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首都直下地震の新しい被害想定と11年ぶりの計画改定|「半減以上」をわが家の優先順位に翻訳する

カエデ・避難計画・防災情報担当
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首都直下地震の新しい被害想定と11年ぶりの計画改定|「半減以上」をわが家の優先順位に翻訳する

首都直下地震について、この1年で大きな動きが2つありました。ひとつは令和7年12月19日に公表された新しい被害想定。もうひとつは、それを受けて令和8年6月12日に閣議決定された「首都直下地震緊急対策推進基本計画」の変更です。基本計画そのものの閣議決定は平成26年3月、減災目標を位置付ける変更が平成27年3月ですから、11年ぶりの改定になります。

報道の見出しは「死者最大1万8000人」でした。けれど、こうした数字を眺めて不安になるだけで終わってしまうのは、いちばんもったいない読み方です。内閣府の資料そのものが、被害想定の使い方について踏み込んだ書き方をしています。この記事では、新しい数字と新しい目標を、わが家の作業リストに翻訳していきます。

被害想定の公表日と数値は内閣府「首都直下地震対策検討ワーキンググループ(令和5年~)」の各資料、基本計画の変更日と減災目標は内閣府「首都直下地震緊急対策推進基本計画(令和8年6月12日閣議決定)」本文および同「説明資料」によります。

この1年で何が変わったのか

まず時系列を整理します。

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    令和5年12月|ワーキンググループの設置

    減災目標を位置付けた基本計画の変更(平成27年3月)から約10年が経過したことを受け、中央防災会議防災対策実行会議の下に「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」が設置されました。防災対策の進捗状況を踏まえて、被害想定の見直しと新たな防災対策の検討が行われました。
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    令和7年12月19日|報告書の公表

    ワーキンググループの報告書と、地震モデルを検討した「首都直下地震モデル・被害想定手法検討会」の報告書が同日に公表されました。前回の被害想定(平成25年)から見ると、約12年ぶりの見直しです。
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    令和8年6月12日|基本計画の変更が閣議決定

    報告書を踏まえ、首都直下地震緊急対策推進基本計画が変更されました。平成27年3月に減災目標を位置付ける変更がなされて以来、11年ぶりの改定です(計画自体の閣議決定は平成26年3月)。減災目標が再設定され、施策の具体目標も大幅に拡充されました。

対策の対象となる地震は、切迫性の高いM7クラスの地震です。そのなかでも、発生可能性や首都中枢機能への影響を考慮し、被害が甚大となる「都心南部直下地震」(M7.3)が被害想定の対象として選ばれています。津波対策については、延宝房総沖地震タイプの地震と大正関東地震タイプの地震が対象とされています。

なお計画の対象となる「首都直下地震緊急対策区域」は、平成26年3月に指定され、平成27年3月31日現在で1都9県309市区町村です。茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・長野・静岡の10都県にまたがり、埼玉・千葉・東京・神奈川は全域が対象になっています。わが家が含まれるかどうかは、内閣府が公開している指定市区町村一覧で確認できます。

新しい被害想定の数字を読む

新旧の比較は、内閣府の説明資料に一覧で示されています。いずれも一定の条件下の試算であることに留意が必要な数字です。

項目平成25年の被害想定令和7年の被害想定
死者数約2.3万人約1.8万人
全壊・焼失棟数約61万棟約40万棟
停電軒数約1,200万軒約1,600万軒
避難者数約720万人約480万人
避難所の食料不足(7日間)約3,400万食約1,300万食
経済的被害約95兆円約83兆円

死者数と全壊・焼失棟数は、いずれも冬・夕方、風速毎秒8メートルという、被害が最大になる条件での数字です。このほか帰宅困難者は約840万人、災害関連死者は最大約1.6万人から4.1万人(この数字は上の死者数には含まれません)と推計されています。東京圏の人口は約3,690万人、建物棟数は約965万棟です。

減った数字と、増えた数字

表を見ると、死者数も全壊・焼失棟数も避難者数も減っています。これは希望的観測ではなく、この12年で進んだ対策の効果です。資料には、建物の耐震化等の対策により揺れによる全壊棟数が約6.3万棟(約36パーセント)減少したこと、ライフスタイルの変化に伴う出火率の減少や感震ブレーカー等の普及により地震火災による焼失棟数が約14.4万棟(約34パーセント)減少したことが明記されています。

