとっての存在でもあります。点検はその両方に効きます。備蓄や持ち出し袋のような目に見える備えとは違い、成果が形になりにくい作業ですが、「うちの塀は測ってある」と言えることは、静かな安心につながります。

この記事で紹介した数値はすべて、国土交通省・気象庁・e-Gov法令検索などで公表されている内容です。ただし、わが家の塀が安全かどうかの判定は、この記事ではできません。最終的な判断は、必ずお住まいの自治体や建築士・ブロック塀診断士などの専門家に委ねてください。

被害が出たときの備えもあわせて

火災保険・地震保険と水災補償を見直す|台風シーズン前に、生活再建の備えを点検する

今日からの一歩

  • メジャーを持って玄関を出て、塀の高さと厚さを測った
  • 塀の全体写真を、道路側と敷地側から撮った
  • 控え壁の有無と、コンクリートの基礎の有無を確かめた
  • 傾き・ひび割れ・鉄筋のさび跡がないか見た
  • 門柱・カーポート・物置・アンテナ・室外機の固定を触って確かめた
  • 市区町村のサイトで「ブロック塀 補助」を検索した
  • 気になる点があれば、自治体の建築部局に電話して相談した
  • 子どもの通学路を一緒に歩き、塀から離れて歩くことを話した

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事