モシモニア
住まいの防災

地震のあと「この家に住み続けていいのか」|応急危険度判定の赤・黄・緑の読み方

ツムギ・住まいの防災・ライフライン担当
・ 約31分で読めます
地震のあと「この家に住み続けていいのか」|応急危険度判定の赤・黄・緑の読み方

大きな地震のあと、家の玄関に見慣れない紙が貼られていることがあります。赤い紙、黄色い紙、緑の紙。被災建築物応急危険度判定のステッカーです。赤い紙を見て「もうこの家は壊すしかない」と思い込んでしまう人もいますし、緑の紙を見て「うちは大丈夫だった」と安心しきってしまう人もいます。どちらも、この判定が本来伝えようとしていることとは少しずれています。この記事では、応急危険度判定が何を判定しているのか、3つの色が何を言っているのか、貼られたあとに家族が何をすればよいのかを、一次資料で確認できた範囲で整理します。

この記事の制度の説明は、全国被災建築物応急危険度判定協議会(事務局:一般財団法人日本建築防災協会)が公開する「応急危険度判定」および「被災建築物応急危険度判定 Q&A」、内閣府(防災担当)の「応急危険度判定の結果を活用した迅速化について」(住家の被害認定に関する検討会 資料5)と「災害時の『住まい』と『生活』の再建に向けて」(令和8年6月作成)、東京都都市整備局「被災宅地危険度判定制度」、および大阪府・福岡市・横浜市・埼玉県の公表資料にもとづきます。判定の実施主体は市町村であり、実施範囲・問い合わせ先・支援制度の運用は自治体ごとに異なります。実際の判断は、お住まいの市区町村と公的機関の最新の案内を優先してください。

応急危険度判定とは何か|「次の揺れで人が傷つかないように」の判定

全国被災建築物応急危険度判定協議会は、応急危険度判定の目的を「大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止すること」と説明しています。守ろうとしている対象は、その家に住む人だけではありません。判定結果は建築物の見やすい場所に表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対しても、その建築物の危険性について情報提供することとされています。

実施するのは市町村です。同協議会は、被災時に所有者が自ら安全性を確認するのは現実的に困難であり、道路や隣家に影響を及ぼすおそれがある場合は歩行者など第三者にも被害が及ぶ可能性があることから、住民の安全確保のため市町村が震災直後の応急対策の一環として判定を実施することが必要であり、都道府県はその支援を行うことが望ましいと整理しています。埼玉県も、判定は「原則として被災市町村の災害対策の一環として行われます」と案内しています。

実際に家を見て回るのは、応急危険度判定士です。大規模災害では判定を必要とする建築物の量と被災地域の広域性から行政職員だけでは対応が難しいため、ボランティアとして協力する民間の建築士等に講習を受講してもらい、都道府県が「応急危険度判定士」として養成・登録しています。同協議会によると、2026年3月末現在の全国の応急危険度判定士数は104,705名です。判定士は活動中、身分を証明する登録証を携帯し、「応急危険度判定士」と明示した腕章およびヘルメットを着用します。判定作業は2人がチームになり、調査表等の定められた基準により客観的に行われ、その際、危険と思われる建築物には立ち入らないで調査することになっています。

メモ

判定は地震のあとの制度です。同協議会のQ&Aは「応急危険度判定士は、地震により被災した建築物の倒壊、部材の落下等から生ずる二次災害を防止し、住民の安全の確保を図るため…都道府県知事等が認定したものであり、地震以外の台風等の災害で出動することはありません」としています。台風や大雨のあとの住まいの傷みについては、罹災証明書のための被害認定調査や、自治体の緊急修理・応急修理の制度が入口になります。

いつ、どこまで判定されるのか

内閣府(防災担当)の「災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き」は、大地震の際に行われる建物等に係る被害調査の実施時期を整理しており、人命に関わる二次災害の防止を目的とした応急危険度判定については「被災後概ね1週間から10日後までの完了を目途として、被災直後から実施されることとなります」としています。速さが命の調査だということです。

対象範囲は自治体が決めます。同協議会のQ&Aは「応急危険度判定は、原則として全ての被災建築物を行いますが各市区町村により実施方法が異なります。たとえば、地域や判定対象建築物を限定して実施する場合があります」としています。ステッカーが貼られていないことは「安全と判定された」という意味ではありません。判定の対象区域に入っていない、判定の順番がまだ来ていない、という可能性があります。