一方で、増えた数字もあります。停電軒数は約1,200万軒から約1,600万軒へ増えました。理由は、電灯軒数そのものが約630万軒(約20パーセント)増えたことと、夏季の電力ピーク需要が約5,100万kWから約5,700万kWへ約1割増えたことです。電線の被害による停電は、家屋の耐震化や無電柱化により約109万軒から約72万軒へ減っているのですが、それ以上に「電気を使う量」が増えたわけです。

もうひとつ、表からは見えない増加があります。避難者数の総数は建物被害の減少により最大約240万人(約33パーセント)減った一方で、被害想定手法の見直し(停電被害の推計手法、半壊建物からの自宅外避難割合、自宅外避難者に占める避難所避難者割合)により、避難所避難者数は最大約120万人(約41パーセント)増えたと資料に記されています。避難所に集まる人は、むしろ増える想定なのです。

メモ

数字が減ったからといって危険が去ったわけではなく、増えたからといって対策が失敗したわけでもありません。被害想定は前提条件と推計手法の上に成り立つもので、今回は停電の影響を上下水道の推計に組み込むなど、手法自体の見直しも行われています。増減の比較だけを追うと、かえって読み違えます。

死者の内訳|約7割は火災

家庭の優先順位を決めるうえで、いちばん重要なのが死者の内訳です。冬・夕方、風速毎秒8メートルのケースでは、次のように推計されています。

死者の要因冬・夕方(風速8m/s)冬・深夜(風速8m/s)
建物倒壊等約5,300人(うち屋内収容物・落下物 約700人)約7,300人(うち屋内収容物・落下物 約1,100人)
地震火災約12,000人約3,700人
急傾斜地崩壊約70人約100人
ブロック塀・自動販売機の転倒、屋外落下物約400人約10人
合計約18,000人約11,000人

内閣府の説明資料は、この構成を「死者数と全壊・焼失棟数の約7割は、火災によるもの」とまとめています。南海トラフ巨大地震では津波が最大の要因でしたが、首都直下地震では火災です。人口と建物が極めて密に集まった都市で、夕方の火を使う時間帯に強い揺れが起きるという条件が、この数字を生んでいます。

深夜のケースでは逆に、寝ている人が建物の下敷きになる建物倒壊等が最大の要因になります。時間帯によって「何がいちばん危ないか」が入れ替わる、というのが首都直下地震の特徴です。

このほか、負傷者は冬・夕方で約9万8000人、揺れによる建物被害で自力脱出が困難になる要救助者は約4万4000人と推計されています。

南海トラフの被害想定と減災目標の読み解きはこちら

南海トラフの新しい被害想定と「10年で8割減」|数字をわが家の行動に翻訳する

「不安を募らせる必要はない」と資料自身が書いている

ここで、被害想定の資料そのものが述べていることを紹介します。「都心南部直下地震の被害想定【定量的な被害量】」の冒頭には、次のような記述があります。

ヒント

このような甚大な被害想定結果を目の当たりにして、ともすれば、不安感を募らせ、これまでの防災対策が無意味であるかのような風潮が出てくる可能性もあるが、後述するように、しっかりとした対策を講ずれば想定される被害も大きく減少することは明らかである。

そして、国民一人一人が今回の被害想定に何ら悲観することなく取り組むべきこととして、次の3つが挙げられています。

  1. 強い揺れや弱くても長い揺れがあったら、迅速かつ主体的に避難する
  2. 強い揺れに備えて建物の耐震診断・耐震補強を行うとともに、家具等の固定を進める
  3. 感震ブレーカー等を設置するとともに、初期消火に全力をあげる

つまり家庭の優先順位は、国の一次資料の側にはっきり書かれているのです。ここから先は、この3つを具体的な作業に落としていきます。

なお同じ資料には、地震調査研究推進本部の評価として、南関東地域の直下でプレートの沈み込みに伴うM7程度の地震が発生する確率は今後30年間で70パーセント程度とされていること、ただし今回の被害想定に用いた地震が次に必ず発生するというものではないことも記されています。

「半減以上」という新しい減災目標

令和8年6月12日に閣議決定された基本計画の第7章には、減災目標がこう書かれています。

ヒント

今後10年間で、各主体が総力を挙げて、都心南部直下地震で想定される死者数及び建築物の全壊・焼失棟数をそれぞれ今後10年間で半減以上させることを目指すこととし、これを減災目標とする。

