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ご近所・地域との共助の始め方|つきあいが薄くてもできる、災害時の助け合いの備え

カエデ避難計画・防災情報担当
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ご近所・地域との共助の始め方|つきあいが薄くてもできる、災害時の助け合いの備え

備えの話は、水や食料、持ち出し袋のように「自分の家の中で完結するもの」から始めるのが自然です。それは正しい順番で、まず自分と家族が無事でいることが出発点です。そのうえで、もう一段だけ広げておくと効いてくるのが、ご近所や地域との「共助」です。とはいえ、町内会の役員を引き受けたり、毎朝立ち話をしたりする必要はありません。この記事では、つきあいが薄くても、一人暮らしでも、転入したばかりでも始められる共助の一歩を整理します。

なぜ共助が必要なのか|助けは一度には来られない

大きな地震では、倒壊した建物からの救助と、同時に発生した火災の消火を、行政が一度に行わなければならない状況が生まれます。内閣府の防災白書は、阪神・淡路大震災のときにこうした状況で行政機能が麻痺し、行政が被災者を十分に支援できなかったと整理しています。そのうえで、次のような調査結果を紹介しています。

  • 地震によって倒壊した建物から救出され生き延びることができた人の約8割が、家族や近所の住民等によって救出されており、消防・警察・自衛隊によって救出された者は約2割であるという調査結果
  • 別の調査では、自力で脱出したり、家族・友人・隣人等によって救出された割合が約9割を超えており、救助隊によって救助されたのは1.7パーセントであるという調査結果

阪神・淡路大震災の救助主体に関するこれらの数値は、内閣府「平成26年版 防災白書」特集第2章および最新の「令和8年版 防災白書」第1部第1章で紹介されている調査結果です。令和8年版では、近隣住民等による救出が約2万7,000人(約77.1パーセント)、消防・警察・自衛隊による救出が約8,000人(約22.9パーセント)という内訳が示されています。調査の方法によって数値には幅があるため、傾向を示すものとして受け止めてください。

これは「行政が頼りにならない」という話ではありません。倒壊現場が同時に何百と発生すれば、どんなに体制を整えてもそのすべてに救助隊がすぐ到着することは難しい、という物理的な話です。だからこそ、最初の数時間から数日は、その場にいる人どうしの手が大きな意味を持ちます。令和8年版の防災白書も、令和6年能登半島地震で、防災士や地区の役員等により自主防災組織が設立され、平時から地域の防災リーダーが主体となって避難計画の作成や継続した避難訓練を行っていた地区(石川県珠洲市三崎町寺家下出地区)が、発災時に効果的な避難ができた事例を挙げています。

メモ

共助は「近所づきあいが得意な人の役割」ではありません。仕事や子育てで時間がない、転入したばかりで知り合いがいない、対人関係が負担に感じる。共助は義務でも人柄の問題でもなく、災害時に情報と手が届きやすくなるための、ゆるやかなしくみづくりだと考えてください。

内閣府が令和7年8月から9月にかけて実施した「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」では、「ここ1〜2年ぐらいの間に、一度でも家族や身近な人と、自然災害が起きた時にどのように対処するかなどについて話し合ったことがあるか」という質問に対し、「ない」と答えた人が35.1パーセントでした。その人たちに理由を聞くと、最も多かったのは「話し合うきっかけがなかったから」(56.7パーセント)です。関心がないのではなく、きっかけがないだけ。共助も同じです。

つきあいが薄くても、今日からできる5つのこと

いきなり「防災について話しましょう」と持ちかける必要はありません。次の5つは、どれも数十秒から数分で終わる範囲のものです。

  1. 1

    すれ違ったら挨拶をする

    共助の土台は、災害の日に急には作れません。「おはようございます」を返し合える関係があるだけで、いざというとき声をかけるハードルが下がります。まずはここだけで十分です。
  2. 2

    顔と、住んでいる位置をなんとなく覚える

    名前まで分からなくても構いません。「隣は小さい子がいる家」「上の階は高齢のご夫婦」。この程度の把握が、安否確認のときに効いてきます。詮索はせず、日常で見えている範囲で十分です。
  3. 3

    立ち話のついでに、防災の話題を一度だけ出す

    「この辺って、避難所はあの小学校でしたっけ」の一言で十分です。相手が乗ってくれば少し話し、そうでなければそれで終わりにします。きっかけを作るのが目的です。
  4. 4