揺れの数日後、下の階の玄関に黄色い紙が貼られているのを見て、初めてこういう制度があると知りました。うちには何も貼られていなくて、「調べてもらえなかったのか、それとも大丈夫だから貼られなかったのか」がわからず、しばらくもやもやしていました。あとで区の窓口に電話したら、判定を進めている区域と順番の説明をしてもらえて、ようやく落ち着きました。
集合住宅で暮らす読者

赤・黄・緑は何を言っているのか

判定結果は3種類のステッカーで表示されます。ステッカーの本文は、大阪府と福岡市が公開している文面では次のとおりです。

区分色ステッカーに書かれている内容
危険赤この建築物に立ち入ることは危険です。立ち入る場合は専門家に相談し、応急措置を行った後にして下さい。
要注意黄この建築物に立ち入る場合は十分注意してください。応急的に補強する場合には専門家にご相談ください。
調査済緑この建築物の被災程度は小さいと考えられます。建築物は使用可能です。

大切なのは、色よりも注記欄です。同協議会の応急危険度判定業務マニュアルは、判定ステッカーには判定結果に基づく対処方法に関する簡単な説明を明記することとしており、Q&Aでは、注記のコメントは「何が危険なのか等を具体的に読んだ人が判断できるように」記入することとされています。木造建築物の調査表にも「コメント(構造躯体等が危険か、落下物等が危険かなどを記入する)」という欄があり、その内容が判定ステッカーの注記と同じになると定められています。つまり、同じ「要注意」でも、柱や基礎の話をしているのか、瓦や外壁が落ちてくる話をしているのかで、家族が取るべき行動は変わります。

また、瓦などの落下危険物の判定結果が一定以上のランクだった場合には、判定ステッカーに近づかなくとも落下の危険性がわかるよう「落下物注意シール」を判定ステッカーの上部に貼付することが、同協議会の運用補足で定められています。ステッカーの上に小さなシールが重なっていたら、その建物の周りを歩くときにも注意が必要だという合図です。

注意

「危険」の赤い紙が貼られる理由は、その家自体が壊れている場合だけではありません。同協議会のQ&Aは、近づくのも危険と思われる建物については、危険の及ばない相当の距離をおいて調査し、ステッカーの注記欄にその範囲等をわかりやすく表現した上で境界付近の見やすい位置に貼付することが適切だとしています。また内閣府の想定問答は、住宅そのものに被害はないが、隣の家や擁壁が倒れてきそうで危険な住宅も「危険」と判定されることがあると説明しています。赤い紙は「あなたの家がここまで壊れた」の通知ではなく、「いま、この場所は危ない」の通知です。

「危険」は珍しいことでもありません。同協議会が公開している過去の判定実績では、平成28年熊本地震で判定した57,570棟のうち危険が15,708棟、令和6年能登半島地震の石川県分では31,600棟のうち危険が12,615棟と記録されています。赤い紙を貼られた家は、けっして例外的な少数ではないということです。

ステッカーが貼られたあと、まずやること

  1. 1

    注記欄を最後まで読む

    何が危険とされているのか(構造躯体か、落下物・転倒物か)、立ち入りを控える範囲はどこまでか。色だけを見て判断せず、書かれている文と判定日時を写真に撮って残します。
  2. 2

    問い合わせ先を控える

    同協議会のQ&Aは、判定ステッカーには判定結果に対する問い合わせ先も表示してあるとしています。あとで相談するときの窓口はここです。番号を家族全員のスマートフォンに登録しておきます。
  3. 3

    赤なら立ち入らず、避難先を市町村に相談する

    同協議会のQ&Aは、「危険」と判定された場合の説明として、建物が構造的に相当の被害を受けておりこのまま住まい続けることは危険であること、避難先等については市町村の担当部局(または災害対策本部)に相談するよう伝えることとしています。荷物を取りに入りたい気持ちは自然ですが、まず窓口に相談してください。
  4. 4

    勝手にはがさない

    同協議会のQ&Aは、掲示について「通常の場合は、判定実施本部が応急危険度判定により用が足りたと判断した時点までは掲示が必要で、具体的に期間の定めはありませんのでステッカーに記載されている連絡先へ確認して頂くよう説明してください」としています。処分も同じ連絡先に確認を。ステッカーは家族だけでなく、近隣の人や通行人、支援に入る人へ向けた表示でもあります。
  5. 5