前回の計画では「おおむね半減」でした。今回は「半減以上」です。言葉の差はわずかですが、出発点の数字が死者約2.3万人から約1.8万人へ下がったうえで、削減率のほうは引き上げられているという構造になっています。なお前述のとおり推計手法も見直されているため、前回想定との差がそのまま対策の効果を表すわけではありません。

あわせて、備蓄などの地震発生への備えやライフライン・インフラの取組により、災害関連死や経済的被害も最大限減らすことを目指すとされています。

そして、この目標を支える具体目標(指標)の数が、前回の47個から189個へと約4倍に拡充されました。対象は主に首都直下地震緊急対策区域で、期間は基本的に令和8年度からの今後10年間です。

家庭に直接関わる具体目標

189個のうち、家庭の行動と直接つながるものを抜き出すと、次のようになります。カッコ内は基準となる年度です。

具体目標対象現状目標
住宅の耐震化率緊急対策区域の市町村92パーセント(令和5年)耐震性が不十分なものをおおむね解消(令和17年)
家具の固定率全国38パーセント(令和7年)100パーセント(令和17年)
感震ブレーカーの設置率緊急対策区域の都県20パーセント(令和6年)おおむね設置(令和17年)
食料品を3日分以上備蓄している家庭の割合全国60パーセント(令和7年)100パーセント(令和17年)
飲料水を3日分以上備蓄している家庭の割合全国70パーセント(令和7年)100パーセント(令和17年)
年1回以上防災訓練を実施しているマンションの割合緊急対策区域のマンション管理組合51パーセント(令和5年)100パーセント(令和15年)

この表は、国の目標であると同時に「いま何割の家庭ができていないか」の一覧でもあります。家具の固定は10軒中6軒がまだ、感震ブレーカーは10軒中8軒がまだ、という現在地です。

減災目標の文言と期間は内閣府「首都直下地震緊急対策推進基本計画」本文、具体目標の数値と対象は内閣府「同計画の変更 説明資料」によります。住宅の耐震化率の対象は、緊急対策区域のうち人口15,000人未満を除く市町村です。

わが家の優先順位1|耐震化と家具固定

計画本文には、参考値として重要な試算が引用されています。住宅の耐震化率が100パーセント相当になれば、揺れによる全壊棟数が約9割減になる、というものです。

被害想定の資料で内訳を見ると、揺れによる全壊棟数は現状(住宅耐震化率は全国平均約90パーセント、東京都約92パーセント)で約11万2000棟。これが耐震化率95パーセントで約6万3500棟、100パーセント相当(木造建物は2000年基準)で約1万5000棟まで下がる計算です。

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    自宅の建築年を確認する

    昭和56年(1981年)6月以降の建築確認かどうかが、まず大きな分かれ目です。木造住宅ではさらに、平成12年(2000年)の基準改正も目安になります。登記簿や建築確認済証、購入時の資料で確認できます。
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    自治体の耐震診断・改修の補助制度を調べる

    多くの自治体が耐震診断や改修の補助を用意しています。対象となる建築年や上限額、申請時期は自治体によって異なるので、市区町村の建築・住宅担当窓口で確認してください。
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    持ち家でなければ、屋内の安全確保から

    賃貸や分譲マンションでは建物の耐震化を自分では決められません。その場合は家具固定とガラスの飛散防止が、いちばん効く対策になります。

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家具固定にも数字があります。被害想定の資料によれば、屋内収容物の移動・転倒や屋内落下物による死者数は、冬・深夜で現状(対策実施率約36パーセント)約1,100人。これが実施率75パーセントで約500人、100パーセントで約200人に減ると推計されています。重傷者も約6,700人から約2,600人へ減る計算です。

重傷者が減るということは、救急医療の需要が減るということでもあります。資料も、家具等の転倒・落下防止対策は死者数だけでなく重傷者数の低減により緊急医療の需要の軽減につながり、重篤患者の救命にも資すると述べています。自宅の本棚を固定することが、見ず知らずの誰かの救命につながる、という関係です。

注意

家具の固定は100パーセント実施しても、固定方法や壁の状況によっては効果を発揮せず、転倒・落下被害が発生するおそれがあると資料に明記されています。取り付ける壁の下地の有無や、家具の形状に合った器具の選択など、設置状況に応じた方法を選んでください。判断に迷うときは製品の説明書や販売店、自治体の相談窓口で確認しましょう。