    連絡先を1つだけ確保する

    個人の電話番号を交換しにくくても、マンションなら管理会社・管理組合、戸建てなら町内会や自治会の連絡先を控えておきます。人ではなく窓口を押さえるのが、負担の少ないやり方です。
  5. 5

    自治体の防災情報の受け取り口を作る

    防災メール、防災アプリ、公式SNSなど、地域の情報が届く手段を1つ登録します。地域とつながる前に、地域の情報とつながっておくと、共助に入りやすくなります。
平日は朝も夜も家にいないので、ご近所とはほとんど会いません。ただ、ゴミ出しで何度か顔を合わせた方に「ここって水害の心配はありますか」と聞いてみたら、昔の浸水の話や地域の防災倉庫の場所まで教えてもらえました。ネットでは出てこない情報でした。
転入して半年の共働き家庭の読者

大切なのは、深いつきあいを作ることではなく、「災害のときに、お互いの存在を思い出せる状態」にしておくことです。

住まいのタイプ別|無理のない関わり方の目安

住まいの形によって、現実的にできることは変わります。自分の状況に近いところだけ見てください。

住まい・暮らし方無理なくできることの目安
戸建て・持ち家両隣と向かいの家の顔を覚える。回覧板や班のつながりを最小限でも維持する
分譲マンション同じフロアと真上・真下を意識する。管理組合の防災担当や防災備蓄の有無を確認する
賃貸・単身管理会社の緊急連絡先を控える。自治会に入っていなくても避難場所と情報配信は押さえる
転入したばかり転入手続きのときに窓口でハザードマップと避難場所の案内をもらう
日中ほぼ不在在宅時間帯に会う人だけでよいと割り切り、建物や自治体のしくみを厚くする

マンションは、停電でエレベーターや給水ポンプが止まると、上下階の行き来そのものが大きな負担になります。同じフロアで声をかけ合えるかどうかが、在宅避難のしやすさを左右します。

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自主防災組織・町内会・地区防災計画のきほん

地域の共助には、すでにいくつかのしくみが用意されています。

自主防災組織

自主防災組織は、地域住民の連帯意識にもとづく自発的な防災組織で、多くは自治会・町内会を単位に作られています。総務省消防庁の令和7年版消防白書によれば、令和7年4月1日現在で全国1,741市区町村のうち1,697市区町村で16万7,722の自主防災組織が設置されており、活動範囲に含まれる世帯の割合(活動カバー率)は増加傾向にあるとされています。

消防庁「自主防災組織の手引」は、日頃の活動として防災知識の普及、地域の災害危険の把握、防災訓練の実施、防災用資機材の整備などを、災害時の活動として情報の収集・伝達、出火防止・初期消火、避難誘導、負傷者の救出・救護、給食・給水などを挙げ、近年はこれに加えて防災教育、避難行動要支援者対策、避難所運営への取り組みが期待されているとしています。

自主防災組織の数と活動内容は、総務省消防庁「令和7年版 消防白書」および「自主防災組織の手引 コミュニティと安心・安全なまちづくり(令和5年3月改訂)」によります。お住まいの地域に組織があるかどうかは、自治体の防災担当窓口や自治会にご確認ください。

地区防災計画

地区防災計画は、市町村内の一定の地区の居住者や事業者(地区居住者等)が行う自発的な防災活動に関する計画です。平成25年の災害対策基本法の改正で創設され、平成26年4月1日に施行されました。地区居住者等が共同して市町村防災会議に計画を提案できるしくみ(計画提案)があり、市町村地域防災計画に位置づけられると、地域の取り決めが行政の計画と結びつきます。内容や範囲は地区側で自由に決められ、マンション1棟、商店街、小学校区など単位もさまざまです。

メモ

自主防災組織にも地区防災計画にも、必ず参加しなければならない義務はありません。「わが家は関われない」と感じたら、まずは自分の地域に何があるかを知るだけで十分です。それだけでも災害時の動きやすさは変わります。

地域の防災訓練は「本番で効くこと」を体験するために使う

地域の防災訓練は、参加すること自体が目的ではありません。本番で迷いそうなことを先に一度体験しておく場だと考えると、時間を使う価値が見えてきます。次の項目は、知識として読むのと実際に手を動かすのとで差が出やすい部分です。