    片づけ・修理の前に写真を撮る

    罹災証明書のための被害認定調査でも保険の手続きでも、被災直後の状態がわかる写真が役に立ちます。内閣府のリーフレットも「修理や片付けをしてしまってからでは、正確な調査が困難となってしまいます」と呼びかけています。
  6. 6

    大きな余震のあとは、もう一度判定されることがある

    同協議会のQ&Aは、ステッカーには判定日時が記載されているので、余震の大きさにより判定実施本部の判断で再度判定する場合も有り得るとしています。緑の紙は「その日時点で、赤や黄とする危険は見つからなかった」という記録です。

ステッカーが貼られた日にやること

  • ステッカーの色・注記・判定日時を写真に撮った
  • 問い合わせ先の連絡先を家族で共有した
  • 赤の場合、立ち入らずに市町村の窓口(または災害対策本部)へ相談した
  • 片づけや修理の前に、外観4方向と部屋ごとの被害の写真を撮った
  • ステッカーをはがしていない(近隣・通行人・支援者への表示でもある)
  • 余震のあと、注記の内容と家の様子が変わっていないか離れた位置から確認した

ヒント

緑の紙が貼られた場合も、それで点検が終わるわけではありません。福岡市は、緑紙であっても外観上確認できない損傷がある場合は専門家に相談するよう案内しています。応急危険度判定は外観調査を主体とした短時間の調査であり、天井裏や床下、壁の中は見ていないことが前提です。

「危険」は「全壊」ではない|4つの調査を混同しない

ここが、いちばん誤解の多いところです。内閣府(防災担当)は、住家の被害認定に関する運用指針の総則で、被災建築物応急危険度判定・被災宅地危険度判定・被災度区分判定・地震保険損害調査は「災害による個々の住家の『被害の程度』を判定することを目的とした被害認定調査とは、その目的、判定の基準を異にするものである」ことから、これらの混同が被災者に生じないよう、それぞれの実施主体が明確に説明することが重要だと明記しています。内閣府「災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き」の整理をもとに並べると、次のようになります。

調査実施目的実施主体調査する人判定結果
住家の被害認定住家に係る罹災証明書の交付市町村主に行政職員全壊・大規模半壊等
被災建築物応急危険度判定余震等による二次災害の防止市町村(都道府県・全国被災建築物応急危険度判定協議会が支援)応急危険度判定士(行政または民間の建築士等)危険・要注意・調査済
被災宅地危険度判定余震等による二次災害の防止、宅地の保全の勧告等に必要な箇所の把握市町村(都道府県が支援)被災宅地危険度判定士(宅地防災の経験を有する行政職員等)危険宅地・要注意宅地・調査済宅地
被災度区分判定被災建築物の適切かつ速やかな復旧建物所有者民間建築士等要復旧・復旧不可能等

そして内閣府は、応急危険度判定について「落下物の除去等、適切な応急措置が講じられれば判定が変更されることもあり得る。すなわち、応急危険度判定で『危険』と判定された住家が、必ずしも『全壊』、『大規模半壊』又は『半壊』と認定されるとは限らない」と明記しています。同様に、地震保険損害調査で「全損」「大半損」「小半損」と認定された住家が、必ずしも被害認定の「全壊」「大規模半壊」「半壊」と一致するわけでもありません。全国被災建築物応急危険度判定協議会も、応急危険度判定は「罹災証明の為の調査や被災建築物の恒久的使用の可否を判定するなどの目的で行うものではありません」としています。

一方で、まったく無関係というわけでもありません。内閣府は、被害認定調査の方針を決める際に応急危険度判定の判定結果(調査表や判定実施区域図等)を活用することが考えられるとし、「建築物全体又は一部の崩壊・落階」「建築物全体又は一部の著しい傾斜」に該当することにより「一見して危険」と判定された住家や、「建築物の1階の傾斜が1/20超」と判定された住家(木造)などのうち、調査表のコメント欄等で「建築物全体」の状態が確認できる場合には、この判定結果を参考にして「全壊」の被害認定を行うことも可能だとしています。ただし、棟全体から見ればごく一部分の崩壊に過ぎない場合でも二次災害防止の観点から「一見して危険」と判定されることがあるため、参考にできない場合もあると注意されています。