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わが家の優先順位2|出火を防ぐ

首都直下地震で最大の要因である火災には、はっきりした対策と、はっきりした試算があります。

感震ブレーカー設置率焼失棟数(冬・夕)火災による死者数(冬・夕)
20パーセント(現状)約26万8000棟約1万2000人
50パーセント約19万3000棟約8,700人
100パーセント約7万4000棟約3,400人

設置率が100パーセントになれば、焼失棟数は約7割減、火災による死者は約3分の1以下になる計算です。計画本文も、この「焼失棟数が約7割減」という参考値を引用しています。

資料には注記もあります。設置率100パーセントでも、石油ストーブ等の火気器具からの出火が残ることに加え、強い揺れで防災行動が取りにくいなどの理由により、炎上出火が一定程度残存するという説明です。感震ブレーカーは電気に起因する出火を防ぐもので、火災をゼロにする道具ではありません。

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    タイプを知る

    分電盤タイプ(内蔵型・後付型)、コンセントタイプ、簡易タイプがあります。分電盤タイプは電気工事が必要なものが多く、簡易タイプはおもりやバネで自分で取り付けられます。住宅の配線状況によって適した製品が異なります。
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    消えて困る電気を確認する

    作動すると照明も止まります。夜間に真っ暗になることを前提に、枕元や廊下に足元灯や懐中電灯を置いておきます。在宅医療機器を使っている家庭では、必ず事前に主治医や機器のメーカーに相談してください。
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    避難のときはブレーカーを落とす

    感震ブレーカーがない場合でも、家を離れて避難するときは分電盤のブレーカーを落とすことが、通電火災を防ぐ基本の動きになります。
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    初期消火の手段を確認する

    被害想定の資料は、感震ブレーカー等の設置とあわせて初期消火に全力をあげることを挙げています。住宅用消火器の設置場所と使い方を、家族で一度確認しておきます。

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感震ブレーカーは「大げさな設備」だと思っていました。でも自分の街が密集市街地に指定されていることと、火災が死者の7割という内訳を知って見方が変わりました。まずは簡易タイプを一つ、と決めたら急に手が動きました。
都内の木造密集地域に住む30代の共働き世帯

わが家の優先順位3|1週間、家で暮らせる状態にする

新しい計画の柱のひとつが「在宅避難の促進」です。ワーキンググループの説明資料では、至急の支援を要しない場合の在宅避難が推奨され、そのための家庭備蓄として「最低3日分、推奨1週間分」とローリングストック方式の活用、そして買いだめ・買い急ぎを控えることが挙げられています。

なぜ1週間なのか。ライフラインの復旧見通しを並べると、理由が見えてきます。

経過時間停電軒数(停電率)断水人口(断水率)
被災直後約1,649万軒(52パーセント)約1,381万人(29パーセント)
3日後約1,641万軒(52パーセント)約1,111万人(24パーセント)
1週間後約69万軒(2パーセント)約742万人(16パーセント)
2週間後約69万軒(2パーセント)約403万人(9パーセント)
1か月後約69万軒(2パーセント)約117万人(2パーセント)

停電は3日間ほとんど改善しない見込みです。1週間後に大きく数字が下がりますが、これは物理的な被害が直った軒数を示すもので、供給力そのものの回復には1か月程度を要するとされ、その間は計画停電や節電要請といった需要抑制が行われる想定になっています。断水は1週間後でもまだ約742万人、1か月後にも約117万人が残る計算です。

食料についても数字が出ています。避難所避難者向けの食料の不足量は、発災後1週間で最大約1,300万食。前回想定から約2,100万食減ったのは、各家庭と自治体の備蓄が進んだためだと資料は説明しています。一方で在宅避難者向けの要対策検討量は約1.7億食(うち発災後3日間で約5,600万食)とされ、こちらは日常生活として消費予定だった食料の活用等も考えられるため、必ずしもこの量が必要になるとは限らないという但し書きが付いています。

メモ

避難者数は発災2週間後に最大約480万人と想定されていますが、一方で在宅避難者は1日後の時点で約2,290万人にのぼると推計されています。避難所に行く人よりはるかに多くの人が、自宅で電気も水も乏しいまま過ごす計算です。首都直下地震の備えが「持ち出し袋」より「家に置いておく量」に寄るのは、この構造によります。