訓練で体験しておくと効きやすいこと

  • 消火器の操作(安全ピン、ホースの向き、噴射時間の短さを体感する)
  • けが人の応急手当と、心肺蘇生・AEDの手順
  • 避難所の受付から居住スペース確保までの流れ
  • 給水拠点での受け取り方と、水を運ぶ道具の重さ
  • 簡易トイレ・マンホールトイレの組み立てと使い方
  • バール・ジャッキなど救助資機材の置き場所と扱い方

訓練に出られない場合でも、実施日に会場をのぞいて掲示物を見るだけで、防災倉庫の場所や地域の連絡体制がわかることがあります。子どもと一緒に参加すると、地域の大人の顔を知る機会にもなります。

ヒント

わかったことは、その日のうちに紙1枚にまとめておきましょう。避難所の名前と場所、防災倉庫の位置、自治会の連絡先、給水拠点。冷蔵庫に貼るか持ち出し袋に入れておけば、スマートフォンが使えないときでも確認できます。

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「無事です」を伝える工夫|安否確認を効率化する

大きな地震のあと、地域で最初に行われるのが安否の確認です。このとき、無事な家が無事だと分かるだけで、限られた人手を本当に助けが必要な家に向けられます。

そのための工夫として、無事なときに玄関や門扉、郵便受けなどにタオルや貼り紙を掲げる方式を採用している自治体があります。たとえば山梨県都留市は白色タオルを使う取り組みを案内しており、家の一番目立つところに結び付ける、掲げたタオルは3日間ほどそのままにしておく、といった方法を示しています。「この家には救助を必要とする人はいない」ことを示すためのものです。

タオルによる無事・安全確認の例は、山梨県都留市が案内している取り組みです。色(白・黄色など)や掲げる場所・期間は自治体や自治会ごとに異なります。必ずお住まいの自治体・自治会の案内に従ってください。

注意

方式は地域でそろっていないと機能しません。自分の家だけ独自のルールで掲げても、見た人には意味が伝わらないことがあります。まずは自治体や自治会が採用している方式があるかを確認し、なければ家族の連絡ルールのほうを厚くしておきましょう。留守にする際の防犯面が気になる場合も、あわせて自治会に相談してください。

家族との安否確認は、地域の共助とは別に用意しておく必要があります。災害用伝言ダイヤル(171)などは、体験利用日に一度試しておくと本番で迷いません。

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要配慮者と、避難行動要支援者名簿・個別避難計画

高齢の家族、障害のある人、乳幼児のいる家庭、日本語での情報取得が難しい外国人など、災害時に配慮を必要とする人はどの地域にもいます。なかでも自ら避難することが困難で、避難にあたって特に支援を要する人には、法律にもとづくしくみがあります。

しくみ内容位置づけ
避難行動要支援者名簿自ら避難することが困難な高齢者や障害者等の名簿を市町村が作成する平成25年の災害対策基本法改正により市町村の義務
個別避難計画避難行動要支援者ごとに、誰がどう支援して避難するかを定める計画令和3年の災害対策基本法改正により市町村の努力義務

避難行動要支援者名簿と個別避難計画の位置づけは、内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」および「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針(平成25年8月策定、令和3年5月改定、令和7年6月更新)」によります。対象者の範囲や登録の手続きは市町村が定めるため、詳しくはお住まいの自治体の窓口にご確認ください。

平常時に名簿の情報を消防機関や民生委員、自主防災組織などの避難支援等関係者へ提供する場面では、原則として本人の同意を確認する手続きがとられます。つまり、対象になりうる人が意思表示をしていなければ、地域の側からは把握しづらいということです。高齢の親と離れて暮らしている場合は、帰省の機会に「名簿の登録はしてある?」と一度確認しておきましょう。

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名簿や計画の対象にならない場合でも、配慮が必要な事情はあります。乳幼児がいて避難に時間がかかる、持病があって薬が欠かせない。当事者が黙っていると周囲からは見えないので、無理のない範囲で近所の一人にでも伝わっていると状況は変わります。

助けを求める側になったときのために

家族の誰かがけがをする、持病が悪化する、乳幼児を抱えて動けない。助けを求める側になる可能性は誰にでもあります。そのときのために、平常時にしておけることがあります。