罹災証明書の側の手続き(6区分の判定、第1次・第2次調査、写真の撮り方、自己判定方式)は、次の記事で詳しく整理しています。この記事は「住み続けてよいか」の判定、次の記事は「支援を受けるための証明」の手続き、という役割の違いで読み分けてください。

あわせて読みたい

片づける前に写真を撮る|罹災証明書と住家の被害認定のしくみ、被災直後の記録の手順

建物ではなく「土地」の判定|被災宅地危険度判定

擁壁が膨らんだ、のり面が崩れた、地面に段差ができた。こうした被害を見るのは、建物の判定とは別の制度です。東京都都市整備局は、被災宅地危険度判定制度を「大規模な地震や豪雨等により宅地が大規模かつ広範囲に被災した際に、二次災害を軽減・防止し、住民の安全確保を図ることを目的として、被災宅地危険度判定士が、被害の発生状況を迅速かつ的確に把握し、被災した宅地の危険度を判定するもの」と説明しています。被災した区市町村が実施主体となって責任を負い、判定結果について宅地所有者等に情報提供を行い、都は支援要請に基づいて宅地判定士に協力を依頼するなどの支援措置を行うとされています。

対象は、被災した擁壁、のり面等を含む宅地です。判定結果は3種類のステッカーで宅地等の見やすい場所に表示され、東京都のページでは次の文面が示されています。

区分表示される内容
危険この宅地に立ち入ることは危険です。
要注意この宅地に入る場合は十分注意してください。
調査済この宅地の被災程度は小さいと考えられます。

判定士の顔ぶれも建物とは違います。内閣府の整理では、被災宅地危険度判定士は「宅地防災の経験を有する行政職員等」とされ、東京都では令和7年1月現在、2,098名が登録されていると案内されています。被害が生じた地方公共団体のみで対応が難しい場合は、都道府県・政令市・都市再生機構・公益財団法人宅地擁壁技術協会から構成される被災宅地危険度判定連絡協議会を通じた調整や支援が図られるとされ、国土交通省も令和元年8月22日の報道発表で、広域の被災に備えた「広域支援マニュアル」と「情報共有マニュアル」の策定・公表を発表しています。

内閣府は、宅地擁壁が倒壊していても住家に被害が及ばないケースもあることから、「危険宅地」と判定された宅地に建てられている住家が必ずしも「全壊」「大規模半壊」「半壊」と認定されるとは限らないとしています。逆に、宅地そのものの被害は住宅の被害認定には反映されませんが、地盤の被害の影響による住宅の基礎等の損傷または機能損失については反映されるとも整理されています。土地の判定と建物の証明は、別々に確認すると覚えておくと迷いません。

あわせて読みたい

ブロック塀と外構の点検|倒れる塀からわが家と通行人を守る、家庭でできるチェック

判定士は何を見ているのか|家族が「離れた場所から」確認できること

判定を待つあいだ、家族が自分たちで見られる範囲を知っておくと、通報や相談のときに話が早くなります。参考になるのは、判定に使われる調査表そのものです。山形県が公開している標準様式「木造建築物の応急危険度判定調査表」では、次の順に見ていきます。

  1. 一見して危険と判定されるか。建築物全体または一部の崩壊・落階、基礎の著しい破壊と上部構造との著しいずれ、建築物全体または一部の著しい傾斜。これに当たる場合はその時点で「危険」と判定し、調査を終了します
  2. 隣接建築物・周辺地盤等および構造躯体に関する危険度。隣接建築物・周辺地盤の破壊による危険、構造躯体の不同沈下、基礎の被害、建築物の1階の傾斜(1/60以下、1/60〜1/20、1/20超の3段階)、壁の被害、腐食・蟻害の有無
  3. 落下危険物・転倒危険物に関する危険度。瓦、窓枠・窓ガラス、外装材(湿式・乾式)、看板・機器類、屋外階段など

総合判定は、1で危険とされた場合は危険、それ以外は2と3の大きい方の危険度で決まります。素人が同じ判定をすることはできませんが、「どこを見ているのか」を知っていれば、家族が離れた場所から確かめられることは意外にあります。