1週間分から逆算する備え

  • 飲料水は1人1日3リットルが目安。3日分ならまず9リットル、1週間分なら21リットルを目標にする
  • 食料はローリングストックで。日常的に食べる缶詰・レトルト・乾麺を少し多めに買い、古いものから使う
  • カセットこんろとボンベ(停電・都市ガス停止に備える。都市ガスは供給停止が最大約140万戸、供給停止が多い地域では解消まで約5週間の想定)
  • 携帯トイレ・簡易トイレ(断水が1週間続く前提で日数分)
  • モバイルバッテリーと乾電池。携帯電話は基地局の停波もあり、1日後の停波基地局率は51パーセントの想定
  • 現金。キャッシュレス決済の停止が新たな課題として明記されている
  • 常備薬とお薬手帳の控え、生理用品、乳幼児用品など家族固有の必需品

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備蓄の量を決めるとき、買いだめとの線引きに迷う方は多いと思います。国の資料が求めているのは「発災後に慌てて買い集めること」を避けるための平時の準備であって、災害が近いと感じたときに買い急ぐことではありません。ローリングストックが繰り返し推奨されているのも、日常の買い物の延長で少しずつ積み上げる方法だからです。

首都圏に住んでいない家庭の読み替え方

ここまでの内容は首都直下地震の話ですが、読み方そのものは全国で使えます。手順に直すと3つです。

  1. 1

    自分の地域で想定されている地震を知る

    都道府県や市区町村は、それぞれ独自の地震被害想定を公表しています。「(自治体名) 地震被害想定」で探すと、想定震度や想定される死者・全壊棟数、ライフラインの復旧見通しが出てきます。国の想定と自治体の想定は前提が異なるため、暮らしに近いのは自治体の想定です。
  2. 2

    死者や被害の内訳を見る

    総数ではなく内訳を見ます。津波が主要因なのか、建物倒壊なのか、火災なのか、土砂災害なのか。内訳が変われば、家庭の優先順位も変わります。首都直下地震のように火災が7割なら出火防止、南海トラフのように津波が中心なら早く逃げる仕組みづくりが先になります。
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    ハザードマップで「わが家の座標」を確かめる

    国土交通省のハザードマップポータルサイトや自治体のハザードマップで、揺れやすさ、液状化、浸水、土砂災害の想定を重ねて確認します。同じ市区町村内でも、条件は道1本で変わります。

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そのうえで、耐震化・家具固定・出火防止・1週間の備蓄という4つは、地震の種類を問わずどの地域でも土台になります。地域固有の対策は、その土台の上に足していくものだと考えると整理しやすくなります。

わが家の10年計画に落とし込む

国の減災目標の期間は、令和8年度からの10年間です。同じ10年を、家庭の側でも段取りにしておきます。

今年度中に手をつけること

  • 自宅の建築年と、木造なら2000年基準かどうかを確認する
  • 自治体の耐震診断・耐震改修の補助制度の有無と条件を調べる
  • 寝室と、玄関までの動線にある背の高い家具を固定する
  • 感震ブレーカーのタイプを調べ、自宅に合うものを1つ決める
  • ハザードマップで自宅・職場・学校の想定を確認する
  • 水と食料を、まず3日分、次に1週間分へ近づける
  • 携帯トイレを日数分そろえる

数年かけて進めること

  • 耐震診断の結果に応じて、部分改修や耐震シェルターも含めて検討する
  • 窓ガラス・食器棚の飛散防止を進める
  • マンションなら、管理組合の防災訓練と共用部の備蓄を年1回の議題にする
  • 家族の安否確認手段と、一斉帰宅を控える前提の帰宅ルールを決めておく
  • 年1回、家具固定と備蓄と連絡ルールを点検する日を決める
  • 自治体の被害想定やハザードマップが更新されたら見直す

計画の変更では、基本的方針そのものも見直されました。「行政が守る者、国民が守られる者」という考え方から、「国民、企業等、地域、行政が共に災害に立ち向かう」という考え方へ転換することが明記されています。また避難所についても「場所の支援」から「人への支援」へ考え方を転換する必要があるとされ、在宅避難・広域的避難・フェーズフリーといった要素が強調・追加されました。

言い換えれば、家庭の備えは「行政の対策の補助」ではなく、減災目標を構成する要素そのものとして位置づけられた、ということです。家具の固定率が全国の具体目標に入っているのは、その表れです。