  1. 1

    自分の側の事情を、一言だけ伝えておく

    「実は父の足が悪くて」「赤ちゃんがいるので避難に時間がかかります」。この一言があるだけで、いざというときに気にかけてもらえる可能性が上がります。全部を話す必要はありません。
  2. 2

    声を出す手段を用意する

    がれきや家具の下では、大声を出し続けることはできません。笛を持ち出し袋と寝室に置いておくと、少ない力で存在を知らせられます。寝室の家具の固定も、閉じ込めを防ぐ備えです。
  3. 3

    在宅避難中は「ここにいます」を伝える

    自宅にとどまる場合、避難所に行っていないだけで安否不明とみなされたり、物資の情報が届かなかったりすることがあります。避難所の受付や自治体、近所に、自宅で避難生活をしていることを伝えておきましょう。

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避難所へ行く場合も、運営は自治体だけでなく住民が担う部分が大きいことを知っておくと、当日の受け止め方が変わります。

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わが家の共助チェック

一度に全部やる必要はありません。今日できるものを1つ選ぶところから始めてください。

わが家の共助チェック

  • すれ違ったときに挨拶を交わせる人が、近所に1人以上いる
  • 同じフロア・両隣・上下階に、だいたいどんな家族が住んでいるか把握している
  • 管理会社・管理組合・自治会など、地域の緊急連絡先を控えている
  • 自治体の防災メール・防災アプリ・公式SNSのいずれかを登録している
  • 自分の地域に自主防災組織があるかどうかを知っている
  • 「無事です」を知らせる方式が自治体・自治会にあるか確認した
  • 高齢の家族について、避難行動要支援者名簿や個別避難計画のしくみを確認した
  • わが家の事情(乳幼児がいる、持病があるなど)を、近所や自治会の誰かに伝えてある

よくある質問

自治会や町内会に入っていません。災害時に不利になりますか
指定緊急避難場所や指定避難所は、加入の有無にかかわらず地域の住民が利用できるのが原則です。ただし、連絡網や物資配布の案内が届きにくいことはあり得ます。自治体の防災メールや公式SNSなど、行政から直接情報を受け取る手段を用意しておくと補えます。心配な点は自治体の防災担当窓口にご確認ください。
一人暮らしで、近所に知り合いが全くいません。何から始めればよいですか
人との関係より先に、しくみとつながるのが現実的です。防災アプリや防災メールの登録、避難場所と経路の確認、管理会社の緊急連絡先の控え。この3つで最低限の土台ができます。そのうえで、よく会う人に挨拶を返す程度から始めれば十分です。
防災訓練に参加する時間がとれません。参加しないと意味がないですか
代わりになる方法もあります。訓練の実施日に会場の掲示を見に行く、自治体の広報や自治会の回覧で結果を読む、消火器や避難所の場所だけ確認しておく。こうした部分的な関わりでも、当日の情報量は確実に増えます。
避難行動要支援者名簿は誰でも登録できますか
対象は、自ら避難することが困難で、避難にあたって特に支援を要する人です。具体的な範囲(要介護度や障害の程度など)は市町村が定めており、地域によって異なります。該当しそうかどうかを含め、お住まいの自治体の窓口にご相談ください。
「無事です」のタオルを勝手に始めても大丈夫ですか
地域で方式がそろっていないと、見た人に意味が伝わりません。まずは自治体や自治会が採用している方式があるかを確認し、なければ自治会や管理組合に提案してみるのが確実です。防犯面の懸念がある場合も、その場で相談しておくとよいでしょう。

まとめ|挨拶ひとつが、いちばん軽い備え

共助は、地域の役員になることでも、近所と親密になることでもありません。災害の日に、お互いの存在を思い出せる関係が薄く広くあること。それだけで、情報も手も届きやすくなります。

今日できるのは、エレベーターで一緒になった人に挨拶を返すこと。防災メールに登録すること。高齢の親に「名簿の登録してある?」と聞いてみること。どれも数分で終わります。「もしも」の日に慌てないために、「いつも」の中に小さなつながりを一つ置いておきましょう。

家族の避難計画をまだ決めていない方は、地域の話と合わせてこちらから整えるのがおすすめです。

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出典・参考

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