判定を待つあいだ、離れた場所から確認できること

  • 建物が傾いていないか(道路の反対側から、電柱や隣家の壁と垂直方向を見比べる)
  • 基礎に段差やずれ、大きな割れがないか
  • 屋根の瓦がずれていないか、外壁材が浮いていないか(下から見上げる。近づかない)
  • 窓ガラスにひびがないか、サッシが歪んでいないか
  • 室内のドアや窓が以前と同じように開閉できるか
  • 床が傾いた感じや、きしむ感じが出ていないか
  • 隣家・ブロック塀・擁壁・のり面に、こちらへ倒れてきそうな変化がないか
  • ガスのにおい、水漏れ、天井からの落下物の気配がないか

注意

確認は「離れた場所から」が原則です。屋根に上がる、ベランダから身を乗り出して外壁をのぞく、傾いた建物の中に長く留まる、といった行為はしないでください。判定士自身も、危険と思われる建築物には立ち入らないで調査し、余震による危険性がある被災建築物は危険の及ばない相当の距離をおいて外観調査を行うこととされています。ガスのにおいがするときは火気を使わず、その場を離れてガス事業者や消防に連絡してください。「自分で判定する」ことが目的ではなく、「窓口や専門家に伝えられる情報を持つ」ことが目的です。

住まいそのものの地震への強さ(建てられた年、耐震診断、補助制度)は、被災前に確かめておくテーマです。

あわせて読みたい

わが家の耐震性を確かめる|1981年・2000年の基準の違いと、診断・補助制度・費用の目安

判定が来ない・納得できないときの相談先

個別の判定士に頼まず、自治体の窓口へ

「うちも見てほしい」と、たまたま近所で活動している判定士に声をかけたくなることがあります。しかし同協議会のQ&Aは、実施本部の計画した判定地区以外の建物などについて所有者から判定を頼まれた場合、地区ごとに担当の判定士が決まっており、他の判定士が再判定をしてしまうと混乱するため「出来る限り断ってください」としています。頼み先は判定士個人ではなく、市区町村の建築・防災の担当窓口、または災害対策本部です。判定結果への問い合わせ先はステッカーにも表示されています。

判定の「暫定性」を前提に考える

同協議会は、「応急」という語には、地震直後の短期間に多くの建物の判定を行わなければならない「緊急性」と、限られた調査項目で判定を行うことから、後に十分な時間をかけて被害調査を行った場合には判定結果が異なる場合もあるという「暫定性」の二つの側面があると説明しています。判定結果への責任は基本的に判定実施主体の地方自治体にあるとも整理されています。判定士を責めるのではなく、次の段階の調査に進む、という考え方が現実的です。

詳しく知りたいときは「被災度区分判定」

日本建築防災協会は、震災復旧の手順を3段階で示しています。第1段階(発災直後の時期)が応急危険度判定、第2段階(やや混乱の落ち着いた時期)が被災度区分判定、第3段階(安定時期)が復旧計画および復旧工事です。

被災度区分判定は、建築構造技術者が建築物の内部に立ち入り、沈下・傾斜および構造躯体などの損傷状況を調査して、被災の程度を軽微・小破・中破・大破などと区分するとともに、地震動の強さなどを考慮して復旧の要否とその程度を判定するものです。依頼するのは建物の所有者で、同協会は「被災度区分判定及び復旧計画等の作成には一定の費用がかかります」と明記しています。主な対象は応急危険度判定で「危険」「要注意」と判定された建築物などですが、「調査済」の建築物についても何らかの被害があるなら活用する方法もあるとされています。応急危険度判定が外観調査を主体とした短時間の調査結果に基づくためです。

メモ

被害の程度の「認定」に納得できないときは、ルートが別になります。地震や水害で第1次調査の結果を受け取った段階なら、まず第2次調査を申請し、その結果にも納得できない点があれば再調査を依頼する、という順序です。応急危険度判定への疑問(建築・防災の窓口)、罹災証明書の被害区分への疑問(罹災証明の窓口)、復旧の要否(建築構造技術者への依頼)は、それぞれ相談先が違うと整理しておくと、たらい回しになりにくくなります。