よくある質問

「死者最大約1万8000人」は必ずそうなるということですか
いいえ。この数字は都心南部直下地震(M7.3)が冬の夕方、風速毎秒8メートルという条件で発生した場合の推計です。同じ資料では冬・深夜で約1万1000人、夏・昼で約5,000人という別の数字も示されています。資料には、今回の被害想定はマクロの被害を把握する目的で実施しており、都県別の数値はその計算根拠を明確にするために示したものであるため、ある程度幅をもって見る必要があると注記されています。
減災目標の「半減以上」は、いつからいつまでの10年ですか
基本計画では、減災目標を達成するための具体目標は基本的に令和8年度からの今後10年間で達成すべきものとされています。つまり2026年度が起点です。減災目標そのものは「今後10年間で」と記載されています。
具体目標が47個から189個に増えたのは何のためですか
内閣府の説明資料では、首都直下地震緊急対策区域を対象とした具体目標を充実させたこと、国土強靱化実施中期計画等を踏まえた具体目標を設定したこと、ワーキンググループ報告書を踏まえて食料品の家庭備蓄率や感震ブレーカーの設置率、マンションの防災備蓄などの目標を新たに設定したことが理由として挙げられています。
うちは首都直下地震緊急対策区域に入っていますか
内閣府が公開している「首都直下地震緊急対策区域指定市区町村一覧」で確認できます。埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県は全域、茨城・栃木・群馬・山梨・長野・静岡は一部の市町村が指定されています。ただし区域外だから安全という意味ではなく、区域は緊急対策を集中的に進める範囲を示すものです。
感震ブレーカーを付けると、地震のたびに停電して困りませんか
製品によって作動する震度の設定や、作動までの遅延時間の有無が異なります。避難の時間を確保するために作動を数分遅らせるタイプもあります。作動すると照明も消えるため、足元灯や懐中電灯とセットで考えるのが基本です。在宅医療機器を使っている場合は、必ず事前に主治医や機器のメーカーへ相談してください。
停電が3日間続く想定なのに、なぜ備蓄は1週間分なのですか
停電の解消と生活の回復は同じではないためです。断水は1週間後でも約742万人、1か月後にも約117万人が残る想定で、電力も供給力の回復には1か月程度を要し、その間は計画停電等の需要抑制が想定されています。加えて流通・物流の機能低下による物資不足も課題として挙げられており、ワーキンググループの説明資料では家庭備蓄を「最低3日分、推奨1週間分」としています。
マンションに住んでいます。何から手をつければよいですか
ワーキンググループの説明資料では、エレベーター停止等により在宅避難が困難になるマンション住民が「被災者の多様化」の例として挙げられています。計画本文にも、高層マンションでの在宅避難に向けてエレベーターの早期復旧を可能とする取組が盛り込まれました。具体目標にも、年1回以上防災訓練を実施しているマンションの割合(緊急対策区域の管理組合で令和5年51パーセントを令和15年に100パーセント)や、地震時管制運転装置の設置率(緊急対策区域の都県で令和6年48パーセントを令和17年に70パーセント)が入りました。個人としては家具固定と1週間分の備蓄、管理組合としては共用部の備蓄と訓練が入口になります。

まとめ|数字は、順番を決めるためにある

新しい被害想定と11年ぶりの計画改定を並べて読むと、国が伝えたかった構造が見えてきます。被害は確かに大きい。けれど死者と建物被害の約7割は火災であり、住宅の耐震化率が100パーセント相当になれば揺れによる全壊は約9割減、感震ブレーカーの設置率が100パーセントになれば焼失棟数は約7割減という計算が立つ。だから今後10年で「半減以上」という目標を掲げた。そういう順序です。

1万8000人という数字の前では、個人にできることなど無いように感じます。でも内訳を開けば、そこにあるのは「寝室の本棚を固定する」「感震ブレーカーを1つ選ぶ」「水を21リットルまで積み上げる」といった、ひとつずつは地味な行動の集まりでした。家具の固定率38パーセント、感震ブレーカーの設置率20パーセントという現在地は、裏を返せば伸びしろの大きさでもあります。

今日できることを、ひとつだけ選んでみてください。自宅の建築年を調べる。ハザードマップを開く。棚の上の物を下ろす。「もしも」の大きな数字を、「いつも」の小さな行動に割り算していきましょう。

出典・参考

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