賃貸住宅や分譲マンションの場合は、専有部分と共用部分で相談先が分かれます。管理会社・貸主・管理組合への連絡と、自治体窓口への相談を並行して進めることになります。

あわせて読みたい

マンション(高層階・集合住宅)の防災|停電・断水・エレベーター停止に備える在宅避難

判定のあとに続く支援|住まいを立て直す制度の地図

赤や黄の紙が貼られたあと、住まいをどうするかは制度の力を借りることになります。内閣府(防災担当)のリーフレット「災害時の『住まい』と『生活』の再建に向けて」(令和8年6月作成)から、住まいに関わるものを抜き出すと次のとおりです。いずれも判定ステッカーの色ではなく、罹災証明書に記載される被害の程度が基準になります。

制度主な対象期間の目安
被災住宅の緊急修理(ブルーシートの展張など)自宅が損傷を受け、被害拡大を防ぐ必要がある世帯(申込時に自治体職員が「準半壊」以上に相当する被害であることを確認)原則として災害発生の日から10日以内に完了
被災住宅の応急修理自宅が大規模半壊、中規模半壊、半壊(半焼)または準半壊の被害を受けた世帯原則として災害発生の日から3か月以内に完了
障害物の除去自宅が半壊、半焼または床上浸水の被害を受けた世帯原則として災害発生の日から10日以内に完了
応急仮設住宅の供与災害により住まいを失い、自らの資力では住宅を確保できない世帯供与期間は原則2年間

応急修理の対象部位は、居室・炊事場・便所など日常生活に必要欠くことのできない部分に限られ、屋根・柱・床・外壁・基礎など、ドア・窓などの開口部、上下水道・電気・ガスなどの配管・配線、便器・浴槽などの衛生設備の順に、緊急性の高い部位から優先して修理するよう案内されています。費用の限度額は自宅の被害の程度に応じて異なるため自治体に確認することとされ、限度額を超える工事費用は自己負担になります。修理業者に依頼する場合は自治体が業者と契約する仕組みで、被災者に現金が支給される制度ではありません。

ヒント

同リーフレットには、応急修理と仮設住宅の関係についての大切な補足があります。「半壊以上の被災住宅で応急修理に申し込んだものの、修理に要する期間が1か月を超える場合には、工事が完了するまで応急仮設住宅に入居することが可能です(6か月以内が原則です。)」。修理を選ぶと住む場所がなくなるのでは、と心配になりますが、こうした扱いがあります。詳しい適用は自治体にご確認ください。

生活の立て直しに向けては、被災者生活再建支援金があります。同リーフレットによると、対象となる自然災害は1市町村で10世帯以上全壊した災害等で、対象となる被災世帯は全壊世帯・解体世帯・長期避難世帯・大規模半壊世帯・中規模半壊世帯です。支援金は住宅の被害程度に応じた「基礎支援金」と再建方法に応じた「加算支援金」の組み合わせで、たとえば全壊世帯が建設・購入を選んだ場合は基礎100万円と加算200万円で計300万円、大規模半壊世帯が補修を選んだ場合は基礎50万円と加算100万円で計150万円と示されています(世帯人数が一人の場合は各欄の金額の4分の3の額)。申請窓口は市町村、申請期限は基礎支援金が災害発生日から13月以内、加算支援金が37月以内で、申請には罹災証明書が必要です。

メモ

応急危険度判定は市町村の応急対策として行われますが、その先の被災度区分判定や復旧工事、限度額を超える修理費用には自己負担が生じます。内閣府のリーフレットも「速やかな生活再建のために保険・共済が重要です」として、一般的な火災保険では地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害は補償されないため、それらに備えるには地震保険を付帯する必要があると案内しています。

あわせて読みたい

火災保険・地震保険と水災補償を見直す|台風シーズン前に、生活再建の備えを点検する

判定に便乗した勧誘に注意する

判定士が家に来る時期は、残念ながら「点検します」と名乗る人が訪ねてくる時期とも重なります。埼玉県は、災害時は災害に便乗した悪質な業者による調査や押し売りが予想されるため、判定士の身元確認を求めることが重要だと案内しています。前述のとおり、判定士は登録証を携帯し、「応急危険度判定士」と明示した腕章とヘルメットを着用し、2人がチームで活動します。

国民生活センターは2022年6月16日に「被災地域は特に注意!災害後の住宅修理トラブル」を公表し、「すぐに直さなければ雨漏りする」と長時間にわたって工事を勧める、「大きな地震が来ると倒壊する可能性がある」と不安をあおって追加工事に誘導する、公的機関からの委託を装って点検に訪れる、「保険金が使える」「自己負担なく修理できる」と勧誘する、といった相談事例を挙げています。アドバイスとして、契約を迫られてもその場では契約せず複数の事業者で比較検討すること、クーリング・オフの活用が示され、相談先として消費者ホットライン「188」、住まいるダイヤル「0570-016-100」が案内されています。

注意

応急危険度判定は市町村が行う応急対策であり、判定士が修理工事を勧めたり、その場で契約を求めたりすることはありません。「判定で危険だったので今日中に工事を」といった話が出たら、契約せずに市区町村の窓口と消費生活センター(188)に確認してください。

赤い紙を見る前に、家でできること

応急危険度判定は、被災してからの制度です。ただ、その日の選択肢を増やすためにできることは平時にあります。どれも週末の1時間で始められます。

1. 「わが家は在宅避難できる家か」を先に考えておく

判定が「調査済(緑)」だったとしても、水も電気も止まった家で過ごせるかは別の話です。自宅で避難生活を続ける条件と備えは、次の記事にまとめています。

あわせて読みたい

在宅避難の進め方|自宅で避難生活を続けるための準備と判断の基準

2. 「赤だったとき」の行き先を家族で決めておく

赤い紙が貼られたら、避難先は市町村の担当部局に相談することになります。それとは別に、親族の家、車中泊、遠くの安全な地域への避難といった選択肢を、家族の中であらかじめ話しておくと初動が速くなります。

あわせて読みたい

避難先は避難所だけじゃない|分散避難・縁故避難の決め方と、親戚・知人宅に頼るときの準備

3. 地震のあとに雨が来る前提で考えておく

屋根や外壁が傷んだ家に大雨が重なると被害が広がります。地震のあとは、ふだんより少ない雨で土砂災害が起きることもあります。緊急修理(ブルーシートの展張)の制度が「原則10日以内」と急いでいる理由もここにあります。

あわせて読みたい

地震のあとに大雨・台風が来るとき|「暫定基準」で変わる情報と、複合災害への備え

よくある質問

赤い紙(危険)が貼られました。家は取り壊しになるのですか
そうは決まっていません。内閣府は『落下物の除去等、適切な応急措置が講じられれば判定が変更されることもあり得る』とし、応急危険度判定で『危険』と判定された住家が必ずしも罹災証明書の『全壊』『大規模半壊』『半壊』と認定されるとは限らないとも明記しています。まずはステッカーの注記を読み、立ち入らずに市区町村の担当部局に相談してください。復旧の要否を詳しく知りたい場合は、所有者が建築構造技術者に被災度区分判定を依頼する道があります(費用がかかります)。
ステッカーをはがしてもよいですか。いつまで貼っておくのですか
自分で判断してはがさないでください。全国被災建築物応急危険度判定協議会のQ&Aは、通常の場合は判定実施本部が応急危険度判定により用が足りたと判断した時点までは掲示が必要で、具体的な期間の定めはないため、ステッカーに記載されている連絡先へ確認するよう案内しています。処分についても同じ連絡先に確認してください。ステッカーは家族だけでなく、近隣の人・通行人・支援に入る人への表示でもあります。
緑の紙(調査済)が貼られました。もう心配しなくてよいですか
『この建築物の被災程度は小さいと考えられます。建築物は使用可能です』という意味ですが、外観調査を主体とした短時間の調査に基づく暫定的な判断です。福岡市は、緑紙であっても外観上確認できない損傷がある場合は専門家に相談するよう案内しています。また同協議会は、大きな余震があった場合は判定実施本部の判断により再度判定することもあるとしています。天井裏や床下、壁の中の状態が気になるときは、被災度区分判定などを検討してください。
うちには何も貼られていません。判定してもらえなかったのでしょうか
貼られていないことは『安全と判定された』という意味ではありません。同協議会のQ&Aは、応急危険度判定は原則としてすべての被災建築物について行うものの、市区町村により実施方法が異なり、地域や判定対象建築物を限定して実施する場合があるとしています。気になるときは、たまたま近所にいる判定士に頼むのではなく(混乱を避けるため断るよう案内されています)、市区町村の建築・防災担当の窓口に問い合わせてください。
判定結果に納得できません。やり直してもらえますか
ステッカーに表示されている問い合わせ先、または市区町村の担当窓口に相談してください。同協議会は、応急危険度判定には短時間で多数を判定する『緊急性』と、限られた調査項目で行うため後に十分な時間をかけた調査では結果が異なる場合もある『暫定性』の二つの側面があるとしています。なお、罹災証明書の被害区分に納得できない場合は別のルートで、地震や水害では第2次調査の申請、その結果にも納得できなければ再調査の依頼という順序になります。
台風や大雨で家が傷んだときも、応急危険度判定は来ますか
同協議会のQ&Aは、応急危険度判定士は地震により被災した建築物を対象に認定されたものであり、地震以外の台風等の災害で出動することはありませんとしています。風水害のときは、罹災証明書のための被害認定調査や、自治体の緊急修理(ブルーシートの展張など)・応急修理・障害物の除去といった制度が入口になります。市区町村の案内を確認してください。
擁壁やブロック塀が壊れた場合はどこに相談すればよいですか
宅地・擁壁・のり面を対象とする『被災宅地危険度判定』という別の制度があります。実施主体は被災した区市町村で、宅地防災の経験を有する行政職員等の被災宅地危険度判定士が調査し、『危険宅地』『要注意宅地』『調査済宅地』のステッカーで表示します。地震だけでなく豪雨等でも実施されます。なお内閣府は、宅地そのものの被害は住宅の被害認定には反映されないが、地盤の被害の影響による住宅の基礎等の損傷や機能損失は反映されると整理しています。
「判定で危険だったので今すぐ修理を」と業者が来ました
その場で契約しないでください。応急危険度判定は市町村が行う応急対策で、判定士が修理工事を勧めたり契約を求めたりすることはありません。判定士は登録証を携帯し、『応急危険度判定士』と明示した腕章とヘルメットを着用し、2人がチームで活動します。国民生活センターは、不安をあおる勧誘や『保険金が使える』という勧誘の相談事例を公表し、その場で契約せず複数の事業者で比較検討することとクーリング・オフの活用を案内しています。相談先は消費者ホットライン188、住まいるダイヤル0570-016-100です。

おわりに|色の意味を知っているだけで、初動が変わる

応急危険度判定は、被災した家に「格付け」をする制度ではありません。次の揺れが来たときに、そこにいる人と、その前を通る人が傷つかないようにするための、時間との勝負の応急措置です。だから判定は速く、限られた項目で行われ、あとから結果が変わることもある。その性格を知っておくと、赤い紙を見ても絶望せず、緑の紙を見ても過信せず、注記を読んで次の窓口に相談する、という落ち着いた動き方ができます。

この判定が「住み続けてよいか」の話、罹災証明書の被害認定が「支援を受けるための証明」の話、被災度区分判定が「どう直すか」の話だと分けて覚えておけば、被災後の混乱の中でも相談先を間違えずに済みます。今日できることは、3つの色の意味を家族で共有し、住まいの耐震性と保険の内容をいちど確かめておくこと。それだけで、「もしも」の日の初動はずいぶん変わります。

判定の実施範囲、問い合わせ先、支援制度の適用や限度額は、災害の規模と自治体によって異なります。この記事は公表資料をもとにした全体像の整理であり、実際の手続きと判断は、お住まいの市区町村と公的機関が発表する最新の案内を優先してください。

応急危険度判定の目的・実施主体・判定士・ステッカーの運用・判定実績は、全国被災建築物応急危険度判定協議会(事務局:一般財団法人日本建築防災協会)の「応急危険度判定」「被災建築物応急危険度判定 Q&A」「判定ステッカーに係る運用について」「応急危険度判定 過去の判定実績」によります(判定士数は2026年3月末現在の同協議会公表値)。各種調査の違い・実施時期・判定結果の活用は内閣府(防災担当)「応急危険度判定の結果を活用した迅速化について」(住家の被害認定に関する検討会 資料5)、住まいと生活の再建支援の内容は同「災害時の『住まい』と『生活』の再建に向けて」(令和8年6月作成)によります。ステッカーの文面は大阪府・福岡市、実施の位置づけは埼玉県・横浜市、宅地の判定は東京都都市整備局および国土交通省の報道発表、調査表の項目は山形県が公開する標準様式、便乗商法への注意は独立行政法人国民生活センターの公表資料(2022年6月16日)によります。いずれも2026年9月8日に閲覧しました。制度・運用・金額は改定されることがあります。

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事